仮面ライダーカジノ   作:楓/雪那

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追記:ファントムの能力を変更し、レジェンドライダー要素をなくしました。


第五話:その名はファントム

ある平日の午後。

雅と霞はそれぞれ学校、凪は仕事で樹しかいない『Fortuna』。

そんな静かな空間をバタンと扉を開ける音が破壊した。

 

 

「いいぃぃやっほぅぅぅ!!」

 

 

ハイテンションで入店したのは出勤したはずの凪だった。

 

 

「どうした姉ちゃん。気でも狂ったか?」

「違うよ!実はね……私、遂に退職しましたー!」

 

 

尋常じゃないテンションの姉に心配して声をかけた樹だが、その返答に思わず開口して呆けてしまう。

すると凪の後から正道が入店する。

 

 

「おう、邪魔するぞ」

「あっはい……帯刀さんも一緒ってことは…」

「ああ、前言ってた隊長からのスカウトに乗ったんだよ」

「やっぱりですか。…でもそれにしたって何であんなテンション高いんです?」

「あーそれな、体調が裏で根回しして、労基を手配したらしいんだよ。それでお前の姉貴の上司がクビにされたんだとよ」

「そういうことですか……」

 

 

日頃の鬱憤が溜まりすぎたが故に、あのようなテンションになったのかと納得する二人。

そんな風に思われているかなど気にしていない凪は、地下のラボに一部資料を取りに行った。

機材に関してはブリゲードが用意してくれるとのことなので、パソコンや一部資料さえ運べば問題はないとのことだ。

 

凪が持ち出すものを纏めている間、樹は正道にコーヒーを出す。

その時、再び店の扉が開く。

入店してきたのはオールバックの髪を金色に染めた、革ジャンを着た青年だ。

 

 

「よっ、樹。元気してるか?」

「兄ちゃん!?帰ってきてたんだ!」

 

 

金髪の青年は軽く手を上げて、カウンター席の正道の隣に座る。

樹が兄ちゃんと呼んだことで、正道は雰囲気は違うが顔つきは似てるなと感じた。

 

 

「ああ、帯刀さんには言ってなかったね。これがうちの長男の財部 焔(たからべ ほむら)。兄ちゃん、この人は帯刀 正道さん。ドラクマの対策班の人だよ」

「なるほど、アンタがね。弟たちが世話になったな」

「いえ、こちらこそいつも助けられてます。感謝するのはこちらの方です」

「そんなかしこまるなって。一応同い年なんだからさ、タメ語で構わねぇよ」

 

 

正道にとって財部家が三兄弟ではなく四兄弟だったのは初耳だが、やはりこの長男もドラクマの事は知っているらしい。

 

 

「それで兄ちゃんは今回どこ行ってたんだ?」

「ギリシャに行ってからイタリアの知り合いのところにしばらくいたぜ。少ししたら向こうから送った荷物が爺さんたちのところに届くから、それを整理しに来たって感じだな。」

「それが終わったらまた海外に?」

「いや、しばらくは国内で動くかな。弟たちが色々頑張ってる中、俺だけ自由にやるのも申し訳ねぇからな」

 

 

聞くところによると、焔は考古学者らしい。

彼らの祖父もその道の者であるらしく各地で集めた骨董品などを置かせてもらっているとのことだ。

 

 

「お待たせー!整理完了したよー!って兄さん!?おかえり!」

「おう、凪も元気そうでよかったぜ。そうだ、頼まれてたやつ持ってきたぜ」

「おお、やっと来たー!ありがとー!」

 

 

荷物を纏めて戻ってきた凪に焔はクリアファイルを一つ手渡す。

凪はさっそくそのファイルに入っていた数枚の資料を閲覧し、やがて満足そうな表情を浮かべてそれも荷物にしまう。

その中身が気になったのか正道は疑問符を浮かべる。

 

 

「凪さん、その資料は何なんだ?」

「ん?これはねー、カジノの強化アイテムのアイデアですよ!」

「強化アイテム?」「え、マジで!?」

 

 

強化アイテムと聞いてもピンとこない正道、一方で樹は喜び驚いた。

カジノにはフォームチェンジこそあれど、強化フォームはまだ存在していない。

純粋な性能アップがここに来て明言されたのはありがたかった。

 

 

「最近は激務だったからね。構成を練る時間もなくてさ……だから少し前に兄さんに頼んでプランだけでも作ってもらったんだよね」

「ってことはあとは形にするだけってことか?」

「それが簡単には行かないのよね~。だって今回は一から作らなきゃいけないんだもん」

 

 

実はカジノと竜胆が使っているリーヴコインは半分完成した状態で地下のラボに保管されていたのだ。

両親の遺したデータによるとそのまま使うとドラクマになってしまうリーヴコインに特殊なデータを読み込ませることでライダー用のチューンアップを施したとのことだ。

そのデータはすなわち『賭け事』。

他の生物にはない古代からの人類のみが持つ遊戯のデータを追加することで理性という枷をかけ、さらにその理性を絶妙な瀬戸際まで持っていき暴走することなく力を十二分に引き出すためのドライバーを作り出した。

カジノドライバーが現状、樹と雅しか使えないのも肉体的な理由ではなく精神的な理由の方が大きい。

ドライバーを彼ら二人が最大限の力を発揮できるように調整してあるということは、他のものが使った場合は理性の崩壊の危険もあるからだ。

 

そして凪が難しいと考えるのは、1からリーヴコインを作るというところだ。

素材も手順もすべてが手探りであり、それにデータのリーディングや実体化となるとドライバーの調整の何倍もハードルが上がるのは言わずもがなだ。

その言葉の意味を理解した樹と正道は渋い顔をするが、凪は「だ~け~ど~」と笑いながら続ける。

 

 

「兄さんが立ててくれたアイデアならもっと簡単にいくはずなんだ!」

「簡単に…?」

「いったいどういうやり方だ?」

「何もリーヴコインを一から作る必要はない、ベルトに付属品をつければいいってことだ」

 

 

あっけらかんと言い放つ焔に正道はまたもやクエスチョンマークを浮かべるが、樹は合点がいったようでなるほどと頷く。

焔の案というのは要するにベルト本体のアップグレードということだ。

これならリーヴコインほど手間もかからない上に、竜胆の強化にも使えるだろう。

 

 

「ま、それでも多少は時間はかかるだろうけど楽しみに待っててよ。手伝ってくれる人も増えたわけだしね」

「うん、頼りにしてるよ姉ちゃん」

 

 

サムズアップをして凪は正道と共にブリゲードの本部に向かった。

二人が出ると、焔も席を立つ。

 

 

「兄ちゃん、出かけるの?」

「おー、霞の迎えにでもな。この辺物騒だろ前々から」

「まあねー……でも兄ちゃんが行ってくれるなら助かるよ」

「兄貴だからな、これくらいはするさ…つっても最近までいなかったやつがいっても説得力はねえけどな」

 

 

笑いながら店を出る焔を見送り、樹は仕込みを続けた。

 

 


 

 

戸津辺高校。

戸津辺市に存在する公立高校であり、隣接する他の市と比べても在校生の数が多いマンモス校だ。

財部家次女の霞が通っている学校であり、焔や凪、樹や雅も通っていた学校でもある。

 

本日の授業が全て終わり、部活や委員会に所属している生徒は各自の活動を、所属していない生徒は帰宅、あるいはクラスで友人と話したりしている時間だ。

霞は部活動に励む側の生徒であり、いつも通り4階建ての本校舎の4階にある吹奏楽部の部室で練習をしていた。

ちなみに霞は文武両道の優秀な生徒のため生徒会や他の部活から引き抜き、あるいは兼部のスカウトが一時期絶えなかったが、「吹奏楽部が休みの時は兄の店を手伝いたいから」という理由で断っている。

 

ただ今日はいつもと少し様子が違っていた。

いつもは明るく、それでいてどこかクールな雰囲気も併せ持つ彼女だが、廊下から響いてきた黄色い歓声を耳にした瞬間隠すことない苛立ちの表情に変わった。

そして静かに立ち上がり、廊下に出て歓声の中心にいる人物に向かって怒鳴り声を上げる。

 

 

「ちょっと!!迎えに来るなら校門の前にしてって前にも言ったじゃん……って焔兄!?」

「おー霞…悪ぃけど助けてくんねーかな?」

 

 

霞に怒鳴られたのは女子生徒たちに囲まれている彼女の兄である財部焔だ。

実は以前、凪や樹も霞の迎えに行っていたのだが、この兄弟は揃いもそろって顔が良いためにモテすぎるのだ。主に女生徒に。

そのため練習に集中できないと怒った末っ子の怒りによって、「迎えに来るなら校門まで」と言い渡されたのだった。

それでも声をかけてくる生徒が減るわけではないのだが、凪は年下を恋愛対象として見ないことと仕事で来れる日が減ったため、樹は雅という絶対勝てない相手の存在が認知されたため、今では遠目で眺められるか霞と仲のいい生徒と世間話する程度で治まっていた。

だが焔はそんなことがあったなど知りもしなかったため、知らないイケメンが来たという認識しかされずこのような事態に陥っていた。

なお焔は久しぶりの母校だから、かつての担任と会ったり霞の練習風景を見ようかと思っただけに過ぎないのにこんな状況になったことにかなり戸惑っている。

 

霞の兄と知った生徒たちは驚いてはいたが、あの兄弟の一人だったら顔がいいのも当然かと納得し、霞を怒らせたら大変だと思ってそそくさと退散した。

今まで校舎に入ってしまって同じような目にあった姉と兄は彼女を怒りを買いしばらくの間素っ気なく対応されており、この長男もまた助けられるとほぼ同時にお叱りを受けている。

 

 

「すまねぇな……まさかこんなことになるとは思ってもなかったわ」

「ううん。今日のは焔兄にこうなることを伝えなかった樹兄が悪いから」

「それで霞はこれから部活か?よければ見てってもいいか?教室の端にいるからよ」

「気が散るからヤダ。聞くなら廊下でお願い」

 

 

セリフだけ聞くと反抗期の妹が兄を邪険に扱ってるようだが、聞くのを拒まないのは他の二人に対してもそうなので、お兄さんが来てくれて嬉しいんだろうなと部員たちは感じ、尊いものを見るような視線で二人の会話している様子を見る。

 

その時、微笑んでいた焔の表情が厳しくなる。

どうしたのかと思い霞が振り向くと、廊下の先、階段の正面に色黒のガタイのいい男が立っている。

男はスーツを着ているが、その佇まいは教師には見えず、霞も見覚えのない人間だ。

 

 

「えっと、どなたですか?」

「霞、下がれ」

 

 

霞が男に尋ねるが男は答えようとせず、焔は彼女を自分の後ろに退かせる。

男が二人の方へと歩を進めると、その後ろから、階段を昇って大量の怪人が出現する。

怪人たちは皆同じ姿で、緑色の肌に一本の角、片手には棍棒を持ちギラギラした視線を二人に向けている。

 

 

「ドラクマ!?それもこんなに!?」

「この数で騒ぎにならねぇってことは…まさか」

「仮面ライダーの家族……貴様らを殺す!昇核(ショウカク)!」

『Orc!』

 

 

男は取り出したリーヴコインを右腕に装着している白いホルスターのようなものに挿し込む。

するとその姿が変化する。

濃い緑色の肌や頭部の角など後ろで控えている怪人の一団と似てはいるが、怪人たちが小柄なのに対して男が変化したのは大柄で筋肉質という点で彼らより格上であることが窺える。

 

 

「え?なにあれ?」

「まさか噂の怪人?」

 

「っ!まずい、みんな逃げろ!」

 

 

焔が叫び、小柄な怪人軍――ゴブリン・ドラクマたちが一斉に飛びかかる。

正面から来た一体を横へと蹴り飛ばし、真横にいた一体共々退ける焔。

蹴り飛ばした方向とは反対側にいたゴブリン・ドラクマの顔をストレートで殴り、その手から棍棒を奪い取る。

その棍棒を使って突撃してくる三体を抑え込み順番に腹を蹴りつけ、横を抜けようとした個体の脳天に棍棒を振り下ろす。

直後、嫌な予感を感じとった焔はその場にしゃがむ。

次の瞬間、ゴブリン・ドラクマが持つものより倍近い大きさの棍棒が振り回され、部室と廊下を遮る壁を破壊した。

巨大棍棒の持ち主――オーク・ドラクマはその様子を見て、「ほう」と感心する。

 

 

「この部隊を一人で抑えるとは、中々やるな」

「自我持ちだと?構成員ってことか…?」

 

 

今までカジノや竜胆が戦ってきたドラクマは蛇女を除いて全て理性がなく、闘争本能に振り回されていた。

しかしこのオーク・ドラクマは今会話ができている。

 

 

「そのホルスターがベルトの役割ってわけね…」

 

 

一方でこのゴブリン・ドラクマたちは今までのドラクマ同様理性がない。

そしてこの一団がこの学校の四階まで誰にも気づかれず来ることは不可能だ。

誰かしらに悲鳴を上げられて焔たちに気づかれるだろう。

つまりゴブリン・ドラクマの変身者は、校舎に残っていた生徒や教師たちということだ。

ただ現状、手を出せないというわけではないが棍棒一本では決め手に欠ける。

このままだとジリ貧で死ぬのは目に見えている。

どうしようかと悩んでいた時、数体のゴブリン・ドラクマが何者かに撃ち抜かれる。

 

 

「兄ちゃん!無事か!?」

「ああ、なんとかな。助かったぜ、樹」

 

 

銃撃の主は樹が変身したカジノ・ストームルーレットフォームだ。

すでに他の生徒たちと校庭に避難した霞から、焔がドラクマたちを抑え込んでいることを聞き、一番機動力のあるストームルーレットフォームで下に降りてきた何体かを殲滅してここまで来たのだ。

 

 

「来たか、仮面ライダー」

「呼び出すのならもっと人気のない場所にしてくれないかな。迷惑とか考えろよ」

「そんなことこいつらは考えてねーよ。後ろの奴らも学校の連中を無理やり変えたんだろ?」

「なっ……」

 

 

焔が告げた推測はやはり的を射ており、オーク・ドラクマは返答の代わりに鼻で笑う

 

 

「それが問題とでも?ただの人間が我々ドミネイターの役に立っている。それだけで十分だろう」

 

 

悪びれることなく言い放つオーク・ドラクマ。

自分をおびき寄せるためだけに兄と妹を狙い、しかもその過程で近くにいた無関係の人間まで利用した、その身勝手な言い分に怒りを募らせるも、その感情を仮面で覆い隠す。

その代わりにコインケースから赤いリーヴコインを取り出し、ベルトに挿入されているストームルーレット・リーヴコインと入れ替える。

 

 

「お前らが他人の事を駒としか考えてないのはよく分かったよ……だからさ、やっぱり手加減なんてできないな」

『Blaze Slot!』

『OK! That's sure! Blaze Slot!』

 

 

ダイヤルを回転させると、カジノの背後に巨大なスロットマシーンが映し出され、リールの下のコインの排出口から炎が噴き出てカジノの全身を燃やす。

やがて炎がカジノの身体に吸い込まれ、ファイヤーパターンとしてアンダースーツに刻まれる。

全身をかける金色のラインにはスロットのリールのように様々なイラストが小さく刻まれており、右手には新たに長剣が握られている。

これがカジノの四つ目の姿、ブレイズスロットフォームだ。

 

 

「さあ、ゲームを始めようか」

『Set! Blaze Slot!』

 

 

フォームチェンジが完了するとすぐにゲーム画面を投影し、スロットゲームを開始させる。

しかしいつもとは異なり、ゲーム画面を操作するのではなく敵陣へと突撃し、フォームチェンジと共に実体化させた長剣『ブレイズカリバー』を振るいゴブリン・ドラクマたちを切り捨てる。

その戦い方にオーク・ドラクマは困惑する。

 

 

「なに!?能力を使用せずに戦うだと!?」

「残念ながら俺が操作する必要はないんだよ!」

 

 

スロットゲームのルールを内包したブレイズスロットフォームはカジノが変身するフォームの中で唯一フルオートで起動するゲームなのだ。

自動でリールの回転と停止が行われるため、樹は一切ゲーム画面を気にせず戦うことができる。

しかしその性質上、樹一人にしか効果が及ばないため、相手との駆け引きを楽しみたい樹はあまり好んで使用しないのだが今回のように非人道的な行いをする輩には容赦なく攻め立てられるこのフォームを選ぶことがある。

 

現在スロットは3回目の回転が始まり、その目がさくらんぼが三つで止まる。

再びダメージコインがカジノに蓄えられ、ブレイズカリバーが纏う炎の出力が上がる。

 

ゴブリン・ドラクマの強みは量産性と集団戦法だ。

一体一体は他のドラクマより弱いが、その分元となるリーヴコインは多く人海戦術を得意としている。

しかしブレイズスロットフォームは当たりを引き続ける限り際限なく強くなるうえ、倒したゴブリン・ドラクマからも少しだがダメージコインを徴収している。

そのため倒せば倒すほど強くなる今のカジノには文字通り火に油を注いでいることになる。

ゴブリン・ドラクマの数が減っていくにつれ、一撃食らうだけで倒されるようになっていき、遂には指揮官であるオーク・ドラクマだけが残された。

 

 

「馬鹿な!?あの数の兵がこんなアッサリとやられるなど!?」

「付け焼刃程度でどうにかなると思うなよ。俺が本物の燃える剣を見せてやる」

「クッソガアァぁ!!」

 

 

オーク・ドラクマは巨大な棍棒でカジノを叩き潰そうとするが、ブレイズカリバーの一閃であっけなく切り落とされ武器を失う。

呆気にとられていると今度はその巨体にブレイズカリバーの連続斬りを受け、ガラスを突き破り重力に従って校庭の方へと落下していく。

 

 

「幕引きの時間だ」

『OK! All In! Ending Time! Blaze Golden Crash!』

 

 

ブレイズカリバーの持ち手に存在する挿入口にリーヴコインを装填すると、落ちているオーク・ドラクマを追撃しに勢いよく飛び降りる。

その後ろで表示されているスロットゲームの画面には大当たりである『777』が表示されている。

 

 

「ハアァァァァ!!」

「ぐおおお!?」

 

 

空中での一閃がオーク・ドラクマの体を両断し、その体が大地に着く前に爆発する。

爆発が治まると割れたリーヴコインが落ちてくるが、変身していた男はいない。

その代わりに黒い墨が降り注ぐ。

あの男は倒されると同時に死んだのだということを樹は悟った。

一般人を弄び、役割を果たせないと部下はあっさり始末する。

ドミネイターの他者への扱いに再び怒りを感じる樹だが、ベルトに搭載された通信機能に着信が届き一旦通話をオンにする。

 

 

「はい、もしもし…」

「樹!?大変なの!」

「姉ちゃん?そんなに焦ってどうしたの?」

「雅ちゃんの大学にドラクマが出現したの!しかも幹部クラスの蛇女よ!」

「な…!?分かった、すぐ向かう!」

 

 

急いで駐車場に停めたカジノストライカーに乗って向かおうとするカジノだが、突然その背中に銃撃を受ける。

 

 

「うあぁっ!?」

 

 

いきなりの奇襲に声を上げ、攻撃が飛んできた方に振り向く。

そこにいたのは漆黒のボディに銀色のラインが走る戦士。

銀のラインは無造作に刻まれており、まるで拘束具のようにも見える。

その手には銃撃に使用したものと思われる、ボディと同じく真っ黒で銃口の先端を中心に弧のような形状がある変わった形の銃を握っている。

頭部はカジノと似たマスクをしているが青い複眼は吊り上がっており、邪悪さを強く表している

しかし全体としては、まるで仮面ライダーのような容姿だ。

 

「よーう、仮面ライダー。これからお仲間の迎えに行くのか?その前に俺と遊んでくれよ」

「あんたは……ドラクマなのか?でもその姿は…!?」

「はっ、俺はドラクマでもライダーでもねぇよ。敢えて名乗るなら、『ジェイルファントム』とでも呼びな!」

 

名乗ると同時に手に持った奇抜な銃、『ファントムブラスター』のトリガーを引き射撃をしかける。

その早撃ちはカジノよりも早く、正面を向いていたにもかかわらずカジノのボディに直撃する。

射撃を行いながら走って接近してきたジェイルファントムはファントムブラスターを握っていない左手と両足での近接戦に切り替える。

近接のラッシュもカジノよりキレがあり、長剣というリーチの差が意味をなさないほど反撃の隙を与えない。

 

強烈な膝蹴りが胸部に決まり、カジノを大きく吹っ飛ばし、地に伏させる。

相手がそんな状態になってもジェイルファントムは手を緩めようとはせず追撃をしかけようとするが、その胸から火花が飛び、衝撃でのけぞる。

 

 

「はあぁぁぁ!!」

「うおおっ!?」

 

カジノは地面に転がった時にカジノブラスターを再び実体化させ、ジェイルファントム目掛けて攻撃したのだ。

カウンターで生じた隙に立ち上がり、左手には銃、右手には長剣という変則的な装備で走り出す。

剣閃の連撃と隙間を埋める銃撃、ストームルーレットフォームでも偶に使用する組み合わせだがあちらはカジノブラスターと同サイズのダガーナイフであってこそ噛み合うコンビネーションである。

そのためどうしても僅かに攻撃の切り替えにラグができてしまい、ジェイルファントムはファントムブラスターの銃身で斬撃をいなしている。

ジェイルファントムは後ろに左手を伸ばすと、その腕に巻き付いていた鎖が後方へと伸びていき一本の樹木へと絡みつく。

そして樹木を起点として鎖が縮んでいき、ジェイルファントムの身体を引き寄せる。

後方へと引っ張られながらジェイルファントムは射撃を止めず、木の枝に足をつけると同時にファントムブラスターの持ち手を替えてがら空きになった右手から鎖をカジノへと射出する。

 

 

「なっ!」

「お前の溜めた力、いただくぜ」

 

 

カジノの身体から溢れる金色の光が鎖を介してジェイルファントムの方へと移される。

それを見てカジノは自分の力が落ちていくのを感じた。

 

 

「こいつ…ダメージコインを奪ってるのか!」

「正解だ、まあとりあえずこれくらい奪えば足りるだろ」

 

 

ジェイルファントムは鎖を元に戻すとファントムブラスターの弓なりの銃口を上から一回なぞる。

そしてトリガーを引くと一発のエネルギー弾が打ち出される。

それが自分から奪い取ったダメージコインで威力を増した攻撃だと直感したカジノは回避行動を取ろうとする。

しかしそのエネルギー弾は射出直後に空中で制止、そして破裂する。

制止している場所はカジノよりも撃った本人であるジェイルファントムの方が近い。

そんな位置で破裂すればジェイルファントムの方がダメージを受けるだろう。

だが破裂したエネルギーは爆風を起こしたり、衝撃をまき散らしたりなどはしなかった。

エネルギーの炸裂すると虚空に紫色の光の紐が出現する。

光の紐は何かを形作り、そして実態を得る。

出現したのは一本の刀、その刀身は紅く輝いている。

 

 

「武器を作り出した…!?」

『Sword』『Falcon』『Flare』

『Tuning Weaponize』

「さーて、コイツは吉と出るか凶と出るか…」

 

 

ジェイルファントムの右腕を拘束していた鎖が弾け飛ぶと、そこに炎・隼・刀を模したエンブレムが刻まれる。

拘束が解けた手で刀を持ちもう片方の掌で刀身を撫でるとジェイルファントムは仮面の下で口角を上げる。

 

 

 


 

 

 

時間は遡って、カジノがオーク・ドラクマと遭遇した頃。

雅は大学で女友達と次の講義の教室に移動しながら他愛のない会話をしていた。

そんななんてことない普通の日常は正面から向けられた殺気で終わりを告げた。

彼女の歩く先には一人の女が立ちはだかっていた。

黒いパンツスーツという服装は特段変なところはなく、それだけなら雅の視界に入っても気にすることなく通り過ぎていただろう。

しかし彼女の緑色の瞳は敵意を隠すことなく雅へと向けられており、反社会的な活動に手を出していないとはいえ仮にもヤクザの頭である雅の警戒心をマックスにするには十分すぎた。

 

 

「どったの、雅ちゃん?」

「え、なんかめっちゃ綺麗な人がこっち見てるんだけど。雅ちゃんの知り合い?」

「……涼香さん、雪乃さん。私の後ろに下がっていてください」

 

 

涼香と雪乃と呼ばれた二人の友人は雅がなぜそんなことを言ったのか聞こうとするが、言葉を出せなかった。

いつも穏やかな笑みを浮かべ、けれど婚約者といるときは自分たちの前でも滅多に見せない十面相をする雅が、初めて見た鬼気迫る表情をしていたからだ。

 

 

「……どうして貴女方は時と場所を選ぶということができないのでしょうか?」

(わたくし)たちが貴方達に合わせるなどありえませんわ。私たちの意思決定に貴方達が従うのです。なぜなら私達はドミネイター(支配者)なのですから」

「傲慢ですね、この上なく」

 

 

緑の眼の女の自己中心的な発言に吐き捨てるように感想を述べる雅はカジノドライバーを取り出し、装着する。

コインケースからは桃色のリーヴコインを取り出した。

 

 

桃源麻雀(とうげんマージャン)!』

『What's your choise? What's your choise?』

 

「変身」

 

『承認完了!開幕!桃源麻雀!』

 

 

白いアンダースーツに全身が覆われ、投影映像がベルトのディスプレイが流される。

映像は雅の身体を中心としたリングとなり、そのリングの上に麻雀の牌が並べられる。

リングと牌が雅の身体に収束すると、彼女の身体に桃色のラインと麻雀の牌と同じイラストが全身に刻まれていく。

この姿が仮面ライダー竜胆の二つ目の姿・桃源麻雀式である。

 

「さあ、推して参りましょう…っ!?」

 

決め台詞を告げた雅だが、女が手に持ったものを見て驚愕する。

それはまさしく雅や樹が使用しているのと同じドライバーだ。

ただ形状は大きく異なっており、カジノドライバーのように中央にディスプレイが存在せず色も白一色だ。

まるで大理石で作られた彫刻のようなドライバーを女は腰に装着し、続けてリーヴコインを取り出す。

 

 

『Typhon!』

転神(テンシン)

 

 

その言葉と共に大理石のようなベルト――リーヴドライバーにリーヴコインを装填すると女の身体が突風と雷鳴を纏って変化する。

両肩は無数の蛇で埋め尽くされ、下半身は大蛇そのものという異形。

雅も見たことのある、ドミネイターの幹部格の怪人である。

女が変異した蛇の怪人――テュポーン・ドラクマは肩から生える蛇を数体引き抜き放り捨てる。

突然の自傷行為に竜胆は思わず「は?」と言葉を漏らすが、次に起こったことを見て納得する。

地面に放り投げられてのたうち回っていた蛇の身体が変化していく。

原理は謎だが人と同じサイズにまで大きくなり、退職も大理石のように真っ白に染まる。

かつてカジノと戦った時に使役していた眷属『アンゲロス』を自分の体の一部から生産したのだ。

 

 

「なるほど、中々厄介な相手ですが……退くわけには行きませんね」

「退かないならありがたいですわね。追う手間をかけないで死んでもらいたいですわ」

 

 

竜胆は光華槍弓を手に握り覚悟を決め、テュポーン・ドラクマはその覚悟を小馬鹿にして見下した。






ジェイルファントムは魔進チェイサーやナイトローグと同じ、疑似ライダーに相当します。
使用するファントムブラスターはガシャコンマグナムサイズのブレイクガンナーを想像していただければ分かりやすいです。


テュポーンが使用したリーヴドライバーはWのガイアドライバーがモチーフです。
神話生物や妖精をテーマにした怪人だから、芸術要素を高めた大理石のような色でございます。
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