私には幼馴染が存在する。
母親同士が同級生であり、生まれた年が同じな事から小さい時からよく一緒にいた。
けど、中学に上がる頃に父親の仕事の関係で他の県に引っ越す事になった為それ以来彼とは会ったことは無い。
幼馴染あるあるの『大きくなったら結婚する』。そんな約束をする程私達は仲が良いわけでもなかったため(悪いわけでもない)転校してからは一切連絡を取ったりしてない。母親同士ではよく連絡を取り合ってて近況をたまに聞いたりはしていたが興味はなかった。
しかしまた父親の仕事の関係で引っ越すことになった。てか、前の住んでた町に戻る事になった。
なんかここまでくるとよくある恋愛漫画みたいな展開になっているが、一番重要な部分である『大きくなったら結婚する』と言う約束をしてないから多分何もないだろう。
向こうだってきっと私の事を忘れている。
入学式の日にお母さんに言われるまで私が忘れていた様に。
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いや、車に轢かれたって何があったの?
初めての学校が終わってお母さんの開口一番が「八幡くん車に轢かれたって」は流石に驚いたよ。
お母さん同士一緒に入学式を見ようと約束していたらしく、時間になっても現れない友達に電話したところ車に轢かれたとお母さんは聞いたそうだ。
足が折れただけで命に別状はないそうだけど…流石に入学式当日に車に轢かれるって比企谷くんって悪い人なのかな?と思ってしまう。
今は比企谷くんが運ばれた病院に車で向かっている。
お母さんに八幡くんの入院した病院にお見舞いに行くけど行くかと言われて反射的に行くと答えてしまった。
3年も前に別れた彼と久しぶりに会う。望んでも望まぬでもなかった彼との再会。
少しの緊張感だけが私の中にあった。
▽▼▽
あまり行く機会が無い病院。運動系の部活動をした事のない私はなおさら。
つんとは感じないけどほのかなアルコールの匂いを感じる。病院独特の匂い。いい匂いではないけど嫌いでもない。
比企谷くんのところへと向かう。
廊下を歩いているといろんな人を見る。
大体がお爺ちゃんやおばあちゃんだけどちらほら子連れの親や一人の若い人。それに松葉杖をついて歩く人。
比企谷くんもあれで歩くのかな。それとも車椅子で移動かな。
少しだけ松葉杖に憧れてたりする。怪我もなければ中学の頃に松葉杖をつくほどの怪我をした知り合いもいなかった為、松葉杖をついて歩く経験をしたことがなかった。
一度くらいは経験してみたい。
もしかすると比企谷くんから借りれるかな?
「ふふ」
「ん?何か面白いものでもあった?」
おっと、つい笑ってしまった。
「何でもないよ」
松葉杖を借りれるほど仲良くなれるのかなと思うと無理だと直ぐ結論が出てしまって少しだけ面白かった。
「ここね」
お母さんが止まった前の扉には『比企谷八幡』と言う名前が書かれたプレートがあった。
個室なんだ。
名前のプレートを入れるスペースが比企谷くんのだけしかないのは個室だからだろう。まあ個室だろうが共同だろうがは比企谷家が決める事。私には関係ないや。
お母さんがコンコンと扉を叩く。
「はーい」
中から聞き覚えのある女の人の声。比企谷くんのお母さんだろう。
お母さんが扉を開ける。
「失礼するわね〜」
私も続けて中に入る。
「失礼しま…」
中に入ると部屋の隅の方に置かれたベッドに寝ている比企谷くんがいた。
どんよりとした姿勢。横に跳ねた髪に触覚。今にもため息を吐きそうな表情に、酷く表すなら死んだ魚の様な眼をしていた。
「あら〜!八幡くん久しぶり!元気にしてた!?足痛くない?」
友人に挨拶を交わした後に比企谷くんに近づいて話すお母さん。
少し戸惑いながらも話を交わしている比企谷くん。
久しぶりの再会は感動の再会になるとは思っていなかった。今も思っている。それになる程思い出を積んできたつもりはないからだ。
じゃあ彼に対するこの気持ちは何だろうか。
直ぐに気づいた。
「ほら、茜も挨拶なさい…どしたの、なんか顔赤いけど」
「へ?」
久しぶりに会った比企谷くんが私のすごいドストライクなタイプだった。