「立て」
「無論」
老爺の手を借りるまでもなく立ち上がり、刀を鞘に戻す
同時に腰の鞘を握りしめて。
「桜花気刃斬……」
駆け抜けると同時に抜刀、居合斬りの形でフルフルを斬り付け、そのまま尾まで通り過ぎる
「……散華」
刀を鞘に戻したと同時に紫の斬撃痕が走り、フルフルの全身を切り刻んだ
その光条、数えて百八条。
「グギィァァ!?!」
「ぬぅうん!」
悲鳴を上げて血飛沫を撒き散らすフルフルへ向けて、蒼雷が放たれる
それは『幻獣』麒麟の雷、洞窟の中にすら届く蒼い雷撃が地面に落ち、その雷跡を踏み締めて空を跳ぶ影が奔る。
片手剣の技の一つ『昇竜撃』による突進突き上げが入り、その盾がフルフルの顔面に直撃、顔面を潰されたフルフルは無残に歯を折られてさらに血を吹き出す
しかし、そこで終わるほど甘くはない
片手剣の本領は隙のない連撃と堅固な防御の両立にある、そして習熟を要するそれを完璧に行うことができるのが
片手に握られたハイニンジャソードが唸りを上げてフルフルの首を切り刻む
独特な回転と共に振り払われる連撃の名はブレイドダンス
その連続攻撃、一撃一撃全てが会心の直撃!
その攻撃力の前に屈したフルフルが倒れ伏すが、それを乗り越えるように襲いかかったリオレイアが尾を叩きつけるサマーソルトを仕掛ける
攻撃直後を狙われればいかに隙の少ない片手武器であろうと防御はできない
しかし、それをカバーするのが仲間の存在。
「閃光玉!」
リオレイアの鼻先に投げられた閃光玉が炸裂し、サマーソルト準備を終えて回転を始める寸前のリオレイアを叩き落とす
そして攻撃の間隔が短い片手剣は、それだけの時間があれば溜め技の準備を完了させる。
「喰らえぇぇっ!」
飛び上がりながらの回転攻撃が首へ吸い込まれ、そのまま連続攻撃へと入る
リオレイアはのたうちまわりながらも反撃を狙うが、やはり尻尾の盲撃ちなど恐るるに足らずとばかりに怒涛の攻撃が続き
最後に逆手突き刺しの一撃が心臓の鼓動を止めた
この間、わずか20秒
そして。
「ぐっ!?」
突如テツカブラの突撃を受け、弾き飛ばされて壁に激突する、その寸前でゲリョスの死体に衝突し、それを緩衝剤にする事でダメージを受け流した。
「ええい老いたか……!」
「全盛期だと言うのは虚勢か?え?」
「抜かせッ!」
ゲリョスの死体を投げつけた姿勢のままアカシが嗤うと同時にテツカブラの腹を斬りつけ、そのまま刺して刀の棟に手を滑らせる
「はぁっ!」
テツカブラがいかに強靭な表皮を持とうと、その体内までには防御力は及ばない
そして腹に刺さった刀は
「「cross thunder!」」
瞬時に同じ結論に至ったアダルバートがキリンの蒼雷を蹴って加速し
オーバーヘッドキックを刀の柄に叩き込み
紫電と蒼雷が混じり合う
自然の体現者たる古龍の力による人工的な自然現象という理不尽に、テツカブラは屈した。
血と臓物を撒き散らしながら爆発したテツカブラはそのまま前のめりに倒れ
その音を最後に洞窟には静寂が戻ったのであった。
「俺は行かねばならん、これを引き起こしたティガレックスが街に、ドンドルマに到達する前に奴を狩らねばならんのだ」
「……そうか、その為に人を捨てたか」
あくまで静かに、アダルバートは問う
しかし既に龍への階を登り終え、完全に覚醒しているアカシには既に帰るべき場所などない。
「かまわん、どうせ人としての未来などないのだ、龍に成り果てようと悔いはない」
「レマが泣くぞ、その言葉」
「黙れ、貴様こそ何度妻を泣かせた」
既にいない妻など省みるに値しない、アカシは言外にそう告げて、羽衣を広げた。
「付いてくるのなら勝手にしろ」
「ぬぅぁ……!」
「ガルルルゥ!!」
全身を斬り付けられ、牙を折られ、片腕を失い血反吐を吐きながら
そんなことを考えながら、爆発に抉られた腹をぼんやりと見つめる。
向こうにも手傷は多いが、こちらも戦闘続行は困難、これ以上戦い続ければ
肉体の修復すら後回しにしての全力解放
「グルゥゥウ……クォオオオッ!!」
高分子ミスト状のブレスが一直線に放たれ、ドリルのように円錐状の尖端を回転、ティガレックスの横腹を撃ち抜いた
しかしそれだけでは終わらない
倒れるティガレックスに向けて突進したオオナズチは鼻先の一本角を槍のように使って体当たり、串刺しにする!
「ガァァァアアッ!」
ティガレックスの絶叫と同時に勝利を確信して離れたオオナズチ
しかし、その絶叫はただの悲鳴ではなく反撃の咆哮、爆音に反応した鱗と表皮が爆発していく
オオナズチの角に付着したそれも含めて。
「クルゥァアアアッ!!」
角を爆破されて悲鳴を上げるオオナズチと、血を撒き散らしながらも立ち上がったティガレックス、そしてティガレックスの顎による攻撃が叩きつけられ
そのまま腹の肉を喰いちぎられる。
このままでは足止めにもならない
そう判断したオオナズチは再び領域を展開するが、角の損傷により完全な透明化は出来ず
そのまま距離を取るに留まる
しかしティガレックスもその程度の幻惑に掛かるほど愚かではない
即座に突進を開始して距離を取ったオオナズチに迫り、さらに逃げるオオナズチを追いかける。
「グウォォォォォォオ!」
ティガレックスの牙が迫り、オオナズチは反撃の手段を持たない
かに思われた。
「ガァァッ!」
ティガレックスの顔面に、高速で伸縮するオオナズチの舌が突き刺さり
その目を撃ち抜いた!
「ギガィイィイィア!!」
現状の自分にはティガレックスを仕留める力はないと判断し、目を貫かれて悶えるティガレックスを尻目に撤退するオオナズチ
霧が晴れた後、ようやく立ち上がったティガレックスは、もはやどちらにあるのかも把握できない街へと向かって、傷の痛みを止める為に歩き出した。