馴れ初め的な話を書いてみました。雑な展開ですがご了承を…
ライブハウスcircle。今日、ガールズバンド界が熱くなっている事に伴い、ライブハウスも盛況なのだが、うちも例外ではない。
未経験ながら、ありがたいことにバイトとして雇ってもらい、スタッフのまりなさんに色々教えてもらって早1年余りが過ぎた。日々の仕事はそれなりに忙しいが、ここでの仕事は割に合っていて、なかなか楽しい。それに先述の通り、ガールズバンドがわんさか来るので、まあその、癒しになる訳だ。可愛い子多いし。他のライブハウスでバイトしてる友達が、jkの彼女作ったぜ!!とか言ってたけど、ここまでいる(ざっと30人くらいか?)となると、ちょっと尻込みするな…そんな事を思ったりしていたある日の事だった。
「あ、あの…すみません」
ふと声をかけられる。
「はい、いかがいたしました?」
「この、ポスターの掲示をお願いしたいんですけど…できますか?」
ポスターを受け取る。
「…なるほど、メンバー募集ですね、大丈夫ですよ」
「そうですか!よかった〜」
「ありがとうございます」
「いえいえ。バンド、最近流行ってるよね」
「そうですねー。私、ここで前にあるライブを観て、感動して…それでやってみたいって思ったんです」
そこからその子の初めて観たライブについて話を聞いて、段々脱線していってしまった。大人しそうな雰囲気に見えたが、好きな事の話題になると、結構はつらつと話す子だった。好きな音楽のジャンルも似ていたので、話し込んでしまう。
「…って、ごめんなさい!私仕事中の人を引き止めて話しちゃって…」
「いやいや、大丈夫だよ。これも仕事のうちっていうか」
「ならよかった、です。…あっ、私、倉田って言います…倉田ましろです」
「倉田さんね、自分は-。ここに書いてあるけどね」
「-さん…。色々、ありがとうございました」
・・・
「へぇー、月之森の子もバンド組もうとしてるんだー。きっと結成したら凄いんだろうなー!」
「そんなハードル上げたらプレッシャーですよ、まりなさん。…まあ、確かに月之森ってなると人並み以上は確実ですけどね」
「ねー。それにしても、さっきの子、うちに来る子とはちょっと雰囲気違ってたし、可愛かったねー」
敢えて自分の方を向き、ニヤニヤしながら言ってくる。
「そ、ソーデスネー」
「そろそろ、アプローチしてみれば?」
「うっ…別に奥手になってる訳じゃないんですけど、なんかきっかけってもんが無いじゃないですか…それにあの子を練習台に、みたいな言い方ですよ、それ」
「えー?他の子に対してよりもちょっと親しげな感じに見えたけどなー」
「いやいや…たまたまですよ。多分。」
実際のところ、かなり可愛かったし、大人しすぎず派手すぎず、大分好みではあったが…
「…何しろエリート学校の子じゃな」
名前を聞けば、大体の人が知っている名門校だ。才のある人しかいないと評判で、半分は尊敬され、半分は妬まれ…という具合だ。
個人的には、お高く止まってるように見えて、あまり好意的ではない…。誹謗する気はないが。
・・・
しばらくして、彼女がまたやってきた。しかしその面持ちは暗く、いかにも何かあったという感じだ。かといって変に干渉する間柄にすらなってないので、とりあえず見守ってみる事にする。
「…待って!」
奥から走ってきたのは、ポピパのボーカルの子だ。彼女があんな風に説得する姿も珍しいな…
「…」
「…だから、もう一度考えてみた方がいいと思う!辛いこと、私達もあったよ。それでも、皆でバンドやってると、それも忘れちゃうくらい楽しくなるからっ…!」
「香澄さん……ありがとうございます。私、もうちょっと考えてみます」
「…!うん!私、応援してるから!」
そう言って2人は別れた。
メジャーデビューする女性バンドもあまり続かないイメージがある。前からこういったケースは見てきたが、やっぱり大変な所も多いんだな…などと考えていると、ふと、まりなさんが、
「うーん、今日はあんまり忙しくなさそうだなー…-君、上がってもいいよ?」
「え、急ですね」
まりなさんは小声で、
「ましろちゃんの相談に乗ってあげなよ」
「ま、まだ一回しか喋ってないじゃないですか…」
「そういうとこだよ!ここから広げていかなくてどうするの?」
なぞの勢いに気圧されて、結局上がる事にした。なんでまりなさんがこんなに推してくるのか…
・・・
帰り道。
「はぁ……香澄さんにはああ言われたけど、皆に何て言えばいいんだろう。謝っても許してもらえるかな…無理だよ…」
肩を落として歩くましろに、あくまで自然に声をかける。
「おう、倉田さん、だっけ?」
「…あっ、-さん。帰り、こっちなんですね」
「まあね。……お疲れみたいだね。とりあえずこれ、よかったら」
そういって(事前にまりなさんが用意していた)缶コーヒーを渡した。
「…えっ、いいんですか…いただきます」
「大したもんじゃないけどね」
と苦笑した。
「-さんも、私と香澄さんの話、聞いてました?」
一息ついたところで、ましろが切り出した。
「全部じゃないけど、最後の方はちょっと聞こえたな」
「そうですか…。私達、バンド作ったんです。それで、いくつかのライブハウスでライブをしてみたんですけど………」
そうしてましろは、バンドを組んでからの一連の出来事を話した。
「なるほど…ね」
「私自身、月ノ森の他の人達みたいに長けてるものがある訳じゃないのは、分かってました。だけど…あんな風に言われてるなんて、思ってなかったです」
しばし、沈黙。
「うちのライブハウスのオーナーが前に来たんだけどさ、」
そう言って自分から切り出す。
「その時にいたんだ。ちょうど倉田さん達みたいに、バンド組んでうまくいかなかったから、揉めてるところが。そしたらオーナーが割って入ってさ…ミスは誰かのせいじゃない、皆のせいだって怒ったんだ。それが認められない人がいるならさっさとやめちまいな、てね」
「連帯責任、ですか…?でも、そんな事、簡単に皆が受け入れてくれる訳ないですよ…」
「まあ、オーナーの話は極端だけど…俺が言いたいのはさ、後悔するのはまだ早いんじゃないかって話だよ。
倉田さん、君はやりきったか?」
「………」
「まだ、できると、俺は思う。もちろん、演奏だったりがうまくいかなくても、それは始めて間もないんだから、ここで諦めちゃ……いや、違う…こんな事言いたいんじゃない。
俺、倉田さんの歌、好きなんだよ。」
「……!」
「透明で、柔らかな声だけど、芯がある感じでさ…ごめん、何かうまく表現できないけど…って、倉田、さん?」
ましろは涙を流していた。
「す、すみません…ホント、-さんの言う通りです。私、まだ何もやりきってない。入学して少ししか経ってないのに、初めから諦めて、嫌なことがあれば責任転嫁して…
だからこそ、今私がやるべき事が分かりました。私、皆ともう一度、演奏したい…!許してもらえるまで謝って、仲直りしたい…です」
・・・
「じゃあ、ここら辺でお別れだな」
「はい、-さんに話聞いてもらえて、良かったですっ…」
「なら良かった…今の倉田さん、良い顔してると思うよ」
「えへへ、おかげさまです…
あの、もし、良かったら、これからも相談とか、乗ってもらっても良いですか…?」
無自覚上目遣いでお願いされる。
「ま、まぁ、自分で良ければ力になるよ」
(こ、この子…無自覚で堕としに来ている…ッ!脅威ッ!)
そんなこんなで、間もなくmorfonicaというバンドになるの中の1人の子と出会った訳なのだが。
***
「お疲れ様!今日はこれで終わろっか!」
「テスト明けだったからもうちょい音狂うかなーって思ったけど、そんな事無かったな!いやー、アタシらやっぱ天才っしょ!」
「うんうん、広町的にもなかなかの手ごたえだったよ〜。しろちゃんも張り切ってたもんね」
「えっ?!う、うん!そうだね!
あ、あと…私、もうちょっとだけ残っていくね?」
「……」
今日は皆用事があるという彼女の「リサーチ」だ。
なのでcircleには私だけが残れる。
「るいさん…ありがとね」
「私は特に何もしていないわ。ただ、皆の話を聞いてそれとなくスケジュールを管理していただけよ」
「うん、わかってる…じゃあね」
「ええ。…楽しんで」
「…!!いっ、いやそういうのじゃないからっ!ただ、その…ええと…」
「分かってるわ。冗談よ」
軽く微笑んで、るいさんは帰っていった。
・・
「じゃあ、お先上がりまーす」
「おつかれー!
…今日は久々に、来てるみたいだね?」
自分には聞こえない大きさでまりなさんはそう呟いていた。
ラウンジへと出ると、彼女が待っていた。
「さ、さっきぶり、だね…」
「あはは…まあ、その、なんだ。まずはテストお疲れ、くらたま」
「ありがとう…」
そう言って自分はましろの頭をなでなでする。
「えへへ…やっぱ好きです、これ」
「ただ撫でてるだけなんだけどね…」
「-さんだって、ただぎゅーされてるだけなのに、尊くて死んじゃう!とか言ってたじゃん」
「それを言っちゃうとおしまいなんだよな…」
「じゃあ、今日も私の勝ち…?」
「仕方がない…負けましたよ」
「やったぁ…えいっ。じゃあ帰ろうね」
そう言って腕にくっついてきた。
(はぁ………この生物は……………はぁ……)
※語彙力不足のため以下略。
帰り道。
「打ち上げとかって月ノ森もやるの?」
「あー、モニカではやったけど、他の子はあんまりやらないかも…」
「やっぱりそんな感じなんだね」
「-さんも、打ち上げしたい?」
「テストは来週なんよなー」
「あっ、そっか…それじゃあ、それが終わったら、あそこのコラボカフェ行きたいな」
「あそこもうコラボやってるんだったな…どうしよう、テスト前に行きたい」
「そしたら、勉強サボっちゃうから、だめだよ…!」
「はーい、わかってるよ」
「そろそろだね」
「あ、もうここまで来た。早いね、話しながらだと」
「うん…それじゃあね」
「おう、おつかれな」
「テスト終わったら、たのしいコト、シようね…(自分補正かかってますご了承下さい)」
「ありがと、頑張るよ」
く、くそ…彼女、倉田ましろは脅威だ…。腕に絡んでくる時も胸、めちゃくちゃ当たってくるし、相変わらず時々上目遣いで迫ってくるし、自分の武器を無自覚に振るってきやがる…軽くは自覚あるだろ…。なのにあざとくない、自然に可愛いって!やばいって!くらたま半端ねぇって!さっきの別れ際の発言ももう勝手に含みセリフっぽく聞こえちゃったし!
「…とにかく、あの時進言してくれたまりなさんには感謝しなきゃな…どうしてあんな押してきたのかは分からんけど。それはそれとして…
はぁ、今日も抜かないと駄目だな…」
スキンシップは取っているが、その先は行ってない。よって無自覚の可愛さと健全なエッチさを過給してしまった今の俺に出来ることは…言うまでもない。