仮面ライダーカジノ   作:楓/雪那

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追記:前半のカジノ対ジェイルファントム戦を大幅に変更しました。
前話同様レジェンドライダー要素をなくしました。


第六話:支配者の進撃

 

 

 

「おらぁっ!」

 

深紅の刀を振るいながら迫りくるジェイルファントム。

カジノはそれを受け流そうとアースマグナムの銃身で軌跡を逸らそうとする。

しかし黄金の銃身は抵抗すらできずスッパリと綺麗に切り落とされる。

 

「なっ!?」

「目測が低いんじゃねぇかあ!?」

 

刀の横薙ぎがわき腹を切り裂く前にアースマグナムを手放した左腕を間合いにねじ込む。

カジノの装甲がなんとか腕を切り落とすのを防ぐが、装甲の下の樹は痛みで表情を歪める。

 

(一撃が重いっ……このまま捌くとジリ貧になる…!)

 

横に転がって首筋を狙う次の太刀を躱す。

直後、さっきまでカジノが立っていた位置の後ろに生えていた大木が発火しだした。

 

「……その刀、炎の属性があるのか」

「ん?ようやく気付いたか…って言ってもさっきまで使ってなかったから気づかないのも仕方ねえな。…しかし相変わらず調整がむずいな」

「随分余裕ぶってるけど、まずは自分の力に振り回されないように気をつけたら?」

「それもそうだな…じゃあまずはお前を試金石として見るかね!」

 

突如ジェイルファントムの刀身が光り出す。

先程、ファントムブラスターに搭載された電子照射生成機構―――ビームエクイッパーでこの武器を作り出したように、刀に刻まれたラインが空中に新たに描かれる。

かわりにもともと刻まれていたラインは消失する。

刀から分離した光のラインはその形を変えて、一体の動物の姿に変化する。

それは隼、天空から獲物を狙う地球上最速の生き物だ。

 

「さ、行ってこい」

 

ジェイルファントムの合図と同時に刀と同じ深紅に輝く隼は、翼を広げカジノに突進してくる。

カジノブラスターで打ち落とそうとするも、隼の速度は衰えない。

直撃する直前でカジノは迎撃を一旦諦め回避するが、直後左腕に痛みが走る。

何事かと思い腕を見ると、薄くだが裂傷の跡がある。

 

「あの隼の羽根か…?どんだけ硬いんだよ!?」

「こいつと同じ強度だ。油断してるとまた斬られちまうぜ?」

 

揶揄うようなファントムの言葉ではっと振り返ると、あと10秒もないうちに再び獲物目がけて旋回してきた隼の姿が見える。

舌打ちをして再び隼の突撃を回避するカジノ。

だが次の行動を確認するたびに振り向くと同時にジェイルファントムの刀で切り裂かれる。

 

「がああ!」

「おいおい、俺を忘れるなよ。悲しいじゃねぇか」

 

一貫して余裕な態度を崩さないジェイルファントム。

対してカジノは一向に反撃の機会を見つけられない。

そんな様子に飽きたのか、ジェイルファントムは刀身にファントムブラスターの銃口を触れさせてトリガーを引く。

 

『Destruction』

 

ジェイルファントムの持つ刀が紅く燃える。

さらに頭上で飛行する隼も全身に炎を纏う。

 

必殺技だと察したカジノは何とか数秒後に自信に襲い掛かる攻撃を防ぐためにカジノブラスターにリーヴコインを装填する。

 

『OK! All In! Earth Golden Shoot!』

 

カジノブラスターから黄金の硬貨状のエネルギー弾が撃ちだされる。

僅かに遅れてファントムがX字に刀を振るう。

烈火のX字の斬撃に追従して隼が錐揉み回転をしながら突撃する。

硬貨は一瞬拮抗するもすぐに消滅し、斬撃と隼がカジノに炸裂する。

 

「ぐああああ!」

 

硬貨力の攻撃に耐えきれず樹の変身が解除され、地面に転がる。

 

「大方、相殺した余波で土煙でも起こしてその間に撤収とか考えていたんだろ。だが甘かったなァ、焦りすぎて考えが見え透いてたぜ?」

 

ジェイルファントムの評価は正しい。

この場で確実に奴を倒すのであれば、時間をかけてでもダメージコインを再び稼いで反撃の機会を狙うのが正攻法だった。

しかし離れた場所で戦っている雅の安否と、ファントムチェーンを警戒しすぎていた樹には耐えるという選択肢の優先度が低く、勝負を急いだ結果、判断を見誤ってしまった。

 

「お前の言葉を借りれば、ここで終幕だな……ん?」

 

傷だらけの樹にファントムブラスターの銃口を向けながらにじり寄るファントム。

だが異変を感じて足を止める。

何かが近づいてくる気配を感じ、その方向へと視線を移す。

すると一台の車両がファントムの方へ突っ込んでくる。

車両は速度を落とす気がないらしく、ブレーキをかける様子がない。

 

ファントムと樹の間に割り込むようにドリフトする車両。

その側面には『ブリゲード』のエンブレムが刻まれている。

ファントムはバックステップで撥ねられないように避けるが、間髪入れず銃撃を受ける。

見ると車両の後部座席のスライド式のドアは開かれており、そこからブリゲードの隊員・帯刀正道がライフルを構えている。

 

「先輩!樹君、救出完了しました!」

「よし!俺を降ろして先に行け!」

「何バカなこと言ってんスカ!?自分たちも撤退するんスよ!」

「知るか!ドミネイターはここで俺が倒す!」

「先輩ダメですよ!それは認められてないですから!三井君私が先輩抑えてるから早く車出して!」

「離せぇぇぇぇぇぇ!!

 

車内ではファントムを倒さんといきり立っている正道を後輩の安達がつかまえて運転席の三井が迅速に撤退する。

嵐のように登場して退場していったブリゲードの特殊車両を見送りながら、ファントムは仮面の下で再び笑う。

 

「面白れぇ男だな。ありゃ素質がある……見込みは正しかったってワケだ。今回はそいつに免じて見逃してやるよ。また遊ぼうぜ、仮面ライダー?」

 

 

 

その頃、車内では…

 

「樹君、あの黒いのはドラクマとは違うように見えたんっスけど、何なんすか?」

「多分、あれは俺たちと同じような感じだと思う。本人はライダーとは違うって否定してたけど、ドラクマかライダーかって聞かれたらライダー寄りだよ」

『私も概ね同意見よ。直感だけどプロトタイプって言ったところかな』

 

三井の疑問は正道や安達、通信機越しに聞いている凪や霧島も抱いていたことだ。

ドミネイター側の人物であることはほぼ間違いないがドラクマとは異なるファントムを、凪はプロトタイプ・ライダーではないかと推測する。

確かにカジノと竜胆はドライバーの機能でドラクマにダメージコインを付与できるが、ドラクマが自力でダメージコインを生み出したりすることは現状不可能のはずだ。

そのためカジノたちと近しい能力を有するジェイルファントムは『亜種』・『プロトタイプ』などと定義するべきだと語る。

 

「どっちでもいい。ドミネイターと関りがあるなら俺が倒す!」

「先輩は少し無鉄砲すぎます!今のままじゃどうにもならないですよ!?」

「だったら奴を自由にさせていいって言うのか!?」

「そういうことじゃなくて、考えて行動しなきゃってことですよ!」

「まぁまぁ、二人とも少し落ち着いてほしいッス。……あ、そういえばアイツ、あのまま学校に放置しちゃいましたけど大丈夫なんすか?」

「ん~、大丈夫だと思う」

 

学校に残してきてしまったファントムがこれ以上被害を出さないだろうと推測する樹。

しかし口調はいつもより歯切れが悪く、曖昧な思考のもとに導き出した結論であった。

 

『それは樹の勘?』

「そ、アイツの狙いはライダーを倒すことだと思うんだよね。なんて言うかさ、それ以外にあまり執着を感じないっていうか、今こうやってすんなり助けられたなら今回は表立って何かするとは思えないな」

『根拠が薄いねぇ』

「なんとなくしか分かんないよ。姉ちゃんだって同じ風に思ってんじゃないの?」

『そうだね。私もモニター越しに見てたけど、何だろうな、敵意も殺意もあるけどそこまで高いわけじゃない…うん、試すか遊ぶような感じだったな』

 

凪もまた樹と同意見であった。

ファントムとは初対面、それは間違いない。

しかしなぜか危機感を抱いてはいない。

対峙した時は別だが、今このように彼の行動を予測すると不思議とすぐに結論が出てくる。

 

「生徒たちは霞が避難誘導してくれたし、兄貴もいるから大丈夫だと思う、たぶん」

『うん、今霞ちゃんからメール来たよ、二人とも無事だって。最初に襲撃してきたドラクマに手駒にされた生徒たちも気絶しているだけだから、念のため救急車呼んだけど、そこまで被害は大きくないって』

「大きくないって感覚マヒしてきたな…」

 

 


 

 

 

「はっ!」

「くぅっ!」」

 

 

テュポーン・ドラクマが発生させた暴風に竜胆が吹き飛ばされ、校舎のガラスを壊して中に転がる。

間髪入れず肩から生える蛇が何匹も伸びてきて襲い掛かってくるが、廊下を駆けて逃げながら弓モードの光華槍弓で狙撃する。

光の矢が左肩から生える4匹を刈り取るが、即座に再生して振出しに戻る。

 

(再生能力もですけれど、そもそも数が多すぎてどうにもなりませんね)

「『ロン』」

 

戦況的には圧倒的に竜胆の方が不利でありながら、彼女は冷静に対策を練っていた。

すでに『桃源麻雀』を作動させて5局目を終えた現在の段階で、着実に点数を稼いで虎視眈々と準備を整えている。

 

「……点数稼ぎが上手くいっているのは悪くありませんが、いささか慎重になりすぎましたね」

 

竜胆が得点を稼いでいるように、彼女の身体状態にも疲労が見えてきている。

思った以上に一撃が大きい。

様子見なんてしていたら5分経たずに戦闘不能になっていただろう。

かといって速攻で勝負を決めようとしたら、明確なスペックの差でこちらが負けるのはやはり目に見えている。

そのため竜胆は逃げ回りつつゲームを進めて、最低限同じ土俵に立つようにしようと考えた。

その判断は間違っていない。

ただ相手との差が彼女の想定より遥かに広かったことが誤算だろう。

 

「高得点を狙わず、最速でゲームセットを狙うのは悪くないかと思いましたが……果たして追いつくかどうか…」

 

厄介なことにテュポーン・ドラクマは攻撃範囲が広い。

肩に群生している蛇の群れは先程述べたように、とにかく数が多いうえに強力な再生能力を有する。

加えてさっきまで竜胆がいた位置に襲撃してきた蛇が嚙みついた壁がジュクジュクと湯気を発しながら溶けている。

 

(溶解毒……それもかなり強力なもの。ライダーシステムの装甲すら溶かされかねませんね。この一種類だけならいいのですが)

 

「消し炭になりなさい」

「っ!」

 

外で蛇を操るテュポーン・ドラクマが言葉を発すると、彼女が手前に差しだした手から電撃が発生し光線として撃ちだされる。

あれを直で受けたらマズいと頭で理解するよりも早く窓の縁を蹴って外に飛び出る竜胆。

繰り返すがテュポーン・ドラクマの厄介なところは通常のドラクマを優に上回る射程範囲と火力だ。

 

「ようやく出てきてくれましたわね。ネズミみたいにちょろちょろと鬱陶しい鬼ごっこは終わりにしませんこと?」

「堪え性がないですね。短気な人は殿方でも姫君でも好かれませんよ?」

 

挑発を挑発で返すと、テュポーン・ドラクマは苛立ったように舌打ちをする。

前のカジノとの戦いで薄々感じていたが、この幹部は煽り耐性が低いらしい。

それは竜胆の特性上やりやすいのだが、それ以上に素のステータスが劣っている。

 

「『ツモ』」

 

テュポーン・ドラクマに聞こえないように小さく呟く。

だが背後のディスプレイに変化があったことに気づき、またしても腹立たしそうに舌打ちをする。

 

「チマチマと小銭を稼いで、一発逆転狙いですの?そんな機会は訪れませんわよっ!」

 

彼女の怒りに呼応して両肩の蛇が一斉に牙を向ける。

光華槍弓を薙刀モードに変えて左側から迫る群れの首を切り落としていく。

再生するよりも早く、切り落とした先をさらに切断して回避するための隙間を作ろうとする。

仮面ライダーとして上がった身体能力は通常の人間より遥かに高い動体視力と行動速度を有するが、テュポーン・ドラクマの再生速度はそれすらも上回らんとしている。

そして左に警戒を割きすぎた分、右への反応が遅れてゆく。

予想よりも早い再生速度で切断のタイミングがズレる。

そしてついに右の蛇の数匹が竜胆の腕に嚙みついた。

 

「がっ…ああぁ!」

「あらあら、やっと捕まりましたね」

 

激痛が腕を駆け巡る。

焼けるような痛みで噛まれた腕の力が抜けていく。

テュポーンが操る蛇が持つ毒は融解1種類ではない。

左肩から生えるのは確かに溶解毒ではあるが、もう片方が生成するのは神経毒なのだ。

 

「健闘は致しましたけれども、私の前には及ばない程度の力でしたわね。」

「くうぅぅっ!?ああああ!!?」

「毒のお加減はいかがかしら?まあ同情はしませんわ。ドミネイターに逆らったことを悔いながら苦しんで死になさ、がぁっ!?」

 

愉悦の感情をさらけ出して高笑いしていたテュポーン・ドラクマだが、胴体に感じた痛みで歓喜の声が悲鳴に変わる。

攻撃してきたのはなんとさっきまで痛みで絶叫していた竜胆だった。

彼女は右腕から上半身に広がった痛みに耐えながら、地面に置いた光華槍弓の上に右腕を重石代わりに置き、左腕で弓を引いたのだ。

実は肩の蛇は痛覚がテュポーン・ドラクマと繋がっていないため今までの竜胆の攻撃はまるで効いていなかったのだ。

しかしそれは逆に言えば本体に命中してしまえば通用してしまうということ。

もちろんそこにも格の差がある。

最上級クラスのテュポーン・ドラクマは防御力も確かに高い。

だがそれ以上に、勝ったと慢心していたテュポーン・ドラクマにとって、今にも死にかけの相手から喰らった苦し紛れの一発は彼女のプライドをとても傷つけた。

 

「はぁ…はぁ……ふふっ……残心もなしに…喜ぶなんて……三流のやること、ですよ…くうっぅ!?」

 

小馬鹿にするかのように笑う竜胆にテュポーン・ドラクマは憎しみのこもった眼で睨みつける。

 

「雑魚風情がっ!矮小なただの人間の分際でっ!!まぐれ当たりで喜んだ気になってっ!!」

「まぐれ当たりを喰らったくらいで、激昂とは……やっぱり…小物ですね……ぁぁあぁ!」

 

苦しげでありながらも余裕を崩さない竜胆に怒りを募らせたテュポーン・ドラクマは彼女を何度も踏みつける。

今テュポーン・ドラクマの頭にあるのは目の前の生意気な女をどうやっていたぶろうかということのみだ。

この女だけは自分の手で殺さないと気が済まない。

いずれ毒で死ぬとしてもそれまでの間に死ぬ以上の苦痛を与えないと、自分のプライドが許さない。

手始めに電撃でいたぶる、そう決めたテュポーン・ドラクマは右手に電気を収束させて竜胆へと放出しようとする。

 

 

 

だからこそ怒りで周りが見えていなかったテュポーン・ドラクマには彼女が呟いたことにも気づかなかった。

 

 

 

 

 

「そんな調子だから、貴女は手痛い目に遭うのですよ」

 

 

 

『OK! All In! Earth Golden Brake!』

 

 

 

「ハアアアァァ!!」

「なっ!?があぁ!?」

 

 

背後から叩きつけられる衝撃。

その正体は砂の波に乗ってやってきたカジノのキックだ。

 

「よう。俺の婚約者に随分好き勝手やってくれたみたいだね」

「カジノ!?貴方がなぜここに!?…まさかファントムのやつ、しくじったの!?」

 

竜胆を庇うように立ちはだかるカジノに動揺するテュポーン・ドラクマ。

当初の手はずではオーク・ドラクマを使ってライダー二人を分断し、単騎の状態で倒す予定だった。

だというのにその提案を持ち掛けてきた協力者が失敗したのは納得ができない。

認めたくはないが彼は相当の実力者、普通に戦えば今のカジノに負けることはないはずだ。

それはつまり、

 

「あいつ……手を抜きやがりましたわね!?」

 

理由は分からないが、自分まで陥れた男に激高するテュポーン・ドラクマ。

一方でカジノはうつぶせで倒れている竜胆に声をかける。

 

「遅くなって悪かった。大丈夫か?」

「なんとか…意識は保ててますよ……」

「無理して喋ろうとすんな。すぐに帯刀さんたちが来るから休んでろ」

「いえ……退く必要はないです……樹さま、少し時間を稼いでもらえますか?…2局……いえ、『ツモ』…あと1局分耐えてくれれば…切り抜けられますから……」

「……分かった、信じるよ!」

「申し訳ありません……樹さまも疲労が溜まっているはずですのに…」

「そういうのは後で聞くから、今は気にせず逆転の準備してくれ!」

 

アースマグナムとカジノブラスターを連結させたライフルを撃ちながらテュポーン・ドラクマに立ち向かう。

テュポーン・ドラクマも手から電撃を放出する。

しかし、カジノには全く効いている様子はない。

 

「前に戦った時はこのフォームじゃなかったから知らないよな!電気は効かないんだよ!」

「ちぃっ!」

 

それならばと両肩の蛇を操って襲わせる。

威嚇の鳴き声をあげた蛇たちが一斉に牙をむくが、カジノは焦らずドライバーを操作する。

 

「その女が好きなら貴方も同じ苦しみを味わいなさい!」

「生憎俺はギャンブルが好きでも好き好んで痛い思いしたいわけじゃないんだよ!アビリティ解放!」

『That's sure! Earth Abilites!』

 

ベルトの音声が鳴ると、カジノに向かって首を伸ばした蛇たちの真下から砂が噴出し、さらに一瞬で凝固して流動性のない壁に変化、巻き込まれた蛇たちは首を伸ばすこともテュポーン・ドラクマの元に戻ることもできなくなったしまった。

 

「何ですって!?」

「これであんたも動けないだろ!」

 

壁の側面から回り込みライフルで攻撃するカジノ。

力づくで引いても蛇はなかなか抜けないため、テュポーン・ドラクマは手刀で蛇を切り落とし再生、今度は突風で攻撃する。

 

そんな二人の戦いを眺めつつ、続行していた竜胆は驚きで目を見開く。

 

「これは…!?ふふっ、どうやら日頃の行いが相当良いのでしょうが、それでも数年分の運を使い切ってしまった気もしますね…『ツモ』!」

 

アガりの宣言が認められ、白銀の光が竜胆を包み込む。

そして続けてベルトを操作する。

 

「まずは自分の状態を整えなければ、ですね♪アビリティ解放!」

『承認!桃源麻雀!』

 

僅かに竜胆が纏う光が薄くなる。

それと引き換えに竜胆の傷が見る見るうちに治っていく。

これが桃源麻雀の特殊能力である治癒の力だ。

外傷だけでなく毒も完全に治った竜胆は光華槍弓を薙刀モードにして立ち上がり、テュポーン・ドラクマに向かって走り出す。

 

竜胆からまばゆい光が放出されたのはテュポーン・ドラクマも目にしていた。

彼女はさっきまで瀕死だった相手が何かを企んでいたことには気づいていたが、大したものではないだろうと高をくくっていた。

しかしあの光を見て自分の想像を軽々超えるとんでもないものが来ると本能的に恐れを抱いた彼女は、カジノを押しのけて矢じり状に形成した竜巻を竜胆目がけて撃ちだした。

 

だがその攻撃は竜胆には届かない。

押しのけたはずのカジノが射線に割り込んで攻撃を受けたからだ。

カジノは僅か一瞬でライフルモードとなったアースマグナムを大地に向けて発砲し、その反動を利用して後方、即ち攻撃のルートに入ったのだ。

至近距離で幹部クラスの強力な攻撃を受け変身解除させられる樹。

しかし傷だらけの顔でにやりと笑う。

 

「あれは上がったら死ぬって迷信があるけど、確かにあんたが死んだな」

 

弾き飛ばされる樹と入れ替わりに疾走する竜胆。

彼女はリーヴコインを光華槍弓に装填し、最後に作り上げたの役の名を叫ぶ。

 

九蓮宝燈(ちゅーれんぽーとー)!」

『承認!必殺上々!桃源 黄金斬!』

「はああ!!」

 

{一}{一}{一}{二}{二}{三}{四}{五}{六}{七}{八}{九}{九}{九}

 

13個の牌のエフェクトが剣先か出現した光華槍弓を何度も振るう。

荒れ狂う鞭のような刃がテュポーン・ドラクマの身体を切り裂く。

13回目の剣閃が炸裂すると彼女の身体が絶叫と共に爆発した。

爆発が治まるとその跡にはテュポーン・ドラクマに変異していた女性が立っていた。

今まで戦ってきたドラクマたちはさっきカジノが倒したオーク・ドラクマを除いて全員意識を失った状態で元に戻った。

だが意識を失わずに憎悪のこもった眼差しを竜胆たちに向けているのは流石幹部といったところだろう。

 

「まだ続けますか?無理は体に禁物ですよ?」

「馬鹿にしないで欲しいですわね…!貴女だけは私の手で殺さないと気が済まないですわ!ここで!絶対に!ぶち殺して!差し上げますわ!」

 

立つので精いっぱいのような傷を負いながらも、怒りで無理やり肉体を動かそうとするスーツの女。

再びリーヴドライバーを装着しようとするが、何者かがその手首を掴んだ。

 

「そこまでだ、蘭」

「なっ…お兄様!?なぜここに!?」

「私がお前たちの行動を監視していないとでも?」

 

蘭と呼ばれた女性の手首を掴んでいたのはテュポーン・ドラクマ同様にリーヴドライバーを腰に装着したドラクマ。

頭部には鋭い牙がむき出しとなっており黒い瞳を覆うバイザーはサメを模している。

腕と脚からはカッターのように鰭が伸びており、全身をいくつものうろこが鎧のようにまとわりつき、右手にはトライデントを持っている。

 

「繰り返すが今日はここまでだ。お前の屈辱を晴らすのは傷を癒してからだ」

「くっ……わかりました…」

「そういうことだ。悪いが引かせてもらうぞ」

 

怪人――ポセイドン・ドラクマが樹たちの返答を待たずにトライデントを振るうと渦潮が発生し彼らを包み込んだ。

渦潮が消えたときにはすでに二人の姿も消えていた。

 

「撤退したか、助かったな」

「ですね。あのまま連戦だったらさすがに負け筋濃厚でしたし」

「…にしてもやっぱり手強いな。九蓮宝燈で倒しきれないとか固すぎだろ…」

「樹様のところに出たファントム、という輩も底が見えませんものね…凪お姉様の強化アイテムで変わるといいのですが…」

 

新たに表れた強敵たちに戦いが苛烈になっていくのを感じた樹と雅は険しい表情を浮かべる。

だが、二人とも心の中では彼女が、彼が隣にいれば心が折れることはありえないと思っていた。

 

 


 

 

西洋風の豪華な邸宅。

そのロビーに突如渦潮が発生する。

渦潮が治まるとそこにはポセイドン・ドラクマと傷だらけの女性――蘭が現れた。

 

「おーおー、随分ボロボロなことで、長女サマ?」

「ファントム…!」

 

正面の階段から降りてきたのはカーキ色のパーカーの男、ファントム。

ふざけたセリフ、おどけた口調で話しかけてくる彼を蘭は睨みつける。

 

「貴方…私を騙しましたわね!」

「騙した…とは?」

「とぼけないでくださいまし!貴方、わざと財部樹を逃がして私のところに嗾けたのでしょう!?この私を嵌めるなど許し難い愚行ですわ!」

「ああ、()()()()()ですか。別に俺は騙してなんかいないですよ」

 

彼女の有り様を「そんなこと」とあっさり言い切り悪びれることなくファントムは語った。

 

「確かに俺は仮面ライダーを倒すために貴方に協力を持ちかけました。ですがアイツが逃げられたのは幸運に恵まれているからで、唆してもいませんよ」

 

ファントムの言い分はなんとも適当な、その場しのぎのようなものだ。

怒りの視線を浴びながらも怯むことなく彼は「それに」と続ける。

 

「長女サマの実力なら、ライダーが一人増えたくらいで苦戦しないのではないですかね?」

 

その一言を聞くや否や蘭はファントムに掴みかかろうとする。

しかしまたしてもポセイドン・ドラクマの変異者の青い眼の青年――深月に制止される。

アドレナリンが大量に出ているため、蘭自身は疲労に気づいてないが身体の機能がついてこれてないため抵抗もできない。

そんな彼女を自室に引きずる深月は歩きながら、ファントムの方を見ずに言葉を投げかける。

 

「貴様の最終的な目的は知らん、知る必要もない。だが仮にも協力関係を結んでいる以上、自分で宣言したことくらいはしっかりと果たせ。それが同盟だ」

 

その言葉を残し奥の部屋に消えていった二人の背を見送りながらファントム―――財部焔は薄く笑う。

 

「言われなくても仕事はこなすさ。必要なこと、だからな」

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