モンスターハンター 古狩人の足跡   作:魚介(改)貧弱卿

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60年後 継節 究極

 爆炎と焼けた爪に深々と斬り付けられ、超振動によって身につけるナルガSもゴミ同然のスクラップへと変えられて、何かが砕ける音がした。

 

「……が……ぐ……」

 

 切り裂かれた傷口から血が吹き出し

力の根源が、命が失われていく

荒々しい鉤爪を研ぎ澄まし、まさしく剣へと研ぎ上げての一撃、それは単なるティガレックスのものではなく、原初の竜王へと回帰した希少個体のみが有する特殊な異能、爆発の能力すらも発揮して

荒凉たる焦土と化した草原に竜王の爪痕を深く刻み込み

その直後に、雷がその爪を撃った。

 


 

 イブシマキヒコの能力は風、受け継がれた力は高速移動と竜巻

ナルハタタヒメの能力は雷、受け継がれた力は雷撃と、再生能力

 

「ご……ぁぁ……」

 

 傷付き、止め処なく命を流す状態のまま、天に手を伸ばす。

 

 そして雷がその胸に直撃し()()()()()()()()

 

 突如発生した雷に神経を打たれて痙攣するティガレックスとは逆に

男は急速に身体を再生成していた。

 

 砕けた武器は遙かかつての戦友、アダルバード・ユベルブが握り、手ずから鍛えた片手剣『マスターオデッセイ』

その武器言葉は『生還の決意』

どんな長い旅からも、どんな危険な敵からも、生きて再び故郷へと帰る鋼の意志

かけがえのない朋友の託した武器が、窮地に命を繋いだ。

 

 引退の折に彼の戦友たちに分配された武器や道具、その内の一つであるその片手剣の性能は生存特化、生き延びて勝利するための剣

しかしそれは永く昔に渡された武器種の違う武器であり、役目を終えた護刀(アミュレット)

手入れを欠かさず、常に肌身離さずにいたからこそ、友情篤き二人だからこそ、その刃は砕かれども命を守り抜いたのだった。

 

「…………!」

 

 雷が注ぎ込まれ、友に救われた心臓が鼓動する

龍の心臓は死してなお動く、ならばたとえ致命なれど、今動かぬ道理はない

龍の角が2本へと分かれ、それぞれが水蒼色と赤紫へと変色し、紫電と蒼風を巻き起こす

同時に地脈から膨大なエネルギーを吸い上げ、巨大な結晶が形成され、砕けた。

 

「……はぁっ!」

 

 痩せ衰え、骨と皮ばかりが残った細腕は筋骨隆々とし、歪みなく力を受け止める

抉られ失った左目は赤く燃える宝玉へと入れ替わり、傷つき萎えた足は真っ直ぐに伸びて、血に濡れた焦土を踏み締める

その肉体は膨大な力に満ちて、その双眸は明瞭な意志に輝いていた。

 

「ふっ!」

 

 空に斬り飛ばされていたティガレックスの腕を風が吹き飛ばし、男の……いや、青年の元へと運び、青年はそれを掴み取って己の左肩へと宛てがう。

 その瞬間、腕は収縮して青年本来のそれより二回り大きい程度のサイズに収まり

同時に金色の龍麟も消失して黄蘗色に水色の紋様を描いたティガレックス本来の肌色へと戻った

そしてそれだけでなく、2体の半龍の血が吹き散らされた炭の大地からそれらが舞い上がり、砕けた龍結晶の粉雪と混ざり合って肉体を覆い、黒紫の外骨格を形成した。

 

「天龍装束、風羽」

 

 白紫に輝く結晶の装甲は煌びやかに青年を鎧い、嵐を形にしたような旗巻く羽衣が青年を飾る、これぞ真なる龍へと至った証『龍装束』己の鱗鎧の顕現である。

 

 纏った鎧は青年にさらなる力を供給し、双角は輝く。

 

 稲妻を発生させた青年は、天からさらなる電力を引き出し、輝く雷の螺旋を作り出し、

空中に描いた電撃の螺旋が磁界を形成して鋼の刀を引き寄せ、青年の元へと引き出した。

 

ようやくティガレックスが雷撃の痺れから回復したその時には既に体制を完全に整えて、刀を構えた青年が目の前に立っているのを見て、半龍は逃走を選択した

そう、不屈の証たる金冠を戴きし轟竜王に逃走を選択させたのだ

しかし青年はそれすらも許さず、逃げるティガレックスを追いながら可能な限りに斬り付ける

 

 ティガレックスは斬撃を浴びながらも焼土を駆け抜け、必死に走り続けながら狂竜ウイルスによって強化された運動能力と得意とする突撃速度を維持し、爆発による反撃を繰り返す

表面装甲を爆破することでダメージを減衰しつつ至近距離の敵に対して反撃を行うリアクティブアーマーが炸裂を続け、青年の鎧を少しずつ傷つけていく。

 

 しかし、それはあくまで爆発の余波に過ぎず大きなダメージにはならないと判断したのか、ティガレックスはコースを変更、岩山へと駆け上り、直後に跳躍落下、反転して体を横転させながらも洞窟へと駆け込んだ。

 

「まずい……!」

 

 青年も風を吹き払って洞窟へと潜るが、やはり狭い地下の地形では戦いがたい

逆にティガレックスは多少の起伏などなんのそのとばかりに走り抜けることが出来る

それだけでなく、闇に身を潜める奇襲や周囲のモンスターを狂竜化暴走させて集団で攻撃してくる可能性もある、有利な草原から一転して洞窟に入られ、警戒しながらもそれを追う青年は

その直後にネルスキュラの奇襲を受けた。

 

「ギュシギィィ!」

「せいっ!」

 

 しかし、雷に弱いネルスキュラの糸を反撃の電流が伝い、その体内に電撃が逆流

ひっくり返って昏倒したネルスキュラへ、青年はさらに高圧電流を流し込み、焼き焦げる程に通電させて即死させた。

 

「……ぬぅん!」

 

 青年は龍種特有の見た目に合わないパワーを発揮して鋼よりもはるかに靭い糸を引きちぎり、続いて紫のオーラを漂わせて飛来したフルフルの首を切断、風の力を解放した太刀の一撃、刀身より滲み出した龍気と己の風圧を練り合わせた遠隔斬撃、太刀風が奔り、その長大な全身を一刀にて両断した。

 

「いかん、逃げられる……」

 

 今倒したネルスキュラとフルフルは共に下位ハンターが相手にするような弱個体

逆説的にここは上位層があまり居ない場所である、という事は街や村と言った人の生活圏に近い場所ということで、ここでティガレックスを見失えば近くにある街への接近・侵入を許してしまう可能性が高いと言うことでもある。

 

「……まずは」

 

 闇の中へと太刀を構える青年の前に、無数の狂竜化モンスターたちが姿を現した。

 

「百竜夜行を討たねばならんか」

 

 烟る紫の粒子と立ち昇る気迫、生命の全てを賭した力の限りの暴走を始めた獣たちが迫り来る。

 

「……散れ」

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