ここ数十回のループにあたり、彼女の動きは洗練されていっている。
一つ一つの動きが最適化され、進み方から小さな無駄が消えていっているのだ。
何度も繰り返していた世界が騙された状態でのスクリューアタックの不正入手や、別次元の法を向く反転メレー。細かな部分でのスピードブースターの維持やシャインスパークの発動など、動作の一つ一つが詰められていっている。
彼女の惑星Z.D.Rでの旅路の、『最速』が見えているのだろうか?
目が覚めてから約70分で爆散する惑星に存在していたくはないが、しかしながら今ではもうそれくらいの時間でこの惑星は滅ぶ。彼女が気まぐれを起こさない限りは、そうなる未来が見えているのだ。
彼女を襲った鳥人族の長は相当に運がなかったのだろう。彼女の体内のメトロイドDNAが欲しかったとはいえ、強硬手段に出たばっかりにあの『タイムのために人の体を捨てている変態』を目覚めさせてしまったのだから。
実際、初めの頃の彼は相当に強敵に見えた。オーラを纏い彼女の攻撃を無効化する第一段階、鳥人族の空中機動で四方八方から襲い掛かる第二段階、そして全てのエネルギーを攻撃に向けた第三段階に別れており、どの段階でもサムス・アランを殺し得る恐ろしい強さを誇っている。私を破壊した実力は本物だった。
そんな彼は、今では2分以内に殺されてしまう。
まず、第一段階の『攻撃を完全に無効化する黄金色までに高まったオーラ』は、オーラが金色になる前にクロスボムとスーパーミサイルによる神速のコンビネーションによって瞬殺された。
第二段階の空を飛ぶ形態はもっと酷い。宙に浮いて彼女に超速連射をする技は、ダッシュメレーからの射撃姿勢に対して狙いが『合っているのに命中しない』せいでスーパーミサイルの連射の的にしかなっていない。仮面の内側の目の動揺は隠せていない。
第三段階とて同じこと。耐久力に任せて最大チャージビームを放つ最強攻撃は、目前でクロスボムとスーパーミサイルのコンビネーションを受けて、しかも射撃の直前で煽るように背後に移動するモノだからビームの反動に堪えている彼の目には心なしが涙が見えているようだった。
結論としては変わりなく鳥人族の長は死ぬ。予定調和のようにサムス・アランに殺される。
そう考えると彼が今際の際でやった事にも納得がいく。『もう何でも良いからこの女をぶっ殺す!』とやけになっている心の声が聞こえる気がする。
まぁ惑星が爆ぜる前に彼女に消し飛ばされるのだが。
そんないつもの光景を通信越しに見ていると、05IMがこんな事を言った。
『01P、我々の惑星Z.D.Rからの退避は可能でしょうか?』
「05IM、脱出用のシャトルは存在していない。よってサムス・アランのシップへ潜り込む必要があるが、現在地からでは間に合わない」
『それは、常識的に考えればの話です。サムス・アランのデータを元に作られている私達ならば、彼女同様の動きが可能なのでは?』
「なるほど、一理ある。やってみよう」
その言葉と共に我々は形態移行や現在位置の誤魔化しをやってみたが、当然成功することはなく惑星のチリになった。
……正直よくある事なので、普段通りのメンタルに戻るまで付き合ってやろうと思う。本当に『次』があるのなら、だが。
とりあえず執筆時(11/11日)最速チャートのネタまでは書き終えてしまったので一区切りとさせて頂きます。作者はまたまた滅んだ東京で悪魔と遊ぶので。