ポケモン不思議のダンジョン 〜マボロシの地と記憶の地図〜 作:ガパオだよ
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「いたた……ここは?」
ラヴィが目を覚ましたのは、彼女の住むリンゴの森よりも鬱蒼とした、仄暗い森の中。
「……せ、先生っ?いるんですか?……ダメだ、はぐれちゃった…」
(ここはどこなんだろう…ダンジョンじゃないみたいだけど、変な感じがする…)
木漏れ日は差しているものの、森全体にかかった霧がラヴィの視界を遮っている。それゆえか、彼女は忍び寄る気配に気づくことができなかった。
(それに、肌に突き刺さるようなこの空気……なんだろう。早く抜け出さないと…)
「シャァッ!!」
「うわっ!!な、なにっ!?」
現れたのは、鋭利な爪を持つ獣のような生き物だ。…この世界では「妖怪」と呼ばれる生物である。
「シュルルルル……」
「涎を垂らしてる……私を食べようとしてるの?」
(森の中なら、木の実やリンゴが落ちてるはずだけど…)
「食べ物ならあるけど……た、食べる?」
ラヴィはポーチの中からリンゴを取り出すが、妖怪はラヴィだけを見つめて、今にも飛びかかろうとしている。
「……しかたないっ。えい!リンゴ投げ!」
「グァッ」
「よぅし、今のうちに……!(『だいもんじ』!)」
ラヴィの口から激しく炎が噴き出し、「大」の字になって妖怪を襲う!火だるまになった妖怪はたまらずその場を転げ回り…
「…あっ!!も、森が焼けちゃうっ!!」
「ギャァァァァァァァァァァァァ!!!」
「火を止めないと…でも水タイプの技なんて覚えてないよぉ」
(こういう時は……『ゆびをふる』…)
トゲキッスに指はないので、翼をぱたぱたと広げるように動かす。すると、今度はラヴィの口から冷気が漏れ出す。
「な、なに!?『れいとうビーム』!?」
「ウッ!!ウギャァァァァ………」
「あ………火は止まったけど、今度は木が氷漬けに…さっきの敵も、カチコチに凍っちゃってる。…でも、勝ったっ」
…普段、ラヴィは戦うことが少ない。それはコクタンがあらかたの敵を倒してくれるから、ということもあるが……実際には、ラヴィ自身が自分のパワーを扱いきれずに、周囲にまで被害を及ぼすことが多いため、ラヴィが一人の時以外は極力戦わないように言いつけられているのだ。
「まぁ…氷はいつか解けるし、大丈夫!ちょっと焦げちゃったけど…今の衝撃で先生が気づいてくれないかなぁ」
彼女が引き起こした惨状を見て、周囲で様子を伺っていた他の妖怪たちは慌てて逃げ出した。が、その中で彼女を見つめる視線があった……
「炎や冷気を口から出せる妖怪……このままじゃこの森がメチャクチャになっちゃうぜ。実験材料のキノコのためにも……妖怪退治だな!」
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「あ。目が覚めましたか?」
「……その声、ニンゲンか?」
「いいえ、天狗ですよ。鴉天狗です」
「テング……」
「…知らないの?てっきりここの妖怪かと思ったのに……」
目覚めると、少女の声がすぐ横から聞こえた。木の天井…彼女の家か。
…状況を整理しなければならないと思ったが、全身が軋むように痛み、動くのもままならない。
「ワタシは……そうだ、ワタシのそばに白い翼の…鳥のようなポケモンがいなかったか?ワタシより2回りは小さいのだが…」
「ぽけもん?いやぁ…見てないわね」
なんだ……「ポケモン」を知らないような口ぶりだぞ。ニンゲンじゃないとしても知らないということはないだろう……それに、「妖怪」とはなんだろうか…
「…そうか。離ればなれになってしまったのだな……ぐぅっ!」
「あやや、まだ動ける状態じゃないわよ。山の麓で、傷だらけになって倒れていたんだから。治るまでに何日かかるかわからないけれど……3日くらいなら面倒を見てあげてもいいわ。お礼はしてもらうけどね」
「…ありがとう……ワタシはコクタン。探検家をやっている者だ」
「射命丸文よ。さっきも言った通り、鴉天狗。まさか山で私たちを知らないなんてね…」
「…すまないね。世俗に疎いとよく言われるものでね」
そういう問題じゃない、と言いかけてやめたような顔をされた。
「見つけたのが私で良かったわね?他の妖怪なら、複数人でトドメをさしていたかもしれないから…あなた、山の住民じゃないみたいだもの」
「うむ、本当に感謝しているよ。…そうだ、ワタシの荷物を開けてくれないか?」
「このカバンね。これは食料?」
「まあ、そんなところだよ。…あった。もぐ……ゴク、ふぅ」
オレンの実を食べると少し楽になったが、痛みが引く様子はない。
(…ただの木の実じゃないわね……見た目からして、青い木の実なんて見たことないし)
「その、お礼のことなんだけど。少し写真を撮らせてもらえる?」
「む?……ふむ、構わないよ」
「フラッシュは焚かないから安心して。立てる?」
写真やカメラといった単語はニンゲンの文献を漁っているときに少しだけ目にしたが、そんなものを利用している彼女は…やはりニンゲンではないのか?
「……はい、ありがとう。それと、いくつか聞きたいことがあるんだけど…その傷のこととか」
「…………………。」
時空ホールに飛び込んだ直後のことを思い出そうとしたが、なぜかうまく思い出せない。なぜ離ればなれになってしまったのか、なぜワタシは傷を負ってしまったのか……何者かから襲撃を受けたとするならば、ラヴィ君が危険な目に遭っているおそれもある……
「……よく思い出せないのね。傷を調べてもらえばもう少し情報もあるかもしれない」
「いや、なんとか思い出してみるよ…ワタシからは大したお礼ができないから、手間をかけさせるわけには…」
「そう。でも、あなたのことを上司に報告しなきゃいけないのよ。天狗に襲われたんだったら、あまり匿ってあげられないからね」
彼女もそうだろうが、ワタシからも色々と聞きたいことがある…というか、常識がすれ違っているような、微妙な歯がゆさがあるな。彼女はニンゲンの姿をしているが、鴉天狗と名乗っている。カラス……テング……ワタシの知識では、とてもその双方と似通っているような気はしない。この家に掛けてある扇はダーテングの手のようだが……それくらいだ。
「まあ、少なくともあなたは余所者でしょう。妖怪でもなさそう。ウソはついてなさそうだし、少しの間ならこの家に置いてあげるわ」
「ありがとう。……」
「白い翼の仲間と会えるといいわね。心配な気持ちはわかるけど、まずは自分の傷を治すことから考えたら?」
「む…………」
親切な女性だ。それに聡明で、賢い。何もかも見透かされているような気もする。ラヴィ君を探さなければならないが、もはや彼女を信じてやるしかない、な………
「……寝てしまった…。…気まぐれで助けちゃったけど、あとで面倒事を起こさないでね…」