コンサートを無事に終えてから数日が経ち、ラクスの護衛という任務を果たした筈の俺は、何故か地球には向かわず、現在もプラントに残ってラクスの護衛を続けている。
その理由は…
《引き続きプラントに残り、ラクス・クラインの護衛を続行せよ》
と、軍本部から指示を受けたからだ。
その報せをラクスに伝えると彼女はとても喜んでいた。
何故ならコンサートを終えてからの彼女は、俺が地球に降りると思い、落ち込んでいたからだ。
『ウォン!ウォン!』
『ハロ!ハロ!ナンデヤネン!』
ドルフは俺の隣に並んで歩き、ハロは相変わらずはしゃぎながら跳び跳ねている。
ラクスはというと……
「♪︎♪︎♪︎」
とても上機嫌にお茶を運びながら俺の隣を歩いている。
俺とラクスはキラがいる寝室に着くが…
「あら?あらあら?」
『アラアラァ』
ベッドに寝ていたキラの姿が見当たらない。
周囲を見渡してみると、少し離れた場所にキラの姿が見える。
考え事をしているような表情でキラは景色を眺めており、俺達には気付いていない。
まだキラを探しているラクスの肩をトントンと弱く叩き、彼女と一緒にキラに近付いて声をかける。
「何をしているんだ?」
俺の声に反応し、キラはこっちに顔を向ける。
「ダン…」
俺の名を呼んだキラは再び景色を見ていたが、次第に顔を俯かせる。
「キラの夢は、いつも悲しそうですわね」
今度はラクスが話しかけるとキラは静かに口を開く。
「悲しいよ…。
沢山…人が死んで…。
僕も…沢山…殺した…」
俯きながらラクスに返事をしたキラは、悲しさと辛さに耐えきれずに涙を流す。
「…だが」
そんなキラに今度は俺が声をかける。
「お前が戦ったからこそ、お前の仲間達を守る事ができたんじゃないのか?」
俯いていたキラが少し驚いた顔で俺を見ている。
「…本当に難しいな。戦争というのは…」
景色を見ながら言うと、静かに俺の言葉を聞いていたラクスが口を開く。
「さあ、そろそろお食事にしましょう!それに、キラはまだお休みになっていなくては」
ラクスを中心に俺とキラは彼女に腕を引かれながらクライン邸に引き返す。
『ウォン!ウォン!』
『ミトメタクナイ!ミトメタクナーイ!』
ドルフとハロも俺達に続くように着いてくる。
「大丈夫です。ここはまだ…平和です」
静かに語るラクスの言葉にキラはどう思ったのかは分からない。
しかし、これまでのプラントでの経緯を知っている俺にとっては、とても意味の深い言葉だった。
クライン邸に戻ってから数時間が経ち、外はもう夕方になっており、太陽も半分まで沈んでいる。
俺とキラが夕日に照らされるプラントの景色を眺めていると、いつの間にかラクスが俺達の間に入り込むように並んで景色を見ている。
しばらく三人で景色を見ていると、ラクスが静かに語り出す。
「ずっとこのまま、こうしていられたら良いですわね」
願うように優しく微笑みながら言うラクス。
そんなラクスを俺達は一度見た後、再び景色を見る。
そしてこの先、完治後のキラとの戦いがない事、地球にいるアスランの無事を願いながら、夕日に染まるプラントの景色を眺めていた。