あの日、
雨の中、差し出された雨傘から逃げた、あの日
メダルを選んだ私を、憎んだ
真っ直ぐな邪眼を、羨んだ
私を見ていない君を、
そんな選択の果ての連関天則ならば
魔法魔王少女の力を取り戻して、
そんな選択ごと破壊してしまいたい。
でも、
私はもう、魔法魔王少女では無いから、
私は逃げた。
天使から、戦争から、雨から、雨傘から、
そして、勇者から。
思えば私はずっと逃げていたのだ。
あの日勇者の手を握っていたならと、ずっと考えていた。考えていたのに、行動にはまるで写せなかった。
結局、魔法魔王少女に、逃げた。
魔法魔王少女としてい続けることで、勇者との関係がずっと変わらないと思い込んでいたからだ。
連関天則も、結局は逃げているだけ。弱い自分、現実の自分から逃げ出すために考えた、それだけのもの。
傘を差し出した勇者から逃げたあの日から、私は勇者とほとんど口を聞かなくなった。私から勇者を避けていたし、勇者もどこかそれに安堵していた。
たぶん邪王真眼、六花ちゃんとの関係に邪魔な私が、私自身から離れてくれたから好都合だったのだろう。こんな考えをする人じゃないのは分かっているけど、でも多分、お互いに逃げた結果が今なんだろう。
そう、今。
今私は、ただの社会人として生きている。魔法魔王少女、ソフィアリングSP・サターン7世は、あの時戦争に負けて息絶えたのだ。
大学はわざと寮のある場所をえらんだ。あそこには、居られなかった。
たまに六花ちゃんと楽しそうに歩く勇者を見かけるのが、どうしても苦痛だった。
大学で寮に入るといよいよ、勇者との関係は無くなった。もちろん、六花ちゃんとの関係も含めて。
六花ちゃんの方とは、あの後、何度か連絡を取りあっていたりもした。魔法魔王少女を辞めたということは頑なに信じてくれなくて、何度戦争をしようともちかけられたか分からない。
でも、羨ましかった。勇者に選ばれて、勇者を選んで、なのに邪王真眼でいられる六花ちゃんが。
だから、私の方から六花ちゃんを避けた。その感情だけじゃなくて、ただ、厨二病に関する事に触れたくなかったのもある。
そのまま、何事もなく大学を卒業して、そこそこの企業に就職して、いま。
その間、どんな男とも付き合ったことは無い。カッコイイと思う人がいたりもした。でも、やっぱりだめだった。
逃げているだけの私に、新しい誰かが入り込む隙間なんて、無かった。
勇者からも、六花ちゃんからも、恋愛からも、魔法魔王少女からも逃げた私。
そんな私にケジメをつけるべく、私はタンスの奥から封印された思い出たちを運びだす。
ソフィアリング・SP・サターン7世のチャーミングポイントであるハートマークに、ステッキや衣装などを持って、アパートのゴミ捨て場に向かうのだ。
ついに、この思い出たちとお別れをする決心が着いた。
新しい自分になるためのスタート。
かなりの量あった。1人で全部持つには、少し重たいくらい。でも、何とか1度で全部もっていけそう。
大きなダンボールに全部詰める。ダンボールは閉められなかったから、上部は空いていて、そこに山になってグッズが重なっている。
それを落とさないように、ゆっくりと運ぶ。ついでに、目にも入らないように、目線は常に前を向く。
3階から、2階。2階から、1階。丁寧に運んでいく。1歩1歩の度に、思い出される昔の記憶。その全部が私の敵だ。
まさに、これこそ私に残された最後の戦争のようだった。
全部から逃げた私に残された、最後の魔法魔王少女としての役目。
1歩1歩、思い出す。
思い出すのは、勇者の姿
思い出すのは、勇者の声
思い出すのは、勇者の掌
思い出すのは、勇者の笑顔
全部全部が、心を傷つける。
心が折れそうになる。逃げたくなる。そんな感情を何とか、消し去る。
「.........ケルビム詠唱。」
小さくつぶやく。
「セラフィム.........降臨っ、!」
気合いが少しだけ入る。
昔よくやったように、妄想に任せて、自然と力が溢れる、気がする。
そして、最後。
「フィジカル・リンゲージっっ!!!」
心からの詠唱。あまりに久しぶりのそれに勢いを誤り、声が張る。
そのおかげで自然と力が漲るのが分かる。それに合わせて羞恥心も湧き出てくる。
でも、この分ならゴミ捨て場に無事辿り着けそうだ。そのはずだ。
だけど、たどり着けなかった。
なぜなら、
人生最悪のタイミングに、
「.........七宮、か?」
逃げた魔法魔王少女としての連関天則の果てで、私は勇者と再開を果たしてしまったからだ。
こんにちは!
初投稿です。
気が乗れば続き書きます。