ゾーフィを倒したシンジ達、最後の置き土産に残された碇ゲンドウの最終目的地がシンジが元いた世界だという情報を得た今、目下のところどうやって元の世界に帰るかが問題であった。
『まずいぞシンジ、ベリアロクで空間が切り裂けないぞ。
これじゃ元の世界に帰る算段がパーだ。』
そう、当初の予定であれば元の世界への帰還についてはエヴァ初号機がシンジ自身とシンクロしているためその波長を辿って帰る予定だった。
空間移動はベリアロクの空間切断能力頼りだったのだが、空間を切り裂いたところ空間の裂け目に結界がありそれを切断できずこの世界からの脱出ができず、手を拱いていたのだ。
「ミサトさん、ヴンダーにいい感じの機能とかないですよね?」
半笑いで聞くシンジに大袈裟に困ったというジェスチャーで返すミサトとリツコ。
まさに八方塞がりと言える状況だ。
その時、エヴァ初号機を抱えた8号機が浮遊して甲板に戻ってきた。
どうやら、敵のエヴァを吸収したことで8号機も覚醒状態にあるようだ。
エントリープラグからこの世界のシンジが降りてきた。
「すみません、ジンさん、みんな。
父さんはマイナス宇宙のその先に逃げられちゃいました。」
その情報からゾーフィの置き土産の確実性が高まった。
「やっぱりゲンドウは僕の世界に向けて…
となると、後はどうやって戻るかだな。」
目的は定まったものの、そのために元の世界に戻る手段には辿り着かない。
大人たちがうんうん唸っていると、この世界のシンジがおずおずと告げてきた。
「あの、世界を閉ざした結界みたいなのが原因で元の世界に帰れないんですよね?
だったら、僕が持っているカシウスの槍で切り裂けますよ。」
その言葉に一斉に振り返る大人たち。
確かに初号機が抱えているロンギヌスの槍とは違う一本の赤い槍があった。
それを見てZが歓喜の声を上げる。
『おぉ、確かにロンギヌスとは違う波長だけどものすごい力を感じますな‼︎
やったなシンジ、これで元の世界に帰れますぞ。』
その声に周囲が沸く。
この世界のシンジも初めて周りの人間から褒められて照れくさそうだ。
しかし、
「ねえ、シンジくん。」
一分一秒でも家族を守りに帰りたいはずの、この打開策に最も喜びを示しそうなシンジが険しい顔をして尋ねる。
「なんで君が結界のことや、その解除方法のことを知っているんだい?」
急に静まり返る周囲。
そりゃお前、長い事ネルフにいたんだし。
エヴァのパイロットだしそれくらいわかるだろ。
周囲が辻褄を合わせるように呟き出す。
しかしシンジはそれを切って捨てるように言葉を続ける。
「確かに結界については直接見たのかもね。
でも、普通は槍の名前や能力なんて知らないよ。
それこそ、死海文書にでも触れたり、読んでない限りはね。」
カシウスの槍、それは絶望のロンギヌスと対をなす希望の槍。
元来シンジたちが元いた世界には存在しない槍であり、この世界でも過去の戦闘記録を確認する限り一度も名前や存在が示されたことはなかった。
告げられたこの世界のシンジの表情は俯いており、前髪に隠されてわからない。
シンジは畳み掛けるかのように続ける。
「それと君、いつサルベージされたんだい?
僕はこの世界に来るとき、君を目印に転送されているから、君がそれまでにサルベージされていたのだとしたら辻褄が合わないんだ。
そして僕には魂の形を可視化して見える能力がある。
マイナス宇宙から戻ってきた君の魂の輪郭がぶれて二重に見えるのはなぜだ?
いや、端的に聞こう。
君は誰なんだ。」
その言葉を最後に全員の視線がこの世界のシンジに注がれる。
この世界のシンジはその視線に耐えかねたのか、一つため息を落とした。
そして、その背中に光の翼が広がる。
「これは…‼︎」
シンジが思わずスパークレンスを構える、だが
『シンジ、やばいぞ。
これは、流石に勝てない‼︎』
Zの言葉に声は出さないものの同じことを考えたシンジ。
それほど目の前の存在は異質であり、シンジの目を持ってしても人なのか使徒なのか判断がつかないでいた。
そしてその存在が口を開く。
「そうか、それがインフィニティの力か。
魂を可視化してみるなんてとんでもない力だね。
でも、それこそが人間のあるべき本来の進化の形なのかもね。」
くすりと笑うと、その瞳を紫紺に輝かせながらこの世界のシンジは語る。
「そうだね、そこまで気づいたんなら答え合わせを先にしてしまおうか。
まず僕が誰かだよね?
僕は碇シンジだよ、ただし、君の父碇ゲンドウと同じく、この世界の全てを見届け新世紀を創り出した時に神として分たれた方のね。」
あり得ない話ではない、だがそれを現実と認識するのはまた別の話だ。
動揺するシンジたちを見て、頭をかくこの世界のシンジ。
「その反応になるよね、でも答え合わせは始まったばかりさ。
まずこの世界はね、僕が作ったやり直しの世界だよ。
新世紀を創り出した後、この世界はどうなったと思う。
ミサトさん、わかる?」
突然話をふられて考え込むミサト。
「そうね、聞いた話ではエヴァの必要のない世界に書き換えたのよね。
書き換えられてハッピーエンド、じゃないのかしら?」
その答えを聞いて少し悲しそうな顔に変わる。
「そうだね、みんなが観測できる範囲ではそうだよ。
でもね、そうじゃないんだ。
世界の未来がそこで分岐するだけで、新世紀に飛ばされた人たちの意識は幸せだけど、こちらの残った世界では正史で死んだ人たちを救えないし、残った悲しみを補完できるわけじゃない。
それに何より、あそこから人類を建て直すにはあまりに多くを失いすぎだ。
だから僕の残った力で、世界を巻き戻したんだ。
この世界の第四使徒が来た日までね。
そして、そこにマイナス宇宙に残った父さんの分たれた魂を呼び戻したんだ。」
なんでそんなことを‼︎
当然非難の声が聞こえる、しかし
「そうだよ、これは僕のエゴだ。
だけど、僕は父さんも救いたかったんだ。
誰に認めてもらえるとも思っていないけどね。」
そしてこの世界のシンジはいったん言葉を切って続けた。
「だけどこの世界の父さんは今までと違った。
マイナス宇宙のゴルゴダオブジェクトにアクセスして何かを調べていたようだけど、そこで何かを知った父さんは、ニアサードインパクトが終わってから思いもしない行動を取り出したんだ。」
「ゴルゴダオブジェクトには何があるんだ?」
思わずシンジが尋ねる。
「ゴルゴダオブジェクトの中にはこれまでの世界の記録が全て刻み込んであるんだ。
最初は前回の世界から唯一巻き戻さなかったエヴァイマジナリーが存在しないからかと思っていたんだけど、僕もまさか並行世界も連鎖的に崩壊させるつもりだったとは思わなかったね。」
シンジは一つ腑に落ちないことがあった。
「君はそのイレギュラーを認識していたんだろう?
それほどの力があれば修正のために動けたんじゃないのかい。
それは父さんのためか?」
この世界のシンジは首を振る。
「いや、正しくは僕はこの世界に直接干渉できないんだ。
力の代償か、僕自身がこの次元より上の次元の生命体、概念と言ってもいいかな。
そのために、この世界の僕を依代にしているんだ。
そして僕が目覚めるために設定した条件は、マイナス宇宙において、13号機と対峙してカシウスの槍を目覚めさせることなんだ。」
なるほど、辻褄としては合うな。
そう思っているとこの世界のシンジは初号機が抱いていたカシウスを縮小し僕に差し出した。
受け取った矢先、彼は胸からもう一つの槍を抜き取った。
「カシウスは説明したね。
もう一本はガイウスの槍、これは別名ヴィレの槍・そして人の槍だ。
これを君のロンギヌスの力に組み込むことで、蒼き明星の力はより安定し高みへと至るはずだ。
絶望と希望を人の槍の力でまとめ、生命と知恵の使徒の祖を君の力でまとめ安定させる。
理には叶っているはずだよ。」
シンジが取り出したロンギヌスのキーに吸収される二本の槍。
それを見て満足そうに頷いたこの世界のシンジ。
「これで僕の役目は終わりだ。
お願いだ、父さんを倒して。
僕にできることは、もう槍を君に託すしかないんだ」
そう言ってこの世界のシンジは倒れ込み、魂の輪郭は元に戻った。
おそらくシンジに渡した槍を媒介に憑依していたのだろう。
だが、これで手段も手に入った。
シンジは甲板上のみんなに視線をやり、最後はミサトを見つめた。
「皆さん、ミサトさん、長いことおせわになりました。
加持さんと息子さんと三人で幸せになってください。
そのための明日は、僕が守ります。」
その言葉に涙が止まらないミサトが膝から崩れ落ちる。
「ごめんなさい、シンちゃん。
私は結局あなたに、頼ることしかできない…」
そのミサトの肩を掴んで正面を向かせる。
「大丈夫、僕にとってミサトさんはお姉ちゃんです。
だから、家族を守るのが僕の役目ですから笑って見送ってくれませんか?」
柔らかく微笑むシンジ、ミサトは涙を拭いて最高の笑顔で親指を立ててつげる。
「シンちゃん、行ってらっしゃい‼︎」
「はい、行ってきます。」
そしてNERVから一緒だったメンバーたちと握手を交わし最後にアスカの前に立つ。
「アスカ…」
「はっ、もうあたしの中にいた使徒もいなくなったし、これでエヴァに乗らないでよくなったわ。
呪縛が解けた後、こっちのあんたとゆっくり大人になっていくとするわ。
ねぇシンジ、そっちの世界のあたしって…」
そうだ、彼女には酷になると思って話していなかった、だが今ならば
「向こうでの君の名前は、碇・アスカで娘の名前はミライ。
僕の世界の中で一番大切な人たちさ‼︎」
そっか、そっちのアタシは幸せになったのね。
そしてアスカはニッと笑って
「あんたばかぁ?
そんなの言わなくてもわかってるわよ、ちゃんと守りなさい‼︎」
そのアスカの声を背にシンジはマイナス宇宙に飛び込んだ。
ウルトラマンZ、アドバンスゼスティウム
ブートアップ、アドバンスA To Z
「希望を導け、真紅の絆‼︎」
『ご唱和ください、我の名を。
ウルトラマンZ‼︎』
続くように甲板上からみんなの声が聞こえる。
『ウルトラマンZ‼︎』
二度と交わらないだろう、だけどみんなと結んだ絆が僕たちの背中を押してくれる。
運命よりも強い、真紅の絆が僕たちに希望を導いてくれる。
そう改めて思うと、万感の思いを込めて僕も叫ぶ。
「ウルトラマン、ゼェェェェェェット‼︎」
目指すは元の世界だ。
場所は変わり、シンジたちの世界の南極、セカンドインパクトの発生地、そして地獄の門。
深海4000メートル地点、もはや生命が存在しないはずの場所にそれはいた。
「やはりゴルゴダオブジェクトに刻まれた通り、世界の終わりまで眠るつもりか。
貴様がどこから流れてここにいるかは知らぬが、本来の役割を果たすべきではないかな?
その名に恥じぬ力を見せてもらおう、邪神よ。」
すでに人の身を捨て顔があった部分がおおき裂け目となっており表情はわからないはずだったが、確かに碇ゲンドウは笑っていた。