誰が為に艦娘はいく   作:愉快な軍楽隊

1 / 4
※注意
ゲーム内容準拠で話は進行しませんのでゲーム準拠じゃなきゃやだという人はあんまり期待することはおすすめしません。
艦娘の性格などの設定は作者のイメージです。あなたの中のイメージと違っても怒らないでください。



第一話 左遷

 「……私なにしてるんだろう」

 

 島風は重いため息を吐くと、右手に持っていたジャガイモを無造作に後ろへと放り投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 「横須賀鎮守府第一艦隊所属駆逐艦島風は、本日付で横須賀鎮守府第五艦隊へ異動とする」

 

 島風は最初、目の前にいる人物が何を言っているのか理解することが出来なかった。この重要な作戦中に最新鋭の駆逐艦である自分が異動されることになるとは考えが及ばなかったからである。

 

 「提督、何かの冗談ですよね?」

 

 「島風、私は冗談を言うほど暇ではないよ」

 

 提督と呼ばれた男性は、そう言いながら手元の書類へとペンを走らせる。

 

 「これが異動の命令書だ。これを持って第五艦隊に向かいなさい」

 

 「嫌です。私はまだ戦えます。ここで戦わせてください」

 

 島風は強い口調でそう言うと自分の手元に寄せられた命令書を男性の方に押し戻した。

 

 「これは命令だ。どうしても従えないのなら上層部に言い給え」

 

 男性は興味が失せたのか、視線を島風から自分の手元に戻すと再び書類の処理作業へと戻った。

 

 「……提督なら私のこと分かってくれると思ってたのに。提督なんて大っ嫌い!!」

 

 島風は目の前の男性に別れの挨拶を告げると、机の上の忌々しい命令書を無造作に掴み、執務室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 島風は所属していた横須賀第一艦隊司令部のある海沿いの場所から、まともに舗装されていない凸凹道を軍用トラックで20分ほど移動すると目的の場所へとついた。

 

 「うぅ~、気持ち悪い。酔った」

 

 これから毎日のようにあの凸凹道を使ってくるのかと思うと島風は憂鬱な気分となった。そんな島風の気分を更に憂鬱にさせる為にあるのかは分からないが、目の前には、植物のツタが複雑に絡まった赤いレンガ造りの建物が建っている。

 

 「まさかこのオンボロ倉庫みたいなのが司令部なわけないよね」

 

 そんな島風の疑問に誰も答えてくれはしなかったが、代わりに建物には第五艦隊と今にも朽ちそうな木の看板がかかっていた。

 

 「……本当にここなの」

 

 半ば諦めた様子で島風は呟くと目の前のところどころ赤サビがこびりついた鉄製扉を開いた。

 扉を開いた先は島風の予想よりは綺麗な白い漆喰の壁が広がっており、壁には『右に三つ目の部屋が執務室』と書かれた大きめの紙が貼ってある。

 島風は何故あんな張り紙があるのかと思ったが、どの部屋も本来、名前の入ったプレートがある部分は空白になっており扉も同じ形をしていた。

 島風は素直にチラシに書かれてある通りに右に三つ目の部屋の扉をノックした。

 

 「どうぞ、入ってください」

 

 部屋の中からは女性の声が聞こえてきた。最近では珍しくなくなった女性の提督だろうと島風は考えながら扉を開くと、どこかで見たことがあるような巫女服姿の女性が執務机の椅子に不機嫌な様子で座りながら山のような書類と格闘していた。

 

 「失礼します。本日付で第五艦隊に配属となりました駆逐艦島風です。貴女が提督ですか?」

 

 島風が着任の挨拶を兼ねた自己紹介をすると、目の前の女性はペンを持った手を止め、書類から顔を上げると軽く自己紹介を行った。

 

 「いいえ違いますよ。私は、この司令部の秘書艦を務めています、扶桑型戦艦一番艦の扶桑と言います。今はいないけど妹の山城共々これからよろしくね」

 

 「よろしくお願いします。あの、提督はどちらに」

 

 「あの馬鹿。いえ、提督なら現在、少し席を外しております。戻ってくるまでそこのソファーでゆっくりしていてちょうだい」

 

 勧められるままに島風がソファーに座ろうとした時、執務室の扉が勢い良く開くと白いタンクトップ姿にカーキ色の短パンを穿いた男性が入ってきた。

 

 「あら、提督お帰りになられましたか。花火はどうでしたか?」

 

 「夏とはいえ、真っ昼間にやる花火は風流のかけらもないな。でも、彼女たちは楽しんでいたよ」

 

 「それは良かったですね。私も行けば良かったです。こんな書類整理は放り出して」

 

 「そんな怒らないでくれ。ほら、ラムネ持ってきたから」

 

 提督はそう言うと三本持ってたうちの一本を扶桑に手渡した。

 

 「提督、勝手に備品に手を付けないでください。また書類を訂正しなければいけないじゃないですか」

 

 扶桑はそう言いながらチビチビと手渡されたラムネに口をつけながら書類の山をかき分けていた。

 

 「ケチなこと言わなくてもいいじゃないか、扶桑だってのどが渇いていただろう? それにここには備蓄だって大量にあるのだから」

 

 「いくら大量にあっても勝手に持ち出すと横領ですよ。それと例の娘が来てますよ」

 

 「あぁ、君が島風だね。あちらから聞いているよ。ここまで来るのにのどが渇いただろう」

 

 そう言うと提督は右手に持っていたラムネを島風に差し出した。

 

 「あ、どうもありがとうございます」

 

 受け取ったラムネは少しぬるくなっており、口に含むと強い炭酸を感じた。

 

 「一応、紹介しておくとしよう。私が、この第五艦隊司令部で司令官を務めている者だ。提督でも司令官でもオッチャンでも好きな様に呼んでくれ」

 

 提督は何がおかしいのかわからないが、豪快にラムネを煽りながら笑っていた。

 

 「本日付で第五艦隊に配属となりました駆逐艦島風です。よろしくお願いします」

 

 島風は飲みかけのラムネをソファーとセットで置かれているテーブルの上に置くと、自己紹介をすると提督に向けて敬礼をした。

 

 「よろしく。楽にしてくれて構わないよ。君のことは聞いている。キス島撤退作戦では、大活躍だったそうじゃないか」

 

 「ですが、あの作戦は私が突出しすぎたせいで失敗に終わりました」

 

 「若いうちは失敗もしておくものだよ。それに無事に生きて帰ってくれば次があるさ」

 

 「貴方も前の提督と同じことを言うのですね。私にそんな気休め入りませんよ」

 

 「私は思ったことを言ったまでだよ」

 

 「そうですか。ところで私は、ここで何をすればいいのでしょうか?」

 

 「今のところ特に何もしなくていい。して言うなら時々遠征に行ってもらう程度だな」

 

 提督の言葉に島風は耳を疑った。ある程度の閑職に回されるだろうと島風は予測していたが、まさか艦隊型駆逐艦の最高峰である自分が、よりにも戦場と縁遠い遠征組に編入されるとは思っていなかったからだ。

 

 「遠征なんかよりも出撃させてください」

 

 「それは無理な相談だな」

 

 「私が突出して艦隊行動を乱したことがあるからですか?」

 

 「君はなにか勘違いしているようだね。私達の仕事は遠征を行い有事に備えて常に資源等を備蓄しておくことだ。当然、第一艦隊なども資源の備蓄は行っているが、あちらの備蓄が切れた際は、この第五艦隊から資源が運びだされる」

 

 「それと、私が出撃できないのと関係があるのですか?」

 

 「大いに関係がある。第五艦隊が上から与えられてる私の権限は君たち艦娘を管理し、編成を行った上で遠征を行うことだけだ。出撃することも演習を行うことも第五艦隊は出来ない。命令でもあれば別だが。そんな第五艦隊に何時しかついた名称が倉庫艦隊だ」

 

 「そんなことを言われて悔しくないのですか!!」

 

 提督の話を聞いた島風は激しく憤った。倉庫と呼ばれ虚仮にされながらも笑う目の前の提督にも、こんなところに飛ばされてしまった自分にも怒りを覚えた。

 

 「気にする必要はないと思っている」

 

 提督のその言葉で島風の中の何かが切れた。理性という堤防を乗り越えた怒りは急激に島風の顔から表情を奪い去っていった。

 

 「では、私に出来る任務はないのですね」

 

 「そうだな。第三倉庫に納入されたジャガイモの数でも数えておいてくれないか。貴重な食料だからな」

 

 「了解しました」

 

 「……いや、冗談だぞ」

 

 最後の提督の言葉を無視し、島風は口早に返事をすると扉を開け部屋からさっさと出て行ってしまった。。

 

 「……扶桑。どうやら怒らせてしまったようだ」

 

 扶桑は毎度のことながら目の前の少し困った顔をした提督には怒りさえ通りすぎて呆れるしかなかった。そんな顔をするなら何も言わなければいいのにと常々思っているが、言ったところでどうせか聞き入れないので言わないことにしていた。

 

 「提督は一度辞書で尊厳やプライドの意味について調べたほうがよろしいと思います」

 

 「辛辣だね」

 

 提督はそう言うと深くソファーに腰掛け、温くなったラムネをのどの奥へと流し込んだ。

 

 「提督がこの程度で反省をしてくださるなら私は大助かりなのですが」

 

 「もちろん反省しているさ」

 

 「では、反省文の代わりにこちらをどうぞ」

 

 扶桑は、そう言うと提督の前に50cm程度の分厚さの書類の山を4つほど運んできた。。

 

 「……あー、そういえばそろそろ遠征に行った娘達が帰ってくる頃か」

 

 「提督、本日は誰も遠征に出ていませんよ。諦めてさっさと手を動かしてください」

 

 「ほら、今日は色々あるから明日にしないか?」

 

 「そうやって後送り後送りにした結果がこの書類の山じゃないんですか」

 

 「でもだな」

 

 「いいですよ。提督が明日からするというなら自由になさってください。でも、私は一切手伝いませんから」

 

 そう言うと扶桑は手に持っていたペンを机の上に置き、執務室から出ていこうとする。

 

 「悪かった。私が悪かった。だから、手伝ってくれ」

 

 提督はそう言いながらいつの間にやら完全に床の上で土下座の体勢になり、額を床へと擦り付けていた。

 

 「……はぁ~、では、真面目にやってくださいね」

 

 島風のことも気になるが、目の前の書類と提督を放置していくわけにもいかないので、いつものことながらお節介焼きの彼女に期待することにした。

 

 扶桑は、腰に手を当てながらため息を吐くと満更でもない様子で書類整理へと取り掛かかった。

 




多分、3話ぐらいまではすぐに更新すると思います。
本来は3話ぐらいまでで1話になっていたのですが、こんな文章あんまり長いと読んでる方もだれてしまうだろうと思い3分割することとなりました。

これからも付き合っていただける方はしばらくお付き合いください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。