「茜、食堂行こ」
「いいよー」
総武高校に入学してから一週間が経った。クラスではもうある程度のグループが出来ている。
私も一つのグループに入っている。今私に声をかけたのが安藤なこ。その後ろにいるのが堺真琴。
二人とは小学生の頃によく遊んでいた友達だった。中学の頃もちょこちょこ連絡を取り合って偶に会って遊んだりをしていた。他のクラスにも何人か二人みたいに遊んだらした子がいる。
こっちに帰ってくると言った時は二人とも喜んでくれて凄い嬉しかった。しかも同じクラスだし。
まあそのせいってわけじゃないけど新しい出会いは無さそうかな。
「今日は何食べよっかなー」
「昨日はラーメン食べてたよね」
「先輩に聞いたけどここはカツ丼が一番美味しいって言ってたよ」
因みに私と真琴は持参の弁当、なこだけが食堂でいつも昼ご飯を買っている。
「カツ丼かー、最近ちょっとお腹出て来たからなー」
「それはいつものことでしょ」
そう言うとなこは何をー!と若干怒り気味な様子を見せる。なこの隣で真琴はふふふと笑う。
「ふん!その分運動すれば良いだけの話よ!」
「そう言って運動してるなこを私は見たことない」
「私も同じく」
ぐぬぬと、なこは何故か悔しそうに真琴を見る。まあ気持ちはわかる。中学の頃から偶に会う度思ってたもん。真琴、あんた綺麗になりすぎだって。
今も廊下を歩いてるだけで通り過ぎる男子生徒はおろか女子生徒まであんたの事見てるもん。
身長175cmの出てるところは出て、出なくて良いとこは出てないモデル体型。顔もキリッとした感じで男装したら多分女子が発狂するくらいにカッコいい。髪は肩に少しかかるくらいでサラサラだし完璧だよ。この前腹筋見せてもらったけど綺麗だったよ。うん。
あの腹筋は見たら元気出るよ。歩く高麗人参(?)
多分来月までにはファンクラブ出来てるよ。私も出来たら入るし。
「くそぉ…天は何で真琴に二物も三物を与えてしまったのか…」
「私はなこと違ってちゃんと運動してるから。だからなこも中学の頃に一緒にバスケ部入れば良かったのに」
偶に、二人は中学の頃の話をする。私を除け者にしたい為じゃない。話の流れでそうなったりするのだ。聞いてて楽しいよ?でも、少しだけ寂しいとは思う。
「まあなこも痩せれば可愛くなるんじゃない?痩せれば」
「くぅー!茜も運動してないくせに何で痩せてんのよ!」
「私はなこと違って食べすぎないだけですぅ〜」
きぃー!と、悔しがる様子。一体何処から口に咥えてるハンカチを出したのか。てか、そんなリアクションする人初めて見たよ。もう芸人目指してよ、なこは。
▽▽▽
昼休みは終わり5時間目の授業が始まる。静かな教室内は先生の声と黒板に書く音だけが聞こえる。中学の頃にあったざわざわとした浮ついた雰囲気は一切感じる事なく黙々と勉学に励める環境だった。
流石は進学校と言ったところか。勉学を疎かにしたら直ぐに置いてかれそうな気がする。
…確かに大変だけど、別に良かったのにな。
そう思いながら私は少しだけ視線を窓の方へと向ける。
比企谷くんと再会した次の日、私はまた比企谷くんのいる病院へと向かった。学校で出されたプリントを比企谷くんに渡すために。その際に比企谷くんに学校に来るまで私がノートを書いてあげるよと言った。
比企谷くんはそれは悪いからいいと断ったのだ。別に私は構わないと言っても断ってくる。そのやりとりを何回も繰り返し続けて最後には私が折れて私が書いたノートを貸すと言う事になった。
私は溜まったら大変だからと理由を付けて今のところ毎日比企谷くんのとこに行っている。結果オーライというわけ。
『字…綺麗だな』
ノートを貸した際、比企谷くんにそう褒められたと事を思い出す。少しだけ緩む口元を私はむりくり戻してまたノートを取り始める。
▽▽▼
「私も茜について行こうかな」
放課後、帰る準備をしている私の横で真琴がそう言った。
「あ、私も面白そうだしついて行こうかな!」
その隣でなこも便乗してそんな事を言い出す。
「いやいや!そんな大人数で行っても比企谷くんに迷惑だし!」
「大人数って程じゃないでしょ。それよりも毎日来られる方が迷惑じゃない?」
「ぐぅ…」
の音が出た。まさかなこに正論を言われるとは。ノートを貸すと言う大義名分で毎日行ってるけど…多分迷惑だよね〜。
「まあ本人が来ないでと言わない限りは大丈夫なんじゃないか?」
「だ、だよね!?」
「あからさまに喜んでるわね…どんだけ好きなのよ。比企谷のこと」
「すっ!?」
好きって!え!?何でバレてんの!?
「何でバレてんのって…ねえ?」
「あぁ…」
二人が顔を見合わせてから私の方を見てくる。てか心の声ナチュラルに読むのやめて?
「入学式の次の日の学校で出されたプリントをわざわざ職員室まで行って先生に私が比企谷くんに持ってきますといいに言ったり」
「私たちが遊ぼうと誘っても放課後は比企谷くんのところに行くからと断ったりする様子を見る限りは…」
「「恋する乙女にしか見えない」」
「っ!」
そ、そんなはっきり言われると恥ずかしすぎる!
「私たちだけじゃなくて周りも気づいてるから」
「他のクラスの友達も茜の比企谷くん好きは凄いねって言われてるよ」
「お、おいうちはもう…」
もうHPはゼロよ…。
「ま、そのことバラされたくなかったら」
「私たちの同行を許可したまえ」
因みに拒否権はないからとなこの追撃で、私は二人の同行を許可したのであった。