雅が埠頭でミュルミトン・ドラクマを撃破し、ファントムが乱入したその頃、『Fortuna』の端の席で樹と彼の正体を知っている謎の青年が向かい合っていた。
店内の他の客は焔と霞が対応するが、2人も青年の正体や動向が気になり営業に集中できていない。
「…改めて、妹を助けてくれたことには感謝する。その上で聞く。あんた何者だ?」
「その質問は必要かね?私と君達が敵対関係であるということを再度確認したいのか?」
「…あんたがドミネイター、それも幹部以上の立ち位置に居るのは容易に推測できるさ。あんたの名前を聞いてるんだ」
「フッ…ストレートな会話は嫌いじゃない。いいだろう、神々廻深月、それが私の名だよ」
ニヒルに笑った青年、深月は1枚名刺を取り出し樹に差し出す。
名刺に書かれていた社名は『神々廻コーポレーション』、戸津部市に本社を置いて日本中に支社を持つ、アート・芸術分野を中心に通信技術や医療福祉も手がけている超有名企業だ。
肩書きは専務兼研究部門のプロジェクトリーダー、樹の推測通りかなり上の立場らしい。
「神々廻さんな、覚えたよ。知ってると思うが、俺は財部樹、仮面ライダーとして戦ってる」
「深月で構わんよ。妹や弟がいるからな。少し前に妹の蘭が世話になっただろう」
「『蘭』……あぁ、雅の大学に現れた蛇女か。てことは半魚人の方があんたってわけね」
答え合わせをするように深月は大理石のようなベルト、リーヴドライバーと青色のリーヴコインを見せつける。
既に店内には彼以外の客はいない。危険な戦闘となるかもしれない為、焔たちが他の客に謝罪して臨時閉店としたからだ。
正直、樹としては現状彼に勝てる自信がない。
過去に相対した時は戦闘に至らなかったものの、立ち姿だけで蛇女、テュポーン・ドラグマ以上の強者だと感じ取れてしまった。
ダイヤモンドバカラフォームという強化形態をもってしてもタイマンでの勝率は2割を切っているといったところだ。
「それで、ドミネイターのお偉いさんが何でここに?直接俺を叩きに来たのか?」
「いや、今はまだその時ではないのでね。ここに来たのはただの足止めさ」
「足止めだと?」
「君達が何度も苦渋を舐めさせられたジェイルファントム、彼の頼みでね。竜胆とその仲間をターゲットにしたいが、カジノの強化形態が邪魔だからこの場所に留めさせておいてくれとね」
「なんだと!?」
雅の危機と聞いて樹は弾かれたように立ち上がり、店を出ようとする。
がしかし、ドアを開ける直前で思いとどまった。
「賢い判断だ。今ここで君が竜胆の救援に向かったら私は君の兄と妹を簡単に人質に取れる。君は私が退店するまで私から目を離せないさ」
戦えない家族2人を残してこの場を去るリスクから踏みとどまった樹だが、最愛の許嫁のピンチにすぐに迎えないことに樹も、霞と焔も歯噛みする。
そんな様子を見て深月はフッと笑い席を立った。
「だがもう私に注意を向ける必要はない。ファントムは目的を果たしたようだからな。コーヒーは美味だった。敵対していなければ贔屓にしたい程にな」
残念だよ、と言い残し深月は帰っていった。
すぐに追いかけようとした樹だが、深月の姿は一瞬で見えなくなった。
やむを得ずカジノストライカーに霞を乗せ、同じく自分のバイクに乗った焔と共に雅を探しにアクセルを踏み込んだ。
樹達がブリゲードから連絡を受けて埠頭についた頃には、既に雅は意識を取り戻したいた。
「とりあえずブリゲードの本部かお前らのラボに戻って対策を立てる。いいな、樹」
「それはそちらでお好きにやってください。私は私の足で探しますので」
「こん中で一番ダメージ受けてるお前が単独行動しないために樹に聞いたんだよ!分かってんのか雅!?」
3匹のドラグマの対策を練るべきだと提言した正道だが、それを無視しようとする雅を怒って呼び止める。
しかし自分以外の制止では止まらないだろうことを樹は知っている。
「まぁ待て雅。帯刀さんのいうことも間違っちゃないだろ?」
「じっと待つなんてできるわけないでしょう!?」
「別に待てなんて言わないよ。今消耗している上に回復なしで連戦覚悟はあまりにも分が悪いって話だ。俺のバイクに乗りな。それなら体休めつつ探せるだろ?」
苦笑しながらヘルメットを渡す樹。
それを受け取った雅は少しバツが悪そうな顔をしてカジノストライカーの後部座席に乗る。
そして樹は雅に少し待つように言って正道に話しかける。
「全く、あのじゃじゃ馬を乗りこなせるのはお前だけってことだな」
「でも気持ちは理解できるでしょ。家族同然の人間を自分の油断でドラグマに変えられたんだ。ぶっちゃけ俺も、だいぶキレてます……帯刀さん、これを姉ちゃんに」
「ん?これは…ダブルアップギア!?」
「竜胆用のギアの開発には俺の方の実物があった方が捗りやすい。なんで姉ちゃんに渡してください」
「いや待て、多分3匹は新型のやつだろ?ならお前がこれ使って倒すべきだろ」
「帯刀さんが雅の立場だったら納得しないでしょ」
そう言われて正道は口を噤む。
確かに自分の妹や恩人がドラグマに変えられてしまったら、そして自分にドラグマを倒すだけの力があるのなら、自分で助けたいと思うのが当然の心理だ。
だからといって新型はダブルアップギア以外で倒すと死に至る危険な種類だ。その勝ち筋を薄くしてまで感情を優先する樹に正道はそこまでするかと内心驚いていた。
「もちろん、姉ちゃんが間に合わないっていうんだったら改めて俺がサブさんたちを助ける。でも俺は姉ちゃんの腕前に賭けてるからさ」
「……そこまで言うならしゃあねぇな。任されたぜ」
「帯刀、悪いが俺も別行動で情報を集める。霞を本部の凪のところまで連れてってやってくれ」
ダブルアップギアを正道に預けて樹と雅はドラグマたちを探しにカジノストライカーを発進させた。
そして焔もまた、樹と雅、そしてブリゲードの車両とは別方向へ愛車を走らせた。
戸津部市内のタワーマンション屋上、そこには2人の人間と3体の異形がいた。
うち3体の異形はサブ・マル・レイが変身させられたドラグマたち、そして人間はジェイルファントムこと焔とポセイドン・ドラグマこと深月だ。
「貴様の頼み通り財部樹の足止めをしたが、ダブルアップギアとやらは奪わなくてよかったのか?竜胆の方は開発途中で、カジノしか新型を人間に戻せる者はいないのだろう?」
「別に俺は今すぐカジノも竜胆も排除するつもりはないんでね。ある程度奴らを成長させないと俺の目的は達成できない。進化を望んでいるのはあんたらもだろう?」
「ふん。確かに我々ドミネイターの人類を更なるレベルに引き上げるという目的のためには障害は必須。あれらがまだ利用価値がある、という意見には同意だな」
数刻前に樹達に見せたような不敵な笑みは一切浮かべることなく、深月は冷たく言い放つ。
それは樹達の運命に対してではなく、目の前の信用ならない協力者に向けての感情だ。
「ところで、お前の部下の変身能力は優れものだな。事前に聞かされていなければ私でも分からなかった」
深月がそう言って顔を向けた先には、どういうわけか焔がもう一人立っていた。
しかしもう一人の焔の姿が突如白い靄に覆われる。
そして靄が晴れたところに立っていたのは、以前『Cosmo』襲撃事件の際にファントムと共に樹達の邪魔をしたペストマスクのカラス怪人だ。
「ムネモシュネは記憶を司る神だからな。こいつは見聞きしたものは絶対忘れないし、それをもとに擬態することもできる。頼りになる相棒ってもんさ」
「羨ましい能力だな。どうだ、私のもとに来る気はないか。この男よりいい条件で雇おう」
深月のスカウトに対してカラス怪人、ムネモシュネ・ドラグマはそっぽを向いて否定の意を示す。
未だ待機状態にさせている般若面とゴーストマスクと違い、単独で様々な暗躍を任されているムネモシュネは焔の懐刀であり、表情こそ読めないものの危険な役回りを請け負っているムネモシュネもまた焔に対して強い信頼を抱いている。
「ははっ、振られてやんの。……まぁそろそろいい頃合いだな。お前ら、好きに暴れな」
ムネモシュネの反応に笑みを見せた焔は、控えさせているドラグマたちに指示を出す。
それを受けた3匹はマンションから飛び降り、階下から人々による悲鳴を奏で始めた。
ドラグマに変えられたサブたちを探す樹と雅は、バイクを走らせながら聞き込み調査をしていた。
しかし怪人の姿を見たという証言は一切得られない。
樹は一度近くの公園にバイクを止めて、自販機で買った緑茶を雅に渡した。
「ありがとうございます……樹様…しかし…」
「分かってる。でも少しは休息は必要だ。水分くらい摂っておけ」
焦る雅を樹は宥める。
桔梗雅という人間は落ち着いているように見えて、実のところかなり暴走しやすい。
普段の冷静な立ち振る舞いは若くして一組織の長になったがゆえに身につけざるを得なかったものである。
しかし幼くして実の母は病死、実父、そして実父同様に実の親のように慕っていた樹の両親を3年前の事故で失ったことで、身近な人間を失うことに対して人一倍恐怖を抱いている。
特に今回は直属ではないとはいえ、自分の部下の謀反が招いた事態だ。
後悔もより大きく、樹が傍についていないと、疲労で倒れても止まらないだろう。
「……サブは父上の厳しい稽古で泣いていた私をよく慰めてくれました」
「あぁ、まだ幼いころの雅のレベルに合わせてくれただけじゃなく、俺にも付き合ってくれたよな」
いずれ桔梗組を継ぐことになる、と武道の稽古をつけてきた雅の実父、桔梗義昭の鍛錬は非常に厳しかった。
父親にしょっちゅう泣かされた雅を励まし、いつか親父をぎゃふんと言わせましょう、と秘密の特訓に付き合ったり、それを見て自分も雅を守れるよう強くなりたいと志願してきた樹を鍛えたのが鹿谷三郎である。
「……マルは料理の特訓に何度も付き合ってくれました」
「ただ食べるのが好きなだけじゃないもんな、マルさんは。レイさんも悔しがってたっけ」
樹の胃袋をつかむため料理の特訓を始めた幼いころの雅に付き合ったのが、猪口丸夫だ。
今でこそ桔梗組の中で誰よりも『Fortuna』に入り浸って「大食らいのマル」と常連に呼ばれている彼だが、樹と雅の料理の腕前を成長させたのは彼といっても過言ではない。
女の自分より料理が上手いなんて、とレイが嫉妬するほどである。
「……レイは今でも私が服装や髪形に悩んだとき、一緒に考えてくれます」
「ちゃんとお前のためにトレンドを掴む努力を怠らないもんな。尊敬するよ」
蝶野玲子は雅の側近の紅一点であるため、彼女の悩みをよく聞き、一緒に考えて支えてきた。
自分の考えだけじゃ雅に間違ったことを教えてしまうかもしれないと、霞や凪に相談しに行ったりしたこともあり、逆に財部姉妹から相談を受けることもある。
雅たちからは常に女性としての憧れであった。
「…私にとってはあの3人は第三の親なんです。実の親と財部の家のご両親、そこに次ぐ大切な存在なんです」
「俺にとってもそうだよ。」
「はい。ですが樹様……申し訳ありません。今回は…」
「助け出すのはお前の役目だ。そこは譲るさ。でもな雅、俺たちはなんだ?」
樹からの問いに今まで俯いてた雅が初めて顔を上げた。
「夫婦……です」
「うん、仮面ライダーである以前に俺たちは夫婦だ。じゃあ夫婦ってのはどういうものか?」
「互いに支えあう関係…」
「そう、雅はいつも一歩引いて俺のことを支えてくれてるよな。そして俺の願いを叶えるために一緒に戦ってくれてる」
仮面ライダーとして戦うことを決めたあの日、一人で戦うという樹のエゴを叱った雅の心はそれより以前から一切変わっていなかった。
そのことを本当の意味で初めて自覚した樹は、いつの日か彼女の夫として同じように支えたいと思っていた。
しかしこれまで彼女がプライベートの誘い以外で我儘を言ってきたのは、それこそあの日の誓いくらいであり借りを作ってばっかりだと樹は思っていた。
「こんな状況だけどさ、俺はやっとお前のことを支えるチャンスが来たと思ってるんだよ。だから今度は、お前のために一緒に戦わせてくれ、雅」
「……本当にずるいお方ですね、樹様は。その我儘は断れませんよ」
「そのために話す時間を作ったんだ。これも賭けさ」
やっと笑みを見せた雅に、樹もはにかむ。
その時、樹の携帯から着信音が鳴る。
「樹!ドラグマの場所が分かったよ!駅東の高層マンション『フローレンス』近くに3匹纏まって暴れてる!」
「了解、姉ちゃん。すぐ向かう」
「うん、竜胆用のギアはほとんど出来上がってる。私も指揮車に乗って向かうから!」
通話を切り雅の名を呼ぼうとした瞬間、雅が自分の両頬を思いきり叩いた。
パチンという音と真っ赤な二つの紅葉に思わず閉口してしまった樹だが、先ほどより真っすぐこちらを見つめる雅の瞳を見て笑う。
「しっかり捕まってろよ雅!」
「もちろんです、ぶっちぎってくださいませ!」
全速力で被害現場に急行する二人の腰には、すでにカジノドライバーを巻かれている。
樹は片手で運転を、雅もまた片手で樹に捕まりながら、それぞれ慣れた手つきで自分のベルトを操作する。
『What's your choice? What's your choice?』
「「変身!!」」
『OK! That's sure! Raise Up! Earth Bacarrat!』
『承認完了!開幕!舞鶴花札!』
向かい風を受けながら二人の姿が仮面ライダーとしての姿に変わる。
カジノと竜胆が現場に到着して最初に目についたのは燃え盛る高層マンションだ。
30階建てのそのマンションの20階の一室、炎が発生している箇所の近くに位置している部屋の窓に縮こまっている親子を竜胆は目にした。
恐らく廊下に火の手が及んで逃げられないのだろう。
「ッ…!まずい…!」
そう呟いた竜胆はカジノが気づくよりも先に白い翼を広げて勢いよく飛び立つ。
竜胆が飛びだした直後、角から緑色のプラズマを発していたディアー・ドラグマが親子がいる部屋めがけて電撃を放出したのだ。
竜胆は今まで出したことのないスピードで20階の部屋まで飛び、窓ガラスを破壊する。
「捕まってて!」
短く叫んだ竜胆は親子を抱きかかえると素早く離脱、数秒後にディアーの電撃が部屋を襲った。
爆発音が響き、新たに煙が上がり始めた時には竜胆と親子はすでに地上に着陸していた。
「間に合ってよかった…ケガはないですか?」
「はい!ありがとうございます!」
「お姉ちゃんライダー!ありがとう!」
親子が竜胆に感謝しているとき、カジノもまた地上で逃げまとっている人たちが安全な場所に避難できるよう、ドラグマたちの注意を惹き人々に声をかけていた。
その時、1台の車両が近づいてくる音が聞こえる。
ブリゲートのメンバーが到着したのだ。いの一番に飛び出した正道はすでにグラディウスに変身している。
「帯刀さん!ナイスタイミングだ、このマンションの避難を任せていいですか?」
「おお!?構わないが、3対3の方がいいんじゃないのか!?」
「あの3人は私と樹様で何とかします。それよりも逃げ遅れている方がいるかもしれない方が一大事です。さっきみたいに流れ弾が飛んでくる前に何とかしてください」
「お前はいちいち上から目線だな!?まぁいいけどよ。隊長!この辺の消化器ありったけ集めてきてください!俺が先行します!」
言うが早いか、グラディウスは煙が立ち込めるマンションに突入していった。
どうやら凪が乗っている車両はまだ到着していないらしい。
彼女がダブルアップギアを持ってくるまで、ドラグマたちを倒さず逃げないように抑えておかなければならないようだ。
「アシストは俺がする。アビリティ解放!」
『That's sure! Earth Abilities!』
ディアー・ドラグマが緑色の電撃を放出するが、同時にカジノが生み出した砂の壁が阻む。
壁が崩れると竜胆が翼を広げて突撃してくる。
すれ違いざまに光華槍弓・薙刀モードでディアーとボアを切り裂き、さらに急上昇して空中にいるパピヨン・ドラグマを切り裂いて地上にたたき落とす。
『承認完了!疾風丁半!』
「アビリティ解放!」
『承認!疾風丁半!』
地上に降り立った竜胆は舞鶴花札式から疾風丁半式にフォームチェンジ、すかさずアビリティを発動させ両手に寒波を纏う。
目にも止まらぬ怒涛の掌底でパピヨンを圧倒し、角に電撃を纏って突進してきたディアーを合気道の要領でいなす。
「ブフウウウゥゥ!!」
「おっと危ない」
『OK! That's sure! Aqua Craps!』
ディアーを躱したことで自分に背を向けた竜胆めがけてボア・ドラグマが鼻から炎を噴き出す。
しかしアクアクラップスフォームにフォームチェンジしたカジノがアクアランスを回転させて作った水の壁でその火炎を防ぐ。
水の盾を操作し、水流に変えたカジノはアクアランスをボアに突き出す。
するとボアの方に向かった水流はボアを飲み込み、鞭のようにしなって他の二体に打ち付ける。
「助かりました、樹様」
「気にすんなって、夫婦だろ」
「ふふっ、そのセリフを樹様が言うのなんだか新鮮ですね」
『OK!That's sure!Storm Roulette!』
『承認完了!月光闘馬!』
いつもの調子で夫婦漫才を行った二人は同時にフォームチェンジを行う。
カジノはストームルーレットフォーム、竜胆は月光闘馬式だ。
再度光華槍弓を薙刀モードで構えた竜胆が駆け出し、少し遅れてカジノも飛び出す。
3体のドラグマをかわるがわる切り裂く竜胆。
自分以外の仲間が攻撃されているとき、ほかのドラグマたちが竜胆へ攻撃しようとするが、それをカジノが許さない。
風に乗って素早く移動し、ストームダガーで切りつけることで敵の攻撃を打たせないようにしている。
そしてヘイトがカジノに向く前に竜胆がターゲットを変えて切り裂く。
完璧なコンビネーションで3体のドラグマを手玉にとっている二人だが、命の危機を強く意識し始めたドラグマたちの動きが変わる。
3体同時に竜胆たちから距離を取ったかと思えば、すぐに3体一か所に固まったのだ。
「なんかやばい予感がするな…」
「ですね、こちらも一旦姿を変えましょうか」
『OK! That's sure! Blaze Slot!』
『承認完了!開幕!桃源麻雀!』
危険を感じ取った二人は現在使えるフォームの中でそれぞれ最も技の威力が高いブレイズスロットフォームと桃源麻雀式にチェンジし、必殺技をいつでも使える準備をする。
二人が構えると、ディアーが雷、ボアが火炎、パピヨンが鱗粉を含めた突風を一斉に撃ち出した。
「「「ゴアアアアア!!!」」」
「っ、来るぞ!」
「合わせてください、樹様!」
『OK! All In! Ending Time! Blaze Golden Crash!』
『承認!必殺上々!桃源 黄金斬!』
カジノがブレイズカリバーから烈火を纏った一太刀を、竜胆が光華槍弓から花弁を伴った一薙ぎを同じタイミングで振るう。
2人のライダーと3体のドラグマの攻撃は中心で大爆発を引き起こす。
両者の必殺技は完全に互角であるようだが、その事実に仮面ライダーたちは眉間にしわを寄せる。
「互角ってのはまずいな…このままだとこっちがガス欠になりかねない」
「余波も危険です。ここら一帯がいずれ吹き飛びますよ」
なんとかして均衡を破らなければと考える二人。
その時またしても車両が近づいてくる音が聞こえた。
「樹ー!雅ちゃーん!受け取ってー!!」
「凪姉様!できたのですね!?」
ブリゲードの増援車両に乗っていたのは二人が待ち望んでいた凪。
車が停車するより先に窓からダブルアップギアを雅目がけて投げる。
「とりあえず爆速で仕上げてきた!舞鶴花札式なら使えるようにしてきたよ!」
「やはり樹様の賭けは外れませんね…!使わせていただきます!」
『Double Up!』
カジノと同様の位置にダブルアップギアを装着して、舞鶴花札のリーヴコインを装填する。
そして軽快な音楽に合わせてダイヤルを回転させる。
『承認完了!超・開幕!!』
竜胆の後ろに投影された巨大なダブルアップギアが『Crane』のリールで止まる。
そしてその文字が『Phoenix Fever』に変化する。
さらに続けて投影された一羽の鶴が炎に包まれ、鳳凰へと変わる。
鳳凰は竜胆の周囲を旋回するとその深紅の翼を広げて、彼女を包み込んだ。
次の瞬間には竜胆の姿は新たなものに変わっていた。
鳳凰の翼と同じ深紅のアンダースーツに白い二重のライン、背中の翼も深紅に変わっているほか、後頭部と腰からは鳳凰を思わせる計7本の尾が伸びている。
肩と膝、胸部には舞鶴花札式と同じく桜の模様が刻まれている。
『聖火再臨!鳳凰花札!』
最後に音声とともに桜色の花火が爆ぜた。
これこそが竜胆の強化フォーム、鳳凰花札式だ。
「私の誓いは決して消えない。樹様と共に守り抜きます!」
竜胆の宣言に応えるように、火の粉が全身から舞う。
そして真っ直ぐ悠然と、舞台を歩くかのようにドラグマたちへ近づいていく。
3匹のドラグマは竜胆から発せられるプレッシャーに気圧されて動けない。
最初に動いたのはディアー、得意の電撃を放つが、その行動は攻撃ではなく恐ろしいものを近寄らせないようにする防御のようであった
「はぁっ!!」
だが竜胆は光華槍弓を一度振るっただけで、ディアーの電撃を完全に打ち消してみせた。
驚愕するドラグマたち、その隙を見逃さない竜胆はさらに炎をまとった薙刀をもう一度振るう。
「せいっ!!」
「「「ギャアァァァァ!!?」」」
固まっているとはいえ3匹を纏めて薙ぎ払う凄まじい攻撃に、後ろで見守ってたカジノが驚く。
「以前の竜胆より遥かに出力が上がっている…」
「強みのスピードやしなやかさはそのまま、パワー増し増しのチューンナップだよ!まぁそのせいで他のフォームに応用できなくなっちゃったけど…」
タハハと笑いながらも自慢げに語る凪。
パワーアップという通り、3対1であろうが竜胆は互角どころか優勢な立ち回りだ。
「まずはマル!貴方から助けます!」
『承認!必殺上々!鳳凰 黄金斬!』
薙刀から噴き出る炎が赤から金に変わる。
恐怖で追い詰められたボアはヤケクソ混じりに突進をしかけるが、竜胆は一太刀目で片方の牙を、続けて二太刀目でもう片方、そしてトドメに胴を切り裂いた。
烈火の刃で切り捨てられたボアの肉体が燃え盛る。
しかし火が消えた時には人間であるマルの姿に戻っていた。
「そうか…あの炎でリーヴコインと人間の生命力を繋いでいる部分を焼き払って、繋げてるのか!」
「当初は桃源麻雀のアビリティで考えてたんだけどね、どうやら舞鶴花札の方が相性がいいって兄さんの見立てが当たったみたい」
鳳凰の炎は死と再生の象徴、新型ドラグマの抱えるリスクも焼き払ってしまえばいい。
しかしこの状況を見越していたと思われている焔が、この事態の元凶であることを知るものはこの場にいない。
「次は貴女です、レイ!逃がしません!」
「ギィィ!!?」
翅を使って逃亡を計ろうとするパピヨンだが、竜胆は焦らずに光華槍弓を弓モードに変形させ必殺技の構えを取る。
『承認!必殺上々!鳳凰 黄金射!』
狙い澄まされた炎の矢が鳳凰に変化し、パピヨンの体を貫いた。
空中で撃ち抜かれたため変身者のレイは気絶したまま落下するが、カジノが受け止めたため怪我は無い。
「最後はサブ!これで終わらせます!」
『承認!必殺上々!鳳凰 黄金撃!』
背中の翼を広げ勢いよく宙へ飛ぶ竜胆。
右足に黄金の炎をまとった飛び蹴りを放つ。
ディアーは腕と角でガードしようとするが、呆気なく角は砕け聖なる炎に身を焼かれる。
家族3人を無事救い出した竜胆。
その様子をマンション屋上からムネモシュネと眺めていた焔はニヤリと笑った。
「これで第2ステップは完了した…次の計画に進められるな。…さて、ブリゲードの連中もそろそろ着く頃だしずらかるぞ」
「「「申し訳ありませんでした、お嬢!!!!」」」
マンションの火事は鎮火され、幸いにも死者は出なかった。
グラディウスが先行したことで低層階の人々の避難が迅速に済み、高層階も戦闘終了後に竜胆が飛び、カジノがアビリティを使ったことで救出が完了、遅れて到着した消防隊によって火災被害もマンションのみで済んだ。
そして現在、桔梗邸では正座する雅の前でサブたちが土下座をしていた。
「操られていたとはいえ、お嬢と若旦那を襲うだなんてとんでもないことを!」
「いくら詫びても償いきれねぇ!」
「お嬢!どんな処罰でもあたしらは甘んじて受けます!」
「顔を上げなさい、3人とも」
沈痛な面持ちで顔を上げた3人ことを、雅が泣きそうな顔で見つめていた。
「元はと言えば私の不出来が招いたこと、責められるべきは私の方です。そして感謝をするなら私を支えてくれた樹様と、助け出す力を作ってくれた凪姉様にです」
「「「でも、お嬢!」」」
「私は貴方たちの長です。長が下の者を救うのは当然のこと。今は何より、貴方たちが無事でよかった……!!」
ついに涙を堪えきれず泣き出してしまう雅、それにつられてサブたち3人も大泣きしてしまう。
その様子を襖1枚挟んだ向こう側で樹が微笑みながら聞いていたのだった。
AIイラストを使って竜胆の強化フォーム、鳳凰花札式を書いてもらいました。ライダー名やアイテム名を入力せずに出力してもらったため、こちらと名称が異なりますが、それは無視してください。
【挿絵表示】
カジノを初めとした他のライダーのイラストもライダーデータのところに載せていきます。
またこれに伴って本文中の容姿の描写を一部修正いたします。