「樹、折り入って相談がある」
「なんすか、近すぎるからちょっと離れてくれません」
桔梗組の幹部がドラグマに変えられた一件が解決してから数日たった現在。
キッチンでグラスを磨いていた樹は、正面のカウンター席でコーヒーを注文した正道に物凄い近距離で詰められていた。
「……凪さんって、どういうところに連れて行ったら喜ぶと思う」
「…は?」
真剣な表情で何を尋ねられるのかと身構えていたら、飛び出してきたのは姉についてのこと。
予想外の話題に樹は少しの間、フリーズしてしまう。
「え、なんで帯刀さんが姉ちゃんのプライベートなこと聞くんですか…え、まさか!?」
「いや待て違う!そういうことじゃない!」
もしや「
だがその顔はやや赤く、自分の発言を否定しきれていない。
「ま、まぁとりあえず話を聞きますよ。なんで姉ちゃんの楽しめる場所の話になるんですか?」
「いやお前、最近の凪さんって働きづめだろ?」
正道の言うように、凪は家に帰ってきてはいるものの、ほとんどの時間を家のラボかブリゲートのラボで過ごしている。
カジノと竜胆の強化アイテムであるダブルアップギアは完成こそしてるものの、急ピッチでの開発だったため微調整が必要だった。
それに加えて正道が変身するグラディウスのデータ収集・分析と調整、そしてついに量産化の方にまで手を付け始めた。
オペレーターの霧島が軽く引くレベルのマルチタスクである。
「で、この前のお前の友達の探偵がドラグマに変えられて事件あったろ。その時に隊長と霧島に俺もセットで休むよう言われたんだけどよ」
「ドラグマ出現のせいで流れたから、再度休日を与えられた、ってことですか」
一応今日も二人とも非番なのだが、凪は霞、雅の3人で女子会デートに行っている。
そして正道は休日の訓練を禁止させられたため、妹・優美の見舞いに行ったのち、『Fortuna』で樹に相談しに来たのだ。
「今日は別々だけど隊長から『オーバーワーク防止のため二人セットで休むように』って指示を受けたんだが、まず俺自身休日何をしたらいいかわかんねぇし…」
「それで俺に姉ちゃんとのデートプランを考えてくれと」
「そういうこと…いや、デートじゃねぇ!」
先ほどよりさらに顔を赤らめる正道を見てにやにや笑う樹だが、ここら辺でからかうのはやめようと考える。
実のところ彼にとっても姉に浮ついた話ができたというのは喜ばしいことなのだ。
なぜなら容姿端麗、文武両道な凪は昔から男女問わず友達は多いのだが、その関係が恋愛まで発展したことはないからだ。
理由としてはその有能さが高嶺の花というイメージをつけてしまい、慕うものこそ多いものの恋愛感情までには至らない、あるいは思いを諦めてしまわれがちだというのが一つ。
そしてそれを顧みずアプローチした者は「機械いじり」という趣味故に、自分から出した手を引いてしまうからだ。
「ブラック企業勤めだったころは、仮面ライダーのシステムも相まって余計に趣味に没頭し始めてこのまま独身街道まっしぐらだと思ってた姉ちゃんにもついに春が来たのか…」
「雅ほどじゃないけどお前も結構ひどいこと言うよな…」
「分かりました。姉ちゃんの弟として完璧なアドバイスをします!」
「お、おう。頼むわ」
一方その頃、雅、凪、霞の3人はアウトレットモールのカフェでアフタヌーンティーを楽しんでいた。
「ねぇ霞、雅ちゃん。ちょっと相談したいことがあるんだけど」
「なに?」「はい?」
「帯刀さんってどういう場所なら楽しめるのかな?」
予想外の質問でこちらでもフリーズする二人。
先に口を開いたのは雅だ。
「『
「いや違うからね!?『
「だってその質問は『
「デートじゃない!デートじゃなくて隊長さんからお互い監視のために一緒に休めって言われてね!?」
「監視のための休日ってなんなの?」
普通の感性なら理解しがたい休日に顔を顰める霞。
彼女の一言で少し冷静になったのか、凪と雅は紅茶を飲んで呼吸を整える。
「そもそも私たちに聞かれても困るよね。私はあんまり関わりないし、雅ちゃんは仲良くないじゃん?」
「ええ、なんだったら凪義姉様とくっつかれると義理の兄妹同士になるので非常に嫌です!」
「ほら、だから聞く相手間違ってると思うんだけど。まぁーでもそっかー、帯刀さんね~、お姉ちゃんが最近ちょっとそわそわしてた理由?」
周りがテンパっていたからか、女子高生が好きそうな恋愛話でありながら冷めた口調の霞。
しかし内心では兄同様に、大好きな姉に春が来たことを喜んでいた。
少し前まで職場のブラックさに愚痴をこぼし、彼氏なんて考える余裕もなかったのだ。
どうせなら仕事と合わせてプライベートでも充実してほしいと思っている。
「き、気づいてたの…?」
「ブリゲードの誰かかな?とは思ってたよー。本命帯刀さん、対抗で霧島さん?って人かなって。まぁ帯刀さんなら私は全然ありだと思うよ」
「ナシです!霞ちゃん断じてナシですよ!」
「雅ちゃんはいったん置いといて、帯刀さんってすっごい真っすぐな人じゃん。ああいうなにがあっても守ってくれそうな人は私も好きだなぁ。でも帯刀さんは俺様系どころか、彼女さん側の意向をくみ取ってくれそうな感じの人だし、妹ポイントは高いね」
さっき自分との関わりは薄いと言っていた霞だが、その少ない付き合いの中でも正道が愚直なくらい正直な男であることは嫌でも分かる。
胡散臭い人間よりかはああいうタイプの方が好感を抱きやすいというのが霞の感想だった。
「それに雅ちゃんだって、馬が合わないだけで本性が分からない怪しい人よりはいいでしょ?」
「ぐっ……まぁ確かに、樹様よりは遥っっっっかに劣りますが…結婚詐欺とかに引っ掛かるよりは……」
「雅ちゃんの中でお兄ちゃんを比較対象にしたら勝てる人なんていないから止めた方がいいよ」
苦虫をかみつぶしたような顔、断腸の思いという言葉がよく似合う表情をする雅と苦笑しながらツッコむ霞。
それを見て凪も苦笑いするが、思い出したかのように顔を赤らめる。
「っていうか二人とも、義理の家族とか結婚とかまだ気が早いからね!?」
「でも気にはなっているんでしょ」
「そもそも別れる前提で交際関係を続ける人の考えが私よくわかりません」
「いや、雅ちゃんの言うことはわかるし、いい人だなぁとは思ってるけど…!」
「お姉ちゃん、狙った魚は早いうちに釣り上げておかないとだよ」
「ええ、そして逃げられないようしっかりその身に想いを刻ませておくべきです」
「雅ちゃんの考えはちょっと怖い」
「おやまぁ」
動揺からか気になる人であることを認めてしまっていることに凪は気づかず、逆に霞と雅はにやにや笑う。
奇しくも兄妹・夫婦揃って同じ表情を浮かべていた。
「とりあえず安達さんに聞いてみよ。同僚ならなんか知ってるんじゃないかな」
「安達さんって帯刀さんと同じ部隊の女性ですよね…?」
「恐るべきコミュ力……さすがは霞ね」
他式に目的を考えれば妥当な人選ではあるが、予想外の人物と繋がっていたことに雅と凪はやや驚く。
昔から霞は人たらしの気があり、知らない間に思わぬツテを作っていたり、仲介人を介さずに連絡する仲になっていたりするのだ。
「もしもし安達さん?霞だけど、今時間大丈夫?」
「霞ちゃん!ちょうどよかった!雅さんは一緒にいますか!?」
「雅ちゃんとあとお姉ちゃんならいるけど……もしかしてドラグマ?」
「はい!銀行強盗がファントムの手でドラグマに変えられました!場所を送信するので雅さんに急行してもらってもいいですか!?」
「話は聞きました。凪義姉様、樹様に連絡してもらっても?」
「それなら大丈夫です!帯刀さんが『Fortuna』にいたみたいなのでお二人も向かってもらっているところです!」
『Fortuna』にいるであろう樹、正道よりも現場に近い雅は走って向かうより飛んだ方が早いだろうと思い、ベルトを装着する。
「変身!」
『承認完了!超・開幕!!聖火再臨!鳳凰花札』
竜胆・鳳凰花札式に変身した雅は烈火の翼を広げて飛び立った。
竜胆が目にした現場は凄惨なものだった。
銀行の窓ガラスは破壊され、道路に横たわっている警官が多数いる。
転がされているのは警官だけでなく、パトカーやひしゃげた防護盾なんかもだ。
まだ数人の警官がパトカーを壁にして拳銃で応戦したり、無線で応援要請をかけているがこのままでは時間の問題であろう。
暴れているドラグマは3体。
二足歩行の狼のような姿をしているワーウルフ・ドラグマ、頭部は蛇だが胴体や手足が始祖鳥のようになっているバジリスク・ドラグマ、首と手が異様に伸びているバンダースナッチ・ドラグマだ。
そして安達の報告から推測すると、どこか、おそらく銀行の中にファントムが隠れているのだろう。
「おいおい、ついに仮面ライダーのお出ましかぁ!?」
「ちょうどよかったぜ!警察でいたぶるのも飽きてきたからなぁ!」
「女のライダーだぜ!好きにしちまっていいんだろ、ファントムさんよぉ!?」
「おー、でももうすぐ他の仮面ライダーも来る。油断はすんなよー」
予想通りジェイルファントムは銀行のカウンターに腰かけていた。
お気楽な様子で手をヒラヒラ振っている。
ドラグマたちの様子をうかがっていた竜胆は、今までのドラグマたちとの違いを発見する。
「あのドラグマたち、例のブレスをつけていないのに自我があるのですか…?」
今まで出現したドラグマは幹部級がつけてるリーヴドライバーか、一部の下っ端がつけてたリーヴブレスなしでは理性が失われていた。
しかしたった一人、あのドラグマたちと同じくブレスやドライバーなしでも自我を保てていた前例がある。
正道の父親、正吾が変身したオルトロス・ドラグマだ。
正確にはその進化前のドッグ・ドラグマ、そしてパワーアップしたケルベロス・ドラグマの時は自我を失っていたが、オルトロスの時だけは明確に自分の意思で活動していた、と雅は思い出す。
「まさか、新型の現存生物から神話生物に進化したものは自我を維持できる、ということでしょうか…?」
「正っ解!新型から成長・進化したドラグマは能力の向上だけじゃなく、暴走せずに扱える。ここで重要なのは中身じゃなくてリーヴコインだ。リーヴコインが成長すれば中身の人間が変わっても成長後のパワーを引き出せるんだぜ」
「中身の人間……まさかほかの人間を利用してコインの強化を図ったのですか!?」
「そういうこった。これで貴重なブレスなしでお手軽に即戦力を作れる。まあちょっとハイにはなってるがな」
罪のない人々の命を使って人体実験をするファントムに怒りを募らせる竜胆。
そこへ一足遅れて樹と正道が到着する。
二人ともすでにカジノ・ダイヤモンドバカラフォームとグラディウス・バスターメイルに変身している。
「遅れて悪い、雅。状況は?」
「あのドラグマたちは旧式の見た目をしてますが、新型リーヴコインを人体実験で成長させたものらしいです」
「なんだと!?ファントムの野郎…!」
竜胆の話を聞いて拳を握り締めるグラディウス。
カジノも声には出してないが、マスクの下でファントムのことを睨みつけていた。
「……というか帯刀さん、貴方今、樹さんの後部座席に座って来ましたよね」
「ん?お、おう、それがなんだ?」
「そこは私か霞ちゃんしか許されない特等席ですよ!あなたが気安く座らないでください!」
「今その話する必要あるか!?だいたい2ケツできなかったら俺はどうやって向かえばいいんだよ!」
「走ればいいでしょう!?」
「できるか!?」
「やっぱり私、あなたのこと嫌いです!あなたに凪義姉様を任せるなんて認められません!」
「ちょちょちょちょっと待て!なんでそこで凪さんの話が出るんだ!?」
「え?」「ん?」
「ハイハイ二人とも脱線しない!今は目の前のドラグマを倒すよ」
「ハッハハ!お前ら3人相変わらず最高だな!」
こんな状況でも口喧嘩を始める雅と正道に呆れる樹。
ファントムは思わず笑い転げてるが、ドラグマになっている強盗達は苛立っている。
せっかく手に入れた力で女のライダーを甚振ろうと思っていたのに援軍が来てしまった上に、自分たちを無視してしょうもない喧嘩を始めたのだ。
力に酔いしれてる者たちからしたら面白くないだろう。
「調子に乗ってんじゃねぇ!」
最初に動いたのはバジリスク、眼から怪光線を発射する。
3人のライダーは難なく回避するが、狙いが外れた光線は近くに転がっていたパトカーに直撃する。
すると当たった個所がピシピシと石化していくではないか。
「なっ、パトカーが…!?」
「がはは!どうだ俺様の石化光線は!もっと恐れろぉ!」
「パトカーのコストは高ぇんだぞ!?まだまだ現役だったはずなのに…お前は許さねぇ!」
「キレるポイントそこかよぉ!?」
購入費用が高いとされるパトカーに修復不可能な攻撃を負わせたバジリスクに激怒するグラディウス。
全力ダッシュで距離を詰めてアサルトアームズ・ソードモードで切り裂く。
いくら強化されたとはいえ、所詮は戦闘素人の強盗。
常に鍛えている正道の怒涛の剣捌きに石化光線で反撃することもできず、一方的に切り傷を増やされる。
一方のカジノは素早い動きで翻弄するワーウルフ・ドラグマと対峙していた。
建物の壁や電柱を蹴って立体的に動き回るワーウルフは自慢げにしゃべりだす。
「ぐふふふふ!カジノといえど俺様のスピードにはついてこれまい!じっくりと切り刻んでやる!」
「そいっと」
「ギャイン!?」
しかしワーウルフ程度のスピードならカジノは難なく見切れる。
ダイヤマグナムとカジノブラスターの二丁拳銃、そしてダイヤモンド・ミラージュの反射で無駄なく一発で、何度も動き回るワーウルフをその都度撃墜させていく。
ならば翻弄するのはやめだと自慢の爪で一直線に切り裂きにかかるワーウルフ。
しかしその攻撃もダイヤモンドバカラの強固な走行にあっさり阻まれてしまう。
「お、俺の爪が効かねぇ!?」
「悪いけど、俺たちをやりたいならあの幹部くらいの実力者じゃないと無理だと思うぜ」
一方的な戦いなのは竜胆も同じだ。
彼女の相手であるバンダースナッチ・ドラグマはその長い手足と首を使って竜胆を締め上げていた。
「へへへ、嬢ちゃんライダーよ、このまま絞め殺してやろうか?命乞いするチャンスをやるよ」
「さっさと離してもらえませんか?樹様が相手ならこの状況でも大歓迎なのですが」
「そんな強気な態度でいられるのも今のうち…アッツぁ!!?」
ニタニタ笑っていたバンダースナッチだが、急に熱さに悶えて拘束を解除してしまう。
竜胆が全身に炎を纏ったため、耐えられなくなったのだ。
自由になった竜胆が光華槍弓・クナイモードを手に近寄って来るのをバンダースナッチは伸縮自在の手で防ごうとするが、その腕も端から切り落とされてしまう。
「なんか今までのよりも苦戦しないというか、言うほどって感じだな」
「まあ俺たちもパワーアップしてるからでしょうね」
「このざまだと実験被害にあった人達も浮かばれませんね。」
正道、樹、雅の順で酷評を述べる。
その一言で怒りがマックスになったドラグマたちはまとめて突撃しにかかるが、3人のライダーはすでに必殺技の準備を済ませていた。
「ケリをつけてやる…!」
「さぁ、仕上げといきましょう」
「これで幕引きだ」
『OK! Soulful Lethal Impact!』
『承認!必殺上々!鳳凰 黄金斬!』
『OK! All In! Ending Time! Volcano Platinum Smash!』
グラディウスはアサルトアームズに青く光るエネルギーをチャージ、竜胆は光華槍弓に金色の炎を纏わせる。
そしてカジノはダイヤマグナムにブレイズスロットリーヴコインを装填すると、空いてる左手にブレイズカリバーを握る。
ダイヤマグナムの銃口から勢いよくマグマが噴き出し銃剣のように変化、ブレイズカリバーの刀身も同様にマグマのエネルギーを纏う。
「うぉらあああ!!」
「ぐぎゃぁああ!?」
「せいっ!!」
「ぎいぃぃいい!?」
「はぁあああ!!」
「ごあっ!?」
グラディウスは居合のごとき一閃でバジリスクの身体を斜めに切り裂く。
竜胆はクナイの4連撃でバンダースナッチをバラバラに寸断。
そしてカジノはワーウルフを両手の剣でそれぞれ一回ずつ、そしてとどめにX字に斬り捨てた。
その様子を眺めていたファントムは大げさにため息をつく。
「はぁ~、既存のドラグマより強いといっても幹部クラスとはさすがに雲泥の差があるな…中身も厳選しないともったいねぇなぁ」
「安心しろよ、そんなこと今日から悩まなくて済むようにしてやる」
マグマを解除しダイヤマグナムの銃口をファントムへ向ける。
それを見てファントムは重い腰を上げてファントムブラスターを構える。
先に仕掛けたのはカジノ、発砲と同時にダイヤモンド・ミラージュを展開する。
光弾はファントムの右へ大きく外れるがダイヤモンド・ミラージュが反射させてファントムの背後へ向かう。
しかしファントムは全身のチェーンを後ろへ伸ばして防御、その勢いで背後のダイヤモンド・ミラージュを薙ぎ払い、さらにカジノへと振るう。
「さすがにダイヤモンドバカラでも一筋縄じゃいかないか…!」
「こっちもアプデは怠ってないんでね、っとぉ!」
「私たちのこともお忘れないよう」
「いくらお前でも3対1はきついだろ!」
ダイヤモンド・ミラージュによる包囲網をファントムチェーンで易々と搔い潜り、ファントムブラスターとの二段構えの攻撃でカジノを苦しめるファントム。
ミラージュは簡単に破壊されないものの、並みのドラグマよりも遥かに上手のファントム相手に跳弾による包囲網を再構築するのは厳しく、カジノもまたミラージュを複数枚重ねた蛇腹剣のようにして渡り合う。
そこへ竜胆とグラディウスが加勢する。
カジノ・ファントム共に攻撃範囲が広いため、光華槍弓・弓モードとアサルトアームズ・ライフルモードでの射撃援護を行う。
三者三様の攻撃にファントムは腕のチェーンを回避に専念させる。
周囲のパトカーを掴んで竜胆へ向かって振り回して一時的に態勢を崩し、ビルに撃ち込んで縮ませてグラディウスの攻撃を回避する。
代わりに脚からもチェーンを伸ばしてカジノとグラディウスへ叩きつける。
『Boomerang』『Wolf』『Storm』
「これでも食らいな」
二人が怯んだ隙に緑色のブーメランを精製、すかさず勢いよく投擲する。
突風を巻き起こしながらブーメランは緑色の狼に変形、カジノを嚙み砕かんと襲い掛かる。
『OK! All In! Ending Time! Thunder Platinum Smash!』
だがカジノはストームルーレットリーヴコインをダイヤマグナムに装填し、右手にストームダガーを握る。
ストームダガーからは緑と黄色の電撃が放電している。
カジノがそれを一振りすると狼は元となったブーメランごと真っ二つに切り裂かれた。
「はぁっ!」
「そんなん食らうかよ…っぐ!」
「それこそ読み通りです」
続けてもう一振りすると電撃の刃がファントム目がけて襲い掛かる。
ビルの壁を走って回避したファントムだが、正面から飛来してきた竜胆によって地上へ撃墜される。
それを見計らってアサルトアームズをソードモードに切り替えたグラディウスが迫り来る。
『Sword』『Lizard』『Metal』
脚から伸ばしたチェーンで牽制し、その間に新たな武器を精製するファントム。
今度はトカゲのエンブレムが刻まれた鈍色に輝く曲刀だ。
素早くグラディウスの方へ肉薄し曲刀で切りつける。
グラディウスも負けじとアサルトアームズで対抗するが、ファントムの方が常に先手を取り防戦一方になってしまう。
そこへダイヤモンド・ミラージュを剣状に構成したカジノが助太刀に来る。
グラディウスが受け止め、カジノが切りつける。
巧みな連携に今度はファントムが追い詰められた。
「ここいらが潮時か…」
『Destruction』
ファントムブラスターにカードを差し込み、右足に紫色のエネルギーを集約するファントム。
以前グラディウスとの戦いで見せた必殺技だと気づき、カジノたちも必殺技の構えを取る。
「行くぞ、二人とも!」
『OK! All In! Ending Time! Diamond Platinum Brake!』
「足を引っ張らないでくださいね、帯刀さん」
『承認!必殺上々!鳳凰 黄金撃!』
「誰にもの言ってんだ!」
『OK! Soulful Panishment Strike!』
3人のライダーもそれぞれ足にエネルギーをチャージ、そして同時に跳ぶ。
そしてファントムも同じタイミングで飛ぶ。
「「「はぁあああああ!!」」」
「らぁああああ!」
3人のライダーと1人の戦士の蹴りが空中でぶつかり合い、そのエネルギーがスパークする。
しかし拮抗していたのは衝突し始めのほんの一瞬。
次第にファントムの勢いが削られ、遂には銀行の壁へ吹き飛ばされた。
「くっ…ククッ……やるじゃねぇの…」
「さぁ、いい加減そのご尊顔を拝ませてもらおうじゃ……ッ!?」
「俺が考えたダブルアップギアはしっかり使えるみたいで何よりだ」
全身から火花を散らしフラフラと立ち上がったファントム。
だがさすがに変身機能を保つのが不可能となり、その正体--財部焔の姿が樹達に晒される。
「焔……兄ちゃん…?」
「お義兄様…!?何故…」
「なっ、兄貴だと…!?」
思わぬ人物の登場に樹と雅は驚愕から言葉を失う。
動揺しているのは正道も同じだ。
交流は多くないものの、樹が信頼している兄が父親や一般人を使って多くの事態を引き起こしたジェイルファントムだと知って落ち着いていられるわけがない。
そして焔もこの隙を見逃すほど甘くはない。
「…クッ!?」
「キャッ!」
「じゃーな、樹に雅、帯刀正道も。また遊ぼうぜ」
ファントムブラスターから光弾をばらまいて起こした土煙に隠れて、焔は姿を消した。
あとに残された樹達は沈痛な面持ちで立ち尽くすほかはなかった。