僕の姿は以前より人間に近づいていた。
頭を支える首に、どことなくヒトっぽい体型。不安定だが一応二足歩行が出来る脚。
遠目に見たら黒いローブを羽織った巨人に見えなくも無いだろう。腕は四本だけど。
これほどまでにヒトに近づくのは、思った以上に困難な道のりだった。
人間の身体というものは欠陥だらけで、オラクル細胞に下等だと判断されて学習出来ないのだ。二代目コアくんは本当によく働いてくれた。酷使し過ぎてお亡くなりになったのが悔やまれる。
さて。
見た目もヒトに近く、身体に青い紋章も浮かぶようになった今の僕はほとんどシオと言っても過言ではない。和解はもはや必然の域に達した。
しかしどうしたことだろう。
声を聞いた三人は固まってしまった。
「な、なんですか、この気味の悪いアラガミ……! ヒトの言葉を、話した……?」
「例の討伐対象……『ヴリトラ』だ。くそ、よりによって今か……!」
え、ヴリトラ? 僕のこと?
…………いやいや、それどころじゃない。
えぇ? 討伐対象!? 嘘だろ!? 僕が何をしたって言うんだ……
思わず身じろぎしたら一気に距離を取られた。そんなに警戒しなくても……意外と息ピッタリね君たち。
何かもうダメっぽいけど一応説得してみよう。
『トモ……ダ……』
「友達だと……? 巫山戯るな! お前、自分が何人喰い殺したと思ってんだ!」
えぇ……めっちゃ怒ってらっしゃる。殺した云々を先日僕を殺しかけたリンドウさんに言われる筋合いは無いんだが……
そもそも神機使いでも無い一般人なんて何人死んでも構わんでしょうに。
オラクル細胞は他者の捕食を促す。つまり、偏食傾向にそぐうあらゆる対象を喰らうべき他者として認識する細胞なのだ。例外は同じ属のアラガミくらいなものだろう。
完全にアラガミの僕などは既に人間を食事としか見ていないし、割とアラガミのソーマは狩ったアラガミを食べたがっていたらしい。ソーマって人間に食欲湧いてそうだよね。
若干アラガミの神機使いだって、思考に影響は受けているだろうし似たようなものだろう。同胞たる神機使い以外は本来喰らうべき他者なのだ。一般人はいくら喰われてもいい。食事に気を使うのはバカバカしいってことさ。
目の前ではアリサちゃんが青ざめてるし、主人公くんも険しい顔だ。
それにしても彼、全然喋らないな。そこはゲーム準拠なのかよ。
リンドウさんが叫んだ。
「俺がやる! 新型二人は援護に徹しろ!」
うん、残念だが和解失敗だ。ポストシオが一番楽なんだがなぁ。内部に入り込めればアーク計画を確実に成功させる自信がある。折を見てこっそりシオのことを告げ口すればいいだけだからな。
まぁそれも出来なくなった訳だが。リンドウさんホント好戦的。この人こんな性格だったっけ?
戦闘か。だが……以前の僕だと思うなよ。
数多のアラガミ、数多の人々を喰らい、超進化した今となっては手加減する余裕すらあるだろう。
僕は外部居住区の蹂躙で気が大きくなっていた。
「おおおッ!」
リンドウさんが神機を手に突っ込んでくる。
来るがいい! 遊んでやろう、人間ども!
──リンドウさんは次元が違った(二回目)
オマケに主人公くんも次元が違った。