機動戦士ガンダムSEED 未来を担う剣   作:Please

21 / 43
約束の地に

「…こ…こ…は…」

 

 

目覚めたばかりなのか、キラの意識はまだはっきりとはしておらず、少し離れている俺にはまだ気付いていない。

 

 

 

 

 

俺は近くの木の陰に隠れ、しばらくキラ達の様子を見る。

 

 

 

 

「お解りになります?」

 

『ハロ!ゲンキ!オマエ!ゲンキカ!?』

 

 

ラクスの声に反応したキラは顔だけをラクスの方に向ける。

 

 

「…ラクス…さん…」

 

「あら。ラクスとお呼び下さいな。キラ。でも、覚えていて下さって嬉しいですわ」

 

『マイド!マイド!』

 

 

ラクス達のやり取りを見ていると、マルキオ導師がラクス達の方に歩いていくのを見かける。

その途中、マルキオ導師が木に隠れている俺を見るが、声をかける事なく、笑みを見せて小さく頷き、ラクス達の方へ歩いていく。

ラクス達のところに着いたマルキオ導師がキラに声をかける。

 

 

 

 

「驚かれたのではありませんか?このような場所で。ラクス様が、どうしてもベッドはここに置くのだと聞かなくて…」

 

「だって、こちらの方が気持ちいいじゃありませんか、お部屋より。ねぇ?」

 

 

キラはまだ意識がボーとしている状態で上を見上げる。

 

 

「僕は…」

 

「貴方は傷付き倒れていたのです。私の祈りの庭で……そして、私がここへお連れしました」

 

「あら?そういえば、ダンの姿が見当たりませんわね」

 

 

ラクスが俺の名前を言い出した途端、キラが上半身だけを凄い勢いで起こす。

 

 

「あぁ…ぁ…」

 

「キラ?」

 

 

キラは両手で頭を押さえながら震えている。

ラクスはそんなキラの両肩に手を置いて落ち着かせる。

 

 

『アカンデー』

 

 

ハロはハロで、相変わらず空気を読まずにはしゃいでいる。

 

 

 

 

「…僕は…アスランと…戦って……死んだ…筈…なのに…」

 

 

そんなハロの事は気にせず、キラはアスランと戦った事を語る。キラとアスランの殺し合いを知り、驚きを隠せなかったが、それでキラが怪我を負った理由を知る事ができた。

 

 

「キラ…」

 

 

ラクスに支えられながらも泣き続けるキラ。そんな状態のキラに会う事にためらいを感じた俺は、ばれないようにクライン邸内に入り、キラが落ち着くまでしばらく待つ事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウォン、ウォン』

 

「…ドルフか」

 

 

リビングからキラの様子を見ていると、ハロ達の相手をしていたドルフがこっちに向かって走ってくる。

 

 

「ハロ達の方は大丈夫なのか?」

 

『ウォン』

 

 

俺のところに来たドルフの頭を撫でると、尻尾をブンブン振りながら喜ぶ。そして一度だけキラがいる方向に顔を向けると再び俺を見上げる。

 

 

「…そろそろ会えって事か?」

 

『ウォン』

 

「…わかった。行こうか」

 

『ウォン!』

 

 

俺はキラの様子を見に行く為、ドルフと一緒にクライン邸から出て、ラクス達がいる庭に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『テヤンデー』

 

『ハロハロハロ』

 

 

庭に来るとハロ達とオカピが追いかけっこをしながら遊んでいる。

 

キラの方を見てみると、さっきより落ち着いた状態でベッドで安静にしている。

キラの横ではラクスがいつものように手慣れた手つきでお茶を入れ、キラの近くに置く。

 

ドルフと一緒にラクス達のところに向かっていると話し声が聞こえてくる。

 

 

 

 

「どうしようもなかった…」

 

 

キラは独り言のように語り出す。

 

 

「僕は…アスランとダンの仲間を…殺して……

アスランは…僕の仲間を殺した…」

 

 

 

 

「(…俺がいない間に、オーブでそんな事が起きていたのか…)」

 

 

落ち着いているとはいえ、今のキラの心と精神は不安定な状態だ。

このままだと、いずれキラの心と精神は崩壊し、脱け殻のようになってしまうだろう。

 

 

 

 

ニコルを殺された怒りを忘れた訳じゃない…。

 

…とはいえ、友であるキラを仇として討つつもりもない。

 

 

『クゥン…』

 

「…大丈夫だ。行くぞ」

 

 

俺は心配しているドルフを安心させ、キラ達の方へ歩み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから…」

 

 

 

 

「だから殺し合ったのか?」

 

 

 

 

続けて語ろうとするキラに対し、俺は割り込むように声をかける。

 

 

「…っ!?」

 

 

俺の声に反応したのか、キラは顔だけを俺に向け、目を見開いてかなり驚いている。

 

 

「…ダ…ン…」

 

 

驚愕しているキラとは対象的に、俺の表情はおそらく怒っているように見えるだろう。

心配そうな表情のラクスに見守られながら、俺はキラの方に歩み寄る。

 

 

「結果的に…お前はニコルを殺し、アスランはお前の仲間を殺した。それは紛れもない事実だ」

 

 

俺の言葉を聞いてキラは図星を突かれたように複雑そうな表情で俺から視線を背ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…だが…」

 

 

俺が言いたいのは、そんな事じゃない。

 

 

 

 

「それは仕方ない事じゃないのか?」

 

 

俺がそう言うと、キラは背けていた視線を再び俺に向ける。

 

 

「その時の俺達は、敵同士で…戦争をしていたんだ」

 

 

真剣な表情で言う俺を見て驚くキラに、今度はラクスが微笑んで話しかける。

 

 

「ダンの言う通りですわ。お二人とも敵と戦われたのでしょう?違いますか?」

 

 

ラクスの言葉が決め手となったのか、驚愕していたキラは落ち着きを取り戻したように上を見上げる。

 

 

 

 

「…敵…」

 

 

キラはそう呟いて上を見続ける。

 

とにかく、キラが落ち着きを取り戻したのを確認した俺とラクスは互いに笑みを見せる。

後はキラの怪我が完治するのを待つだけだ。

 

 

 

 

今後の事は…その後だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。