わたしは生まれた時から毛皮が白かった
わたしは生まれた時から他より少し、物覚えが良かった
少し力が強かった、少し足が早かった。
それはほんの少しの違い
積もり積もったわずかな違い
たったそれだけでわたしは、悪魔と呼ばれて忌み嫌われた。
もし、本当に、
この世に悪魔がいるのなら、それはきっと
このように、群衆の姿をしているだろう。
わたしは群れを追われて、野生で生きることになって、そして戦い続けた
食ってきた、奪ってきた。
わたしが自分の名前すら見失って、毛皮は返り血で染まった時ごろに
わたしは光に出会った。
「僕はエリック、エリック・デア・フォーゲルヴァイデ、君の名前は?」
「…………」
「あぁおい、どこへいくんだい!?」
わたしにはあまりにも眩しくて、思わず逃げ出してしまったけれど
彼はわたしを追いかけて、抱き上げてくれた。
「君、聞いていたかな?僕は」「エリ……ク」
その頃のわたしは言語をほとんど忘れてしまっていて、返事をすることもできなかったけれど、聞いたことばをそのまま返して
わたしは爪を振り上げた
殺すために、奪うために、いつものように。
「……」
「わかった、君は……一人だったんだね」
そしてそのまま、エリックに抱きしめられた。
「今までずっと一人で、ずっと戦ってきたのだね」
「もう、大丈夫だ、安心しなさい
ここには君と、僕がいる」
そして黒くなったわたしは
ようやく帰るべき場所を見つけた。
わたしはエリックに連れられて街へと行き、そこでもやっぱり嫌われた
毛皮は煙と血に塗れた真っ黒で、いつも牙と爪を剥き出しにしたアイルー
そんなものが好かれるわけがない
けれどエリックは違った
わたしを温泉に引っ張り込んで、優しく洗ってくれた。
「ほら、綺麗になったよ
真っ白に、ね」
わたしはそこでようやく自分が白かったことを思い出して、当時のわたしはその姿に酷く混乱した
にゃーにゃーと鳴いていたことは覚えている。
白くなったわたしは、街の人に愛された
ことばを教えてもらった
赤いりんごをもらった、大きなジャーキーを分けてもらった、沢山のことばを貰って、沢山の心をもらった
エリックが、わたしを一人じゃなくしてくれた、わたしを満たしてくれた。
「やはり君はオトモになるのかい?」
「はいにゃ、わたしはギルドに行くにゃ」
エリックはハンターで、わたしはアイルー
そしてその頃に知った、オトモアイルーという知識、そこから導き出したわたしの答えは
彼のオトモになって、一緒に過ごすこと。
「わたしはオトモになるにゃ、だからもし、エリックがオトモを雇えるくらいになったら
わたしを雇って欲しいにゃ」
「あぁ、もちろんだよ、約束する」
「にゃ」
こうしてわたしはオトモになった
物覚えが良かったわたしはオトモとしての技能を習得するのにさほど時間は要らず
エリックがHRを3に上げるよりはやくオトモとして就職することになって
そこでわたしは、私自身の名前を作った
忘れてしまった本当の名前ではない
エリックのオトモアイルーとしての名前を。
作った名はジムシン
伝承にある、強すぎる己の力で世界を壊さないために眠り続ける破壊の怪物
わたしはエリックに、この名の由来を話したことはない
エリックの前では、わたしはただの
充実した日々、楽しい狩り
その日その日で巡りゆく時
結局わたしの生活は変わらなくて
ただエリックと、街の人たちが増えただけ
それはとても心地良くて
そんな日々が、大好きだった。
わたしがもし本当に、悪魔だったのなら
この日この時に時間をとめて、キミを助けられるのに。
もし本当に、どこかに悪魔がいるのなら
わたしの命を差し出してでも、どうかわたしにできないことをして、エリックを助けてください
そのためなら、わたしはなんだってしますから。
エリックは私の、一番大切なひとだから。
「エリック!上にゃっ!」