月曜日……それは1週間の中で1番家から離れたく無くなる日だ。これからの1週間に溜息を吐いたり、なんならこれから始まる学校生活or社会人生活に絶望し、前日までの甘美な一日を想いながら呻く者もいるだろう。
かく言うこの物語の主人公、俗に言うオリ主である
昨日まで愛する彼女とデートに行ってイチャイチャしていたのだが、平日になってイチャイチャできる時間が減ってしまい落ち込んでいた。
「……中学生の頃は、まだ良かったな〜……高校になったら勉強に文理選択に受験に……
高校生として至極当然のことを言いながら方希は走って自分の通う学校へと向かうのだった。
方希は少し遅れながら教室に入る。教室の中にはほとんどの生徒が揃っており、方希はその生徒のうち、メガネをかけた女子と小さい背丈のいわゆるロリと呼ばれる女子の元へ足を進める。
「あ、おはよう方希」
「おはよう恵里、元気そうでなによりだ」
「もう方希ったら〜昨日もデートして一緒に遊びに行ってるんだから久しぶりに会ったみたいなセリフを言わないでよ〜」
方希に挨拶したのはメガネ女子、中村恵里。
昨日のデートの相手はこの恵里だったのだ。
恵里と方希が桃色空間を発生させているのが耐えられないのか、もう1人のロリ女子が方希達に話しかける。
「私は!?2人して甘い雰囲気出さないでよ〜!」
「……悪いとは思うけど反省はしないよ、だって方希と話すといつもこうなるからね!」
「悪いね谷口さん……」
あくまで仕方ないと言う恵里と谷口鈴に対して謝る方希。だが2人とも全く反省はしておらず、そのままホームルームが始まるまでずっと桃色空間を発生させて鈴だけでなく周りのクラスメイトにまで被害を及ぼしていたのだった。
「やっぱり美味しいな、恵里の作ってくれる料理は……俺には勿体ないくらいだ」
「あはは……ありがと、方希♪」
午前の授業が終わり、昼休みに入る。教室を見渡せば購買組は既に飛び出していったのか人数が減っている。それでも方希の所属するクラスは弁当組が多いので三分の二くらいの生徒が残っており、それに加えて四時間目の社会科教師である畑山愛子先生(二十五歳)が教壇で数人の生徒と談笑していた。
そんな中、教室の片隅で方希と恵里はイチャイチャしていた。朝っぱらからリア充全開で桃色空間を展開していたのだ。昼になってさらにその度合いは大きくなっていた。
同じ教室の窓際では女神と称される女子がクラス間でとある理由で冷遇されている男子生徒が話しており、クラスの男子が冷遇されている男子生徒を殺気の籠った目を向けているが、そんなことは関係ない。
方希は恵里と鈴と一緒に恵里の作った弁当を食べていた。
「確かに美味しいんだけどさ」
「何さ、私の弁当に文句あるの?」
鈴は顔を顰めながら恵里の弁当に食べていた。そんな鈴に恵里は少し悲しそうにする。
「……なんで私の弁当形崩れや焼き焦げたのが多いのかな……それに心無しか東條くんのより量多いし」
確かに鈴の弁当を見ると形が悪い野菜や焦げたウインナーや卵焼きが入っており、方希のより量が多い。
「あはは……ナンノコトカナ」
「……ありがとう、恵里。でも谷口さんのお弁当に失敗したのを入れなくていいよ、どれも恵里が俺に作ってくれたんだから不味いわけないさ」
「方希……」
「やっぱり甘いよ〜!助けて神様!この桃色空間から出して〜!!」
方希と恵里のイチャイチャに耐えられなくなったのか神に祈りだした。
そんな鈴を見て2人で笑いながら昼食を楽しんでいると、突然純白に光り輝く円環と幾何学きかがく模様が現れた。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様――俗に言う魔法陣らしきものを注視する。
その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
「(久しぶりに見たがここは魔法がそこかしこにある世界じゃねぇだろ!)恵里、谷口さん!教室から出るぞ!」
だがその言葉に恵里と鈴は反応出来ず、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光った。
数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。
この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。
●東條 方希
転生者であるが、ありふれ世界に転生した転生者ではなく、元々は違う世界の転生者。
年齢は自称永遠の17歳。家族は居らず、彼女は中村恵里。
特典はひとつあり、他にも道具がひとつ。実力はエヒトに匹敵する。……超えている。