恋姫外伝~修羅と恋姫たち   作:南斗星

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短いですが、なんとか纏まりましたので投稿します。

仕事が忙しくて纏まった時間が中々取れない。
もっと執筆時間取れるといいのですが。


第二話

愛紗の屋敷である……。

屋敷というには少々小さいだろうか。

手入れは行き届いているのであろう。うら寂しいといった感じはしないが、活気にはかけている。

その一室……。

「うまい、うまい」

よく喰らう……しかも速い、飢えた猫のようである……。が、ちゃんと咀嚼し、味わっているようでもある。

その食いっぷりは実に美味そうで、心から幸せそうに見えた。

至福を感じている……そんなふうだ。たかだか塩と米だけの、何のおかずもない粥を食わせてやったにすぎぬのだが……。

愛紗は呆れていた。

腹が減って動けぬという少年を村に案内し、食事を振舞ったがこれがものすごい食いっぷりなのである。

最初は『余程腹が減っていたのであろう』と思って見ていたが、次第にそれは驚きに呆気にそして呆れに変って行ったのである。

陸奥 疾風(むつ はやて )』……そう名乗った少年、歳の頃は十七、八であろうか。決して大きな体ではなくむしろ男にしては小柄な方であろう。同世代の女性である愛紗と比べても、頭一つ分は小さい。

だというのに、食べきるには大人が十人は掛かるであろうを量を、一人で食らいしかもその勢いはいまだ止まらぬのである。

「おかわり」

「……まだ食うのか」

求めに応じておかわりを差し出しながも、連れ帰るんではなかったかと溜息を漏らす。

よほど腹が減っていたのであろうが、さすがに、

「鈴々でもここまでは食わんぞ……」

愛紗も呆れて二の句が継げなくなる。

「まあよい食いながらでいいからこちらの問いに答えよ」

「うん、うまい、うまい」

「聞いておるのか」

疾風は聞いてない。飯にしか目がいっていないようである。

(全く、変なのを助けてしまったな)

疾風の中では飯のことしかないようだ……今のところは。

「貴様確か陸奥 疾風とか言ったな。変わった名だが、陸が姓、奥が名で疾風が字か?その身形では官職などには就いていまい。ならば疾風と呼べばよいのか?」

この国では官職などに就いている目上の者は姓に官職名を付けたものを、それ以外は敵対でもしないかぎり字を呼ぶのが通例となっていた。……あと一つ、心から信頼するものしか呼ばせない『真名』というものもあるが。

「うん?違う違う。陸奥が姓で疾風が名だ。字というものはもってないよ」

いってからまた飯へと手を伸ばす。

「呼び名は好きに呼んでくれ」

「ふむ……字がないとは、珍しいな。貴様どこの出身()だ?」

愛紗は一つ頷いてから尋ねた。

「この大陸の東の海を越えた所にある小さな島国だ」

漸く満腹になったか、腹を撫でながら疾風は言う。……顔には満足げな笑みがある。

「海?なんだそれは?」

愛紗が聞く。どうやら海を知らぬらしい。

「でっかい水たまりだ」

そう言いながら、一つ欠伸を漏らす。どうやら腹が膨れて今度は眠気がきたらしい。

不作法なやつだと愛紗はついむっとした顔をした。

「俺はその(ほとり )で漁師が使う小舟の中で寝てたんだ……気が付いたら夜が明けていて周りには陸が見えなくなっていた。で、どうしたものかと悩んでいたらいつの間にかあんたらの国に流れ着いた。腹が減ったので食いもんを探したけど見つからなかったのであそこで寝てた」

まるで他人事のように答える疾風を見て、愛紗は頭を抱えた。突拍子もない話しだし、到底信じられることでもない。だが疾風を見ていると嘘を言ってるとも思えない。結局愛紗はこのことは一先ず置いておくことにした。

「わかった、そのことはいい。だがこれから先どうする?行くあてでもあるのか」

そう問う愛紗に、疾風という男は腹を撫でながら満ち足りた顔をして

「特に考えていない」

悪びれる様子もなくそう言ってのけたのである。

先ほどまで死にかけていたというに、呑気すぎる態度に愛紗は肩から力が抜けていくように感じた。

(こやつ……ただの馬鹿か)

そう思った愛紗に異を挟む者は少なかろう。

「……そうかならばこの村に置いてやれるよう村長に口利きをしてやらんこともない」

愛紗としては折角助けた命だ。ここで放り出すのも少々気が引けた。

「そいつは助かるな」

疾風は目を細める。本当に嬉しそうにも見える。

「ただし!ただしだ、自分の食い扶持は自分で稼げ、……毎回あのように食われたのではたまらん」

そう漏らすと愛紗は心底嫌そうに顔を顰めた。

「住む家や仕事については、明日にでも皆に相談することにしよう。取り敢えずは今日はうちに泊まるといい」

疾風が頷くのを見た愛紗は腰を上げかけたが、ふと思い直し疾風に問いかけた。

「もう一つ聞きたいのだが、お前腕は立つのか?」

そう言って剣を振るうような恰好で腕を軽く振る。

疾風は……、

「俺か?俺はこの地上で誰よりも強い…よ」

クスリと笑う。

愛紗は一瞬呆然とし、左の肩を落とした。が……すぐに気を取り直すと、

「ふん…馬鹿馬鹿しい。冗談ならもっと面白く言え」

お前みたいなやつが、強いわけなかろうと呆れ顔で言う愛紗、……が、疾風は惚けた顔を変えない。

「そうかもな」

口の周りに付いた米粒を取りながら、疾風が言う……。顔は笑っている。

愛紗もさほど期待してはいなかったのだろう。ただ最近村の付近に賊が頻繁に出没するようになったので、万が一使い手なら使えるかも、と思って聞いてみたのである。ただあまりにふざけた回答に男の言をただの戯言と思い今度こそ腰を上げる。

(……こいつ本当の大馬鹿者だ)

そう内心に思いながら、部屋を後にする。

 

 

空は夕闇に変わりつつあった。

 

 

 

 

 




次回は早めに投稿出来るといいな。

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