モンスターハンター 古狩人の足跡   作:魚介(改)貧弱卿

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別章 4話 最終回

 先ほどまでの側撃だの衝撃だのとは違う、棘自体による直接攻撃が八雲に命中し、

その肉体の六割を消し飛ばした。

 

 ぐしゃり、そんな音と共に

先ほどまで思考を宿していた脳髄も

ほっそりとした美しい曲線を描く脚も、白魚のようと呼ばれるに相応しい指も、光を灯していた瞳も

濡れたように輝いていた射干玉の長髪も、柔らかな唇も、豊かなふくらみも全てを臓腑と掻き混ぜて

血に漬けられた醜悪な挽肉の塊へと変えて。

 

「我は問う」

 

 地面に叩きつけられ、反動で浮き上がるそれ

岩と砂、骨と芝土と蚯蚓の亡骸が混じった肉塊は

既に、確実な死を遂げていて

 

 

「我が妻に何をしている?」

 

それでもなお、黒い鱗が骸を受け止める

運動エネルギー全てを吸収して破壊された鱗は、しかしすぐさまに再生し

 

「我が妻に、何をしていると問うた!」

 

 その直後、爆発的に伸長してネルギガンテに喰らい付いた。

 

「貴様ッ!我ガ裁決ニ逆ラウカ!」

「答えろぉっ!」

 

 普段高速走行を見せないその蛇身が駆け畝り、ただ行き過ぎるだけで地を抉る厄災の王が滅尽龍へと咬み掛かった。

 

「グゥッ!」

 

 無双の剛力を誇るネルギガンテならばこそ対処もできようが、並の古龍ではスケール不足、ラオシャンロンですら全く見劣りするほどの巨大な顎が迫り、さすがのネルギガンテも怯む

これに噛まれてはまずい、そう判断し、高度を上げて飛翔する

もとより『あるべからざるもの』を滅ぼすためにこの地へと訪れたのだ

あまりに無駄な戦いなどしていられない!

 

「卑怯ト謗ルガイイ!

我ハ我ノ目的ヲ果タスッ!」

 

 高速移動による離脱を試みるネルギガンテの残した言葉はただそれだけ

しかし、それでは納得がいかない者がいた。

 

倪眼が閃く

 

 ダラ・アマデュラの古龍としての異能の一つ、星墜とし

人には凶星と呼ばれるそれを遥か天から投射する一撃

飛翔したネルギガンテへ向けての狙撃は見事に命中し、その体制を崩したその瞬間。

 

「うぉおおおおおおおっ!」

 

 大咆哮と共に極太の火炎放射が放たれる

ダラ・アマデュラ必殺の一撃蛇王龍の光炎(ドラゴンブレス)が放たれる!

 

体制を崩したネルギガンテは背後からの追撃に対応できず、物の見事に吹き飛ばされて落着

しかし、これでなお絶命しない

彼は命を滅ぼすための命であるが故に

その戦いの力に限りはない。

 

「喰らえぇえっ!」

 

 ふらつきながらも立ち上がったネルギガンテに向けて、容赦の欠片も無い追撃の火炎弾が発射され

二度目の爆炎を上げてその身を覆う

 

「ヌゥ……!」

「死ね!愚かな龍よ!」

 

なおも倒れないネルギガンテの姿に業を煮やしたダラ・アマデュラが全力での連続攻撃を開始した

 

 尾の叩きつけ、突進噛み付き、体重を生かした体当たり、空間転移としか思えない高速移動からの2連続ブレス

これら全てを耐え切ったネルギガンテは、その異常にようやく気づく。

 

「何故ダ……何故貴様ノ龍気ハ途切レナイ!」

 

 そう、通常ブレスとは連発の効かない必殺技、全身の力をかき集めて放つが故にある程度の撃ち分けならともかく、大技から連続でブレスを使って力が途切れないなどということはあり得ないはず、しかしダラ・アマデュラは連発してきたのだ。

 

「決まっている!」

 

 再び空間転移でネルギガンテの上を取ったダラ・アマデュラが火炎弾を発射して、叫ぶ

 

「貴様が我が逆鱗(はなよめ)に触れたからだッ!」

 

「誰があなたの花嫁ですか」

 

 形なき名刀で一刀両断にされた蛇王を踏みつけながらネルギガンテを睨みつける女

水篠八雲が呟く。

 

「バカナッ!?」

「生憎」

 

 空中の八雲の元へ、捨てられた刀が飛来する

本来ならば予め鉄蟲糸をつけておいて行う『武器を投げてからの回収』それを超絶的コントロール技術でやってのけたのだ。

 

「不死身ですので」

 

 足場(おっと)が落下する速度を乗せて、自身の腕の振りと弧を描く刀の先端の位置差から生じる遠心力と運動エネルギーを破壊力へと転換し

再生を行う龍へ、生命の極点が一撃を放つ

物質化した気迫が黒く染まり、白鉄色の刀身が紅色から黒へと移ろうグラデーションを映し出す。

 

「さらば」

 

 滅尽龍 ネルギガンテ

        討滅

 

 

「あぁ……もう」

 

 ズタズタにされてしまった白絹の衣は修復は可能でも長い時間が必要になるであろうことは明白で、血肉が染みて砂埃が固着したことで酷い色になってしまっている

破られてしまった部位も多く、特に左肩から腰までにかけてはほぼ全損、衣服としての意味があるかは非常に際どいと言わざるを得ない

歴戦のハンターであるのならたとえ全裸でも戦闘自体に問題はないが、

だからといって女が肌を晒しながら戦うなどといっても迷惑になる。

 

「……はぁ……」

 

 八雲とて人、たとえ寿命や未来を投げ捨てる事を強いられても人としての感性までは捨てられない

誰だって、そう、肌を見られるのは恥ずかしいのだ。

 

「ここは、引くべきでしょう」

 

「グルゥウウ……」

「あなたも、もう戦える状態ではないのですから、大人しくしてください」

 

 覚えのある気配を探りながら、不満げな声を上げるマガイマガドをひと睨みで追い返した八雲は大人しく手ぶらで帰ることにするのだった。




結局再会ならず……っ!
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