進化した2号機。
その名をエヴァンゲリオントリニティ、イプシロンエヴァをベースとしたエヴァを強化するためのZアーマーの終着地点にしてエヴァパイロットたちの絆の産物。
そしてトリニティになったことで手にしていた刀も様相を変える。
トリニティブレイド、鍔の部分に大型の三色の三角形と矢印のついたトリガーのついた刀だ。
刃は分厚く、業物というよりも特殊能力を充分に発揮するための武器となっている。
アスカは早速紅い三角に向けてトリガーを引く。
クリムゾン・セカンド!
音が鳴り響き、その場で居合抜きをするアスカ。
斬撃は真紅の光の斬撃となり一体の量産型をコアごと両断し、その余波で周囲の量産型を燃やしていく。
コアを両断されたエヴァは他の使徒と同様に形状崩壊を起こす。
他のエヴァは燃え上がる炎の中、その肉を焼けただらせながらも這い出てくる。
その傷は時間はかかるものの塞がりつつある。
「ちっ、なら手数で勝負よ!
力を貸しなさい、レイ!」
続けて山吹色の三角に矢印を合わせトリガー引く。
サンライトイエロー・ファースト!
ブレイドを天に掲げエネルギーを放つ。
天から山吹色の光剣が降り注ぐ。
既に体が欠損して這いずり回っていた二体のコアが撃ち抜かれ崩壊し、そのほかのエヴァも体をくり抜かれていく。
「すごいですねアスカ。
もはやウルトラマンZとやってること変わりませんよ。」
司令部でマヤが思わず呟く。
フィールドエネルギーの運用、動き、もはや通常の人の域を超えつつある。
しかしリツコは顔を顰める。
「そうね、シンクロ率を無視してこれだけの動きができるのは好ましいことだわ。
ただ、人間離れしているのは確かよ。
これほどの能力、後で悪影響がなければ良いのだけど。
それに…」
リツコは言葉を濁す。
それを見てゲンドウは
「冬月先生、私も備えます。
あとはお願いします。」
「碇、何を…?」
冬月の問いかけに答えぬまま、ゲンドウは司令部を抜け出す。
逃げ出したのではない。
自らの鼓動が導く、悪夢の予感を覆すために。
アスカは目の前の残り五機を仕留めるために、ブレイドの三角形を紫色に合わせトリガーを引く。
ヴァイオレット・サード!
刀身に紫電の光が瞬く。
量産型が諸刃の剣で受け止めるが、それすら両断してしまう切れ味がこの力の特徴だ。
そのまま両腕ごと切り落とし、帰す刀で股からコアごと切り上げる。
残り四体。
そこでコンソールがけたたましいアラームを鳴らす。
まだ一分も経っていないはずだ。
しかしモニターには予想だにしない数字が、残り20秒の表示が出ていた。
「嘘でしょ!
あと3分は残っているはず…まさか、トリニティってこれまで以上にエネルギー食うの⁈」
ならば、奥の手を使うしかない!
全ての三角形が稼働し、一枚に重なったところでトリガーを引く。
トリニティライズ!
三色のエネルギーがブレイドの刀身で渦巻く。
エヴァ・トリニティの切り札、理論値的には使徒すらチリも残さず崩壊させる斬撃が放たれる。
「消、え、う、せ、ろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
突き出した刀身から溢れ出すエネルギーがフィールドを張る量産型の一機を捉える。
フィールドを意にも介さず、そのコアを飲み込む。
まずは一機。
その真後ろにいた機体はフィールドだけではなく剣を回転させふせごうとする。
流石はS2機関内蔵型の機体、余波で削れる肉体すら超速再生する。
だが、それすらこの技の前には5秒ともたなかった。
二機目を飲み込み、三機目の剣を折った時だった。
エネルギーの斬撃が霧散した。
「嘘!
エネルギー切れ、こんなところでなんて…」
Zアーマーが霧散し、膝をつく2号機。
残る量産型は二機。
エネルギーの余波で僅かとはいえ行動に支障をきたす程度にはダメージを受けた量産型は行動可能になるのに18秒を要した。
パイロットであるリリン・インフィニティの思念が伝わる。
『下等な劣等種が!
進化した我らに牙を剥くなど!』
傲慢。
人類は知らないが、パイロットとして選ばれたリリン・インフィニティはその中でもさらに進化した上位種にして補完後の世界を牽引すべく選ばれた10体の個体、10星と言われる存在だった。
その中の最上位種を除く存在がパイロットとして選ばれていた。
新世界の福音となるべく。
そしてそれぞれの名は太陽系の各惑星からとられている。
残る2体の名はウラヌスのウルン、ネプチューンのネプタ。
汚された上位者の名をとりもどすべく、汚名を着せた目の前の下品な赤き巨人をどう汚すか、どう殺すかあらゆる想像力を掻き立てる。
ただでは殺さぬ、生を受けたことを憎むようにしてくれる。
蹴り倒し仰向けになった2号機の四肢を末端から切り刻むため、諸刃の剣を突き立てようとした瞬間、2号機の手の上にATフィールドが発生する。
ありえぬ、本来の姿ではないがロンギヌスの模造品だぞ⁈
エネルギーの切れた2号機には本来防げるはずがない。
フィールドの中心、そこにはあり得ない人物が立っていた。
「リリン・インフィニティ、私の義娘になにをしようとしている?」
機体越しでも感じるほどの強烈な殺気を放つネルフ司令、碇ゲンドウの姿がそこにはあった。
そして懐から見たことのない形状をした黒い銃を取り出す。
『碇ゲンドウ…
ゼーレからの最後通告だ、我らと共に補完計画を完遂せよ。』
量産型から響く無機質な声。
最後通告か、笑わせる。
「無意味なことだ。
シンジの出る幕などない。
貴様らに最後の審判を下すのはこの私だ。」
ゲンドウはポケットから一つのキーを取り出し起動する。
エヴァ・ラストナンバー!
「目覚めろ、絶望の執行者。」
そして先ほどの銃、カヲルのスパークレンスを改良した黒い携帯型エヴァスパークレンスにキーを差し込む。
コードアップ!ザ・ジャッジメント!
そこに現れたのは姿形はほぼ初号機ではあるが、その装甲はどこか近未来的な姿を思われるものだった。
『13号機。
この世界にあってはならぬ禁忌の存在。
しかし、ここまでねじれたシナリオだ、私も好きやらせてもらおうか。』
すかさず量産機の攻撃が始まる。
しかし、全ての攻撃はゲンドウのフィールドの前に無力と化していた。
『無駄だよ。
君たちのフィールドとは年季が違う。
かつては神の領域に片足を突っ込んだのだ、ただの進化体程度では歯が立たんよ。』
まずは一体。
ネプタの量産機が頭頂部からフィールドを纏った手刀で真っ二つにされる。
そしてその手から量産型の諸刃の剣を奪い取ると、剣がロンギヌスの槍に変形した。
『やはり、ロンギヌス・レプリカか。
貴様らに未来はない。
あの子たちの未来を今度こそ用意するために貴様らを葬る。』
そしてロンギヌスがフィールドごとウルンを量産機ごと切り裂く。
最後の量産機が地面に倒れ伏す。
ここまでの時間1分21秒、圧倒的と言わざるを得ない。
『2号機を回収ポイントまで運ばねばな。
ケーブルを繋いだところで補修をせねば戦わせることはできん。』
2号機を抱えて回収ポイントへ向かい下ろすゲンドウ。
『聞こえるか葛城くん。
私だ、碇だ。
アスカの回収を頼む。』
司令室は唖然としていた。
シンジがウルトラマンになれる姿を知っていてなお、父であるゲンドウが見知らぬエヴァに変身したのを普通に受け止められるわけがなかった。
しかし彼らも仕事人である。
ゲンドウの言葉で我に帰りすぐさま動き出す。
ミサトは外部マイクでゲンドウに回収指示に対する了解を伝えた。
『これでいい。
あとはシンジ達がこの先どうなるかは彼らが…
む⁈』
エヴァとなっているゲンドウは何かを感じ取っていた。
最悪の予感、とでも言うべき激しい胸騒ぎ。
司令部からも同様のアラームが鳴り響いていた。
「今度は何⁈」
「国境海域付近に設置された観測機からの報告です!
高速の飛行物体を確認、パターン青です!
これまでに観測されたことのないようなエネルギー量です!」
「司令!
すみませんが、もう一戦お願いできますか?」
状況はゲンドウの耳にも入っていた。
『状況は把握した。
おそらく奴らの本丸だろう。
シンジも遠くで構わんから出せ。
出撃ルートが塞がっているのならZになってでてきてもかまわん。』
指示を出しながらゲンドウは周囲の変化に気づいた。
いつの間にか嵐が吹き荒れている。
そして空から舞い降りてくる、光を飲み込む影の巨人。
その姿はまさしく醜悪なウルトラマンだった。
カラータイマーの部分には赫赫と輝くコア、その体表は白と濃紺のコントラスト。
頭部は銀色の鶏冠にウルトラマンの大きな瞳の中にギョロギョロと動く目玉。
そして使徒に混じって伝わるこの感覚は
『まさか…
培養したゼットの細胞を組み込んだのか⁈』
目の前にある醜悪な生命体は世界を守る光の巨人と同じ空気を纏っていた。
これまでの使徒戦で負ったダメージの中ではZの細胞、体表が剥離することもあった。
当然人間であれば微細なそれが、ウルトラマンサイズだと容易に見つかる。
極秘裏にそれを回収したゼーレがそれを培養していた。
こいつは、危険だ。
覚醒したシンジでも命がけで戦わなければ勝負にならないほどに。
ゲンドウは肌でそれを感じ取っていた。
次の瞬間、エヴァが動く。
一瞬で背後に回り込まれたゲンドウ、咄嗟にフィールドをはるが
フィールドを透過して殴られる。
馬鹿な、フィールドを透過するなど!
ゲンドウも何とか捌き続けるが次第にヒット数が増えていく。
そして、決定的な拳が刺さりゲンドウは体制を崩した。
その瞬間を狙い、敵が両腕にフィールドエネルギーを凝縮させ、放つ。
ゼスティウム光線に似たそれは、ゲンドウが全力で貼ったフィールドすら容易く砕き、13号機を飲み込んだ。
光線が過ぎ去った後には膝をつく丸焦げの13号機が煙をたなびかせながら、その姿をうっすらと残し徐々に消えていった。
13号機をたやすく屠ったエヴァ、その名をエヴァ・シグマ。
ウルトラマンZを模した災厄を運ぶ天使。
そこに収まるのは太陽系から除外された最後の惑星・冥王星の名を冠するプルトと呼ばれるインフィニティ。
他の惑星の名を持つ10星と比べて比較的高い戦闘能力を有する。
そしてシグマの最大の特徴はコアへのダイレクトエントリーシステム。
かつて碇ユイを飲み込んだそのシステムで他のエヴァ量産型とは違い、完全なシンクロへと至り、なおかつウルトラマンの細胞によるATフィールドの無効化、アンチATフィールドを操り戦闘することでゲンドウを下したのだ。
シグマの見つめる先には横たわる碇ゲンドウの姿があった。
哀れな旧世代の王よ、その命で我らへの贖いの贄となれ。
シグマが右足を高くあげ、そのままゲンドウを踏み抜こうとした瞬間
コードアップ!デルタ!
黄金の光を纏う初号機が両手でその足を止める。
「おい、なにをやっているんだ…」
シンジの低い声がプルトを戦慄させる。
「この人は僕の父さんだ。
それ以上やるなら僕が相手だ!」