平原の覇者   作:うすば

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2話

 

 リンドウさんは次元が違った。そして僕は弱かった。

 

 縦横無尽に死角から死角へ駆け回るリンドウさんを捉えることさえままならなかった僕は、半泣きで触腕を振り回すことしかできなかった。

 そんな必死の抵抗もリンドウさんが後ろに下がるだけで回避される。触腕は長いように見えるが、実際のリーチは意外なほどに短かった。オマケにかつての僕と同じで身体が硬い。柔軟性の欠片もなく、カッチカチだ。触手とは何だったのか。

 そしてウロヴォロスの代名詞とも言える神属性のビームは近距離の相手に無力だ。眼からビームなんて正面にいる相手にしか当たらないに決まってる。まして視界に捉えられない相手に当たる訳がない。デカい身体が邪魔で側面が死角になっているんだからどうしようもない。

 結局、終始リンドウさんのペースで弱点部位の腕と脚を攻撃され続けるだけの時間だった。

 

 早々に全身の結合が保てなくなり沈黙した僕からコアを抜き取ったリンドウさんは、タバコをふかして悠々と去っていった。完敗なんてレベルではない。

 

 

 ……あれから数分経ったが意識が消えない。

 僥倖だ。どうやら僕はコアではなかったらしい。リンドウさんにやられた時は完全に死んだと思って絶望したが杞憂だったようだな。身体も霧散寸前ではあるが崩壊する気配はない。腕と脚はもう使い物になりそうもないが。リンドウさんめぇ……。この身体は何か食べれば治るんだろうけど心はそうはいかないんだそ。何も出来ずに身体が削られていくのはかなりの恐怖体験だった。

 対面した時に持ちかけた和解も無視されるし、リンドウさんのせいで僕の心はボロボロだ。触腕をバラしてハートマークをつくってるのに攻撃するのはどうかと思うよ。ラブアンドピースをご存知ないようだ。

 

 ん? 胸の奥に小さな気配。これは……コア、か? 

 

 再生するコア。僕はハンニバルだった……? 

 

 ……まぁいい。考えてる時間は無い。今思い出したがフェンリルにはアラガミの反応を検知するシステムがあるのだ。くだらないことを考えている場合ではなかった。

 コアが復活したことでいくらか身体が動かしやすくなったように感じる。早くここから離れなくては。

 リンドウさんが引き返してきたら今度こそ殺されるかもしれない。さ、さすがに全身バラバラにされたら生きていられる自信はないぞ……! 

 せっかく拾った命だ。意地でも手放してなるものか! 

 

 スグに避難しよう。だがどこに? 【嘆きの平原】は見晴らしのいいマップだ。隠れる場所なんて……いや、一つだけある。

 

 瀕死の僕でも辿り着ける安全地帯。

 ゴッドイーターの手が届かず、どこからも捕捉されない場所。

 

 重い身体を肩で引きずって移動する。

 

 

 

 そして僕は平原中央、竜巻に抉られた大穴に落下した。

 

 

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