「ティガレックスゥウウッ!!」
凄まじく強靭な肉体、比類なき剛力、これほどに攻撃を受けながらなお突き進む精神
そのどれもが僕を遥かに凌駕している
しかし僕も負けるわけには行かない。
減気や毒といった毒薬を封入した弾を使っての行動阻害を試みるが、やはりまともに効果が現れた様子はない
切り札のレベル3弾も全て使い切ってしまった。
故に、今の行いは狂った狼の咆哮
あるいは負け犬の遠吠え。
「にゃにゃにゃにゃにゃぁ!」
突如として爆弾コマが後方から飛来、そのままティガレックスに直撃して爆発する。
「なっ!?」
「エリック!ひどいにゃん!
黙ってクエストに出るにゃんて!」
「そんな事を言っている場合か!こいつはヤバい!僕が勝てる敵じゃない
君は早く街の人と一緒に逃げるんだ!」
噴煙と共に姿を現し、そのまま体当たりするようにジャンプ斬りを叩き込むアイルー
エリックの雇ったオトモ『ジム』の声が響く。
「エリック!いつからキミはそんな軟弱者ににゃったにゃ!?
勝てない敵にゃんていにゃいにゃ!
エリックは華麗で!最強で!」
取り出した巨大な爆弾を掲げてティガレックスに特攻するジム
その爆発と共に、叫びが届いた。
「わたしのヒーローにゃんだからァァァァッ!」
「ジムぅっ!!」
ティガレックスの尾による反撃がジムに直撃し、軽いアイルーはその衝撃に抗えずにそのまま吹き飛ばされてしまう。
「ジムッ!無事かっ!?」
「……エリ……ク……!」
爆破直後の反撃は急所に受けてしまったのか、オトモ用ジンオウガ防具の防御力を貫通して重傷を負ったジム、しかしその目には曇りはない。
「まだ、動けるにゃ……
軟弱者は……見てるだけで良い!」
防具の破片が毛皮を貫き、白い毛皮を赤く濡らしながら、それでもジムは立ち上がった
そして走る、ティガレックスの正面へ。
「わたしはジム!オウガのオトモアイルー、
今度は爆弾ではない、小さな両手で握るのは身の丈相応の長剣
風を薙ぎ、空を斬り、その剣は加速し
投擲される
オトモアイルー伝統の剣術の一つ、手にした刀剣を投擲する技、メガブーメランだ。
「これがわたしだぁァァァァッ!」
手を離した武器に目もくれず、ポーチから爆弾を取り出してティガレックスに突き刺す
そしてその龍撃弾に帰ってきたブーメランが直撃、ブーメランもろともに爆発してティガレックスの腹の傷を大きく抉る
はずだった。
「グゥルァァア!」
爆発によるのけぞりや怯みなど無かったかのように、攻撃を受けてから反撃するティガレックス、ブーメランにして武器を投げてしまったために防ぐこともできず、再びの反撃の軌道を回避できないジム。
「にゃぁぁぁ!」
打ち上げられ、さらに追撃を受ける
その時、僕は猛烈に手を動かした。
バガガガガガッ!
耳をつんざく爆音を放ちながら、機関竜弾による連射攻撃を撃ち掛ける
たとえまともなダメージにならないとしても、衝撃を相殺するくらいにはして見せる
薄れた気迫を再び込め直した裂帛の連射攻撃は、逸れることなくティガレックスの顔面に直撃して、直前のダメージとも相まって、ティガレックスをよろめかせる事に成功する。
「あぁ、すまないジム、少し遅れた
華麗なるハンター
エリック・デア・フォーゲルヴァイデ、ただいま参上したよ」
サングラスを輝かせ、髪を掻き上げる
クエスト開始前に行ういつものマインドセット、日課と化したそれすら忘れていた仕草。
「エリック……!」
「さぁいくよジム、君も僕のように
華麗に戦ってくれたまえ!」
ボウガンを再装填、弾は残り少ない
だが調合素材はいくらか残っている
レベル1通常弾など撃ち出すのは弾ではなく小石、いくらでも撃つことが出来る
気合は十分、薬も事足りている、そのうえこちらには勇敢なオトモまで居るのだ
この勝負、勝ちはあっても負けはない!
「にゃぁぁっ!」
失った武器に代わって爪を伸ばしたジムが目を赤く輝かせる
狩猟笛と同じその音色は自らを強化する大咆哮、強化咆哮の術だ
全身から赤黒いオーラを展開したジムは未だにのそのそと歩いているティガレックスに突撃して、その赤く光る体に爪を喰い込ませる
そしてエリックもまた、ジムの突撃を見守りながら素早く手元で調合
滅龍弾を作成して込める。
「2.1!」「ファイア!」
ジムの突撃が終わり、撤退すると同時に顔面に集中するように撃ち込み
その頭蓋を打ち破って脳を貫かんとする。
「ガァァァアアッ!」
「うぉぉおおおおおおっ!」
咆哮の瞬間、閃光玉による撹乱を試みるもやはり効果はなし、身を竦ませる威嚇の音声を真っ向から受けながらも鋼鉄の意志でそれを克服し、急速に接近したエリックは肩からタックル、そのまま至近距離で滅龍弾を連射する。
「喰らえよ」
倒れたティガレックスの喉に銃身を突っ込み、その体内に向けて拡散弾を発砲
表皮を破らずとも体内に直接攻撃すれば肉をズタズタに引き裂くことが可能な筈だ。
一発受けるたびにビクンビクンと痙攣するティガレックス、どう見ても致命傷だ
これほどまでに傷を受ければもう1分と生きていられないだろう
と思われる傷を幾度も受けて、なお立っている事実を除けば。
狂竜ウイルスの散布
泡を吹く口元から体液に乗ったウイルスが飛沫となって飛び散り、それを危険な未知の攻撃と判断したエリックはとっさに下がる
そして、それに乗じてティガレックスは仕切り直しとばかりに立ち上がった。
「……くっ……!」
一旦下がったついでに弾を追加するべくポーチへと目を落として、既にそこに素材が残っていないことを思い出す
今度こそ万策尽きてしまったエリック
しかし彼は諦めない
後ろにいるオトモは自分のことを
"ヒーロー''と呼んでくれたのだから。
「エリック!上にゃっ!」
「え!?うわぁぁっ!」