結城友奈は勇者である ハッピーエンド√RTA 作:星ノ瀬 竜牙
※今回(なるべく抑えたつもりですが)残酷な描写があります。
耐性のない方はお気をつけください
その日、世界に天災が降り注いだ。
後にバーテックスと呼ばれるそれらは、瞬く間に人を喰らい、潰し、蹂躙した。
2015年、7月30日。それが、世界が終わった日であり
「7・30天災」と後に呼ばれることになった日である。
そしてこれは……その日、勇者になった1人の少年の身に起きた出来事である。
───
「……なに、が」
訳が分からなかった。人が無惨に殺されていった。理解が追いつかなかった。
ただ、頭の中で逃げなければという考えと共に
ある社に迎えという不思議な声に従っただけだった。
周囲を見渡せば、同じように逃げてきたであろう人が無数に居る。
泣き喚く子供もいれば、繋がらない携帯を見て焦る者、家族を探す者など
……有り体にいえば地獄だった。
ここ数日の自然災害はこれの布石だったのだろうか。
そんな不謹慎なことが頭に過ぎってしまう。
「こちらです!ゆっくりと登ってください!!」
1人の少女が、避難誘導をするように声を掛けている。
……そういえば、彼女の先導で逃げてきていた人が居たことを思い出した。
違和感がある。というよりは、彼女と話すべきだと使命感のようなものに駆られ、彼女のもとに向かう。
「……おい」
「はい?……っ!あな、たは……」
「?……どうした?」
「い、いえ……こほん、どうしました?」
白。一目見たときそう思わせる少年のぶっきらぼうな言葉に、振り返ると
何かを見たのか驚いた様子をみせる少女。
しかし、咳払いをして少女は少年に問いかける。
「……君も、聞こえたのか?」
「っ……やはり、貴方も聞こえたんですね……?」
たった一言。それを聞いただけで少女は理解がいったのか
頷き返して、少年を見つめる。
「……倒し方はあるか?」
「それ、は……」
一言。少年のそれは言葉足らずではあるが、何を指しての事か
何をしたいのか。どういう意味かは受け取るには充分な言葉だった。
「い、え……わかりません……」
その意図を理解出来たからこそ、少女は申し訳なさそうに目を伏せる。
それが、どういう意味での言葉だったのかは少女にしか預かり知らぬ事だった。
「そうか……お前は、視えないんだな」
「見え……?どういう……っ!?」
少年の言葉に少女は首を傾げながら、彼の視線の先を見る。
その視線の先にある社には紛れもなく、よからぬ気配が漂っているのを感じてしまった。
「何故、あれに気付いたのですか……?」
「最初から。あの奥で……何かが呼んでいた」
「呼ぶ……?」
どういう事かと、社を見たその直後。
「ひっ……!?」
──ギロリ──
と、何かがコチラを見たのに気付き、少女は竦み上がる。
───縺薙>縲∽ココ縺ョ蟄舌h
「……呼んでる」
声が聞こえた。呼んでいる。なら、行かなければ。
そう1歩踏み出すと、少女が手を掴んでいた。
「ダメです……!行ってはダメ……!
あれを取っては………!あれを取ったら貴方は───」
少女の必死の引き止めに、困惑しながらどういう事かと聞き返そうとした直後。
──いやあああああああああああっ!?!?
──ば、ばけものがっ!?たすけ……っ…だれか、たすけろよぉっ!!?
悲鳴が遠くから聞こえた。
それはつまり、既に選択肢などない事の現れだった。
「っ……!」
「あっ……ま、……って……!」
彼女の制止の声を振り切り、
社の頭上に現れた怪物を見て、覚悟を決め社に駆け込む。
──辟。蝙「縺ェ蟄舌h 縺輔≠縺薙■繧峨↓
社の奥、更に奥で。何かが呼んでいた。
「ここ、か……?」
息切れすらなくなった、己の身体に疑問を抱きながら
目の前で崇められるように飾られた枝分かれした刀を見つける。
──蜿悶l縲∽ココ縺ョ蟄舌h
──謌代′縺。縺ィ閧峨r譁ャ縺」縺溘◎縺ョ蜑」縺ァ螂エ繧峨r谿コ縺怜ース縺上○
十束剣。それがオレを呼んでいた。握れと、取れと。頭の中で声が聞こえる。
だから……オレはその刀の柄に手を置く。
「ア──ガッ──」
どぼり、と口から血を吐いた。
気持ち悪い異物感が身体に走る。だが、それも一瞬で染み付くような、馴染んでいくような感覚が身体に巡る。
──縺輔≠謌代i繧偵▽縺九>縺ェ縺輔>辟。蝙「縺ェ蟄舌h
その声に従うように。信じるように。
オレは……その刀を握っていた。
力が漲る。比喩でもなく文字通り力が湧いてくるのを感じた。
これならいけると。確信めいたものを実感していた。
直後 ─バキリ。と社が噛み砕かれ、穴が空いた。
怪物共が此方に目をつけたということだった。
奴らの憎たらしい顔が、目の前に映る。
「……試し斬りだ」
即座に、握っていた刀で近付いていた怪物の頸に傷をつけ、社を飛び出す
「浅いか……」
使えたからとはいえ、刀の振るい方はド素人も良いところだった。
故に浅くしか斬ることが出来なかった。だが、確かに奴らの頸に刃が届いた。
通常兵器は届かぬと、効かないと。
その情景を見たあとであったからこそ。その事実が知れただけで大きな収穫だった。
「取ってしまったんですね……」
驚いたように、それでいて悲しそうに少女はこちらを見た。
「……ああ」
その言葉が、オレを心配してのものだとは理解出来た。
だが、元より老い先短い……身体の弱いオレにそれは無用のものだった。
「こい、怪物共ッ!!!」
珍しく、オレは声を張っていた。
その言葉に……いや、おそらくは、この刀に誘われたであろう怪物達は
オレに向かって襲いかかってくる。
……どちらにせよ、今ここに居る人を守れるのはオレだけなのだ。
ならば、ならばせめて……この命の使い所は……此処に決める事にした。
ただ只管に、怪物共を斬り……屠っていく。
斬り方が拙いのであれば、作れる傷口が浅いなら。何回、何十回だろうと斬り刻めばいい。
「ち、ぃ……!!」
ジリ貧ではある。だが、それでも稼げる時間を稼ぐ他にない。
せめて被害を抑える為に。襲いかかる怪物共を斬り伏せる。
猿真似でしかないその剣術、素人も同然の戦い方。
故に、綻びは直ぐにうまれた。
「しまっ──!?」
無傷の怪物のその巨体を、ぶつけられる。
体勢もろくに維持できない状態、
避けることすら出来ずに真正面からまともに食らう。
「ごっ──が、はッ!?」
社の壁に叩きつけられ、口から息が吐き出る。
身体がミシリ、と嫌な音を鳴らしていた。激痛が走る。
──意識が朦朧として地面に倒れ伏す。
「ま……だ……」
死ねない。辛うじて見える視界に、人はない。
おそらく彼女が必死に誘導してくれたのだろうことだけは把握する。
だが、安全が保証できたわけではないのだ。
ここで自分が倒れればどうなるかなど、理解していた。
「…………ぐ、ぅ……ッ……」
悲鳴を上げる身体に鞭を打ち、朦朧とする意識を奮い立たせて
ふらふらと立ち上がる。もはや死に体だ。
おそらく、骨の数本はやったのだろうことだけは理解出来る。
「しっ……たこと……か……!」
そんな事で、負ける訳にはいかない。
使い所を決めたからと。だから今死ねと言われてはい分かりました。と死ぬ訳にはいかないのだから。
「が、ふ……ッ……」
血が逆流して口から吐き出る。
それでも、と近付く怪物共を睨みつけて震える手で刃を向ける。
せめてもの抵抗、そう評するしかない無様な状態。
ああ、死ぬのか。と、畜生。と
何処かで理解してしまって、闘志が消え伏せようとして
「は……?」
ブチリ、グチュリと目の前で肉が千切れる音が聞こえた。
突き飛ばされ、理解が及ばぬままに視界に映ったのは……
────少女が怪物に食い散らかされる姿だった。
「ァ……ァアアアああああああああぁぁぁッッ!!!!!!」
思考が理解を拒み、我を忘れて怪物共を斬り殺す。
周囲にいた怪物共を殺し尽くして、辛うじて残る彼女の身体を抱きとめる。
「……な、んでっ……!!なんで助けたッ!?!?」
「ご、め……さい……で、も……あな……を……」
「しゃべる、なっ……!」
無駄だと分かっていても、理解していても受け入れたくなくて
そんな馬鹿な事を口に出す。この傷じゃ助からない。そんなの分かりきっている。
それでもこれはあんまりだと。
「わ……かっ……いま………じぶ、んの……から……ですか………ら………」
「なんで……ッ……オレなんか、をッ………」
「……わ、た……の……いの…ちで……すく……たな……ら……そ……だけ、で……」
満足そうに笑みを浮かべる彼女の顔を見て
言葉すら出なくなる。どうして笑える。お前は……なんで……
「どう、か……おねが……です……たす、け……あ、げ……て……
そ、し………ゎ……たし……の……いも……う、と……を、おね……が……
あ、ぁ……でも……し、に……た───」
そこまで口に出して、彼女は力尽き、物言わぬただの骸になった。
「あ………ぁぁ……」
──諞弱>縺倶ココ縺ョ蟄舌h
黙れ。
──諞弱°繧阪≧縲√い繝ャ繧峨′
黙ってくれ。そんな事分かりきっている。
お前に言われずとも……理解している。
──縺ェ繧牙他縺ケ蜑」縺ョ蜷阪r
──謌代r譁ャ繧翫@蜑」縺ョ蜷阪r
お前の……名前を呼べば、殺せるのか。
──辟。隲悶□ 螂エ繧峨′諞弱> 謌代b諞弱>
──蜈ア縺ォ螂エ繧峨r谿コ縺昴≧
ああ……なら、充分だ。オレも、憎いんだ。
それで幾らでも殺せるなら、オレはお前の名を呼んでやる。
──それで良い。ようやくだ、ようやく……貴様の蝟峨↓蝎帙∩莉倥¢繧医≧
──なあ、■■■■■
より鮮明にその声が聞こえた。
ドクリ、と刀が脈打つ。生きているかのように、震える。
それは恐怖ではなく、歓喜に震えたのは違いなく。
「殺せ───蛇斬」
その名を呼ぶと同時に、怪物がこちらを見つめる。
彼の背後からギロリ──と16の紅い瞳が白い怪物を睨んだ。
即座に怪物は理解する。アレは、あの人間は殺さねばならないと、脅威になると。
創造主達に確実に害を及ぼすものだと。
故に、怪物は段階を進め、化ける事を選ぶ。
それは俗に言う『進化』であった。
人類が、生命が何千、何万、何億という幾星霜の時を歩むことで行うソレを。
怪物は融合する事で、たった数秒から数分で行おうとする。
それは埒外の力、規格外のもの。それが神、或いは悪魔か。
そういった認識外にある存在により与えられたものだと明確に現すものだった。
だからこそ、彼の内に宿った蛇は震えた。
それは決して恐怖ではなく、怒りと落胆だった。
「進化か……己で殺せなければ、それを選ぶか。哀れな」
呆れたように、
「慈悲だ。──惨たらしく、死ぬが良い」
《───?》
怪物は理解せず、斬り伏せられた。
何が起きたのか分からぬままに接近した少年にその肉体を潰されていた。
斬り伏せた。動作だけ言えば間違いなくそうだっただろう。
だが、その刃で斬られたというにはあまりにも不自然に、
大きな巨体に踏み潰されたような叩き潰されたような形状で、
その姿を砂に変えて朽ちていった。
「まだ渇く。飢える。さあ、愚かな神の子らよ。喰ってやろう」
それは間違いなく、蹂躙というべきものだった。
先程までの苦戦が嘘のように、白い怪物は為す術なく葬られていく。
白い怪物と、同じ髪色。それが怪物を駆逐せんと夜空を翔ける。
その姿を……この日、この場所に居た者はこう述べた。
──神が居た。と
「これにて仕舞い。次はもう少しマシな獲物を用意する事だな。『縺ゅ∪縺、縺九∩』よ」
その最後の一体を斬り裂いた。
「我は今は此処までよ。人の子よ。あとは好きにするが良い。
アレらを殺すも喰らうも貴様次第。憎くはあるが、好きにせよ」
「は、ッ……ぁ……ッ!?」
蛇のような鋭く紅い瞳が鳴りを潜め変貌する前の少年に戻る。
「な、にが……オレは……?」
頭痛が走る。何をしていた?何を言っていた?全てに靄が掛かるように
ノイズが走るように思い出せない。オレはたしか……目の前で……
「ぁ……ぁぁ……ッ……う……ゲぇッ……お…うェッ…」
胃液が逆流して口から吐き出る。
そうだ、自分は……彼女を守れなくて……その部分だけが鮮明に蘇る。
傷の痛みなど、感じないほどに。罪悪感に押し潰されそうだった。
「……ぁ……ごめ……ごめんなさ……オレ……
オレが……まもれ……ごめん……なさ……ッ……ぉ……え……ッ……」
彼女の亡骸に聞こえもしない謝罪をひたすらに告げる。
それが彼の罪。彼の始まり。全てはこの罪悪感より、産まれたもの。
いつの日か、勇者と呼ばれる彼の行動全てに通じるものである。
「きみ……大丈夫かい?」
「ぁ……あなた、は……」
そんな少年の姿が見るに耐えなかったのか。
1人の男性が声を掛ける。ここに避難してきていた、
そこにある亡骸となった少女に導かれてきていた1人だった。
「彼女のことは……いや、そういう事ではないか。
……助けてくれてありがとう。君が居なければ、私達は全員死んでいた」
「ぁ……」
気の毒に。そう言おうとして口を閉じる。
その言葉は少年に浴びせるものでは無いと判断してだ。
だから、彼は少年に感謝を告げる。
今、彼に必要なのはその言葉だと、そう信じて。
「それ、は……この子に……
オレ……この子が、居なかったら……死んでました……だから……」
彼女が貴方達も救ったのだ。と彼女の目を閉じさせながら
少年は虚ろなまま口に出す。それは自分に必要なものではないのだと拒絶するように。
「……そうか、すまない。確かにその通りかもしれない。
だが、君がいなければ私達は死んでいた。それだけは忘れないでいて欲しい」
「…………ッ」
酷な話だと。何故こんな幼い子供にこんな重荷を背負わせなければならないのかと
男性は、少年を見つめながら罪悪感を抱く。
「亡くなった人達のお墓を作ってあげよう」
「ぇ……?」
「……此処は神社、神様のお膝下だ。
此処で供養してあげればきっと、この子達は報われるはずだ」
信仰心があるわけではない。だが、今少年の罪悪感を和らげるにはと
男性は模索して、そう告げる。せめてもの償いだと。そう言うように。
そしてその言葉を聞いていたのは少年だけではない。
周りにいる、生き残った人々もだ。
「そうね……それが生き残った私達にできることだもの」
「俺も手伝うぞ!こんな所で放置されたままじゃ哀しすぎるもんな……」
男性の言葉に賛同するように、多くの人がそう同意する。
そして、社に残っていたものを使い、火を焚き、亡くなった人達の遺体を焼いて骨にする。
そして、土に埋め、質素ではあるが墓を作る。
この極限の状況下で、そんな行動が人々にできたのは
少女の献身が、少年の勇気が、青年の良心があっての事だった。
「君は、これからどうするつもりだ?」
「………オレは」
墓の前で手を合わせ終え、青年は少年に問いかける。
このまま放っておいては、1人で死にそうだった少年の様子を感じとったからか。或いはただお人好しだったからか。
「ッ……分かりません……けど、彼女の、家族に……謝らないと……
オレは……そうしないと、いけませんから……探す、つもりです」
「そうか……その旅、私達も同行させてくれないだろうか」
「ぇ……でも………」
「……君に負担を強いることになるのは百も承知だ。
けれど、ここが安全だとは限らない以上……私達は君に頼るしかない。
すまない……君といる方が、私達は安全……という他にないんだ」
無理をさせること、更に追い詰めるかもしれない一言だとは理解している。
だが、そうしなければここに居る人達は全滅だろう。
それこそ……この少年の勇気を、少女の献身を無駄にするということだ。
それだけはさせたくなかった。この少年に更に罪悪感を抱いて欲しくなかったのだ。
……1歩間違えれば、少年が壊れてしまうかもしれない。そんな事実に目を背けながら。
「わかり……ました……何処にいるか……行くかも……分かりませんけど……
それでいい、なら……お願いします」
「すまない……ありがとう……」
ただ頭に響く声を映像を信じて少年は、生き残った人々は進むことになる。
その先で、他の生き残った者達……そして、少年と同じく怪物と戦う少女達と出会う事になる。
だがそれは、少し先の話。今はまだ、少年のみが織り成す物語。
「ああ…………気持ち悪い」
生き残った人々を安全に誘導するため
先行して偵察を続ける少年は、空を見上げ口に出す。
空から怪物が降る幻覚を見る。
それは彼の罪悪感、自己嫌悪。それらの表れであり……
そして、多くの人々が患うことになったとある病の前兆であったなど
誰も知る由はない。
これは、勇者の物語である。
その多くは穢れなき少女の物語であった。
ならば……縺九∩縺輔∪に選ばれた少年の物語は?
きっと、ろくなものではないのだろう───
星樹 幹弥
これが始まり。
ここから割とまともな状態に戻した高嶋 友奈は誇っていい。
■■■■
とある存在に怨みをもっている。
その存在が人類と敵対した事を知り、星樹 幹弥に目をつける。
少女
亡くなった巫女。
姓は鷲尾だったらしい。
妹がいるらしいが何処にいるかは不明。
青年
姓は三好。良識のある善人。
彼がいなければ星樹 幹弥は終わっていた。