地球軍の迎撃に成功し、プラントに戻ると予想通り、プラント市民が歓声を上げて出迎えてくる。しばらくその歓声を受けていると、ラクスの護衛を一緒にしている数人のボディガードが市民の間を抜け、俺のところへ歩み寄ってくる。
「ダン・ホシノ。シーゲル様が向こうの車でお待ちだ」
ボディガード達に守られながら市民の間を抜け、一台の黒の車に乗り込むと車内にシーゲルさんが乗っていた。
「ダン。無事で良かったよ」
「シーゲルさん!」
俺が車に乗ると、ボディガードの運転で車が動き出し、市民の歓声を受けながらクライン邸へ向かう。
車がクライン邸に向かっている最中、シーゲルさんが俺に語りかけてくる。
「心配したが、無事に戻って来てくれて安心したよ」
「はい。シーゲルさんもご無事で。ところで、ラクスは?」
「あの娘なら自宅にいるよ。最初は一緒に君を待っていると言っていたが…あれだけの市民の数だ。大勢の前では話もしずらいだろう?だから先に家で待ってもらっているよ」
「…そうですか。ラクスも無事で良かったです」
「ああ。君が奮闘してくれたおかげで、プラントも、私達も守られた。本当にありがとう」
シーゲルさんの言葉を聞き、俺は先程の戦闘を思い出す。
あの時の俺は、敵の動きが見えるような感覚がした。
…あれは一体、何だったんだ?
俺とシーゲルさんを乗せた車が無事にクライン邸に到着し、邸内に入ると、ラクスが心配そうな表情でこっちに駆け寄って来る。
「ダン!お怪我はありませんか!?」
「大丈夫。どこも怪我はないよ」
「そうですか…貴方がご無事で、本当に安心しましたわ」
俺の返事を聞いてラクスは安心した表情で胸を撫で下ろす。
「さあ、立ち話はここまでだ。ダンも無事に戻ってきた事だし、皆で夕食にしようじゃないか」
「はい。お父様」
「ええ」
俺はあの時の戦闘の事を一旦忘れ、シーゲルさんとラクスと一緒に夕食を取る事にした。
夕食を取った後、俺は部屋の窓から夜空を眺めている。空には雲一つなく、多くの星が綺麗に輝いている。
本当に綺麗な星空だ。
空を眺めてると、ドアからノックの音が聞こえてくる。
「ダン。私ですわ」
どうやらラクスのようだ。
ドアの鍵を開けると、いつもの優しい笑顔を俺に見せてくれる。
「どうかしたのかい?ラクス」
「はい。ダンとお話がしたくて来ましたの。…少しだけ、よろしいですか?」
「ああ。構わないよ」
ラクスを部屋に入れ、彼女が座る椅子を用意し、俺は自分のベッドの上に座る。
何故かラクスも俺の隣に座っているが、それを気にせずに彼女に話しかける。
「それで、話というのは何だい?」
「…ダンが戻って来てから、何か考え事をしているように見えて、少し心配で…」
どうやら、ラクスには見抜かれていたようだ。
俺は先の戦闘での自分の行動について、知っている限りの事をラクスに説明をする。
「まあ…。そんな事がありましたの…」
敵の動きを見抜き、冷静に対処して敵を一掃してしまった自分に対して少し複雑な思いをしていると……
「…ですが」
ラクスが突然、俺の手の上に自分の手を重ね、優しく微笑む。
「ダンのその働きのおかげで、プラントも、父も、市民も守られたのでしょう?」
ラクスは俺の手を優しく握ってくる。ラクスの手の温もりのおかげで、心の中にあった複雑な気持ちが徐々に消えていく。
「もちろん、私も…」
ラクスの言う通りだ。
俺はラクスとシーゲルさんを失いたくない。その思いで戦った。そしてラクス達を守る事ができたんだ。
「ですからダンも、それを誇りに胸を張ってくださいな」
「…そうだね。ありがとう」
ラクスの言葉で心の中の複雑な思いが消え、俺が礼を言うと、彼女は満足したように笑顔を俺に見せてくれる。
その後、俺はラクスとしばらく雑談をしてから、明日に備えて休む事にした。
プラントの防衛から後日。
俺はラクスとシーゲルさんと一緒に車で最高評議会本部に向かっている。
理由は、先日のプラント防衛戦で功績を挙げたという事で、評議会本部で表彰式を行うらしい。
評議会本部に到着すると、俺の他にも数人の赤服が来ており、その中にはジャン・エクシーグの姿も見える。
表彰式が行われ、その最中、ジャン・エクシーグが俺に気付き、こっちに顔を向けて笑みを見せる。俺はそれを笑みを見せて小さく頷く事で答える。
俺とジャン・エクシーグは表彰だけではなく、隊長に任命され、それぞれ部隊を率いる事になった。
全員の表彰が終わり、拍手と歓声が鳴り響く。
俺の表彰式を見ていたラクスの方に顔を向けると、彼女は自分の事のように喜んで拍手を送ってくれている。
そんな幸福感に包まれながら表彰式は無事に終わり、評議会本部を後にし、それぞれの持ち場に戻るのだった。
表彰式から2日が経ち、シーゲルさん達最高評議会の働きもあり、プラントは落ち着きを取り戻し、普段の日常に戻りつつある。
しかし、評議会では地球軍の襲撃もあり、ザラ委員長によるナチュラル討伐の主張が激しく、かなり緊迫化している。
プラントの市民の不安を少しでも取り除けるように、ラクスはコンサートに向けてリハーサルに励み、俺はいつも通り彼女の護衛を務めている。
「本日もお疲れ様でした。以前の騒動からしばらく経ってはおりますが、プラント市民はまだ不安に襲われております」
「そうですか…。せめて本番のコンサートでは、少しでも市民の方々の不安がなくなるとよろしいですわね」
リハーサルを終え、クライン邸に向かう車の中で女性マネージャーの言葉を聞いたラクスは、プラント市民の事を気にかけるように語っている。
それもそうだ。
地球軍…ナチュラルに自分達の居場所であるプラントを襲撃されたからな。不安になるのも無理はない。
しかし、この先何があろうと…俺はラクスを守る。
それだけだ。
その思いを抱きながら、俺はラクスと一緒にクライン邸に戻るのだった。