今日はコンサートに向けてのリハーサルを行う為、俺はラクスと一緒に車でクライン邸を発ち、コンサート会場に向かっている。
「…以上が本日のスケジュールになります」
「はい。わかりましたわ」
車内ではラクスが女性マネージャーから今日のスケジュールの内容について丁寧な説明を受けている。
女性マネージャーの説明を終えてから15分後。
コンサート会場に到着し、車から降りて数人の護衛を連れて会場に入ると、10人以上のスタッフ達がエントランスで待機している。
スタッフ全員がラクスに頭を下げ、責任者が落ち着いた口調で彼女に話しかける。
「ラクス様。お待ちしておりました」
「お出迎え、ご苦労様です」
「リハーサルでお使いになられる舞台の準備は既に終えております」
「そうですか。では、早速始めましょうか。皆さん、よろしくお願い致しますわ」
挨拶を済ませたラクスはスタッフ達と一緒にリハーサルに取り掛かる為、会場に移動する。
責任者やスタッフ達の説明を聞きながら舞台の立ち位置、本番の流れなどを覚えていく。
俺は他の護衛達と一緒に周囲を警戒しながら、そんな彼女を少し離れた場所で見守る。
リハーサルを始めてから数時間が経ち、腕の時計を見てみると、そろそろクライン邸に戻る時間に近付いている為、俺はラクスの側に歩み寄って声をかける。
「ラクス。そろそろ…」
「まあ。もうそんな時間ですの?」
ラクスが近くのスタッフに声かけると、スタッフはすぐに責任者のところへ報告に向かう。
事情を聞いた責任者はスタッフ全員に声をかけ、リハーサルを終了させる。
会場を出て周囲を警戒しながら、リハーサルを終えたラクスを車に乗せ、彼女に続いて車に乗り、スタッフ達の見送りを受けながら、会場を後にする。
クライン邸に到着し、車を降りて邸内に入った後、シーゲルさんの帰りを待ちながら、ラクスと一緒にお茶を飲んでいる。
ラクスはリハーサルの緊張から解放されたのか、安心したように息を吐く。
「ふう…。疲れましたわ…」
「お疲れ。よく頑張ったね」
俺がラクスの頭を撫でると疲れていた彼女の表情が、元気を取り戻したかのように笑顔になっていく。
「マネージャーの方や、スタッフの方々の丁寧なご説明のお陰ですわ。それに…」
ラクスは俺に笑顔を見せたまま話を続ける。
「ダンがずっと見守ってくれていたお陰で、練習に専念する事ができましたわ」
頬を少し赤らめながら言うラクスの言葉を聞き、幼馴染としての俺の心は喜びで満たされる。
「そう言ってくれて嬉しいよ。ラクスが本番で悔い無く歌えるように、俺、頑張るよ」
俺の言葉を聞き、ラクスは自分の頭を撫でている俺の手に手を重ねて微笑む。
「ありがとうダン。私も貴方に、更に上達した歌を聞いていただけるように頑張りますわ」
しばらくして、シーゲルさんがクライン邸に帰ってきた為、三人で夕食を取り、就眠する時間までの間、ラクスと楽しく雑談をした後、明日のリハーサルに備える事にした。
しかし……
この先、あの悲劇が再び繰り返されるような事件が起きるとは…俺もラクスも、まだ知らなかった……。