鬼滅の刃〜雷鳴轟く刻〜   作:グリアノス

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今回はたんじろーの一人称視点がちょっとだけあります。

しかし戦闘描写難しいですね。


第四話

 善逸の霹靂一閃によって斬り飛ばされた腕がボトリと音を立てて落ちる。手鬼は血の滴る腕の断面と善逸を交互に見て、自分の腕が善逸の手によって斬られた事を察する。

 

忌々しい。ああ忌々しいと、手鬼は斬られた腕を生やしながら善逸を睨みつける。

 

「…………何処のガキなのかは知らんが、折角鱗滝のガキを殺せる所だったのに邪魔しやがって。お前も死にたいらしいなぁ!?」

 

 偶々腕を斬れたくらいで調子に乗ったなと、手鬼は殺意を漲らせて幾つもの腕を善逸に向かって打ち出す。殺到する腕が善逸の身体を捉える寸前、漸く刀を握る動作に入った様だが、これだけの攻撃を前に間に合うわけがない。既に攻撃されているのに未だに刀を抜きもしない善逸に、手鬼は原型も留めない程に叩き潰される善逸の姿を幻視して嗤う。

 

「お前、出来もしない事は言わない方が良いぞ」

 

 しかし、目前まで迫った腕は一本たりとも善逸の身体に触れる事は叶わない。善逸と手鬼の間には斬られた腕が地面に落ち、チンッという鍔鳴りの音が響くのみ。

 

(何だ、何が起こった? まさか俺の目で追えない程の速さで刀を抜いて斬ったのか……!?)

 

 そんな事があり得るのかと、手鬼の顔に嫌な汗が流れる。今まで自分が喰ってきた人間の中で最も強かった宍色の髪の剣士ですらそんな事は出来なかったというのに。もしや目の前の剣士は自分の頸を斬れるのでは、と考えてしまった。

 

「……小僧、一体何をしたああぁぁ!!」

 

「分かってる事を聞いてどうするんだよ?」

 

 鱗滝の弟子など最早どうでもいい! 目の前の敵を全力をもって殺すしかない! さもなければ頸を斬られて死ぬ!

 

 四十七年前にも感じた恐怖を再び自覚してしまった手鬼は恐怖と殺意の入り混じった顔で善逸に向けて全ての腕を殺到させる。何本斬られようが、斬られる度に腕を生やしまた伸ばす。

 

届かせるのはたった一本だけで良い。その筈なのにその一本が届かない。

 

「クソ、クソ、クソ!! さっさと死ね!! 死ね!! 死ねぇ!!」

 

 己自身に知らずの内にこびりついた焦燥感と、止めどなく溢れる死への恐怖を振り払うかの様に、手鬼は手を伸ばし続けた。

 

 

 

 

 

 

 

『──ぃちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

誰だろう。

 

 

 

 

 

 

 

『──兄ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

声が、聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『──兄ちゃん!!』

 

 

 

 

 

 

 

この、声は────!!

 

 

 

 

 

 

 

「─────ッ、はっ!?」

 

 寝てる場合じゃない!! 鱗滝さんの為にも、錆兎と真菰の為にも起きて戦わないと!!

 

 俺が飛び起きるとそこにはさっきの鬼と見知らぬ金髪の少年が向かい合っていた。彼が気を失っていた俺を守ってくれてたのかと思いながら周りを見ると、そこらじゅうに斬られたあの鬼の腕が転がっていた。あまりの絵面にまた飛び上がる所だった。

 

「ああ、目が覚めたんだね。おはよう。まだ、動ける?」

 

 覚醒した俺に気づいたのか、金髪の彼はチラッと俺を一瞥して声を掛けてきた。

 

「あ、ああ。君は一体……」

 

「自己紹介は後、君を殺そうとした鬼はまだそこにいる」

 

 誰なのかを聞く前に、あの鬼と戦うんでしょ?と聞かれる。

 

 そうだ。俺はあの鬼に勝たなくちゃいけない。此処で、断ち切るんだ!俺は気を失っている時にも手放していなかった日輪刀を強く握りしめて頷く。

 

「そう言うと思った。手助けは、いる?」

 

「ありがとう。だけどもう、大丈夫だ!」

 

 俺がそう言うと金髪の彼は笑顔を浮かべ、迫りくる鬼の腕を一瞬のうちに全て斬り落とした。

 

……全く見えなかった! 俺とそんなに歳は変わらないように見えるのに、この人はとんでもなく強い!

 

「こんな所で死ぬなよ」

 

「ああ、分かった!!」

 

 今度こそ、俺はアイツに勝つ!!

 

 

 

 

 

 

「今はお前の!! 相手をしてる暇は無いんだよぉ!!」

 

 善逸と入れ替わるように前に駆け出した少年、竈門炭治郎に向かって手鬼は苛立ちを隠そうともしないまま腕を打ち出す。炭治郎が気を失う前はあれ程の執着を見せ、少しずつ追い詰めるように繰り出していた攻撃も今や精彩を欠いた勢いだけのものと成り果てている。

 

 冷静さを取り戻した炭治郎に、最早通じるものではない。

 

「全集中、水の呼吸・肆ノ型! 『打ち潮』!!」

 

 淀みの無い動きで斬撃を繰り出す打ち潮は複数の対象を斬り伏せるのにも向く、この状況での最適解の一つだ。

無論、善逸の様に一瞬で斬り伏せたわけではない。寸分狂わぬ見事な太刀筋ではあれど突出した速さという面では雷の呼吸を使う善逸とは比較にならない技、しかしそれは当初の余裕を完全に失った手鬼にとっては信じられない光景として映る。

 

 そして手鬼の懐に入り込もうとする炭治郎の嗅覚が足元から漂う鬼の匂いを捉えた。地面の中から攻撃が来ると判断した炭治郎は即座に跳躍して地面を砕きながら伸ばされた腕を躱す。

 

 これが手鬼の切り札だったのだろう。初見にも関わらずそれを見切られた手鬼の顔が驚愕に染まった。

 

「鱗滝のガキがぁああ!!」

 

 数多の腕を持つ手鬼が伸ばせる最後の腕を空中で身動きが取れない炭治郎に伸ばす。手鬼にとってこれが躱されると後がないのだが人間も鬼も地に足を着けねば戦えないのは必定である。切り札こそ通じなかったものの、漸く巡ってきた必殺のタイミング。

 

「ふんッ!!」

 

 しかしあろう事か炭治郎は己を握り潰さんと迫る腕を上体を逸したところから繰り出した頭突きで弾いてしまった。とんでもない石頭であると共に、一瞬でもタイミングがズレていれば力が乗り切らずに弾く事など出来なかっただろうしそのまま握り潰されて死んでいた可能性も十分にあり得た。

余りにもクソ度胸。心臓に毛が生えているというのはこういう事かと戦いを見届けていた善逸も目の前の光景に空いた口が塞がらない。

 

 地に足を着けねば戦えないのは当然なのだが、攻めに逸れば隙が生まれるのもまた当然。炭治郎は伸び切った腕に頭突きの勢いのままくるりと身を翻して着地すると、一直線に駆けて距離を詰めていく。手鬼は最後の抵抗とばかりに足場にしている腕から細い腕を伸ばして炭治郎を掴もうとするが、太い腕ほどの力は無いのか容易く斬り払われ、ついに頸を日輪刀の間合いに捉えられた。

 

「全集中、水の呼吸・壱ノ型!!」

 

(大丈夫だ、俺の頸は硬い! 宍毛のガキでも俺の頸は斬れなかった!)

 

 

 

 

 

「────『水面斬り』!!」

 

 鬼の頸が、飛ぶ。藤襲山にて繰り返されてきた一つの悲劇が、此処に断ち切られた。




大正コソコソ噂話

善逸は伊織に半年間扱き続けられた結果、普段はちょっとだけ目が死んでる。
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