誰が為に艦娘はいく   作:愉快な軍楽隊

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とりあえず2話目投稿しました。
サブタイトルは『ばれいしょ』と読みます。ジャガイモのことです。


第二話 馬鈴薯

 勢い良く部屋を飛び出したものの第三倉庫の場所がわからず、当てもなく第五艦隊司令部の中を彷徨うことおおよそ30分。ようやく見つけた第三倉庫で島風は白熱電球の薄暗い灯りのもと黙々とジャガイモの数を数えていた。

 

 「……152個」

 

 あの時は、この場所にいては自分もあの提督のように腑抜けになるような気がして半ば自棄糞で部屋を出てきてしまったが、自分をこのまま飼い殺しにするも活かすも提督の裁量次第ということ考えると自分はなんて馬鹿なことをしてしまったのだろうかと島風は頭を抱えた。

 

 「……私なにしてるんだろう」

 

 島風は重いため息を吐くと、右手に持っていたジャガイモを無造作に後ろへと放り投げた。

 

 「食べ物を粗末にするのは感心しませんわね」

 

 「オゥッ!!」

 

 この倉庫には自分以外は誰も居ないと思っていた島風は、驚きつつも先ほどの独り言を聞かれたのではないかと思いバツが悪い気持ちになった。

 島風は出来るだけ、悟られ無いよう気持ちを顔に出さずに後ろにゆっくりと振り向くと、ブラウンの髪の毛に上下共に髪の色に合わせたのか上下で少し色は違うがブラウンの服装をした女性が立っており、左肩から右斜め下へと横断するように艦娘の証でもある艤装が袈裟懸けされていることからも自分と同じく艦娘であろうことが予測できた。

 

 「私は本日付でここに配属となった駆逐艦島風といいます。貴女もここの所属なんですか?」

 

 「えぇそうですわ。(わたくし)は重巡洋艦の熊野ですわ。これからよろしくお願いしますわね」

 

 熊野は軽く自己紹介を済ますと右手に持っていたジャガイモを木箱の中へと戻した。

 

 「ところで貴女こんなところで何をしていらしたの?」

 

 「…………」

 

 熊野は島風に質問したが、こんなところで何をしていたのかはおおよそ予測がついていた。そして誰のせいで目の前の少女が重いため息を吐く羽目になったのかも。

 それでも熊野は島風が自分から答えてくれるのを待つ。そして少し意地悪になってみることにした。

 

 「黙るということはやましい事でもしていらしたのかしら?」

 

 「……ジャガイモの数を数えてました」

 

 「あら、そうでしたの。私、仕事の邪魔をしてしまったかしら?」

 

 「そ、そんなことないです。それに……」

 

 「でも、仕事の邪魔をしてしまったかもしれないと思うと私の気が収まりませんわね。そうね。私も貴女と一緒にジャガイモを数えますわ」

 

 いきなり話しかけられ考えの纏まらない島風を余所に熊野は一気に捲し立てるように喋ると、島風の返事も聞かずに早速、木箱の中からジャガイモを取り出しては空きの木箱へと移しながら数を数え始めた。

 

 「そんな、別に手伝っていただかなくても一人で大丈夫です」

 

 「二人のほうが速く終わりますわよ。それに私、貴女とお話してみたいの」

 

 どうやら梃子でも動かないつもりの熊野に対して島風は諦め、黙々とジャガイモを数える仕事へと戻った。

 

 「……貴女、こんな場所でジャガイモの数なんて数えて自分は何をしているんだろうって思っていらしたでしょ」

 

 「そんなことはありません」

 

 そう言う島風の顔は仏頂面そのものである。それでも否定する当たり根性があるというべきか頑固というべきか分からないが、熊野はそんなに島風の様子に苦笑いをするしかなかった。

 

 「私の場合は、あまりに腹が立ったので提督に文句を言いに行きましたのよ。こちらは戦うつもりで来ているのにジャガイモの数を数えてくれなんて、あの提督は私達をバカにしすぎですのよ。島風もそう思いますわよね?」

 

 「え……。うーん。そうなのかな?」

 

 「別に私以外は誰も聞いていないのですから、思っていることを言っていいですのよ」

 

 熊野がそういったのを最後に暫くの間二人の間には沈黙が流れ、ただただ、黙々とジャガイモを木箱から木箱へと移す作業を続けていた。

 

 「……本当に聞いてくれるの?」

 

 「勿論ですわ。こう見えて私口は堅いですのよ」

 

 「……私ね。ただ、がむしゃらに頑張って頑張り続けてたら。こんなところに飛ばされて。……私っていらない娘なのかな」

 

 島風は手を止め、静かに独り言をいうように呟くと、ポツポツと話し始めた。

 

 

 

 

 「ようやく終わったな。いやー、扶桑が手伝ってくれなかったら絶対終わらなかったな」

 

 提督はそう言うと持っていたペンをほっぽり出して欠伸をしながらおもいっきり背伸びをした。

 

 「今度からはそうならないようにこまめにしてください」

 

 「善処しよう。しかし、もう夕方か、ずいぶんと時間がかかってしまったな」

 

 「提督が貯めに貯めていましたからね」

 

 「貯めるのが私の仕事だからな」

 

 「書類は貯めないでください!!」

  扶桑はそう言いながら散らかった執務机の上を片付けると一枚の書類を提督に手渡した。  「それが今日の経費です。ちょっと、花火代が高すぎませんか? まさか、余計なものに使っていませんよね?」  「そんなに疑うなよ。余計なものは買っていないさ」  冗談を交えながら二人が後片付けをしている時、執務室に控えめのノックが響いた。  「提督、初霜です」  「どうぞ」  提督が返事をすると、紺色のブレザーに赤いネクタイをきっちりと締めた艦娘が静かな動作で部屋の中へと入ってきた。  「提督、準備が整いました」  「ご苦労様。三日月は?」  「熊野さんを探しに行ってます。どこにいるか知りませんか?」  「いや、朝に会ったきりで、今はどこにいるかわからないな。扶桑、熊野はもう戻ってきていたか?」  提督がそう聞くと、扶桑は執務机の上においてあるクリップボードを手に取り、挟んである書類を何枚かめくると目当ての書類へとたどり着いた。  「おおよそ1時間前に山城と一緒に帰ってきていますね。今の時間は第四倉庫で清掃しているはずです。第四倉庫にいるならばの話ですが」  「だ、そうだ。初霜、済まないが呼んできてもらえるか。私と扶桑は台所に寄ってから向かうとするよ」  「了解しました。熊野さんを見つけたら三日月と一緒に向かいます」  「熊野だけじゃなくて、もう一人の娘もよろしく頼むよ」  「えーと、確か島風さんでしたか? 了解しました」  「君と同じ駆逐艦の娘だ。よろしく頼むよ」  「はい!! 新しい仲間は大歓迎です!!」  初霜は元気に返事をするとタッタッタと廊下に足音を響かせながら第四倉庫の方へと走っていく。  「さて、私達も行くとするか。今日は久々に酒が飲めそうだな」  「……さぁ?」  鼻歌を交えながら、今にもスキップをしそうな足取りで台所へと向かう提督を見ていると、扶桑は駆逐の娘達が買い物に行ったので、多分お酒は無いとは言えなかった。 




最近衝撃を受けたことはジャガイモはナス科だということです。メインにも脇役にもなれるジャガイモは素晴らしい食べ物だと思っています。作中にジャガイモが大量に出てくるのは金曜日のカレーにはジャガイモを使うから備蓄もたくさんあるだろうという発想からです。でも、カレーにじゃがいもを入れない人もいることも考えると、倉庫に山盛りのジャガイモも不自然なような気がしますが、きっとポテトサラダやフライドポテトに変身することでしょう。
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