目が覚めたら勇者に憑依していた 作:yuuyyuyuyuyuyu
書き終わったの午前3時だった。
ということで、予約投稿
何時に投稿するのが一番いいんですかね。どうでもいいね
今回もゆっくりみていってね!
あの日、私のお姉ちゃんはお姉ちゃんじゃなくなった
油断していた、いつもより楽な依頼だったから、周りを見ることを怠っていた
そんなことが許される場所じゃないことはわかっていたはずなのに
しっかり周りを見れていれば、気付けたはずなのに
そんな馬鹿な私の事を庇ってお姉ちゃんは致命傷を負ってしまった
頭が真っ白になった
ルミ姉が必死に回復魔法を唱えていて、カレン姉がお姉ちゃんを背負って走っていて
私は目の前で血を流し続けるお姉ちゃんを見ていることしか出来なくて
街に戻ってから、ようやく意識を取り戻した私は、急いでロゼおばあちゃんのところにテレポートした。ロゼおばあちゃんに状況を説明して、お姉ちゃんのところに連れて行って、それから
一週間経って、目を覚ましたお姉ちゃんは知らない人になっていた
「私は皆さんが知っている、ソフィア・アインホーンさんではありません」
最初、お姉ちゃんが何を言ってるのかわからなかった。目が覚めた時、とっても嬉しかった、ロゼおばあちゃんからもしもの時の事は聞かされていたけど、そうはならなかったことに、心底安心していた。やっぱりお姉ちゃんは勇者だから、すごいんだって誇りに思った。それからお姉ちゃんとロゼおばあちゃんが二人で、話に行って、帰ってきたお姉ちゃんが、そんなことを言ったのだ。質の悪い冗談か何かだと思った、だって目は覚めたんだよ?一時は生死の境をさまよってたお姉ちゃんが、それを乗り越えてやっと目を覚ましてくれたのに、冗談にならないよ。
「な、に・・・いってるの。おねえちゃん、う、うそでしょ?じ、じょうだん・・・っ」
縋る思いで、だした声は、びっくりするほど震えていて、最後まで言葉に出来なかった。
「ユリーカさん、ごめんなさい」
お姉ちゃんが、お姉ちゃんの形をしたなにかが、頭を下げて謝る。
嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ!!
こんなの知らない、私の知ってるお姉ちゃんじゃない
私の知ってるお姉ちゃんは私にさんなんて付けない
私の知ってるお姉ちゃんはかっこいいんだ
いつだって周りにいる人を笑顔にして
困っている人がいれば何よりも優先して助けに行って
戦ってるときだってカレン姉より強くて、私が使えない光属性魔法だって使えて
いつだって私達を助けてくれた
私の大好きなお姉ちゃん
世界に一人だけの私だけのお姉ちゃん
なのに
知らない、私のお姉ちゃんがこんな、こんな気が弱そうなわけがない
私達を暗くさせるような事を言うはずがない
違う、こいつはお姉ちゃんじゃない
こいつは、こいつが私からお姉ちゃんを奪ったんだ
返してよ、ねえ、私のお姉ちゃんを返してよ・・・
返せ返せ返せ、お姉ちゃんを返せよ!!
お姉ちゃんの身体でそんな目をするなよ!
お前は敵だ、お姉ちゃんを奪った敵なんだ!!
許さない、絶対に絶対に許さないっ・・・!!
それからの私は、ソフィアを敵視し続けていた。
旅を再開してから、私達と、ソフィアは距離を取って歩いていた、別に離れて歩けと言った覚えは無かったけど、無神経に近くにいられるよりはましだった。
戦い方は素人同然で、魔物を殺した時の表情なんか見れたものじゃなかった。
お姉ちゃんはそんな顔一度もしたことなかった。
こいつより、お姉ちゃんのほうがずっと、ずっーとすごいんだ。
次の日は山賊を退治しに行った。
その日のソフィアの様子は今思えば、尋常じゃない震え方だったと思う。
けど、その時の私はその様子を見て、お姉ちゃんを奪ったことに対する溜飲を下げていた。
それみろ、お前なんかにお姉ちゃんの代わりが務まるわけがないんだ。
そんなことを思いながら、冷たい目でソフィアを見ていた。
それから、一か月
私はソフィアと雪山で遭難していた。
街で受けた依頼を完了し、後は帰るだけになって、私達は帰り支度を始めていた。
その時近くには、周囲の警戒をしているソフィアがいて、カレン姉とルミ姉は少し離れたところで荷物をまとめていた。
山の天気は変わりやすい、さっきまではあんなに晴れていた空が、一瞬のうちに影を落とし、雪が降り始めた、雪の勢いはすぐに強くなり、1メートル先も見えないほどだった。
私はすぐに、探知魔法を展開しようとして、何かに突き飛ばされた。
身体が宙を舞った、
まずい
このままではまともに受け身もとれないまま地面に激突する
この吹雪の中、動けなくなるような怪我を負ってしまったら・・・
死ぬ?
いや!こんなところで死にたくない!
なんとか、なんとかしなくちゃ
そうはいっても、パニックになった頭では、冷静な判断が下せるはずもなく。
刻一刻と、地面が近づいてくる。
今から、魔法を展開しても、もう遅い・・・。
なまじ魔法を使うことにかけては、他の者より数段長けていたユリーカ。
だからこそ、今から何をやってももう間に合わないことを悟って、冷静になってしまった。
ぁあ、お姉ちゃん、私もそっちに行くね
死の覚悟を決めたユリーカは地面と激突する衝撃に目を瞑った。
しかし、ユリーカの覚悟していた衝撃は訪れず、代わりに柔らかい感触が身体を包み、グルグルと身体が転がっていく。私を包んでいた何かが、別の何かにぶつかる感触が伝わってきて、ようやく私の体に自由が戻ってきた。
閉じていた目を開けると、目の前には傷だらけのソフィアが横たわっていて、私の無事を確認すると、体を起こした。
「ま、にあった」
そのセリフで私はようやく理解した、ソフィアが私をかばってくれたのだと。
「・・っあり、がとう、助けてくれて」
「い、いよ。そ、れより、ここから移動、しよう。風をしのげる場所、探さないと」
ソフィアは、そう言って私の手を握ると、歩き出す。
「ちょっ、なん」
「手、握ってないと、この吹雪の中じゃすぐバラバラになる」
確かに視界は悪い、そしてソフィアの言っていることは正しい。
だから、不満は飲み込んだ。本当はお姉ちゃんを奪ったこいつの言う事なんか聞きたくないけど、助けてくれたし、言ってることも正しい。わざわざ噛みついて、口論している間にも体温は奪われていく、こいつと一緒に死ぬよりかましだと思って割り切ることにした。
それからまた、しばらく吹雪の中を歩く。私の炎魔法で作った、膜で身体を覆っているから、多少は寒さに耐えられているけど、そろそろ魔力も肉体も限界が近い。
どこか休める場所を見つけないと・・・。
ぐらり
視界がブレる、前を歩いていたソフィアが異変を感知して振り返るのがわかった。
私はそのまま膝をつき、意識を手放した。
目が覚めると、そこはソフィアの腕の中だった。
私が身を捩って離れようとしたのに気付いたのか、ソフィアが声を掛けてくる。
「だ、いじょうぶ?」
「うん・・・」
まだ身体が怠いけれど、今はとにかく、こいつから離れたかった、んだけど。
全然放してくれない。私が必死に抵抗していると、ソフィアが何かを手に持っていた。
「これ、食べて」
渡されたのは干し肉、携帯食として、用意していたもので、普段は小腹が空いたときによくカレンが食べているものだった。私はあんまり好きじゃないから持ち歩いていないけど。
ついでに、片腕を動かしたときに少しソフィアの体の先が見えて、どうやら、ここはどこかの洞穴らしく、外はまだ吹雪いていることがわかった。
私は、黙って干し肉を受け取ると、口の中に入れる。
やっぱりあんまり、好きじゃない。
何となく、身体を引っ付けている理由もわかったので、それ以上の抵抗はやめた。
ソフィアが、私の背中をさすって、頭を撫でてくる。
くすぐったくて、ちょっと気持ちいい。
そういえば、お姉ちゃんはこういうことあんまりしてくれなかったな・・・
気怠さが残っていた私の体は、その心地よさに再び眠りについた。
目が覚めた、身体の調子もよくなったと思う。
ソフィアは変わらず私の体をさすっていて、私の体は、温かかった。
しばらく、そのままじっとしていると、ソフィアの手が止まった。
顔を上げてみると、ソフィアは目を閉じて、眠っていた。
ずっと温めてくれてたんだ。
そのことに、何だか胸が熱くなって。
仕方ないからソフィアが眠っている間は私がソフィアの体を温めてあげよう。
そう思ってソフィアの背中に手を回して
「っ!」
そのあまりの冷たさに、伸ばした手を引っ込めてしまった。
もう一度、背中に手を伸ばす。
今度は、手の甲に刺すような痛みの冷たい風が吹いてきて、再び手を戻してしまった。
ソフィアの背の冷たさが、外から吹き付ける痛みを伴う寒風が、そしてそれらからユリーカを庇うように今もなお自分の事を抱きしめているソフィアのことが、ユリーカには理解できなかった。
なんで・・・
あんなに酷い態度をとっていたのに、どうして
ユリーカの中のよくわからない感情が暴れだす、
一体どれだけの時間ソフィアはこの風に背を当てていた?
何でこんなことをする?
自分の事だけを考えていればいいのに、なのに何で、こんなに冷たい身体になっても私を庇うの?
違う
そうじゃない
ユリーカはソフィアの息が浅くなっていることに気付いた。
このままではソフィアが死んでしまう
嫌だ
また、また私は、私のせいで、
ユリーカは、急いで炎魔法を使いソフィアを温めた。私を守るために冷え切った背中を必死で温めた。
魔法を使っていたからか、ソフィアが起きた。
「あ、っためてくれてたんだ、ありが、とう」
「な、んで。私、あなたに、ひどいこと」
「ユリーカさん」
この時謝れていたのなら、どんなによかっただろう。
「いい、んです、それで、私は、ソフィアさ、んの代わり、にはなれないから」
「だけど、がまん、して、ほしい。ソフィアさん、のためにも」
「お姉ちゃんのため・・・?」
「きっと、ソフィアさんは、自分で魔王を倒したかった。だけど、それはもう出来ない、から。せめて、魔王を倒す、まで、私が、ソフィアさんの中に、いることを許して、ほしい」
「・・・っ」
ソフィアはそれだけ言うと、目を閉じた。
私は、何も言えなかった。
次の日、吹雪は止み、カレンたちと合流した私たちは、ようやく下山することができた。
その日以来、私は、ソフィアに謝る機会を探していた。
そこでようやく気付いた、私達が一方的に作り出した溝は、私が想像していた以上に深くなっていて、私は初めてソフィアが私達にどれだけの気を使っていたのかを知った。
ソフィアは普段から私たちの視界に出来る限り入らないようにしていたこと、野営で晩御飯を食べる時も、ルミ姉からお椀を受け取ってからは一度も姿を見せずに、次の日には、しっかりと洗ってお椀が元の場所に置かれていること。戦いで私たちの足を引っ張らないように、毎朝私達が起きるより早くに訓練していたこと。
何一つ、私は知らなかった。そして、私は、彼女の事も何一つ知らなかった。
本当の名前も、年齢も、何が好きで何が嫌いなのか、元の世界に家族はいたのか。どうしてこちらの世界に来たのか。私は彼女の事を知ろうともしていなかった。
そして、ついにそれらを知ることも、謝ることも出来ないまま、魔王との戦いの時が来た。
両者一歩も譲らない激しい戦いは、私達の勝利で幕を閉じた。
そして、戦いの疲れで、一日野営を取ってから帰ることにした私達は、泥のように眠り
次の日、彼女が私達の前から姿を消したのだ