「グゥゥウウッ……!」
「我ら霞、我ら霧、我が実体、捉えるに能わず……」
ヴァルハザクと絆を結び、瘴気の谷で生きる術を得た少女、ダラ・アマデュラに愛され年齢を止められた女、バルファルクと絆を結んで飛翔する少年、マム・タロトと契約を結んだ王が触れるもの全てを黄金へと変えたという逸話は何処にいても聞くことがある
そしてそのなかに、霞龍オオナズチと絆を結んだ剣士がいた、というだけの事。
友の目覚めを受けて、それは姿を顕した
友の想いに報いる為に
この難敵の足を止める、その為に。
「ギガァァアアアッ!」
既に弱った個体であろうと希少種の能力を発動させた異端の個体
それも極限化の能力持ち、今は解除されていようといつ再び活性化するか分かったものではない
ひとつ間違えばこの身も危ういという強敵である、だが。
「友が人の在り方すら捨てて戦うことを選んだのならば、我はそれに応えよう
友無きこの場、この道は進ませぬ!」
いかに不滅の古龍と言えど、敵も古龍ならば死ぬことはある、しかしそれでも
この身、この命、友の願いに捧げんと叫ぶ
霞は視界の全てを覆った。
「ゲリョスが1羽、ゲリョスが2羽……」
積み上がる遺体を数えながら、アカシは戦い続ける、ただしアナログ式に
龍の能力を一切封印し、技術のみで戦っていた。
左手と左目を補った為に磨きがかかった動きはまるで精密機械のように襲い掛かるモンスターたちを物言わぬ骸へと変えていく。
「……ゲリョス3羽、フルフル2匹、ネルスキュラ3体、ブルファンゴ1頭、ランゴスタ11匹、ジャギイ7頭、ドスジャギイ1頭、ケルビ2頭、テツカブラ1匹」
敵を数え終えて、その時にちょうど
これより行うは理不尽の具現
楽土を焦土へと変える破壊の御業
龍結晶と古龍の血で作られた天龍装束、それに貯蔵された膨大な量の龍属性エネルギーを元手にして、己の心臓から溢れる雷のエネルギーを増幅、さらに龍属性の風エネルギーと雷属性の電気エネルギーを体内で相互増幅させ
角から溢れさせて無造作に解放する
体内の力全てを使い尽くすほどの全力でのエネルギー解放、ドラゴンブレスとは少し違うそれにより、山岳全てを電光に満たすほどの力で周囲全てを焼き尽くす。
その姿はまさに
怒れる雷神が下した裁きの鉄槌である。
「……はぁ……はぁ〜……」
本家のそれはエネルギー解放の余波に過ぎず、制御しきれない余分のエネルギーが溢れたというだけの事、しかしアカシはアルバトリオンほどの力を持っているわけでもなく、エレメント全てを極めた属性使いでもない
身に宿した2種の龍の力を使ってそれを暴走させた、言ってしまえばそれだけであり、本家アルバトリオンにはまるで及ばない
故に。
「ギジィッ!」
絶縁に優れる表皮を纏ったネルスキュラとその素材たるゲリョスなど、電気に耐性を持ったモンスター、そしてその影に隠れた幸運なモンスターのうち数体は生き延び
先のエネルギー解放によって大きなエネルギー減衰を起こしたアカシへと押し寄せた。
「目立たせてくれて助かった」
掠れてしゃがれた声、その主人がアカシの前に立ち、盾でフルフルの電撃ブレスを受け流す。
「おぉ知らぬうちに若くなりおって
なんじゃその頭の飾り、卵の殻でも載せておるのかヒヨッコめ」
「自慢の視力は随分と衰えたようだな
この龍の双角すら目に入らんとは、よほどに耄碌したと見える」
「抜かせガキンチョ、わしはいつでも今が全盛期じゃ」
「なら引退は取り消しでいいな?」
盾でゲリョスを受け止め、そのまま滑らせて転倒させ、盾板の上で曲芸の如く回転させて放り捨てる
投げ飛ばされたゲリョスはご自慢の羽をバタつかせるより早くランゴスタに激突してそれを砕きながら落下した。
「わしはもう歳じゃもの、新しい時代を作るのは老人ではない、子供達じゃ」
それは伝説、誰しもが知る輝ける人
ユベルブ公国最強の公王にして霊峰の守り人
人呼んで『雷公』アダルバート・ユベルブ。
「さて、数が多いなカイト……いや、大したことはないか」
生き残った上位フルフル、さらに光を見てか飛び込んできたリオレイア亜種、地面に潜ってやり過ごしたらしいテツカブラ、大型モンスターばかりの戦場で、老人は笑う。
「今宵はわしとお前でダブルクロスだからな」
紫電と蒼雷が交錯する
二条の雷跡が闇を切り裂いた。