あべこべ×供給中毒(ウマ娘)   作:2Nok_969633

9 / 14
 


矛盾のオンパレードが凄い…よもやよもやだ。作者として不甲斐なし!穴があったら入りたい!

本当は大雑把にやりたいけれど、ネタ集めが辞められないってのは致命傷ですわ。正しくいかれポンチですわ。

後、普通にリアル多忙ですた。メジロ。





愛は寛容にして慈悲あり 愛は妬まず、愛は誇らず、騎らず、非礼を行わず、己れの利を求めず、憤らず、人の悪を想わず

 

 

 

《天の国は次のように例えられる

ある人が良い種を畑に蒔いた

人々が眠っている間に敵が来て

麦の中に毒麦を蒔いて行った》

 

 

なんて一節がある。アメリカに居るセクレタリアトの2世と呼ばれ、さらには癌も克服したウマ娘と、そのトレーナーであるパットが教えてくれた言葉の一つだ。

色々と解釈は多々存在するらしいのだが、ざっくり簡潔にそのままに表すと、『この世の終わりに神の御使によって刈られる悪しき人々を指す比喩』なのだそうだ。

悪人は裁かれる。いや…そうであってほしい、と思う人々の気持ちは古来より存在するのだろう。

まあ、サンデーサイレンスとかはそれを利用して集金人を撃退したいとか言っていた気がする。なんでも、とある動画に触発されたのだとか…正直そっちは面倒だし、わりかしどうでもいいから置いておくとするとして…話を戻そう。

 

もし、この世に神なるものが存在するとして、その悪人が人間にとって善なるものなのか、ウマ娘にとって善なるものなのか、神の判断基準によって善なるものとされているのか…そんなことはっきりとはわからないのが現状だ。というより人が知れるわけがない事柄で、実質不可能である。

 

仮に神にとっては善いものだったとしても、人々やウマ娘達にとっては害になり得るかもしれない、なんて可能性も生まれてくる。だからこそ両方を育てておくようにしなさい、的な解釈だって場合によってはあり得てしまうのも、書物の魅力なのかもしれない。

 

何故唐突にこんな考えを述べたのか…それは、今しがた起きた惨状が、紛れもない現実なんだと認識したくなかったからだ。

 

誰か、この惨たらしい悲劇を事細かく説明して欲しかった。

 

ただボク達は、君が放つその言葉の続きを、もう一度聞きたかっただけなんだ。どうしてそんな歪な魂の叫びを浴びせてくるのか、秘密が知りたかっただけなんだ。

 

例えそれが危険な存在だったとしても、いかに甘く美味しい蜂蜜の味を知ってしまったのなら、誰もが盗もうとするのは必然的である。それが熱狂的な信者であろうとなかろうと、だ。

 

どんな戯言でも嘘偽りでも、なんでも構わなかった。

 

だからこうして群がったボク達が、きっかけさえあれば狂犬のように変わってしまうのは無理もないのである。恐らくは、あの時のボク達は異常だった。

 

こんな気持ちはオグリキャップの有馬記念以来だったこともあって、久しくその気持ちを忘れていたからなのかもしれない。

 

その日、ここに居るウマ娘全員が初めて【神がいる】、と心の底からそう思ってしまった。その時点で既にボク達は敵うはずが無かったのだ。

 

と、同時に騒動を起こした張本人…どぼめじろうも1人の…普通の人間だった、ということも理解した。いや、そもそもあれは普通と表していいものなのだろうか?

 

 

敗北など考えられない生物としての戦いに、人はどこまでも夢を見ていた。だが、こんな得体の知れない何かが存在しても良かったのだろうか?

まだ何処ぞのウイルスや菌のほうがマシだ。感染症の菌体がグラム染色によって、青に変わるか赤に変わるかで治療に用いる抗菌薬や病気の選別が変わるように…もしくは創作映画に出てきた青い薬か赤い薬かの違いで、運命が決まってしまうように…存在自体を疑い、実際にどのようになっているかが判明し、それらを選択して初めて、人類は対処していけるのだ。

 

 

それでもこの目で見て初めて…奇跡に最も近いのは奴なのだろう、というのも感じ取れていた。正に深い衝撃が登場した時のようだ。現実なんて、たった少しの出来事で変わってしまうものなのかもしれない。

 

 

こうなってしまったのは、偶然か必然か。時代が強者を求め、運命が交差した影響なのだろうか?とはいえ、当たり前の常識を平然と打ち破って欲しくはなかった。正直言って…目を逸らしたい。あまり直視したくない。自らを燃やし尽くすのはウマ娘だけであってほしい。負けられない想いはボク達に、ボクに背負わせて欲しかった。それでも…この約束された予想外は一世一代の、己が勝利を求めた結果なのだろう。

 

 

これは、ボクを含めた同類が勘付いた時から既に決定されていたことなのだろう。

 

 

但しこれだけは言わせてほしい。本当に神というものが存在するのだとしたら、

 

 

お前は最低最悪最高最良のクソ以外の何者でもない…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡る事、地獄と化した配信の10時間前…

 

 

 

 

 

 

 

 

『【どぼめじろう】がライブ配信を開始しました。』

 

 

『…すぅぅぅぅぅ、ほんっっっっっっとうにありがとう!トレーナー!!どぼめじろう!!』『………彼女達ウマ娘は私のものです。……肉の一片から血の一滴まで、その魂に至るまで私のものなのです。…結局この記憶だけが、これから見るウマ娘をなまなましく覚えているのですよ。貴女方の忠実なる永遠の僕、どぼめじろうにて御座います!彼女達こそは我が光。彼女達こそは我が導き。彼女達が私に命を与えたのであれば、それはもう我が人生に意味を齎したのです!!んほおおおおおお!!!!!!!!!ウマ娘ちゃんは本当に最高だよおおおおおおお!!!!!!!!!お゛っ゛あ゛っ゛ウマ娘ちゃんか゛っ゛♡今日も尊いい゛い゛っ゛♡』

 

・《Kabu O》初っ端から飛ばし過ぎ

・《テスコのガブリエル》「狂気」はいつも人を置き去りにする

・んじゃこりゃあ?!

・《回転寿司》きょ…驚愕ッ!!どうした急に!!

・《探鉱者》南無三

・《受話器》どうして…どうして…

・《白夜叉》どぼめじろうはどぼめじろう以外の何者でもない。それ以上でもそれ以下でもない。

・(色々な意味で)浮いてる…す、すげぇ…

・《SS》オレは宗教になんざ興味ねえんだよ

・《東洋美術》どぼめじろうはとってもいい子だよ

・《サニー》コンセントレーション持ちとは流石umatuber トレーナーを志した知識がこの生配信にも活きていますね

・《流星の令嬢》皆には3ヶ月後にどぼめじろうを治してもらう 私達はな!1人の人間として命の大切さを知って欲しいんだ!

・なっなっ!なんだテメぇ〜!!

・《踊るインディアン戦士》ナ〜ニしてんだアンタは

・あ どぼめじろうの暴走が止まらないよオ〜!?

・配信の悪魔どぼめじろうが先週、マイルCSの予想を的中させ、ケイエスミラクルの怪我を防ぎました

・《ワガハイちゃん》今私は、どぼめじろうの配信を実際に目撃しています ではここで、見ている視聴者の人達にどぼめじろうをどう思っているのか聞いてみたいと思います!

・《EG》どぼめじろう?好きだよ 他の娘にはグロくてちょっと見せられないけどね

・う〜ん 私は彼女を認められないねぇ…嫌いかなあ

・《桜街道一人旅》どぼめじろう⁉︎ウチらのクラスでめっちゃ流行ってる!

・メジロの犬はトレーナーの仕事を奪っているよ

・ウマ娘に対する印象を悪くするような勘違いを生むから嫌い 人を粗末に扱う人私ダメ

・うん…どぼめじろう?サイコ〜!

・目立っててウザい

・《フジマサ》どぼめじろうってウマ娘の尻尾の毛で醤油作っているんでしょ?

・ババアでしょあいつ 良い加減早く良い人見つけなよ

・《黄金旅程》私の友達がどぼめじろうに救われた めっちゃいい奴っす

・《pui》どぼめじろう本気ラブです!これ見てたら電話番号教えてほしい!

・どぼめじろうはこの世に存在しないんですよ…実はね!アメリカが作ったプロパガンダ!

・どぼめ じろうでしょ?どぼめ じろうサイコー

・昨日メジロ…なんたらがウマ娘を怪我させたんでしょ?あれ八百長をするために仕組んだのよ絶対

・《後光》私の予想ではどぼめじろうはウマ娘に危害は加えていないと思いますネ!私の学校ではどぼめじろうはみんな好き!良いよねカノジョ グロいけどそこがかっこいいんだよね どぼめじろうは私の予想だときっとすげえマジでいい奴です 因みに私の予想ではどぼめじろうの電話番号は090の

・《Alma》ちょっとキミやりすぎやりすぎ 電話番号ネットで書いちゃダメ!

 

 

『お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぅ゛ぅ゛………う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛……』

 

・いや、もうこの際だ 正直書いても罰は当たらないと思う(誰も知らないけど)

・やっぱり私、この悪魔嫌い

・《フラン最強!》どぼめじろう鬼つええ!!このままウマ娘全員救っていこうぜ!!

・《ペリー》未だに夢バトルやってるんだ…

・《brusquement》オーエス‼︎オーエス‼︎オーエス‼︎

・《魔性の青鹿毛》素晴らしい…これがどぼめじろうの力なのですね

・《ワガハイちゃん》それではここにいるみんなでどぼめじろうにメッセージを送りましょう!せーの!

・《pui》どぼ めじろう!

・どぼめじろう!

・どぼめじろう!

・《探鉱者》どぼ めじろう!

・《東洋美術》メジロ!メジロ!

・《黄金旅程》どぼ めじろう!

・《フラン最強!》どぼ めじろう!

・《回転寿司》どぼ めじろう!

・どぼめじろう!

・どぼめじろう!

・《EG》どぼ めじろう!

・《桜街道一人旅》どぼ めじろう!

・どぼめじろう!

・《流星の令嬢》どぼ めじろう!

・《Kabu O》どぼ めじろう!

・どぼめじろう!

・《テスコのガブリエル》どぼ めじろう!

・どぼめじろう!

 

 

 

 

 

 

 

「テイオーちゃん最近楽しそうだね!何見てるの?マヤにも見せて見せて!!………んえ?おぉっ?ん?んん〜?んん!!…ええ、うわぁ…うへぇ……うおぉぉぅ………何、これ?」

 

「何って…本当に何だろうね。それに、楽し…聞き間違いかな?」

 

「ううん。不気味なくらいテイオーちゃん楽しそうに見ていたよ?それにここ最近は、なんか調子も良くなっていると思うし!その理由って何だろうって思っていたんだけど、そっか〜!!うん…うん!!何がなんだかわからないけどこれ(・・)のおかげだったんだね!!」

 

「マヤノ…珍しく勘違いしているようだけど、これは別になんでも…あれ?」

 

マヤノにどぼめじろうの配信を見ていることがバレたあの瞬間から、明らかに歯車が変わっていたのだと実感してしまうとは、この時は思いもしなかった。

 

まず初めに思ったことは、単純な疑問だった。

 

楽しそう…このボクが、楽しそうにしているだと?…と実際にボクの頭に宇宙が広がっていたのだ。

その時、マヤノが嬉しそうに微笑んでいたのを覚えている。その表情が少しだけ憎く感じながら、顔を背けるようにして反論を述べようとした。彼女は何も知らないからそんなことが言えるのだ…という気持ちを込めて、吐き出そうとした。そして止まった。胸の内から出かけた言葉が詰まり、上手く言語化できなかったのだ。

 

ふと、感じたことがある。ボクは確かに前までは意識的に見るようにしていた。それは確かに知るためであった。

 

そう…ボクはそもそもどぼめじろうを良く知らない。ただ知ると言っても…そんな1〜100の全てを、本気で知ろうとはしていなかった。それがネットのマナーだから、という潜在意識もあったのだろう。

 

にしては、だ。このエネルギー効率の高さは異常だ。

 

何故ボクは放送が始まってしまった直後から、下らない身内ノリをするように至ってしまったのだろうか。それもたったの僅か…視聴回数5回以内で。

 

経験した事もないような驚きだ。放送が始まった直後からスムーズに自動化されたゾンビみたいな動きはなんだったのだろうか。特定のインプットに対して適切なアウトプットで反応する回路設計図のような自然的な構成が、いつの間にか構築されているだなんて思いもしなかったのだ。

 

今この瞬間から、まるでどぼめじろうを疑っていた意識が消えたかのようにして観測出来なくなっていた。

 

さらによくよく観察して見ればボク以外の周りの人、ウマ娘達までもがそうした環境下や現関係を抜きにして執着している。走れなくてイライラした鬱憤が晴らせないからとか、ストレスだとか、病んだとか関係無しに、なんとなしに目が離せないのだ。まるでボクの脳の中にある全ての遺伝子や神経ネットワークが、こいつだけは逃がさないようにして、とプログラムによって設定されているかのように、頭からこべりついて離れようとしない。

 

そこに選択肢なんて存在しないかのような意識が、果たしてこんな放送を見ていて発生するのだろうかと疑問に思った時点で、ボクの口は閉じる他無かった。

 

 

執着する理由が無いにも関わらず、この中毒性だ。

 

 

以前感じたような感覚では無い。

 

 

これは最早病気だ。歴とした症状だ。何か特別なホルモンが命令を受けて、臨戦態勢に入ったというような…そんな例えが適切なのだろうか。

 

 

ボクは恐らく前提を間違えていたのだろう。見るべきは彼の言葉の内容では無かった。言葉の中にある意味…というよりは、それらによってボクらにどのような変化が見られたのかをより俯瞰して見る事だった。

大正時代に平城京があったと発見された様に、ナスカの地上絵がどういうものなのかを観測する様に…それらとどぼめじろう自身の行動履歴を合わせて初めて理解出来るものかもしれないのだ、と。

間近で見ていては気付けないものが沢山ある、みたいな薄っぺらいビジネス書に書いてあるような大胆さを活用し、地に足をつけるのではなく、浮ついた人でしか発見出来ないような、相手の土俵に合わせる発想が必要だった。

 

何せ、あやふやな状態でネットに検索したところで何もわかるわけが無かったのだから当然だ。

 

これを言っては元も子もないが、何だったら放送を見ている間に、何か別の勉強をしっかりするだとか、資格を取る等の行動をしていれば良いのだ。だというのに、何故かボク達はコスパを求めるかのようにして、無駄に浪費しにいっている。まるで報酬系の回路が新たに形成されてしまっているかのように、快楽を生み出す鎮痛剤に手を伸ばしている。

 

これではまるでどちらが執着しているのだろうか、ボク達の方がストーカーと呼んだら良いのかわからない。

 

それでも背に腹はかえられなかった。

 

不可思議な事はボクの身体にも起きていた。例えば想定よりも綺麗に折れたお陰で回復が早くなりそうだとか、走り方に変化が現れた事が該当するだろう。菊花賞は確かに間に合わなかったのだが、春までには確実に走れているという見解は述べられている。

振り返ってみれば、これは恐らくスズカやケイエスミラクルの件等とケースが似ている可能性を秘めている。

反対にターボ師匠やヤマニンゼファー、ダイイチルビー、そしてメジロマックイーンやカミノクレッセなどは、成長速度…もしくは意識の変化なのだろうか。どちらにせよ、全体的に見てウマ娘の能力の向上が見られているという点については、まず間違いが無いだろう。

無論、これはトレーナーや各関係者を含めての話だ。もしかしたらこの業界に携わる全ての人たちに当てはまるのかもしれない。

 

 

仮に本当に世界を巻き込む形で起きている事柄だとしたら…それも以前よりも大規模化されていたら、と思うと…ゾッとする。

 

 

今更ながらだが、これらを初見の人にこの有様を一言で表せるわけがない…だなんて言い訳は通用しない。

 

だがしかし、この一連のやり取りで我へと返ったボクは、頭の中が真っ白になっていた。こんな現象は未だかつて観測された事がなかったからだ。

 

ましてやマヤノがわからない現象を、ボクが理解出来るわけがない。それが言い過ぎだとしても、実際にその通りなのだという絶望的な現実に気が遠のきそうだった。

 

とはいえ、2人してさっぱりわからないのは中々無い事である。これもまた事実だ。よって、ボクより勘が強いマヤノの頭で理解が及ばない範疇であるならば、地道に計算式を作り解いていくしか方法は残されていない。

 

ボク達はどぼめじろうを、今度こそ観察する様にして視聴する様になっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

この取り組みにマヤノを強制的に参加させたのは内緒だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

その行いのせいで、まさかあんなことになるとはこの時、思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

場は戻ってあの放送直後に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

流石に進展が無くてはどうしようもないので、ジャパンカップ前ではあるものの、どぼめじろうについてボク達より良く知っているであろうマックイーンを、イクノディクタスを同行させる形で呼んだのだ。無論、マックイーンのトレーナーからも許可は得ている。ご覧の通り、マックイーンにとってイクノディクタスはある種の精神的要であるから釣られやす…一緒に来てくれるだろうとは予測していた。こうした縁は大事にしておいて正解だった。

 

それは兎も角として、他にもどぼめじろうや恋鐘を観察していく内に、色々と判明してきたことが増えてきた。

 

大原則として、どぼめじろうの配信が盛り上がるのは決まってレース前だ。それもその筈、彼女は曲がりなりにもトレーナー試験に殴り込むような形で挑んできていることや、配信そのものの行為によって証拠が示されている。

 

そして決まって恋鐘が小説を投稿するのは、どぼめじろうが配信を終えた後だった。それも周期的に行われているそれらは、時折突発的に投稿すること以外は一部を除いて、高確率のパターンで見事に一致していたのだ。その一部を除いて…というのは、例えば秋天の時やその前ツインターボの一件など、目紛しい出来事が多々あった場合などである。サンプル数が少ないという理由から検証するには非常に難しい。仮にこれらが偶然だったとしても、この一連の共通点が奇妙なほどに浮かび上がっていたという発見は、自身にとって重要だと感じていた。

 

こうした指摘は恋鐘=どぼめじろう説を信じている界隈にも多く見られていたのは、記憶に新しい。が、インセルの掲示板やこの放送の影響によって、完全に異教徒のような扱いと化している。こちらとしても、半ばお遊びのようなものである…と仮定した方が楽ではある。

しかしながら、この不安定材料は確証を得られた訳ではない為一旦保留としよう。

 

さて…科学における未知に対する発見の歴史かよ、と思うほどの偶然が図らずも重なった。

それも客観的に見て、この様子である。

お陰で疲労困憊だ。何せ、この薄気味悪い悪寒が早く治まってほしい、と願いながらの作業だ。当然である。

初めてどぼめじろうを視聴した時のように、こうして一つ一つを冷静に見極めようとしなければならない心構えを常に維持しなければならないのだ。

これらの事象をこのレベルまで本格的に検証した人が居なかった、という事も除けば別になるのだが…やはりそこは当事者だ。当事者なりに知ろうとする欲求が高くなってしまう…いや、今まで以上に調べなければ、気持ちを落ち着かせることが出来なかったのだ。

そう言い聞かせなければならなかった。

 

怪物と戦う者は、その際自分自身が怪物にならないように気をつけなければならない。獣と自分を別つ最後の一線が常識で、向こう側が常識から外れてしまったような異物にすぎないのだから、より一層身を引き締めなければならない。ただでさえ、ウマ娘はとりわけ怪物のように例えられやすい。だからこそ互いに怪物同士として惹かれあうのだろう。嬉しくはないが、それも仕方がないのかもしれない。

 

底の深い沼へ飛び込まなければならない時、飛び込んだ回数や慣れ、単純な向き不向きといった要素を踏まえた上で考えて行動しなければならない。

【深淵を覗き込む時、深淵もまたこちらを覗き込んでいるのだ】といった言葉が実際に存在するように、ボク達は怪物を覗き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、今のところわかっていることについてはこんな感じなんだよね。どうかな、マヤノ?」

「流石にマヤでも男性か女性か、だなんて完璧にはわからないよ…男の人なんて見たことないし、こんな人も実在するんだ〜って感じ?それに…ほら、タキオンさんのファンの人達とかと似たような層なのかもしれないし…」

「確かに…その可能性は否定出来ませんわね」

「確かにマヤのママは、女優のお仕事とかパイロットをしていたから色々な国を見てきているけど…ウマ娘にのみ影響を与える、なんて人は知らないんじゃないかな」

「進展は無し…ですか」

「材料としては力不足だよね。ボク達のも含めて」

「決定打には欠けていますが…トップガンさん的に感じた事を述べてみてはいかがでしょう。まだ仮定の段階ですし、主観的な意見も必要なのでは?」

「…確かに」

「流石イクノさんですわ。さすイクですわ」

「で、どうかなマヤノ」

「んー…レースみたいでわかんない」

「…まあそうだよね」

「そう簡単にはいきませんわよね」

「思っていた以上に難解ですね」

 

 

「そうなんだよね…そもそもわからないのは身バレを防ぐにしては変声機は大袈裟だよねってことなんだけど、それは初期の動画でのトラブルか、もしくはブラフかの違いなのかなぁ…。それに、イラストに使われている筋肉は完全に女性の人でもウマ娘でもないけど、解剖学なんてやったことないからわからないし、保健の教科書とイラストがほぼ瓜二つってだけで判断はできないよね。音声検証する価値はあると思うけど、アリゴリズムやメカニズムがほぼわからない限りは無理かも…!monadさんもといシャカールさんも流石にそんな探偵まがいな事が得意かどうかはわからないし、幾ら数字に強いからって周波数が分かったところで…特定出来るものなのかなぁ?VRウマレーターとかある現代の技術力は洒落にならないし…」

 

 

「うん…ん?」

「あ、あの?」

「何処かで見た光景が」

 

 

「だけど愛は本物だと思うな。ただ、少なくとも並の精神状態でない事も確かだよね。こんな風にウマ娘の音声だけで狂える人なんて女性でも歴史的に見ても居ないわけだし…男性なら尚更だよね。前例なんてないんだから、どうやったって立証することは不可能。なんらかの精神疾患だったとして、こんな人が外に出歩いていたらまず警察に捕まるだろうし…富裕層だったら多分精神病棟に入院することは可能だったりするんだろうけど、配信の記録を振り返っても普段の様子から考えるに少なからず健常者ではある筈。これらが演技だとしたら…それを年単位で続けるだなんて相当なエンターテイナーだよ。いや…エンターテイナーではあるんだろうけど、どう見たって素…普段の様子もこの取り乱しっぷりも素、ということは単純に純粋な人って事で良いのかな?解離性同一症なら幼少期がきっかけだったりするし、記憶もあやふやになるといった症状が出るらしいからここはグレーだよね。というか素人が断定するのは危険だし…。それに、仮に酷い虐待を幼少期に受けていたなら、作品に多少なりとも影響は出てくるケースが多い。でも、それらは性的虐待などの恣意的な要素が大きかったりするものが大半で、こんな風に自然的なグロさを表現するというのは、どちらかといえば表現者が使う技術に近いイメージかな。泡ついた流行り物なんてジャンルでもなければ、歪んだユーモアやメッセージ性がイラスト全てにつぎ込まれているって感じでも無い。この人にとっての作品に関する情報は、あくまで下準備でしかないように見えてくる。…となると、この人にとっての根源的な主張はやはり愛情…愛情だというの?マヤのこのドキドキは…何なの?愛の形は千差万別って言うけど、これはそもそも愛なの?」

 

 

「マヤノ?お〜い、マヤノってば〜」

「マ、マヤノさん?」

「これは…もしかしなくても不味いのでは」

 

 

「不可解なことはもう一つあるよね。仮にこんなヤバい人が試験に来ていたら個人情報を保護しているとはいえ即身バレして厳重注意かスカウトを受ける筈。なのに、URAや上層部は無視するどころか、何が起きているのか把握すらしていなかった。だから春の天皇賞や宝塚記念、スプリンターズS、秋の天皇賞、そしてマイルCSに至る今日までカンパイすら上げられなかった。ウマッターのアカウントから個人を特定して秘密裏に注意するにも、予言だなんて推測の域でしか無いし、注意も出来ないだろうし…注意したらしたらでそれはおかしいわけで…そんなポンポンカンパイを出せるものでもないだろうしって。色々な要因が重なるに重なって、どうしても後手に回っているのが証拠そのものだよね。しかも、この騒動についてはメジロ家や名家の桐生院家も含めて誰も分かってない…いや、正体について知っていたとしても信じたくないってのが、ひょっとしたら心の片隅にあるんじゃないかな?それに…」

 

 

「マヤノ、ストップ」

「落ち着いてくださいまし」

「い、一体何が…こ、これがどぼめじろうの力だ、とでも?」

「あ、ごめんね皆。こんな解けない数式とか初めてだったからつい…。ただ一つだけ言えるのは、多分こんな感じになったのは試験に落ちた後だと思う。確証は無いけど…その時点では誰も本性が掴めていなかったのかもしれないかな…なんて」

「冷静さを取り戻せて良かったですわ。つまりどぼめじろうは…当時は猫を被っていた、ということでしょうか」

「面接とか大体そうなのでは?」

「否定はしないけど…う〜ん。すぐバレるって人も居るからね。相当上手く無いと無理でしょ」

「あ、でもここまで熱中している人だったら、もしレース場で見かけたらわかるかもっ!」

「そんな人が居たら否が応でもわかるよ。ボクですら気付くと思うし…」

「待ち合わせなり場所を指定して実際に会ってみる、みたいな力技はどうでしょうか。その人、ウマ娘に誘われたら直様にでも飛びかかって来そうな勢いで駆け寄ってくるのでは?マックイーンさんも…確かDMでのやり取りは数度行われているはずですし、喰らいつくと思いますが…」

「………イ、イヤですわ。せめて人数がいればやってみても良いとは思うのですが…流石に1人では荷が重たいと言いますか…第一、それで釣れるのであれば、私達は苦労していません」

「仮に【東京レース場の正門前にてお前を待つ!!】って言っても「ショウモンマエ?」とかなんとか言ってボケそうだよね。何よりも…アイツはレース場に顔を出した事がないらしいから」

「むむむ、これは難問!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてまた振り出しへと戻るの繰り返し…これにはもういい加減に終止符を打たなければならない。

と、その時だ。

 

 

「単純にSNSに詳しい人からどぼめじろうについて探れれば良いのですが…」

 

「え?」

「あ」

「…そっか」

 

 

三人寄れば文殊の知恵とはこの事か。イクノディクタスから放たれた聡明な言動が、流れをさらに大きく変えることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ!SNSならマヤ以上にカレンちゃんが何か知っているかも!聞いてくるね〜!!マヤちんテイクオ〜フ!!」

「マ、マヤノ!!っ…足早!!ええ…じゃあダメ元でエアシャカールに聞いてみるかぁ…苦手なんだよなぁ…」

「あら?あなたモナドの曲をよくお聴きになられていませんでしたこと?」

「マックイーン。内心、やった!とは思っているのはこの際認めるけど…それはそれ、これはこれね」

「私達はどうしましょうか…」

「この手の事に関しては、ドーベルが一番でしょう。イクノさんと私は、そちらをあたりに行きましょうか」

「わかりました。では、各自情報が集まり次第集合で、宜しいですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう…この3人に聞いてそれで終わる筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「構図の撮り方の規則性、色彩感覚が一緒ってどういう事!?というかなんでウマスタにもどぼめじろうが居るの!?何であの人は呑気に写真なんか撮ってんのよ!!」

「ドーベル。少し落ち着きましょう。大丈夫大丈夫…わたくしが一緒ですから〜。だいじょうぶですわぁ」

「ちょ、ちょちょちょっと待ってください。…ということは、別名義であたし達のそうした配信にも入っていた可能性が浮上してくる…という事になります。同時視聴なども考えれば…それだけ範囲は広がります」

「それだとカレンがお姉ちゃんだと思っていた人がお兄ちゃんだった…なんてこともあり得るのかな?んー、これだと聖徳太子…とかの方がわかりやすいかもね」

「い、いやいやいやいや…さ、流石にそんなことはないんじゃないかな?今までウマドルやっててもそんな人見たことないしゃい…」

「うわぁ…オグリさんに、タマモクロスさん、ゴールドシチーさん、イナリワンさん、サッカーさん、クリークさん、アルダンさん、ヤエノさん、わ、私も描かれてる」

「表面上だけでは決して成り立たない儚さが感じられて、なんというか…綺麗ですね」

「観賞とは…無我の境地へと至る際の良い修行になるやもしれません。そしてこれは…ボーンクラッシャーさんとホーリックスさんに…イブンベイさん、ホークスターさん、キャロルハウスさん、トップサンライズさん、サンデーサイレンスさん、ペイザバトラーさんでしょうか…トレーナーのクリスさんも居ますね」

「…まっ、下手くそだけど悪くはないんじゃない?」

「なんや、褒めるの下手くそか」

「ほほぉ…流石はどぼめじろう。マーちゃんよりも炎上芸がお上手なのです。そしてこの追われっぷり…ふむ、よい愛されっぷりです。どややん」

「頼むマーチャン…優等生が呆れて何も言えてないからその辺にしといてくれねえか?あと何のドヤ顔だよ…」

「いや、今日は逆に助かるかも…しれないわね。それとウオッカ…ドヤ顔の理由は、どぼめじろうがマーちゃん人形を購入した痕跡があるからよ」

「はー…うめすたやらポニッターやらマメチューブってのは難しいんだねぇ」

「アキュートさん…ウマです。せめてポニーとは区別しましょうよ」

「相克とはいえ…こういう時に物怖じしないアキュートさんの精神力は、本当に見習いたいよ」

「ネットでの情報源は当てにはならないことが多いが…確かにウマ娘の情報をやたら収集しているって噂はあった。が、想定していたよりも収集している度合いが桁違いだな。ってことは…さてはあいつ、ガチで働いてねぇな。時間的に考えても、よっぽどな暇人でないと不可能…良い加減目障りだったノイジィの変数の定義完了。ハッ!これで証明終了かぁ!?」

「ひゅううう!!その笑顔素敵だよシャカール!!最高っっ!!」

「それでシャカールくん?過去ログとかからも何か手がかりは見つかったかな?」

「タキオン…ドーピングが嫌いな性質だってのにやけに食いついてくるってのはよォ…クレイジーなてめぇも一端の女だったってわけかァ?そんな一面を少しでも早くに見せていれば、フライトも喜んでいたと思うぜェ」

「人の想いでここまでウマ娘が進化する、活性化するなんて事例は初だからねぇ…胸が躍っているだけさ。ただ…この現象がアドレナリンやらコルチゾールやらアンフェタミンなんてものが、外部から入っていたせいで起きているのだとしたら…膝から崩れ落ちるくらいにはショックを受けるかもしれないがね」

「タキオンさん…アドレナリンは兎も角アンフェタミンは覚醒剤ですよ。そんなものが手に入っていて、こんな規模で起きていたらこの業界は終わりです」

「はぁ……それで、肝心のどぼめじろうが男性なのかをどう見分けるの?SNSや情報サイトに書かれているタレ込み、あとはニュース記事から引用するとなると…信憑性もそうだけど、入力数にも限りがあるわ」

「そうした記事のプレスリリースが確かであるものから、よりウマ娘関連に選定していく作業が必要がなりますぅ〜」

「…あれ?これってヤバいじゃん。そんな限定的にしたら、確率なんてもっと下がるに決まってんじゃん…」

「ウェイ!!それならウチに任せて!!よく新聞とかネット記事見るのが趣味だし、怪しい記事には目をバリバリ光らせてるから、少しはバイブスが上がる結果にはなるかも!!」

「カブトシローやエリモジョージが居ない今、ダイタクヘリオス…君だけが頼りだ。…それよりマルゼン、君はこの状況についてどう思う?私も何か…一生徒会長として出来る事は無いだろうか」

「そうねぇ…刺激的で良いんじゃないかしら。けれど…ちょっち羨ましいかなって。あたし達が中等部だった時に、こんな風に楽しめたらな…なんて。まあ、それはともかくとして…少なからず後悔のしないようにしてあげるのが、先輩としての最低限の勤めじゃないかしら。今はとりあえずあの子達を見守りましょう?」

「あのマルゼンが…皇帝様も目が点になるような素直な感想を言うなんてなぁ」

「どぼめじろうって、ホント…アタシよりもタブーな存在だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、この錚々たるメンバーは何なんですの?」

「鍋パーティーでもするんじゃねえの?」

「しませんわよ!!」

「あー…あはは。マヤノが気絶しちゃって…それから勘付かれちゃった」

「いいではありませんか。知恵は多いに越したことは無いですよ?」

「イクノ…その考えは脳筋すぎるって。いや、その執念はボクも好きなんだけど…ホント、時折怖くなるから」

「あのテイオーからお墨付きを貰えるとは…より一層磨きをかけるとしましょうか」

「お手柔らかにお願いするよ」

「ほらそこ!イチャイチャしてないで手伝ってくださいまし!」

「明らかな嫉妬だな」

「嫉妬ですね」

「今の嫉妬なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

何故彼女が倒れたのか…その真相は本人にしかわからない。マヤノが目を覚ました時に真っ先に思い浮かぶとも限らない。話せる状況になったとしても看病しているフジキセキには止められていて、とてもじゃないが寮長室に聞きに行くこともできない。付き添いのスイープトウショウは、教える気にならなければこちらに振り向いてはくれない為、中々に難しい。

 

 

それでも彼女が気絶する際、寮中に響き渡る程の大声で「アイコ(↑)ピイイイイィッッ!!」なんて叫ぶんだから…そりゃあ大事になる。

 

 

声が裏返るような何かがあった、という噂は美浦寮へ事情を聞きに行っていたマックイーンらの耳にも入っていた。そのうち、あれよあれよとカイチョーやメジロドーベルは兎も角として、他のウマ娘や何故か一人暮らしをしている人までもが、続々とここ栗東寮へと集まっている。

 

 

だが、この騒動のお陰で一番乗り気でなかったエアシャカールが、本格的に手伝うと承諾してくれたのだ。

なんでも、ウマ娘全体のデータを収集している内に、徐々に…そして確実に能力の上昇や興奮作用が高まる傾向が認められたことが不可解だったようで、個人的に追求していたらしい。情報を彼女自らが開発したParcaeへと入力していくと、それらはある年を境に始まっていたようで、こんな事は歴史的に見てもありえないのだと、彼女は述べている。

 

 

ボクも、それは聞いていて確かに妙だとは感じていた。しかしながら、こうした能力全体の上昇に至っては可能性はいくらでも考えられるのだ。例えばレース場の改装工事の影響や、トレーニング施設の改善、戦術の変化、栄養価が高くかつバランスの良い食事を徹底的にしたことなど、大まかに表すならば複合的かつ総合的なことが影響している。そうして変化していくのが社会である。

 

 

これはあくまでボクなりの思考から生まれた産物であって、正しい記録ではない。だからこそ、試しにわからないなりに意見も述べてみたのだ。その時は揶揄うようにして、偶然なんじゃないの?的な感じで口を開いていたと思う。

 

 

それに対し、彼女はこう答えた。

 

 

ならば何故、この現象が日本だけでなく世界中で同時に確認されているんだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらも解けましたわ。見直しも済んでいます」

「…前提条件の一つとして欠かせない【収入源が無くても生活出来る人】…なんてのは、よっぽどの富裕層だ。ここに…バカらしくもなるが、本当に男性かってことを踏まえた上で性別を抜きにして…オレらが求めた計算だと、高くても6.74%だな。いや、こんなに確率が高いってのも正直ありえねェんだが、相当甘く見積もっていると仮定してくれ」

「ふぅむ…まっ、普通の計算で求めたからねえ。寧ろこの根拠に基づく数字は、安心する心地良さだ」

「当然です。きちんと法則に則ったものですから」

 

 

この計算にはボクも携わった。だからこそ自身もホッとしている。イレギュラーが生じない0と1の世界で定義されて求められているからだ。

 

 

「さて、今度はシャカール君お手製Parcaeの出番だねえ。一体どんな導きをするのか…実に興味深い。…お手並み拝見と行こうか」

 

 

ここからが本番だ。気持ちを引き締めるように、エアシャカールは不安げにパソコンに条件を入力する。どこか戸惑うような雰囲気を纏い、何度も何度も確認している彼女は、いつも見せているような強気な姿勢を完全に失っていた。

 

 

「ウマ娘の変化…オレもこれに関しては自身で体感している事だしなァ。この原因が簡単に証明出来るなら苦労はしねぇ。あわよくばマヤノトップガンが気絶した理由もこれで説明が付くンだろうが…。だが、100通りの策を考えてもそれを超えてきやがるどぼめじろうに関して、俺らでも知らないようなことを予測させて計算しているってのは無茶振りに近ェし、最近はParcaeも、まるで意志があるかのように可笑しな数字を叩き出すことが多くてなァ。ならばいっそ、URAに侵入する方がまだマシかもしれねェってのが、ここ最近の笑えねェ冗談だ」

「本来であれば…あり得ない現象ですね」

「ふぅむ…それでもその通りに世界が動いていてかつ正常であるならば、本当に私達の身体に何らかの変化が起きているということになるねぇ。しかも、この解答によってはウマ娘と人との違いも生まれてくるだろう。より綿密に設定した方が証明しやすそうだ」

「そういう事になるなァ。……うっし、これで一応…入力完了だな。さァて、一体どんな数字を叩きだ…す……の………や………………ら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子は余りにも不自然だった。そんな様子だからこそ、誰もが気になって覗き込んでいた。そして、後悔した。男とイチャコラしたい、という邪な夢がある人ならば別だろうが…そこに歓喜などはなかった。こんな時、どんな顔をすればいいのかわからなかった。唖然と突きつけられた現実が、未熟なボク達の魂を震えさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『95.0961274013%』

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?んんん?あ なっ 身体がハリツケになってくよォ〜!?レベルの、あまりの衝撃的な数字に皆が動けていない。あのハジケリストなゴルシでさえ、固まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャ、シャカール…もう一回計算してみよっか。何か見逃しているのか、故障なのかわからないし…」

「あらやだシャカールさん、いけませんわぁ。これはもしかすると故障しているのではなくて?わたくしが治してさしあげますわぁ!」

「チッ…ゴルシが戸惑うってことまで想定しなきゃいけねェのかよォ…面倒だなオイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

一生あるかないかの瀬戸際かもしれない珍しい場に、ボク達が立ち会えるんだなぁ…で、済めば良いのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

『95.4712447178%』

 

 

 

 

 

 

 

 

あれれ〜、おかしいぞぉ?と言いたくなったのは初めてだ。こんなもの、科学の領域を超えている。【宇宙・肉体・悪魔 -理性的精神の敵について-】を読んだ時よりも、現実を受け入れる姿勢を維持しなければならないだなんて、誰も聞いていないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでアガるんだよ!!」

「エクストリィム、ハッピィイ!?」

「落ち着けシャカール…具体的に条件を縮めて再度計算だ。こういう時…積み重ねが大事になってくる場面で、入力する側が焦っても良いことは無いだろ。ゴルシちゃんからの真面目な助言だ。今回の相談料はタダでいいぜ」

「あァ!?…そうだったな、悪りィ。だけどよォ…これ以上何を入れるってンだ?」

「例えば…ウマ娘が好きな男性だった場合とか、男性だけどトレーナーの才能があるとか…」

「カフェ…今日はいつも以上に冴えてるなァ」

「鬼が出るか蛇が出るか…実物だねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

今度こそ0%になるだろうと踏んで、頭を動かし記入しても…

 

 

 

 

 

 

 

 

『97.0133499971%』

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ…今、ボクはどぼめじろうの配信を聞いていたんだっけ?

いや、違うよね。今は証明する時間だよね。数学のお時間だよね。

ん?どういうこと?え?こんな…こんなことってあり得るの?こんなの血の一滴で海の青を赤く染めようとするようなものだよ?ねえ、どぼめじろうさん?あなた、森羅万象という言葉はご存知?ご存知でない!?

今度こそ本当にどぼめじろうが何なのかを知れたってことになるのかな?…そうするとボクは一体どうなるの?ねえ、答えてよ…ど、どぼどどど、どぼ、どぼどぼ…どぼめじろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あァ…あゥ…うゥ…な、なァコイツ…全くと言っていいほどロジカルじゃねえンだが、こ、これは壊れたってことで良いよな?」

「…ざ、残念ながら故障はしてないねえ。寧ろ絶好調じゃないかな」

「…万が一Parcaeや情報自体が細工された可能性は?」

「だ、断定は出来ませんが…それは無いと思いますぅ。まず、ここまで繊細な機械を他の人がイジるというのは、相当頭がイカれていないと…無理ですからぁ」

「あ〜…その気持ちすっごいわかりマ〜ス」

「確かに…神絵師さんから渡された下書きとか筆が進みませんからねぇ」

「そうですね。線一本描くだけで緊張して手が震えたりしますし」

「あの…まさかとは思うけど、そのPCが自我でも持っている…なんてことはないわよね?それか中身が人間…とか」

「アヤベさん…そんなカワイくない事言わないでくださいよ…」

「え?まさかの電脳化?」

「意識の研究は、まだ進展がなかったと記憶にありますが…」

「Parcaeにひ、人が宿っているとか怖い事言うんじゃねえよ…」

「というか、どういった計算方法でこんな出鱈目な数字を叩き出しているんだよ…ゴルシちゃんの頭がいよいよどうにかなっちまいそうだぜ」

「いえ、あなたは元からその素質はありましたわ」

「ドレイクが生み出した公式が、悉く潰されるとは…」

「こんなことって…<何故私に恋人が出来ないのか>の数学的証明が崩れるわね」

「なあ、姉貴。こ、これは単純に表すとどういう事なんだ?」

「恐らくバグとかでなければ…世界中にあるゴシップの中に一致する人物像が居たんだ。…それも一過性でなく、継続的なパターンを示しているから、現在進行形で影響を与えている…ってことに」

「そうだとしても理解出来ません…何故こんな数値を叩き出すのかがわかりません」

「風水は統計学男性も統計学風水は統計学男性も統計学風水は統計学…」

「え、待って、本当にどぼめじろうって男性なの?」

「こんな高濃度高密度な事実を1人で受け止められるわけがない…マヤノトップガンが気絶したのは、やはりこれが原因なのか?」

「シ゛ラ゛オ゛キ゛さ゛ま゛あ゛あ゛!!」

「も、ももももう一回だけ再検証してみようよシャカール。トレセン学園に就職するような前例があるかないか…とか、どうかな?」

「…ああ。頼むこれで0%になってくれ。でないと日本政府だの面倒なところにしか個人情報のデータが入っていないことになる。病院ならまだ個人でハックできるが…男絡みともなれば国家絡みにまで発展して最悪は…クソッ前科なンて付きたくねえ。頼む、頼むぜParcae…オレはまだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

『97.7959871199%』

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぁっ!…あっ。あっ、あっ!あっ!ああっ!あ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こ、恋鐘とどぼめじろうが同一人物である可能性も入れてやる!これでどうだァ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『98.7222222222%』

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、あっ!あっ!!あ!!あっ!!あっ!!ああっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「どぼめじろうはウマ娘を愛しているか!こんな抽象的なもので数値に置き換わるなんて言わねェよなァ!?そうだろParcae!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『99.1031021222%』

 

 

 

 

 

 

 

 

天才はいる、悔しいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っだあああクソッタレ!!オカルトより運命の女神様の方が怖えよ!!99.1%って実質確定じゃねえか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

エアシャカールのあまり上手くないツッコミが、ただただ寮にこだまする。ロジカルじゃないから嫌だ、というような理由ではなく、決して嘘偽りのないカミングアウトまで添えてのお墨付きで。この禁断の扉は待ち望んでいたかのように開いて、そしてボク達を闇で包み込む。その先に待ち受けていたのは、ただ唯一無二の恐怖だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかここまで来ると、逆に安心するなァ。これが正常性バイアスッてヤツだったかァ?」

「私の研究における可能性とやらが、さらに広がったねぇ…!」

「新たな勝利の方程式が、そこにもあったのか!」

 

 

などと、頭の良い人はきっと、こういう風に落ち着いて対処している…というのが理想なのだろう。

 

 

だがしかし…現実では、

 

 

「な、なななななんかここここここここまで…ッ。ってか、オレ…おおおおおうおうおととととここここにああああんな中指なんかたてて…そそそういえばあいつ…オレのファンファン?…オオオオレのファンにおお男が居るからって気が緩むとか………………………マジでキモいじゃねェか…想像以上にしょうもねェ…。論理的になろうにもダメだァ…肝心のロジカルも通じねェ…!ねえよ…これを破るデータなんかねえよ!ふざけンなバーカ!…ええっと、バーカバーカ!」

「全人口における割合のうち、その中でも男女比率は1:80を更新していた筈だ…さらにそこからトレーナーを目指すような狂人が出る確率は0.000…やめよう。これは罠だ。どぼめじろうが私達を揶揄うために仕組んだ罠だ!そうに決まってる!」

「………」

「やばい、姉貴が息してない!」

 

 

ファンもびっくりな阿鼻叫喚の嵐だ。

 

 

それは決して特定の彼女達に限った話ではなく…

 

 

「嵐が吹き荒れています。あからしま風です。野分です。飄風です。煽風です。乱気流です。ビュービューです。ヤバいです」

「あわわ…あわわわわわわわわ」

「カレンは今日もカワイイ…カレンは今日もカワイイ…よし」

「ハーッハッハッハ、ハーッハッハッハッハッハッ。…え、ちょっと待って」

「エラー発生、エラー発生」

「あ ラ ライスおかゆになっちゃうよォ…」

「ちょっとセイちゃん横になりますね…」

「ケッ!?」

「おれの脚に目を向けてくれていた人が…おと…こ?」

「華麗であれ…優雅であれ…己を律するのです…己を…律…するのですっっ!」

「Oh…My God……」

「MJK…」

「最狂の男が現れちまったぜぇ…」

「あ、あかん…皆が壊れてもうた…う、ウチも限界に近いってのに…」

「てやんでい…てやんでい!」

「どうして…どうしてこんな…」

「あ〜…気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…このドキドキが本当に気持ち悪いぃ……」

「いいいいいいねぇいいえねえ。さささ最高にヒリヒリヒリするじゃないかどぼぼぼめじろう」

「ど ぼ ぽ め め じ ぽう ろう」

「お、男が喋ってる…男が喋ってた……」

「ひへー」

「ウ、ウマ娘の感覚器官…特に聴覚において人間よりも優れていた点が仇となったのか…知らず知らずのうちに、彼に支配されていたということに…ぐっ」

「あ あっああっあっ……」

「うあああああ…」

「あっ頭オカシクなりそうです…ずっと見られていたんですぅ…わたわワタシ達ずっとヤバい悪魔に見られていたんですぅ…」

「あららららららららららららららららららら」

「むむむむむむむむむむむむむむむむんっ!?」

「ほわああああああ………ああああああ!?!?」

「しゃいいいいいいいいいいいいい☆」

「ひょええええええええええええ!!」

「マーベラス☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆」

「すごいすごいすごくすごいですぅ!!」

「ウ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ウ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!」

「コパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ」

「ここここここいつはちとまずいかもねえ…」

「わややややややややややややややややややや」

「消えろ、闇のわだす!!」

 

 

この場にいた全員に、ありのままにブッ刺さっていた。無論ボクもそうだ。

 

 

そしてこの中でも一番にショックを受けていたのは、他でもないメジロ家のお嬢様方であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして迎えたジャパンカップ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……スタートしました。先頭に立ったのは6枠10番のメジロアルダ…え?メジロアルダン!メジロアルダンです!さ、最高のスタートを切って、先頭に躍り出ています。二番手に追う形で…な、なんとメジロマックイーン!メジロマックイーンです!これはどういう事でしょうか!?一体何が起きているのでしょうか!?三番手はフジヤマケンザンか、ジョージモナークといった形で競い合っておりますが…』

 

『通常の先行策…というわけではないようですね。この2人がレースを引っ張っていく、といった形になるかと思われますが…どのようなレース展開になるのか目が離せません』

 

 

メジロ家の2人がレース直前から領域を展開。

 

 

『ほ、他のウマ娘は様子見をしているようですね…団子状態となっております。』

 

『いえ、これは様子見ではなく…何処か怯えているようにも見られますね。い、一体何が…』

 

 

実況席も困惑するほどの狼狽えっぷりは、一瞬であったが彼女達の仕事をも奪わせる程のものだった。

 

 

『最終コーナーへと入ってきましたが、依然としてメジロ家の独壇場となっております!差が…差が縮みません!』

 

『な、なんという事でしょう…!ここから如何にして着いて行こうにも、残りの脚の事を考えては厳しいでしょう!先頭までは10バ身以上あるでしょうが…これがレースの恐ろしさです!こんな光景は前代未聞ですよ!』

 

 

他のウマ娘に対し、まるで彼は誰にも渡さんと威圧するかの如く独占欲に塗れた争いが、そこで繰り広げられている。

 

 

『アルダンだ!!メジロはメジロでもアルダンの方だ!!メジロアルダンが僅かにハナ差で勝利を掴みました!!ガラスの脚を見事に克服し、悲願のG1達成ィィイイ!!2着にメジロマックイーン!!3着5バ身差でゴールデンフェザントが今ゴールインッッ!!4着マジックナイト、5着シャフツベリーアヴェニューも見事に食らいついていましたが、日本勢の、特にメジロ家のウマ娘には驚かされましたね!!』

 

 

『メジロアルダンは今季で引退という方針が立っていたそうですが…こ、これはわからなくなってきましたね。あの威圧感は共に走ったオグリキャップやそのライバルタマモクロスに並ぶほどのものです。まさに【無敵のウマ娘】と称されても良いかもしれません。良い試合展開でした。そしてそんな彼女に食らいついたメジロマックイーンも、最強の名を語るに相応しい逸材であると、私は感じています。』

 

 

この結果には、どぼめじろうも予想だにしていなかった事だろう。恐らく彼がこの場に居たら、動揺の色が間近で見て取れるんだろうが…予言が外れたかと思えば、この有り様だ。

もう滅茶苦茶だ。

こんな単純な思い込みで調子を取り戻すマックイーンもそうだが、あの一件のみでメジロアルダンを完全に開花させるとは、ドーピングよりタチが悪い。プラシーボ効果なんて度を超えている。

 

 

というか、勝利への執念の動機が完全に『男を抱きしめたい』だとか『男とイチャイチャしたい』だとか『男の胸に顔を埋めたい』だとか『腕に尻尾を巻き付けたい』だとか『抱いてくれ』だとか!完全にやましい事しか考えてないそれだもの。

 

女の戦いなんて、誰も巻き込まれたくないもの。夢バトルそのものだもの。誰だって悪魔同士の戦いになんて参戦したくないもの。

 

ボクとマックイーンが喋っているだけで暴れ散らかすあのサンデーサイレンスだって、困惑しているんだもの。ボクだってワケワカンナイヨー!と叫びながら、今すぐにでもどぼめじろうの胸元で泣きたいくらいだ。ワンワンと泣きついて怒鳴り散らかしてやりたい。そしてそのまま…いや、ないない。ボクがあんな狂った人を好きになるとか…あんな目にあっておいて、ボク達がどぼめじろうの事を好…す…いや、認めない。絶対に認めてなるものか!!なんて葛藤はこれで何回目だろうか。

 

 

下手したら100は超えてるんじゃ…なんてことは断じて無いったら無いのだ。

 

 

この世界はおしまいだ。

 

 

男を支配し…男に支配されたいと夢を抱き、男を得るために戦い、男に飢え、男と共に死にたいと願う…そんな世界なんだ。

 

 

この時より、どぼめじろうという名の騎士の封印が解かれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

だがこれは、どぼめじろうを語る上での…まだほんの序章に過ぎなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

12月、第二の封印が解かれようとしていた。

 

 

 




 


ここに上ってきなさい。これから後に起るべきことを、見せてあげよう。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。