鬼滅の刃〜雷鳴轟く刻〜   作:グリアノス

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前に書いてた頃は出来なかった毎日投稿が出来てて自分でも驚いてる作者です。

無理のない文字数で纏めるのって大事ですね。


第五話

 神様、どうか…………この人が生まれ変わった時、鬼になんてなりませんように。灰となって散っていく手鬼の手を握りながら発せられた炭治郎の呟きが善逸の耳に届く。

 

 君は多くの兄弟子や姉弟子達をあの鬼に殺されて喰われている筈なのに、それでも君は消えゆく鬼に対して心から悲しみ、祈りを捧げるのか。彼の人の良さは間違いなく美徳と言っていいものだが鬼殺の剣士を志すには余りにも、余りにも優しすぎるのではないか。

 

「なあ、何で君は鬼の為に悲しむ事が出来るんだ? あの鬼は大勢の人間を喰ってきたんだよ?」

 

 善逸は手鬼が崩れて消えたのを見届けると炭治郎にそう問いかける。

 

「…………うん。俺がお世話になった人の大切な人達も沢山殺された。それは分かってる。けど、彼からとても深い後悔の匂いがしたんだ」

 

 俺は生まれつき鼻がよく利くんだと、そう言って月を炭治郎は寂しそうに笑う。

 

「俺は我妻善逸。お前の名前は?」

 

 そういえば自己紹介をするんだったと善逸は炭治郎に自分の名を名乗る。

 

「そうだ、俺は竈門炭治郎。助けてくれてありがとう、善逸!」

 

 これが、後に親友となる竈門炭治郎と我妻善逸の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「炭治郎、右の岩の奥の2体は任せるよ」

 

「分かった! 善逸も気をつけてくれ!」

 

 絶えず続く鬼の襲撃も二十を超えただろうか。炭治郎と善逸は背中合わせになって鬼と交戦を続けている。どうやら今まで自分達の食い扶持を減らしてきた手鬼が死んだ事で遠慮する必要がなくなったからか、他の餌が喰い尽くされたからか。何処にこれだけの数が居たんだとばかりに襲い掛かってくる鬼を二人はひたすら屠る。

 

全集中、雷の呼吸・壱ノ型『霹靂一閃』

 

全集中、水の呼吸・参ノ型『流流舞』

 

 雷光を帯び、雷鳴と共に鬼の頸を斬る善逸。流水を纏い、飛沫を上げて鬼の頸を斬る炭治郎。

 

 一息で四体の鬼の頸が地に落ちる。こうして背を預け合って戦うというのは善逸も炭治郎も初めてなのだが、なかなか上手く噛み合うようだ。善逸の線の動きと炭治郎の曲の動きで互いの死角を補う戦い方はなかなか様になっている。

 

全集中、雷の呼吸・壱ノ型『霹靂一閃』

 

全集中、水の呼吸・壱ノ型『水面斬り』

 

 藤襲山を煌々と照らしていたいつの間にか月も西に傾き、空の色が漆黒から瑠璃色に変わりつつある頃。最後の鬼を斬った二人は漸く終わったと深く息をつく。

 

 元より戦う事に慣れていない炭治郎は手鬼との戦いでの負傷もあって息も絶え絶えで既に立つことも儘ならない。一方の善逸も炭治郎のように座り込んだりはしていないが、()()()()()()()()()()の長時間は想像以上の負担を強いられており滝のような汗を流していた。

 

「ああ疲れた。腹も減った。そしてとんでもなく身体が痛いし物凄く眠い……」

 

「もうすぐ夜が明けるからそうすれば飯も食えるし寝られるよ。だけどまだ襲われるかもしれないから油断しないようにな」

 

 はぁぁぁぁぁぁぁぁ…………と深い溜め息と共に炭治郎は今にも挫けそうな音を出す。手鬼との死闘から有象無象の鬼達との連戦は流石に長男でも耐え難い負担を強いたのかもしれないが、善逸としては手鬼に対してあれだけのクソ度胸を見せたのにと少しばかり情けなく見えてしまう。

 狭霧山にて炭治郎を鍛えた錆兎がこの有様を見ようものなら、男ならさっさと立ち上がれと怒鳴りつけて抜き味の日輪刀を振り被って炭治郎の頭に振り下ろすだろう。

 

「こんな所で諦めていいのか炭治郎。お前には鬼殺隊に入らなきゃいけない理由があるんじゃないのか?」

 

 流石に此処で挫けられては堪らないと、善逸は少し焚きつける事にする。

 

「……そうだ、俺が頑張らないと誰が禰豆子を人間に戻すんだ。俺は長男なんだから頑張らないと!」

 

「…………………人間に戻す?」

 

 軽く焚きつけただけで奮起してくれるならそれに越した事は無いのだが、善逸は炭治郎の言葉に決して無視出来ない引っ掛かりを覚える。禰豆子というのが家族なのか親戚なのか友人なのか分からないが、()()()()()()()()()()()()()……。

 

「…………………あっ、違うんだ善逸。これはそのっ」

 

「…………悪いけど、詳しく話してもらうよ炭治郎。俺は耳が良いから嘘をついてもそれが嘘だって分かる。だから本当の事を言ってくれ」

 

 これが善逸の思い違いであれば恩の字だが、想像通りであれば率直に言って冗談では済まない。鬼を匿った鬼殺の剣士など存在そのものが矛盾しているし、鬼殺隊に所属する人間の大半は鬼によって大切な人の命を奪われた者ばかりだ。まともな神経をしていれば受け入れられる筈がないし、何よりも隊律違反により裁かれても文句は言えない。

 

「……まず、禰豆子というのは俺の妹だ。お前の想像通り、鬼になってる」

 

「…………やっぱりか」

 

 想像通りの掛け値なしで頭が痛い話だった。冗談であってくれればどんなに良かったかと善逸は痛みだした頭を押さえる。

 

「けど、禰豆子は人を喰ったりしていない! 鱗滝さんが言うには眠る事で人を喰おうとする衝動を抑えてるんじゃないかって言ってた。嘘じゃない信じてくれ!」

 

「…………確かに嘘じゃないのは分かるし俺は別に鬼自体に恨みがあるわけじゃないけど、そんな言葉で鬼のせいで大切な人を亡くした人が納得してくれると思ってるのか?」

 

 善逸の言葉は尤もだ。炭治郎はどうすれば善逸を説得させられるのか頭を巡らせるが、一分の反論も許さない正論を前に炭治郎は二の句を紡ぐ事が出来ない。

 

「だから炭治郎、この最終選別を終えたら俺を妹に会わせろ」

 

「善逸………」

 

「お前の言葉に嘘はないのは分かるけど簡単に信じられる事じゃない。もしも人を襲う鬼だった場合俺が妹の頸を斬って、お前と育手を隊律違反で本部に突き出す。いいな?」

 

「……ああ、分かった」

 

 所謂執行猶予というやつだろうか。これは善逸がまだ正式な隊士ではないからこそ出来る取れる手段と言える。炭治郎はこれが善逸に出来る最大限の譲歩である事を察して受け入れた。

 

「…………っ、朝日が」

 

 座り込んだまま善逸を見上げる炭治郎と炭治郎を見下ろす善逸を、朝日が照らす。藤襲山を包んでいた長い夜が明けた。

 

 




というわけで善逸さんに禰豆子の事がバレました。少しずつ原作との違いが出てきて作者も書いてて面白くなってきましたね。


大正コソコソ噂話

全集中の常中を習得している善逸が鬼との連戦で疲労したのは、最終選別中であっても修行に励めと伊織によって全身に仕込まれた重りのためだったりするらしい。
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