結城友奈は勇者である ハッピーエンド√RTA 作:星ノ瀬 竜牙
勇者史外典が届いたので
少しずつキャラ視点編も増やせていけたらなぁと思う所存でございます。
白鳥 歌野が彼、星樹 幹弥と出会ったのは1年ほど前の事だった。
まだ諏訪を守護する土地神の結界がそれなりに広かった頃。
あの悲劇、7・30災害が起きて間もない頃だ。
「高嶋……!任せたッ!!」
「おっけー!勇者パァアンチッ!!!」
赤い髪の少女。高嶋 友奈と共に助太刀をしてくれた。
それが出会いだった。
「あなた達は……?」
「話は後だ、先に片付けるぞ」
「っ……そうね、センキューよ。見ず知らずの人!」
まあ、そこからは言うまでもなく。
三人で戦えば余裕の勝利と言うやつであった。
「改めて、助けてくれてありがとうっ!
貴方達のおかげで本当に助かりました!
私は白鳥 歌野と言います!貴方達は?」
「星樹……星樹 幹弥だ」
「私は、高嶋 友奈!よろしくね、歌野ちゃん!」
「星樹さんに高嶋さんね!本当にありがとう!
すっごく、ベリーセンキューよ!!」
それが、白鳥 歌野にとって他の勇者との初めての出会いで
新しい友達との出会いであったのだ。
「……変だな。それ」
「わー!わー!?星樹くん初対面の人に遠慮がなさすぎるよっ!?」
「ノープロブレムよ!まあ、おかしな喋り方だっていうのは理解してるもの」
確かにちょっと本当に遠慮がない。
というかズバッと言う人だなーとか思ったけれど。
まあ、彼の人となり、性格。
そういうのを知った今なら仕方ないのかなーとも思ってしまう。
打ち解けるのはそれからさほど時間は掛からなかった。
途中でみーちゃんと星樹くんが軽く意気投合してたりしたのはびっくりもしたけど、
いつの間にか仲良くなっていて、一緒に私の好きな農作業を手伝ってくれたりとか興味を持ってくれたりしていた。
そんな日々を過ごしていて、
惹かれている自分が居ることは薄々自覚していた。
本当に気付くことになったのは、
彼に蕎麦を食べに行かないかと誘われた時だけど。
「白鳥」
「あら、星樹さん?どうしたの?」
「……蕎麦、食べに行かないか」
「ワッツ……??」
当然ビックリしたし慌てもしたわよ。
有り体に言えばデートのお誘いだもの。
みーちゃんや高嶋さんというものがありながら!?
なんて驚愕したのを覚えている。
「そういえば、気になったんだけど私で良かったの?
誘うならそれこそ高嶋さんや、みーちゃんでも良かったと思うのよね」
「誘うなら……白鳥しか居ないと思っただけだ」
「……へ?───っ!?!?!?そ、そそ……そうっ?」
それを聞いた時は勿論顔が熱くなって気が動転した。
……本当に、星樹さんは狡いと思う。恥ずかしくなるような事、ケロッと言うんだから。
まあ……うん。切っ掛けは多分これだった。
あれからふとした拍子に、彼を目で追う事が増えた。
私は自分で言うのもあれだけど、そこまで鈍いわけじゃない。
だから、ああ……私、惚れちゃったんだな。って自覚もあった。
流石にチョロすぎるという自覚もあったので
みーちゃんに相談したわけだけども。
「星樹くんってぶっきらぼうに見えて優しいもんね。
……うたのんはそのギャップ差にやられちゃったんじゃないかな?」
「……そう、なのかしら……?ギャップ……ギャップね……
うーん……?でも……うん、そうね。やっぱり悩むことはないわね!
私は星樹さんにラブ!惚れた!それだけだもの!!」
「はっきり言うね、うたのん……」
「ええ、事実だもの!だから……」
そう、だから。此処に居させたくなかった。勿論、みーちゃんや高嶋さんも。
いずれここは陥落する。それぐらいは分かっていた。
戦える人が増えたとしても、いつまでもこの平穏を保てるわけじゃない。
誰に言われるまでもなく……私は理解していた。
「…………は?此処を出ろ?」
「ええ……みーちゃんが神託……であってたかしら。
それで四国が此処より安全な場所になってるって事を教えて貰ったそうなの。
だから星樹さん達にはここに居る人達を、
みーちゃんも含めて四国に連れて行って欲しいの。
勿論、無理を承知で言ってるのは分かってるわ。それでも……」
それは私自身が時間稼ぎの囮になる。という案だった。
ここはいずれ落ちる。ならいっそその前に……せめてここに居る人達を。
そう思って、私は彼に告げる。
「………………なら、尚のことお前も来るべきだろう。
藤森は納得しないぞ」
痛い所を突かれる。星樹さんは周りをよく見てる。
だから、みーちゃんが私と一緒に居たがってる事とか……
多分他にも色々気付いてるんだと思う。
だけど、それでも私は……此処に居る人達に生きて欲しいから。
「そうしたいのは勿論あるわ……でもね、私はここが好き。
この諏訪が好きなの。ワガママだって言われたらそこまで、命と比較するものじゃないって言われたらその通りよ。けど、私は……此処が良いの」
──本音を混ぜた、嘘をつく。
誰が死にたいなんて思うのだろう。私も死にたくない。嫌だ。
けど、誰かが此処に残って戦わないと、囮にならないと。
…………きっとこの先で、人は負けてしまう。
そんな考えが頭に過ぎる。そんな事ない、そう思いたい。
けれど1度考えてしまうと悪い考えがずっと浮かんでしまう。
「………………分かった。
だが、どうやって諏訪から全員を移動させるつもりだ。
バスは……確実に足りないぞ」
「あ、そうね……バスに入る人数……たしかにそうなると……うむむ……」
盲点だった所を突かれる。
星樹さんや高嶋さんが此処へ来る時に使っていたバスでは全員を連れて行けない。明らかな重量オーバー、というより人の数に対して車の数が合わないというべきだろう。
「…………最低限の人数で四国に向かう。
その後に四国に居る人に、救助隊を出させる。それでどうだ」
「……むむ、それは…………」
「それと……最低限、藤森と高嶋にはお前の考えを話してもらう。
俺が呑める条件はこれだ」
「分かったわ……さすがにそこまでバーニングな想いをぶつけられて
頑なにはなれないわよ。みーちゃん達にも言わせてもらいます」
彼の真剣な顔にこっちが折れてしまった。
そこまで熱心に言われてしまうと自分の案を通すのが悪い事のように思えてしまう。いや、実際に悪いか。みーちゃんには多分すごく怒られちゃうわね。
まあ言い負かされたのはちょっと悔しかったので、
揶揄ってやろうと思って、本音を混ぜて告げてみる。
「……星樹さんの、そういう所。私は好きよ?」
「?白鳥の事なら、俺も好きだぞ」
「ホワッツ!?きゅ、急にそういう事言われても困るわよ!?
そ、そういうのはフレンドから始めるもので……!?」
逆に揶揄い返されてしまった。……いや、違う。多分これ素で言ってる。
だから本気にしちゃいそうになる。多分星樹さんは悪気とか一切なく、思った事を直接言ってるんでしょうけど。
その後、星樹さんとの会話を打ち明けると
みーちゃんにはたっぷり怒られちゃったし、
高嶋さんにはすごく悲しそうな顔をされてしまった。当然と言えば当然か。
私、1人で抱え込もうとしてたわけで。
「うたのんはどうしてそういっつも1人で解決しちゃおうとするの!!」って初めてみーちゃんに怒鳴られてしまった。ぐうの音も出ない正論に甘んじて正座をし説教を受けることになった。
歌野ちゃんは相変わらず尻に敷かれてるねぇ。なんて揶揄われてしまった。
「そういう事だ。諦めろ。白鳥の考えは通らない」
「……そうね、本当に。私の完敗よ」
呆れた顔で星樹さんは笑っていた。
どいつもこいつもお人好しなんだよ。だから、絶対賛成なんてしない。
なんて、少し悲しそうに言っていたのは気になったけど。
そんな一幕もあってから、
私とみーちゃんは星樹さんと高嶋さん達を送り出した。
みーちゃんに、残って良かったのか。って聞いたら
大丈夫。約束したから。それに、残らないとうたのん絶対無茶するもん。
って言われてしまった。
いつの間にか、みーちゃんは私より図太くなっていた。
数ヶ月しか一緒に居なかったけど、
あの二人が居たことは、私にもみーちゃんにとっても……良い事だったみたいだ。
それからは、いつものように
此処に残ると言ってくれた人達と畑を耕したり、
バーテックスと命名されたらしい白い怪物を倒したりと
普段と変わらないけどちょっと寂しい日々を過ごすことになった。
そんな中で四国の、香川にできた『大社』という組織と
そこに居る勇者、乃木 若葉。乃木さんの事を知った。
今ではラジオで定期報告を兼ねて、互いの状況を教え合ったり……
うどんと蕎麦、どっちが素晴らしいかというくだらない──いや、私達にとっては大真面目な事だけど。そんな論争を繰り広げたり……当然、蕎麦の方がワンダフルよ?
あとは、星樹さんや高嶋さんの様子なんかも聞いたりしている。
向こうでも楽しそうにしているらしくて、安心した。
ちょっと嫉妬もしちゃったけど、ああ、送り出して良かったなー。って心の底からそう思えた。
そんなちょっと非日常な事もあるけど、くだらない事で笑える日々が
……ずっと続けば良いのに。そう思っていたのに。
──神様というのは随分と残酷らしい。
1週間もしないうちに、総攻撃を受けて結界が破られる。
そんな神託が、みーちゃんに降ったそうだ。
ああ、私死んじゃうんだな。ってどうしようもなく理解してしまって。
なのに不思議と……怖くなかった。いや、違うか。怖いけど、多分諦めちゃったんだな。って気付いてしまった。どうしようもないって。
うん、それでも……まだやれる事はある。遺せるモノはある。
だったら、やろう。頑張ろう。私達の想いを、託せるように。
……ああ、でも……それなら遺書に、書きたいことも書かなきゃ。
そんな事が頭に過ぎって、気付いたらなんだかラブレターみたいな遺書を書いてて慌てて棄てたけど。──嘘です。棄てられなかったのでこっそり鍬とか野菜とか蕎麦の種を入れた木箱の中に普通の遺書と一緒に気付かれないように隠し込みました。
こんな女々しいことしちゃうなんて、もしかして私ってヘビーガールなのかしら……?
ふとそう疑問に思ってみーちゃんに聞いてみた。
「え?うーん、どうだろう……?でも、好きな人の事を思うならそうなっちゃうんじゃないかな……?私は、あんまり……分からないけど……」
「そういうものかしら……?そういえば、みーちゃんはいないの?ラブな人」
「え!?私っ!?ど、どうだろ……?
たしかにちょっと星樹くんは気になってたけど……」
「あら、じゃあみーちゃんとは恋のライバルね。
思わぬ強敵出現……私も負けられないわね」
「うたのん!?」
気付けばした事もなかった恋バナに発展していた。
そういえば、こういう女の子らしい事……全然できなかったな。って考えてから
ああ、1回だけしたっけ。と考えを改めた。
本当に1回だけ、彼と蕎麦をお店に食べに行くだけの簡単なデート。
……うん、あの時、ちょっとは私も女の子らしく振る舞えたかな?
いや、多分できてないわね。私だし。
自分で自分を否定するのはちょっと悲しかったけど
事実なのでへこたれそうにはなった。オシャレとか全然興味もなかったし。私。
女の子(笑)って感じだったかもしれない。
うわ、恥ずかしい……私ジャージと農業王って書かれたシャツを着て星樹さんとデートしてたんだ。思い返して、何やってるのよ私ってツッコミを入れたくなってしまった。
ああ、うん。それでも、楽しかったな。
高嶋さんと、どれだけ蕎麦を早く食べられるか競争したり。
(まあ、その後二人揃って噎せて引き分けたけど)
みーちゃん、高嶋さん、星樹さんと星空を見てみたりとか。
些細な事ばっかりだったけど、あの数ヶ月は楽しかったと思う。
そっか、二年のうちほんの数ヶ月しか一緒に居なかったんだ。
なのにこうも鮮明に思い出せるのは不思議だ。それだけ楽しかったんだと思うけど。
「……それじゃあ、みーちゃん。行ってくるわね」
「うん……気をつけてね」
バーテックス襲来のサイレンが鳴り響く中、思い出を振り返っていた私は
みーちゃんに別れを告げる。多分、もう顔を合わせられない。そう感じていたけど、私はいつものように勇者の戦闘服に着替えて、笑って外に出る。
みーちゃんもそんな私を見て、多分察しはついていたんだろうけど、
私を安心させるように、笑って……いつものように見送ってくれた。
怖いはずなのに、不思議と踏み出す1歩に躊躇いはなかった。
私はこれから死にに行く。そう理解しているのに、まだ闘志は揺らいでなかった。
「はああああぁぁぁッ!!!」
雄叫びをあげて鞭を振るう。襲い掛かるバーテックスを相手に、私は戦う。
「これで、フィニッシュッ!!!」
数が多い。確実に潰す気なんだろう。一波が終わってもすぐに二波が来る。
「……執拗いわねっ……!執拗いのは嫌われるわよ……!
少なくとも、星樹さんを見習って欲しいわ……ッ!!」
今、私……多分すっごく恥ずかしい事言った気がする。
けど、元気が少しは出たので良しとしよう。
「数だけ本当に多いっ……!通さないって言ってるでしょうっ!!」
襲い掛かり、突破しようとするバーテックスを鞭で絡め取り、
他のバーテックスに投げつける。勇者の人並外れた怪力あってこそできる芸当だけど、それもいつまで続けられるか分からない。
──私、なんでこんなに頑張ってるんだっけ。
気付けば、そんな疑問が受かんでいた。
そんなの、決まってる。私が勇者だから。
違う、何もできずに死んでいくのが怖いからだ。
だから、せめて。足掻いて……足掻いて、足掻いて足掻いてッ……!!
「あなた達の目に焼き付かせてあげるわ……!人間の強さってヤツを……!!
私達、ヒューマンは……ベリーベリーストロングなのよっ!!!」
再び叫び、私はバーテックスに立ち向かう。
正直もう限界だ。いつ倒れてもおかしくなかった。
だから、張り詰めていた緊張が緩んだその隙を……
バーテックスは見逃さなかった。
「しまっ───がはっ!?」
バーテックスの突進で木に叩き付けられる。
ああ、ダメだ。今の……多分肋をやった。
「……こ、こ……まで……なの……ッ!」
勇者が幾ら、並外れた治癒力と身体能力をしていると言っても
この数相手にこうなってしまったら。もう、どうしようもない。
「ごめん、ね……みーちゃん……さ、きに──」
ぽきり、と心が……折れる音がした。
もうダメなんだ。そっか……私、死んじゃうんだ。
ああ……嫌だなぁ……みーちゃんともっと話したかった。
高嶋さんに……もっと蕎麦の良さを……教えておけば良かった。
──星樹くんに、告白の1つぐらいしておけば良かった。
「ああ──しにたく、ない……なぁ……」
「白鳥ィイイッ!!!」
聞こえるはずのない、声を聞いた。
……幻聴が聞こえるぐらい、もうダメなんだ。私。
そう思って、死の瞬間を受け入れようとしていたのに。
いつまで経っても……バーテックスが襲い掛かる気配がなくて。
顔を上げて、うっすらと目を開ける。
「え……なん……で……?」
信じられないものを見た。だって、居ないはずだ。
此処に居るはずがない人だ。だって、だって……今は四国に居て。
二度と会えない、はずなのに───
「──約束をした、それだけで充分だ」
「ぁ……」
私の言葉に返すその声が、本物なのだと理解させられて。
涙がこぼれそうになる。声が震える。折れていたはずの心が……闘志が再熱するような感覚を覚える。
「立てるか、白鳥」
差し出された手を握った時、凄く温かくて……
幻覚や幻聴なんかじゃない、確かにそこに居るんだとちゃんと気付かせてくれて。
ああ、狡い……本当に狡い。
こんな……こんなかっこいい助け方をされて……諦めて、死ぬなんて。
そんな事できるわけないじゃない。立ち上がって……立ち向かって……
──あなたの隣で戦いたい。って、そう思っちゃうじゃない。
「ええ……オフコース!当然よ……今の私は、元気100倍なんだからッ!!」
「何故餡子の入ったパンのヒーロー……?
ただまあ……そんな冗談が言えるなら大丈夫だな」
冗談じゃなくて本気なんだけど……まあ、星樹さんってそういうの疎いものね。
知らないでしょう?好きな人の為なら何処までも頑張れるのよ?恋する乙女って。
……私が言うのもちょっと恥ずかしい話だけどね。
群がるバーテックスに向かって私達は吼える。
「さて、反撃開始だ。行くぞ……歌野ッ!」
「……!ええ……ええ!行くわよ、幹弥ッ!!」
「「バーテックスッ!此処から先は、通さないッ!!」」
反撃の狼煙が、上がった瞬間だった。
白鳥 歌野
気付いたらめちゃくちゃヒロイン力が上がってた農業王。
恋する乙女は無敵なのよっ!
名前で呼んで貰ってテンション爆上がり中。
この後精霊憑依した幹弥とめちゃくちゃ無双した
これでメインヒロインじゃないってマジ?
ちなみにこの戦いの後、遺書に挟んでたラブレターは本当に捨てた。
バレたら恥ずかしいので!
藤森 水都
白鳥歌野の親友にして恋のライバル。
うたのん大好き。星樹くんもちょっと気になってる。
神様に、星樹くんに助けて……って願ったら本当に来ちゃったの図。
……泣きそうになってた。というか泣いた。
星樹 幹弥
喜べ、少年。君の末路は
故に彼はこれからも多くの者を救うのだろう。
例え、この先で何を選んだとしても──
オオデマリの花言葉
「私は誓います」「約束を守って」
「華やかな恋」