新世紀エヴァンゲリオンZ   作:カチドキホッパー

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29話 偽りの堕天

「明けの明星?

 何それ?」

 

 まだ医学生の20歳の頃、アスカとカフェテリアにいたシンジはアスカが呟いた言葉を、おうむのように返す。

 

「堕ちた天使長、ルシフェルの別名ね。

 最近使徒大戦を振り返っててね、あいつら使徒の名前って天使の名前だったじゃない?

 だから聖書を読みはじめたのよ。」

 

 この頃はまだ結婚前の彼女は、大戦時の刺々しさがだいぶなくなってきた頃だった。

 その彼女がカバンから取り出した聖書をめくりあるページをシンジに示す。

 

「これね。

 かつて天使たちの長だったルシフェルは、ある時神に反旗を翻すの。

 その罪で堕ちた天使、堕天使の長や悪魔の王として定義されたらしいわ。

 まるで誰かさんのことじゃない?」

 

 なんのことかわからずきょとんとするシンジの鼻の頭をアスカがつつく。

 

「アンタよ、アンタ!

 リリンという使徒の進化体であり、母体の使徒が違うといえど他の使徒からは結果的に見れば、同じ使徒に全て倒されてしまったんだからね。

 特にカヲルとの戦い、今振り返ればあの時にはインフィニティとして半覚醒してアダムを倒したんだからなおのことよ。

 アイツらからしたら、アンタはルシフェルよ。

 人の味方となった堕天使に、天使の名を冠する奴らが倒されたってのも皮肉な話じゃない。」

 

 そう言って冷めたコーヒーをすするアスカを横目に、シンジは考える。

 今の自分の現状、そして今後の未来でのあり方を。

 不意にアスカが口を開く。

 

「ま、さながら蒼き明星ってとこじゃない?

 あんたの場合。」

 

「え、なんで蒼?」

 

「あんたバカァ?

 最後の戦いでアンタ、蒼い光の化身になったじゃない。

 ゼータ・インフィニティだっけ?

 Zだけじゃなくてあんたの使徒としての力も混ざってんだから、あれを蒼き明星って風情のある名前で呼んであげたんじゃないの!」

 

 風情があるかどうかは別として、アスカなりに自分の現状を悩むシンジの気を紛らわそうとしてくれたらしい。

 

「…そうだね、いいんじゃないかな?

 もしもう一度Zさんとあの力を使う時が来たら、そう名乗らせてもらおうかな。」

 

 シンジの言葉にどこか満足げなアスカ。

 まさか、ほんとにもう一度あの力を使うことなどないだろう。

 いや、きてほしくはない。

 幸せを噛み締めるようにその可能性を頭の中から消し、アスカの手を取ったのだった。

 

 そして時は今に針を戻す。

 別の未来の世界でゼットンと融合した13号機を倒すために、シンジは究極の蒼き明星へと至る。

 

『シンジ⁈

 なんでこの力を使えるようになってるんだ⁈

 だってこれは、世界中の光が集まったあの時だけの…』

 

「ケンゴさんのエタニティの力を参考にしたんです。

 僕のインフィニティの力はあの時と比べ物になりませんから。

 それで、ゼータのキーに過負荷をかけて一時的にグリッター化してるんですよ。

 なので、あまり長くは持ちません。

 早めに決めましょう。」

 

 そしてシンジはもう一人の自分に向き直る。

 すでに13号機は四つの腕をフィールドで変形させ鎌にして切り掛かる用意を始めていた。

 目にも止まらぬ攻防が始まる。

 すべての鎌をベリアロクでいなし、捌き、その都度浅いダメージを機体に与えていく。

 焦る13号機はどんどん動きに精彩がなくなり、ついに隠し腕の2本が切り裂かれる。

 

『がぁぁぁぁ!

 よくも、よくもやったな!

 この偽物!』

 

 偽物って、いったい何を…

 疑問を考える隙すら与えない13号機、しかし本気のシンジとZを前にその両角をへし折られる。

 満身創痍な13号機を蹴り飛ばし、とどめの構えに入る。

 

 インフィニティ・ゼスティウム光線!

 

 放たれた絶対の光はしかし13号機に辿り着くことはなかった。

 13号機よりわずかに手前、ATフィールドに防がれている。

  

 ありえない、全てのビットは壊したはず!

 

 そしてカラータイマーが鳴り出したことから、光線をやめるとフィールドの発生源があらわになる。

 

「…君たちにとっては初めましてになるのか。

 改めて、はじめまして異世界の光の巨人、そして私の片割れの愚息の初号機パイロットよ。

 碇、ゲンドウだ。」

 

 突如現れた目の部分をバイザーで覆ったこの世界の碇ゲンドウ。

 そして全ての元凶にして、終わった世界の古びた執着心。

 

『父さん、ごめんよ。

 でも、もう少しでガフの扉は開けそうだったんだ!

 一緒にあの偽物を倒してよ!』

 

 13号機のシンジがゲンドウに縋るように声をかける、しかし

 

「あぁ、よくやってくれた。

 しかし、結果を出せないのならお前も用済みだよ…

 初号機パイロット。」

 

 ゲンドウはフィールドのハンマーで倒れ伏した13号機を叩き潰し、ダメージでZアーマーが消失する。

 エントリープラグを謎の力でどこかへと飛ばし、その際にゼットンのキーを回収した。

 

「…自分の息子じゃないのか⁈」

 

 思わず激昂するシンジ。

 しかし返ってきたのはあまりにも冷たい言葉だった。

 

「あぁ、そうだ。

 だがそれがどうした?

 使えなければ用済みだ。

 君もだよ、ウルトラマン。」

 

 活動限界時間が迫ったゼットに追い打ちをかけるようにフィールドエネルギーの塊が降り注ぐ。

 耐えるZ、しかし予想だにしない光線がZの胸を焼いた。

 

 放ったのはゲンドウではない、その奥にある何か…

 

『あまりに遅いので迎えにきたぞ、碇ゲンドウ。』

 

『ば、バカな!

 なぜ、ここに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに別のウルトラマンが介入してくるんだ!』

 

 そこには銀色の、カラータイマーのないウルトラマンが浮いていた。

 

「あぁ、思ったよりコマが手こずったようだ。

 問題ない器たる13号機は回収した。

 君から預かったキーも回収したよ、ゾーフィ」

 

 ゾーフィと呼ばれたウルトラマンが虚空に開いた空間に13号機を収納し、ゲンドウと共に潜ろうとする。

 

『待て!

 お前は、ゾフィー隊長ではなく、ゾーフィだと⁈

 誰なんだ!』

 

 Zの疑問に立ち止まり、ゆっくりと体を向けるゾーフィ。

 

『君は、異世界の光の国の者だな。

 そうか君も人間が好きになってしまった…

 

 ウルトラマンなのか。』

 

 そう呟いたゾーフィはひどく悲しげに見えた。




なかなかアイデアが降りて来ずに気づけば年末です…
さて、年内にあと何話かけるのか…

まだの人はシンウルトラマン見るのをお勧めします
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