新世紀エヴァンゲリオンZ   作:カチドキホッパー

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4話 別離 見えない明日

 アメリカの支部において建造中のエヴァンゲリオン4号機消滅。

 消滅したのはエヴァだけでなく、基地そのもの。

 その様子は衛生カメラからもはっきりわかるほどの惨劇だった。

 

「で、うちのエヴァ大丈夫なんでしょうね?」

 

 この事故を受けて緊急招集を受けた臨時の副司令以下の主要メンバーの会議。

 作戦部長のミサトがリツコに厳しい視線を送る。

 

「4号機の内容は!

 赤木先輩にも、詳しくは開示されてないんです…」

 

オペレーターのマヤが庇おうとするが途中失速する。

 

「4号機は、N2機関搭載のテストベット。 

 エヴァのエネルギー問題を解消するための実験機体、だったらしいわ」

 

 タバコをふかしながら語るリツコの横顔に余裕はない。

 なぜなら副司令からもたらされた内容、米国で建造中の3号機をNERV本部で預かることとなったということに危機感を覚えていないものはいない。

 同じ国の機体なのだ、心配するなという方が無理である。

 しかし、上部組織ゼーレは3号機の本部運用を後押しし、日本政府もそれを受け入れると表明してくれやがったのだ。

 司令が頑なに拒んだが、結局は押し切られた形だ。

 

「パイロットは新たにフォースチルドレンを選出します。

 人選については松代の機動実験後に通達します。」

 

 リツコの言葉に言いようのない不安を覚えるシンジ。

 その日はそれで解散となったが眠っても翌日学校に行っても不安は拭えなかった。

 

 翌日の昼食時間

 

「さぁ、飯や飯ー!

 昼飯は学校最大のイベントやでぇ!」

 

 シンジの親友、いや悪友の鈴原トウジのこの言葉で昼時が始まるのが通例だ。

 だが今日は

 

『鈴原トウジ、至急校長室まで』

 

 非情な放送がトウジの昼時を潰した。

 

「はぁ、なんやろ。

 すまんな、シンジ、ケンスケ。

 さきに食べといてくれ。」

 

 そう言って教室を出て行ったトウジは結局、昼休憩どころか終礼が終わるまで帰って来なかった。

 終礼後戻ってきたトウジは

 

「シンジ、2人で帰らんか?」

 

 と誘ってきた。

 いつも3バカで帰るか、アスカと2人で帰ることが多かったので意外ではあったがすぐ帰ることにした。

 帰りに駄菓子屋で棒アイスを買い食いしながらよく溜まっている公園のベンチに腰掛ける。

 なんとなくだけどトウジらしくない、そう感じたシンジは

 

「トウジ、何か話したいことがあるんじゃないの?」

 

と切り出してみた。

 じっと空を見上げていたトウジがぽつりと漏らす。

 

「なぁシンジ、エヴァに乗るのってどんな感じや?

 怖いんか?」

 

 あまりに予想外の問いに固まるシンジ。

 構わずトウジが続ける。

 

「今日あの金髪の博士が来てな。

 エヴァにのる条件として妹の入院代を超える報酬をくれるってな。

 お前が自分の出撃報酬からこっそり妹の入院費用払っとる代わりにな。」

 

 思わず腰を上げるシンジ。

 そしてトウジに胸ぐらを掴まれ殴り倒される。

 

「何格好つけてんねん自分!

 俺らはなんや、ダチやろ⁈

 なんや、同情か?

 そんなもん嬉しくもなんともないねん!」

 

 手を掴まれ立たされるシンジ。

 

「これからはワシもパイロットのお仲間入りや。

 せやから、ダチとして、お前を守る。

 これで貸し借りなしや!」

 

 トウジがエヴァにのる。

 最も信頼のおける友が仲間になる、そのはずなのに。

 シンジの不安は大きくなる一方だった。

 

 そして3日後、予想は最悪な形で現実となった。

 松代の実験場の爆発。

 実験に参加していたミサト、リツコたちの安否は不明。

 そしてエヴァ3機の出撃が決まり、駒ヶ岳防衛ラインに配置された。

 やがてあらわになる目標。

 山の影から現れたのは

 

悪魔のような黒いエヴァだった。

 夕日を浴び、その影が不気味さを増させる。

 

「目標…だってこれは、エヴァじゃないか!」

 

 ありえない、だってこの機体には…

 

『分析パターンでました。

 …青です。』

 

 無情にも告げられる解析結果は、トウジヘの死刑宣告。

 

『目標を第13使徒と識別。

 即時殲滅せよ。』

 

 この時ほど自分がNERV司令の息子であることを恨んだことはない。

 その時アスカから通信が届く。

 

「シンジ!

 これに乗ってるのは…あいつなんでしょ?

 アタシがなんとかするから、もしもの時は頼んだわよ!」

 

 そこで通信を切ったアスカ

 アスカにはわかっていた。

 シンジにアイツは殺せない。

 なら、アタシがアイツを…

 そして会敵する2号機。

 マシンガンを構えるが…

 

『2号機、信号ロスト!』

 

『0号機、まもなく会敵…

 嘘だろ、0号機も信号ロスト!』

 

 通信で入る断片的な内容がシンジをなぶる。

 アスカもレイも使徒戦においての経験値は高い。

 これほど簡単にやられるはずがない、であれば考えられることは一つ。

 これまでの使徒より手強く、もうトウジの意志はそこにないということ。

 わかってる、わかってるけど…!

 操縦桿を握り直したシンジの目の前に悠然と3号機が歩いてくる。

 そして、向き合うシンジと3号機。

 こう着状態が続き、相手の出方を伺うシンジだが…

次の瞬間、目の前から3号機が消えた。

 気づけば押し倒され首を絞められている。

 そこから使徒の侵食をうけていた。

 

『接触部位から使徒の侵食を受けています!

 第7頚椎まで侵食!』

 

 このままだとやられる、なんとか3号機の手を押さえて外させるが…

次の瞬間、3号機の肩パーツが弾け飛び、人の手のような物が伸びて初号機の首を締め上げていた。

 やばい、意識が…

 そんな時にゲンドウから通信が入る。

 

『シンジなぜ戦わない?』

 

 首を絞められるがなんとか答える。

 

「トウジが、友達が乗ってるんだ!」

 

『構わん、そいつは使徒だ。

 人類の敵だ。

 戦わなければお前が死ぬぞ。』

 

「いいよ!

 友達を殺すよりは全然いい!」

 

『お前は、友の手を自分の血で染めさせる気か。

 もういい、そこで黙って見ていろ。

 初号機のシンクロを全面カット。

 ダミーシステムを起動させろ!』

 

 首を襲っていた圧迫感が消える、どうやらシンクロを切られたようだ。

 ゲンドウとマヤが何やら揉めている声が聞こえる…と思った次の瞬間、プラグ内から聞きなれない機械音が響いていた。

 そしてシンジの四肢は拘束され、外の映像も見えなくなる。

 

『システム解放、攻撃開始。』

 

 ゲンドウの声と共に動き出す初号機。

 そこにシンジの意思などない。

 伝わってくる3号機を殴る感触、振動。

 いや、それだけじゃない。

 これは…そんな生やさしいものではない。

 

「なんだよ、父さん…

 どうなってんだよ。

 なにやってんだよ!」

 

 きっと答えなどない。

 だが問わずにはいられなかった。

 無駄な足掻きと知りながらも、機体を止めるために操縦桿を動かすシンジ。

 やがて振動が止まる。

 止まってくれたのか初号機…

 だが安堵は次の瞬間絶望は変わる。

 軋む音、何かを握っている初号機。

 この形、音…まさか⁈

 

「やめろ…やめろぉぉぉぉ!」

 

 シンジの叫びは届かず、初号機はそれを…

 3号機のエントリープラグを握りつぶした。

 

『パターン、消滅。 

 使徒、殲滅されました…』

 

 人類の敵への勝利、だがそれを喜ぶものなど誰1人いない。

 

 

 ミサトは瓦礫の中で目を覚ました。

 辺りは夜の闇を纏っている。

 傍にはかつての恋人、梶リョウジがいた。

 

「葛城、無事でよかった。

 リッちゃんや、他の職員にも奇跡的に死者は出てない。」

 

 安堵するミサト、しかし思い出した。

 

「3号機は⁈」

 

 梶は顔を曇らせ目を逸らす。

 

「…使徒として処理された。

 初号機の手で。」

 

 ミサトは後悔した。

 3号機パイロットについて最後までシンジには伝えていなかったことを。

 トウジがシンジに打ち明けたことなど知る由もない。

 

「シンジくん…」

 

『やめろ、シンジくん!

 自分が何をやっているのかわかっているのか⁈

 司令の判断がなければ、君が死んでいたんだぞ!』

 

 NERV本部は甚大な被害を被っていた。

 使徒ではなく、エヴァ初号機の手で。

 

「そんなの関係ないよ。

 初号機の内部電源の残り120秒、これだけあれば本部の半分以上を壊せるよ。

 父さん、よくも僕の手でトウジを殺させたな!

 同じ目に合わせてやるよ!」

 

『落ち着いて話を聞いてシンジくん!

 それにまだ、鈴原くんの遺体を確認できていないの、まだ可能性はあるわ!

 だから落ち着いて!』

 

 普段は歳が近くシンジが姉のように慕い、お互い本当の姉弟のように接しているマヤの言葉ですら今のシンジには届かない。

 

「関係ないって言ってるでしょ!

 あまり僕を怒らせないでよ。

 あいつは、父さんは僕に友達を殺させようとしたんだ!

 それだけで十分だよ!」

 

『落ち着けシンジ!

 流石に見てられないぞ。』

 

 使徒戦の間消耗していたエネルギーを補充するため意識を失っていたZがこのタイミングで目覚め、全てを察してシンジを止めようとする。

 

「あぁ、Zさん。

 今まで何してたんですか?

 あいつらは悪なんですよ…

 だから、あいつらを消すために力を貸せよ!」

 

 Zの言葉すら届かない。

 そして無理矢理にキーを起動しようとするがZの力でロックをかけているため起動しなかった。

 だが、そのキーに黒いオーラが集まりつつある。

 

『やばい、シンジ、闇に堕ちるな!

 仕方ない、歯を食い縛れよ!』

 

 シンジの心の闇がキーを染め上げようとしていた。

 そのキーで変身したら誰も止められなくなり、シンジも元には戻れなくなる。

 Zが選んだのは、シンジと物理的に離れて力で止めることだった。

 

 シュワ!

 

 Zが初号機を薙ぎ倒す。

 暴れようとする初号機に沈静のエネルギーを流し込み、動かなくなるのを見届けたあと空へ旅立っていった。

 

 シンジが目覚めたのは病院のベッドだった。

 起きてすぐ手錠で拘束され、司令室に連れていかれる。

 

「エヴァの私的占有、稚拙な恫喝、司令である私への殺害予告。

 何か申し開きはあるか?」

 

「ありません。

 僕はもうエヴァに乗りたくありません。」

 

「そうか、なら出て行くといい。」

 

 シンジが踵を返すと

 

「シンジ、お前に伝えねばならないことがある。

 鈴原くんは一命を取り留めた。

 複数箇所の骨折程度で済んだようだ。

 お前が最後にシステムを上回ったおかげかわからんがな。

 だが使徒に汚染された可能性があるため隔離する。

 ここを去るお前には関係ない話だったか。

 …最後に聞かせろ、初号機の中で話していたのはあの巨人、ウルトラマンZか?」

 

 トウジが生きていた。

 しかしここから逃げ出す自分に、それほどの重傷を負わせた自分に安堵する資格はない。

 

「さぁ?

 僕も自暴自棄になっていたし、よく覚えていません。

 トウジのこと、よろしくお願いします。」

 

 それから3日ほど入院して、2日ほど自宅の整理をして、ミサトの家を出ることにした。

 

「NERVを出てもしばらく監視がつくわ。

 それから携帯、忘れてるわよ。」

 

「必要ありません。

 ここに置いていくものですから。」

 

 シンジは全てを捨てて出ていくつもりだった。

 自分を倒してからZの声は聞こえず、スパークレンスも無くなっていた。

 もう戦わなくていい。

 エヴァに乗らないと決めた、だから全てを捨てて出ていく。

 

「友達から何件か留守電来てたわよ。

 …シンジくん、あなたが結果的に友達を傷つけてエヴァに乗る理由に失望したのも知ってる。

 でも私やアスカのようにあなたのことを大事に思っている人もいるわ、だからここに…!」

 

 ミサトが掴もうとした手をシンジは振り払う。

 ミサトが最後に寂しそうに呟く。

 

「…アスカがね、見舞いに行くと自分も怪我してるっていうのにあなたのことばかり心配してるの。

 あいつは大丈夫なのとか、退院したらアタシがあいつを笑顔にしてやるんだって…」

 

 アスカがそんなことを…

 でもごめん、僕には君に心配してもらうような価値はないよ。

 

「僕はもう、誰とも笑えません。」

 

 2人を阻むように玄関の戸が閉まった。

 

 もともと住んでいた場所に戻るため、外行きのモノレールに乗る。

 人の往来が激しい。

 満員電車の中で揺られている。

 しかしそこで不意にアナウンスが流れる。

 

『ただいま非常事態宣言が発令されました。

 この電車は最寄りのシェルターへと移動します。」

 

 あぁ、このタイミングで来るのか。

 

「…使徒だ。」

 

 

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