それ以降は自分が書いた最初の部分を元にAIが執筆しています。
【「セフィ、どうしたの?」
古い、古い記憶だ。
目の前で女の子が泣いている。
長い黒髪、少しだけ尖った耳、利発そうな端正な顔立ち、まだ少女の姿。
「またあいつらに何か言われたの?」
背を向ける彼女に近づき、語り掛ける。
「は、半エルフって…… お前は耳なしのエルフだ、なんでこんなところにいるんだって……」
ぐずりながらそう漏らす彼女を、背中からゆっくり抱きしめる。
「そんなこと気にするなって。あいつらはただ嫉妬しているだけだから。大丈夫、俺がついてる。」
ゆっくりと頭を撫でながら慰める。
昔の彼女は、よくこうやって泣いていた。
半エルフ、半エルフ、って、実際には8分の1しか引いていないエルフの血を、それでも侮辱されて泣いていた。
そのたびに慰めていたことをよく覚えている。
「ほんと……? じゃあ約束して。ずっと、私のそばにいるって。ずっと一緒にいてくれるって。」
振り向き、涙の残る顔のまま彼女はどこかおびえた表情で問いかける。
それを見て、俺は―――
俺は、なんていったんだったか。
PiPiPiPiPi
目覚ましの音が鳴り響く。
瞼を開け、上体を起こす。
どこかぼんやりとした心地の中、瞼を開けて意識をはっきりさせる。
そうだ、今日は高校の始業式の日だった。
冒険学校。
文明が発達した今の時代でもなお残り続けるダンジョンを攻略・管理する冒険者。
それを育成する学校だ。】
昔は自衛隊や警察などが対応していたらしいが、今は国も冒険者を育成し、ダンジョンの管理を任せるようになった。
そして、俺もその一人だ。
『朝ですよー!起きてください!』
スマホに表示されたアプリを立ち上げ、声をかける。
「おはよ、ナビちゃん。」
『おはようございます!マスター!』
音声案内機能付きのナビゲーションAI、通称ナビちゃん。この世界にはダンジョンがある。
ダンジョンコアと呼ばれる核を破壊することでエネルギーとして活用できるそれは、現代社会においてなくてはならないものだ。
しかし、ダンジョンの中にはモンスターが存在し、侵入者に襲い掛かる。
そのため、ダンジョン探索を行う冒険者は必須となる技能だ。
だからこそ、ダンジョン探索に必要な知識・技術を教えるために設立されたのがこの冒険学校である。
『今日の予定を確認しますね~』
ナビちゃんが画面に表示される。
『本日の予定です。9:00に校長先生によるホームルーム、10:00から体育館にて入学式が行われます。12:00から全校生徒での昼食会、14:00より校内探索が開始されます。』
「了解。ありがとう、ナビちゃん。」
『いえいえ、これが私の仕事なのです!』
画面の中で胸を張るナビちゃん。
「さて、そろそろ準備しないとな。」
ベッドから降り、洗面所に向かう。
顔を洗い、歯を磨き、寝癖を整える。
「よし!」
鏡の前で気合を入れる。
「行ってくるね、母さん。」
写真立ての中の母親に声をかけ、家を出る。
『行ってらっしゃいませ、マスター。』
ナビちゃんの声を聞きながら、俺は歩き出した。
☆
「おはよー!クロア君!」
「おう、おはようセフィ。」
教室に入り、自分の席に着くと横から声がかかった。
幼馴染の女の子、セフィだ。
「今日は早いな、いつもギリギリなのに。」
「うん、ちょっと早く目が覚めちゃって。それで、せっかくだから早めに来たの。」
「へぇ、珍しいこともあるんだな。」
「もうっ、そういうこと言わないでよぉ。」
笑いながら会話をする。
「あ、そうだ。今日の放課後、空いてる?」「ん?ああ、大丈夫だけど?」
「なら、久しぶりに買い物に付き合ってくれないかな?新しい服買うつもりなんだ。」
「いいぜ、荷物持ちくらいいくらでもやるよ。」
「え~、そこは一緒に選んでくれるだけでもいいんだけど?」
「おいおい、女子の買い物に男が入るとろくなことにならないぞ?まあ、どうしてもって言うなら別だが?」
「むぅ…… 分かったわよ、じゃあ自分で選ぶことにする。」
「そうしてくれ。」
「その代わり、クロア君の奢りでね♪」
「はぁ!?なんでそうなるんだよ!」
「だって、私は荷物持ちしてくれるって言ったじゃない。それに、男の子が女の子に奢るのは当然でしょ?ほら、お金払ってくれるんだからむしろ感謝してよね。」
「お前なぁ……」
「ふふっ、冗談だよ。半分こでどう?私の分も出すからさ。」
「……分かったよ。ただし、高いものは却下だからな。」
「分かってるって。じゃあ決まりね。」
嬉しそうに笑う彼女を見て、思わず笑みをこぼす。
「じゃあまた後でね。」
「ああ、またあとで。」
手を振りながら離れていく彼女を見送り、俺は頬杖を突きながら窓の外を見た。
そこにはどこまでも青い空が広がっていた。
☆
『―――であるからして、我が校の生徒として誇りを持ち、日々研鑽に励むことを期待する。以上、校長先生のお言葉でした。』
壇上で挨拶を終えた校長が頭を下げる。
それに合わせて拍手が鳴り響く。
『続きまして、生徒会長からの新入生への歓迎の言葉です。』
司会役の生徒がアナウンスする。
すると、一人の少女が進み出る。
『在校生を代表して、私、生徒会長リリアナ=ヴェルンハルトが歓迎の言葉を贈らせていただきます。』
少女が一礼する。
『今年の新入生の皆さんは、皆様ご存じの通り、ダンジョン探索士になるための学校に入学されました。』
ダンジョン探索士、それは現代社会においてなくてはならない存在だ。
ダンジョンはエネルギー資源であり、同時にモンスターという脅威が跋扈している。
モンスターはダンジョン内にしか出現せず、ダンジョンコアを破壊することでエネルギーへと変換することができる。
その恩恵により、人類はモンスターの脅威に晒されることなく、文明を発展させることができたのだ。
しかし、ダンジョンには罠や仕掛けがあり、決して安全とは言えない。
そこで活躍するのが冒険者と呼ばれる者たちだ。
彼らはダンジョン探索に必要な技能を学び、ダンジョン探索を行っている。
『この学校では、ダンジョン探索に必要な知識・技術を学ぶことができます。』
ダンジョン探索士は国によって保護されており、ダンジョン探索に関するあらゆる費用が国で負担される。
そのため、ダンジョン探索に関する知識や技術を無償で学ぶことができる。
『あなたたちはこれから、ダンジョン探索士を育成するための学校に通うことになります。』
ダンジョン探索士は、ダンジョン探索に関わるすべてに優遇措置を受けることができる。
例えば、ダンジョン探索中に得たアイテムはすべて国の物となり、探索にかかる費用は国が全額負担する。
また、ダンジョン探索の際に得られる経験値は、訓練などとは比べものにならないほど多く、レベルアップも非常に早い。
だからこそ、ダンジョン探索は冒険者にとって人気の職業だ。
『この学校で3年間学び、一人前のダンジョン探索士となってください。私たちは、あなたたちの入学を心よりお待ちしています。』
一礼し、舞台袖に戻っていく生徒会長。
『それでは次に、生徒会役員の紹介を行いたいと思います。まず初めに――』
そして、その後も式は滞りなく進んでいった。
☆
「はーい、みんな注目!」
ホームルームが終わり、担任の教師が教卓に手を置き、大声で注目を集める。
「今日は始業式だから午前中だけで学校はおしまいだ!午後からは部活動紹介や体験入部なんかもあるから、興味のあるやつは見に行ってみるといいぞ!もちろん、見学だけならいつでもできるからな!んじゃ、解散!」
号令と同時に、教室内が一気に騒がしくなる。
「クロア君、今日はこの後どうする?」
帰り支度をしながら、セフィが問いかけてくる。
「そうだなぁ、俺は特に予定はないけど……」
「なら、一緒に帰ろうよ。」
「ああ、いいぜ。」
「やった!」
「あの、セフィさん?」
「ん?なにかな?」「そんなに引っ付かれると歩きにくいんですけど?」
「え~?いいじゃん別にぃ。」
「よくないから言ってるんだろ。」
「ぶぅ、ケチ。」
「はいはい、ケチで結構。」
「ちぇっ、つまんないの。」
「あ、あの!」
「ん?」
声をかけられ振り返ると、そこにいたのは一人の女子だった。
「えっと…………」
「あ、えっと、私、同じクラスの……ええと」
「あ、私はセフィ。よろしくね。」
「あ、はい。セフィさん、ですね。」
「それで、どうかしたの?何か用事でもあった?」
「あ、いえ、そういうわけじゃないんです。ただ、せっかくなのでお友達になれたらなって思って……」
「そっか。うん、私も嬉しいよ!仲良くしようね♪」
「は、はいっ!ありがとうございます!セフィさんは、今日はもう帰るところですか?」
「うん、そうなんだ。」
「あ、よかったら途中までお話ししながら帰ってもいいでしょうか……?」
「うん、全然構わないよ。」
「あ、ありがとうございます!そ、それで、できればお二人のこといろいろ教えてほしいなぁって……」
「俺らのこと?」
「は、はい。あ、もしよかったら私のことも知って欲しいなぁって……」
「ああ、なるほど。」
「え、何?どういうこと?」
「ああ、ええと、つまりだな――」
☆「――という訳なんだ。」
「へぇ、そうなんだ。」
「あ、あはは、まあね。」
「ふぅん、まあ別に隠すことでもないから私はいいんだけどね。」
「で、でも、やっぱり恥ずかしいし……」
「そう?私は別に気にしないんだけどね。」
「わ、私は気になるの!」
「ふふっ、分かったわよ。」
「う、うん。」
「まあ、とりあえず自己紹介でもするか?お互いの名前も知らないしな。」
「あ、そういえばそうね。」
「う、うん。じゃあ、私の方からね。」
「ああ、頼む。」「お願いね♪」
「あ、はい。ええと、私の名前は――」
☆
「――という感じで、私たちは幼馴染なの。」
「へぇ、すごい偶然だね。」
「ああ、全くだ。」
「はい、本当に驚きました。まさかこんなところで会えるなんて思わなかったから……」
「え、ということはもしかして、セフィちゃんもダンジョン探索士を目指してるの?」
セフィが問いかける。
すると、彼女は少し寂しげに微笑みながら首を横に振った。
そして、まっすぐに俺たちの目を見て言った。
まるで、自分に言い聞かせるように。
決意を込めた瞳で。
自分の想いを吐き出すように。
その言葉を口にする。
彼女にとっての、大切な言葉を。
だから俺は――
彼女の目を真っ直ぐに見つめ返して、こう答えた。
自分なりの覚悟を込めて。
俺にとっての、大切な言葉を。
それがきっと、彼女にとっての一番の望みだと思ったから。
そしてその願いは、俺にとってもかけがえのないものだったから。
だから俺は――彼女の目を見据えたまま、力強く答える。
「ああ、その通りだ。俺はダンジョン探索士になって、世界を救うつもりだ。」
「世界を――救う?」
「ああ、そうだ。俺はそのためにこの学校に入った。」
「――ッ!」
「クロア君――」
「それに、この学校にはお前もいるからな。」
「え、それって、どういう意味?」
「そのままの意味だよ。」
「だから、それってどういう――」
「お前と一緒にダンジョン探索士になるためだ。」
「――!?」
「セフィがこの学校に入るのなら、俺は絶対にセフィに追いついてみせる。」
「クロア君、それって…………」
「ああ、セフィがこの学校に入ってくるなら、俺はセフィより強くなってみせる。セフィがこの学校に入学してくるなら、俺はセフィよりも早くダンジョン探索士になってやる。」
「…………どうして?」
「俺がそうしたいからだ。俺はセフィと一緒にダンジョン探索士になりたい。セフィに負けたくない。セフィの隣に立てる男でありたい。セフィの力になりたい。セフィの夢を叶えるために。セフィの笑顔を守るために。」
「…………」
「だからセフィ、待っていてくれ。必ず追いつくから。」
「…………」
「セフィ?」
「――ばか。」
「え?」
「なんでそんなこと言うのよ!」
「え?え?ど、どうしたんだよ?」
突然怒り出したセフィについていけず、狼戸が混乱していると、セフィが顔を真っ赤にして叫ぶ。
そして、セフィは教室から走り去って行った。
☆ セフィが教室から飛び出していった後、残された俺たちは呆然と立ち尽くしていた。
セフィが何故怒っていたのか、さっぱり分からなかったのだ。
そんな俺たちに、先ほどの女子生徒が話しかけてくる。
確か名前は――
そうだ、思い出した。
同じクラスの子だったはずだ。
確か、名前は――
そうだ、思い出せない。
だが、今はそんなことはどうだっていいだろう。
それよりもセフィの方が重要だ。
俺はすぐに教室を出てセフィを追いかける。
☆ セフィは校舎裏にいた。
俺はセフィに声をかけようとする。
しかしそれより先にセフィの声が聞こえてきた。
誰かと話しているようだ。
盗み聞きするつもりはなかったが、自然と耳に入ってきた。
どうやら相手は女子生徒らしい。
俺は見つからないように身を潜め、耳を傾ける。
すると、セフィの話し声がはっきりと聞こえるようになった。
内容は分からないが、泣いているような声だ。
俺は思わず声をかけそうになる。
しかし、女子生徒の言葉を聞いて踏みとどまった。
そして、女子生徒は最後にこう言った。
涙声で、震えながら。
でも、はっきりと言った。
セフィの背中に向かって。
女子生徒は泣き笑いの表情を浮かべながら、こう言った。
そして、セフィは振り返ることなくその場を去った。
☆ セフィは校舎の裏にある焼却炉の近くで膝を抱えて座っていた。
俺はセフィの前に回り込み、声をかける。
一瞬ビクッと肩を震わせたセフィだったが、俺だと分かると安心した様子で顔を上げた。
そして、セフィは俺の顔を見るなり驚いた表情を見せる。
「――!く、クロア君?いつからそこに?」
「ついさっきだけど?」
「そ、そうなんだ。」
「ああ。」
「えっと、何か用かな?」
「用がないと来ちゃダメなのか?」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
「そうか。」
「う、うん。」
「それで、何があったんだ?」
「え?な、何もないよ?」
「嘘つけ。」
「うっ……」
「何かあったんだろ?」
「そ、それは……」
「話してくれないか?」
「…………」
「頼む。」
「…………」
「セフィ。」
「…………」
「セフィ!」
「――!な、なに?」
「何があったんだ?」
「―――」
「セフィ?」
「…………」
「セフィ、頼むから教えてくれ。」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………分かったわよ。話すわ。」
「ありがとう。」
「いえ、でもその前に一つだけいいかしら?」
「なんだ?」「私が話すこと、笑わないで聞いてくれる?」
「当たり前だ。」
「本当?」
「ああ。」
「本当の本当に?」
「ああ。」
「本当の本当に本当の本当に?」
「ああ。」
「本当の本当に本当に本当に?」
「ああ。」
「本当の本当に本当に本当に本当に?」
「ああ。」
「本当の本当に本当に本当に本当に?」
「ああ。」
「本当に本当に本当に本当に本当に?」
「ああ。」
「…………じゃあ言うね。実は私、好きな人がいるの。」
「…………」
「その人はね、私の幼馴染でね、私と同じ学校の人でね、私のことをいつも助けてくれるの。」
「そうか。」
「うん。」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
セフィの話を聞きながら、俺はセフィの想いの深さを感じていた。
そして、同時に自分の不甲斐なさを感じずにはいられなかった。
セフィの想いがこんなにも強いのに、俺はこんなにも弱い。
俺はセフィの気持ちに応えられないかもしれない。
だからせめて――
俺はセフィの想いに答えようと思った。
だから俺はセフィに言った。
自分の想いを込めて。
自分にとっての、大切な言葉を。
そしてその願いは――俺にとってもかけがえのないものだったから。
だから俺は――セフィの目を見据えたまま、力強く答える。
自分にとっての、大切な言葉を。
俺にとっての、大切な想いを込めて。
俺にとっては、それが一番大切なことだったから。
だから俺は――セフィの目を見据えたまま、力強く答える。
自分にとっての、大切な言葉を。自分にとっての、大切な願いを込めて。
俺にとって一番大切なことは――セフィの力になることだから。
☆
「――だから私はその人の力になりたいの。」
「そうか。」
「うん。」
「それで、どうしたいんだ?」
「え?どうって?」
「セフィはその人のことが好きってことでいいんだよな?」
「う、うん。もちろん。」
「なら、どうすればいいかは分かってるんじゃないか?」
「…………」
「セフィがどうしたいか、どうすべきか、セフィが一番よく分かっているんじゃないのか?」
「…………」
「セフィ、もう一度聞くぞ。どうする?」
「…………」
「どうしたいんだ?」
「…………」
「…………」
「…………」
セフィはしばらく黙っていたが、やがて顔を上げ、真剣な眼差しを向けてくる。
そして、はっきりとした口調でこう告げた。
俺の目を真っ直ぐに見つめながら。
俺にとっての、大切な言葉を。
俺の願いを叶えるために。
だから俺は――彼女の目を見据えたまま、力強く答える。
自分にとっての、大切な言葉を。自分にとっての、大切な想いを込めて。
☆
「どうするかなんて決まってるわ。」
セフィはそう言って、俺から視線を外して空を仰ぎ見る。
そして――満面の笑顔で言い切った。
俺にはセフィが何を考えているのかは分からない。
でも、セフィがどんな結論を出したのかは分かる。
セフィは俺を見て微笑みながら、言葉を続ける。
まるで、俺の心を読み取ったかのように。
「私、告白してくる!」
☆ 放課後になった。
俺はいつものように校舎裏でセフィを待っていると、セフィが現れた。
俺はセフィに話しかける。
「セフィ、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。」
「それならいいが……」
「心配してくれてありがとう。でも、もう覚悟はできてるから。」
「そうか……。」
「うん。」
「…………」
「…………」
俺たちの間に沈黙が流れる。
すると、セフィが突然頭を下げてきた。
「クロア君、ごめんなさい!」
「え?な、なんで謝るんだ?」
「だって、私が勝手なことしたせいで、クロア君まで変な噂が立っちゃったし……」
「そんなの気にすんなって!」
「でも……」
「本当に気にしてないし!それに、そんなのただの噂だろ?そんなのは放っておけばそのうち消えるさ。」
「クロア君…………」
「だからセフィは今まで通り過ごしていればいいさ!」
「…………」
「セフィ?」
「…………」
「おい、セフィ?」
「――ばか。」
「え?」
「…………」
「セフィ?」
「…………」
「セフィ、どうかしたのか?」
「…………」
「セフィ、本当に大丈夫か?」
「…………」
「セフィ、なんか顔赤いけど……」
「…………」
「…………」
「…………」
セフィは何も言わず、俺のことを見つめている。
その目は潤んでいて、頬も赤くなっているような気がする。
これはもしや……風邪だろうか? そういえば、朝から少し様子がおかしかったような気もする。
そうか、それであんなにボーッとしていたんだな。
体調が悪いのなら無理をする必要はないだろう。
今日はもう帰った方がいいかもしれないな。
俺はそう思い、セフィに声をかけようとしたのだが、それより先にセフィの声が聞こえてきた。
とても弱々しい声で。
セフィは俯きながら、絞り出すように声を出す。
その様子はとても辛そうだった。
俺は思わず息を飲む。
そして、セフィはゆっくりと口を開いた。
震えながら。
涙を堪えながら。
勇気を振り絞るように。
セフィは顔を真っ赤にしながら、それでもはっきりと言った。
俺にとっての、大切な言葉を。
☆ セフィは顔を上げて、真っ直ぐに俺の目を見据えながら、自分の想いを伝える。
その想いは、俺にとっての、大切な言葉で。
俺はセフィの言葉を聞いて、セフィが今どんな気持ちなのかが分かった。
セフィはずっと悩んでいたのだ。
自分の想いを伝えようかどうか。
でも、伝えようと思ったのは、きっと俺のおかげだ。
俺が背中を押したから、セフィは自分の想いを伝えたくなったのだと思う。
だから俺はセフィに言う。
自分の想いを込めて。自分にとっての、大切な言葉を。自分にとっての、大切な願いを込めて。
自分の願いを叶えるために。
☆ 私はクロア君の目を真っ直ぐに見据えたまま、彼の言葉を待つ。
私はこの想いを彼に伝えるために、今まで生きてきたと言ってもいい。
だから、私は迷わない。
たとえ何があっても、絶対に諦めない。
私はクロア君の顔を見ながら、はっきりと宣言する。
私の想いを。
「私はね、あなたのことが好きなの。」
☆
「私はね、あなたのことが好き。」
「――っ!」
俺はセフィの口から発せられた言葉に動揺する。
しかし、俺はすぐに冷静さを取り戻す。
そして、セフィの目を見つめながら、しっかりと答える。
自分にとっての、大切な言葉を。自分にとっての、大切な想いを込めて。
自分の願いを叶えるために
「俺も好きだ。」
☆
「俺も好きだ。」
その瞬間、私の心臓が跳ね上がるのを感じた。
自分の想いが伝わったことに対する喜び。
自分の想いを受け入れてもらえたことへの嬉しさ。
そして、自分の想いを受け入れられたことによる幸福感。
それらが一気に押し寄せてきて、私は胸が一杯になる。
でも、私はここで止まらない。
止まるわけにはいかない。
私は溢れ出そうになる感情をぐっと抑え込み、平静を装いながら、言葉を続ける。
☆
「ふふ、ありがとう。」
「ああ。」
「じゃあ改めて、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくな。」
俺はそう言って笑いかける。
すると、セフィも笑顔で返してくれた。
それはとっても綺麗な笑顔で、俺は思わず見惚れてしまう。
セフィはそんな俺の様子に気づくと、恥ずかしそうに視線を逸らした。
「そ、それじゃ、教室に戻りましょうか?」
「そうだな。」
「うん。」
俺たちはそう言って歩き出した。
そして、並んで歩いていると、突然俺の腕に柔らかいものが触れた。
「セフィ?」
俺は不思議に思ってセフィの方を見ると、そこには顔を赤くして俯いているセフィがいた。
どうやら俺の袖を摘んでいるらしい。
俺は一瞬戸惑ったが、そのままセフィと一緒に歩いた。
☆ 私たちは校舎裏から出て、二人で校舎に向かって歩いていた。
((き、緊張した~))
私たち二人は、さっきのやり取りを思い出して悶絶していた。
まさか告白することになるとは思わなかったから、正直かなりテンパってしまった。
ただでさえ人前で話すのは苦手なのに、あんなことを言った後でまともに話せるはず
「ねえ、クロア君。」
「なんだ?」
「さっきの話だけど……」
「さっき?」
「私にとって一番大切なことはあなたを助けることだっていう話よ。」
「ああ、あれか。」
「あの時、私には二つの選択肢があったわ。一つはクロア君と恋人になることでクロア君を守ること。もう一つはクロア君と付き合わずに今まで通り過ごすこと。」
「…………」
「でも、私にとってはどちらも同じことだったわ。」
「…………」
「だって、クロア君と一緒ならどんなことでも乗り越えられるって信じてるから。」
「…………」
「それに、クロア君といると落ち着くし、安心できるから。」
「…………」
「だから、私はこれからもクロア君の隣にいたい。クロア君の恋人として一緒に過ごしていきたい。」
「…………」
「ダメかな?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
私はクロア君が何も言わないので不安になり、顔を上げてクロア君を見た。
クロア君は私の方を見て、優しい笑みを浮かべていた。
その顔はいつもより大人っぽく見えて、私はドキッとする。
クロア君が黙っていたのは、私が不安になっていることに気付いてくれたからだ。
そして、私が不安にならないように
「俺も同じだ。」
「え?」
「俺もセフィと一緒にいればどんな困難も乗り越えられそうな気がするんだ。」
「…………」
「セフィが傍にいてくれるだけで、俺は頑張れる。」
「…………」
「だから、俺はセフィと一緒に生きていきたい。」
「…………」
「俺もセフィのことが好きだ。」
「――っ!」
「俺もセフィのことを幸せにしてみせる。」
「――っ!」
私はその言葉を聞いて、目頭が熱くなるのを感じた。
私は今までの人生の中で、こんなにも嬉しいと感じたことはなかった。
私は今までの人生の中で、これほど幸せな気持ちになったことがなかった。
私は今までの人生の中で、これほど心の底から誰かを好きになったことは一度たりとも無かった。
私は今までの人生の中で、これほど愛おしいと思ったことは無かった。
私は今まで
「クロア君っ!」
「うおっ!?」
私は堪らず、隣を歩くクロア君の胸に抱きついた。
私は溢れ出る涙を隠すように、顔を埋めながら言う。
「私、今すごく幸せよ。」
「俺もだよ。」
「本当に?」
「本当さ。」
「嘘じゃない?」
「当たり前だろ?俺はセフィにウソはつかないさ。」
「そうよね。」
「ああ。」
「じゃあ、キスしてくれる?」
「いいのか?俺なんかで。」
「うん。私はクロア君がいいの。」
「そうか。じゃあちょっと待ってくれ。」
そう言うと、クロア君は立ち止まった。
そして、ゆっくりと深呼吸をして、気持ちを落ち着かせているようだった。
私はその様子をじっと見つめる。
クロア君は、やがて覚悟を決めたようで、私を見つめ返してくる。
「じゃあ、行くぞ。」
「うん。」
「俺はセフィを世界一大切に想っている。」
「……私もよ。」
「だから、結婚を前提に付き合ってください。」
「はい。喜んで。」
こうして私たちは、晴れて恋人同士となったのであった。