戦士の誕生
C.E.70年。
コーディネイターとナチュラルが互いの存亡を懸けて大きな戦争を繰り広げていた。
その最中、ナチュラルが所属する地球連合が核ミサイルを使ってユニウスセブンを攻撃する。その被害でユニウスセブンは崩壊し、24万以上の犠牲者が出た。
その犠牲者の中には…俺の両親も含まれていた…。
コーディネイターで結成された組織ザフトの軍人として数々の功績を上げ、部下達からも敬愛され、俺の誕生日の時は必ず休暇を取って祝ってくれた父さん。
優しくて、いつも俺を気にかけてくれたり、家に帰ってきた時は暖かい笑顔で迎えてくれた母さん。
『血のバレンタイン』
その日は両親の結婚記念日で、当時の俺は父さんの友人であり、プラント最高評議会議長でもあるシーゲル・クラインの自宅で世話になりながら二人の帰りを待っていた。
しかし、ニュースで両親がいるユニウスセブンの無惨な姿を見た時…俺は大きなショックを受けた。
まるで頭を鈍器で殴られたような、そんな感じだった…。
その後は、シーゲルさんに引き取られ、息子のように大事に育てられたが…俺の心の中はまだ…両親を失った悲しみを残したままだった…。
時間は昼間。
俺はいつもように、シーゲルさんが用意してくれた自分の部屋の椅子に座ったまま外の景色を見ている。
普通ならいい眺めであるその景色も、今の俺はどうでもいいと思っている。
きっと今の俺の目は、死んだ魚のような目をしているのかもしれない。
すると、俺の部屋のドアの方からノックする音が聞こえてくる。
「…ダン、
可憐な少女の声が聞こえてくる。
この声は、いつも聞いているから、聞き間違える筈がない。
「……今開けるよ」
俺は椅子から立ち上がり、ドアの鍵を開け、ノックした人物を確認するように見る。
「ダン……」
そこには、桃色の長い髪の少女が心配そうに、そして悲しそうな表情で俺を見ている。
その少女の名前は、ラクス・クライン。
俺が世話になっているシーゲルさんの娘で、幼い頃からよく一緒に遊んだ幼馴染みだ。
「また……今日の朝食も、僅かしか口にしませんでしたわね…」
「……」
俺を心配してくれるラクスの言う通り、あまり食事に喉が通らず、ほとんど部屋で過ごす日々を送っている。
血のバレンタインから大分時が経っているが、まだ両親の死から立ち直る事ができずにいたからだ。
「…ダン、少し…よろしいですか…?」
俺はラクスの問いに無言で短く頷く事で答え、彼女を部屋に入れた後、自分のベッドに腰を掛ける。ラクスも隣に座り、尚も気にかけるように俺を見ている。
「ダン。ご両親が亡くなられて辛いのはわかりますわ。ですが、このままでは貴方が…」
「…」
彼女が俺を慰めてくれているのはわかっている。
しかし、それでも俺の心に両親を失った傷が残っているせいで、立ち直る事ができない。
「…ダン」
するとラクスは、俺の手を両手で優しく包むように触れる。
「これ以上、辛い過去に囚われて、生きる意思を見失わないでください…」
「…」
「
自分の手の平に俺の手を乗せ、優しく撫でながら言うラクス。
「自分の決めた事を最後まで貫く勇気を持っている人ですわ…」
そして、涙を流して俺を見るラクスを見て少し驚いてしまうが、すぐに幼い頃のある日を思い出す。
幼い頃、ラクスを虐めていた奴等を懲らしめた後、泣いていたラクスを俺が慰めていた頃を…。
あの時、ラクスに辛い思いをさせないと決めていたのに…。
それなのに、また彼女を泣かせてしまうなんて…俺はなんて情けない男なんだ…。
「…ごめん」
涙を流しながらも慰めてくれたラクスを俺はそっと優しく抱きしめて謝る。
「ダン…?」
「また君を泣かせて…本当にごめん」
俺の言葉を聞いたラクスは、俺と同じように優しく抱きしめてくれる。
「…いいのですよ。むしろ
「…うん。わかった」
ラクスのおかげで立ち直る事ができた俺は、今は彼女達と一緒に幸せな日常を過ごしている。
しかし、それもいつ崩されるのかわからない。
だから俺は誓った。力を付けて戦士として戦う道を進むと。
もう俺のように大事なものを失う辛さを背負って生きる人間を増やさないように。
そして…
俺に生きる希望をくれた、ラクスの笑顔を守るために…。