それでは、今回もゆっくりお楽しみ下さい。
ストライクとイージスの模擬戦を行って後日。
キラ、俺、フラガ少佐、リューグ大尉の4人はストライクとイージスのシステムチェックをする為、アークエンジェルのMSデッキに来ている。
「おっ。来たか坊主」
ストライクとイージスの近くに着くと、30代ほどの作業着を着た男性が俺達のところに歩み寄って来る。
「お前さんが坊主の友人の…」
「…ダン・ホシノです」
「そうか。俺はコジロー・マードック。階級は曹長。このアークエンジェルの整備士をやっている」
「よろしく」
互いに名前を教え、握手を交わす。
「マードックさん。ストライクとイージスの状態は?」
「ああ。坊主達がシステムを細かくチェックしてくれれば完了だ」
「わかりました」
「了解だ」
マードック曹長から作業内容を聞いたキラと俺は、フラガ少佐とリューグ大尉を連れ、ストライクとイージスのシステムチェックの作業を始める。
俺達の後ろではアサギ・コードウェル、マユラ・ラバッツ、ジュリ・ウー・ニェンの三人が様子を見ている。
特にマユラ・ラバッツが笑顔で俺を見ており、彼女の方を見れば手を俺に向かって振ってくる。
ストライクとイージスのシステムを大体はチェックした後、キラと俺はそれぞれの愛機のシステムチェックを行う。
その最中もマユラ・ラバッツは笑顔でこっちを見ている為、手を振って答えると彼女は嬉しそうに手を振ってくる。
そんな彼女の視線を気にしながらも、俺はフューチャーのシステムチェックを行う事にした。
空いた時間を利用し、体が怠けないよう鍛練を行ってからMSデッキでフューチャーのチェックをしていると……
「おーい!全クルー集合だってよ!」
マードック曹長が大きい声でクルー達を呼び集める。
フューチャーから降りると、キラもフリーダムから降りており、ラミアス艦長がフラガ少佐、リューグ大尉、カガリ、キサカ一佐を連れてMSデッキにやって来る。
クルー達全員が整列したのを確認したラミアス艦長は話を切り出すように口を開く。
「現在、このオーブへ向け、地球連合軍艦隊が進行中です」
ラミアス艦長の話を聞くクルー達は、かなり驚愕している。それもそのはずだ。
今まで所属していた軍が自分達のいるこのオーブに攻めてこようとしているからな。
「地球軍に与し、共にプラントを討つ道を取らぬというのならば、ザフト支援国を見なす。それが理由です」
動揺するクルー達に対し、ラミアス艦長は引き続き話を再開させる。
「オーブ政府は、あくまで中立の立場を貫くとし、現在も外交努力を継続中ですが、残念ながら、現状の地球軍の対応を見る限りにおいて、戦闘回避の可能性は、非常に低いものと言わざるを得ません」
ラミアス艦長の言う通り、ナチュラルのあの様子では話し合いで解決とは到底思えない。
「オーブは全国民に対し、都市部、及び軍関係施設周辺からの退去を命じ、不測の事態に備えて、防衛態勢に入るとのことです」
オーブの行動は当然の事だ。
万一の場合もある為、少しでも万全な備えはしておいた方がいいからな。
「我々もまた、道を選ばねばなりません。現在アークエンジェルは脱走艦であり、我々自身の立場も定かでない状況にあります」
確かに、あの窮地を逃れる為とはいえ、上からの命令を無視したんだ。
向こうから見れば、脱走艦と思われても無理もないだろう。
…筋書きを書いた奴等は、そうは思っていないだろうがな。
「オーブのこの事態に際し、我々はどうするべきなのか、命ずる者もなく、また私もあなた方に対し、その権限を持ち得ません」
つまり、この後の事をどうするかは自分で考えて決めろ、という事か…。
クルー達は顔を見合わせ、カガリは不安そうな表情でキラと俺を見てくる。
そんなカガリに対し、キラと俺は頷いて答える。
「回避不能となれば、明後日0900、戦闘は開始されます。オーブを守るべく、これと戦うべきなのか。そうではないのか。我々は皆、自信で判断せねばなりません。よってこれを機に、艦を離れようと思う者は、今より速やかに退艦し、オーブ政府の指示に従って、避難して下さい」
ラミアス艦長の言葉にキラ、俺、サイ・アーガイル以外のクルー達は驚愕している。
「私のような頼りない艦長に、ここまで付いてきてくれて、ありがとう」
そんなクルー達にラミアス艦長は一礼をする。
その様子をキラと俺は静かに見守っていた。
アークエンジェルの方針の話し合いを終え、キラと一緒に艦内通路を歩いていると……
「キラ!ダン!」
後ろからカガリが駆け寄ってくる。
「あ、あの…」
「落ち着けカガリ。お前はオーブの獅子の娘だろう。そんな奴が動揺していてどうする」
「え?そ、そうか…そうだな。でも…オーブが戦場になるんだ!…こんな事…」
俺の言葉を聞いて少し落ち着くカガリだが、まだ動揺しているようだ。
「でも正しいと思うよ」
そんなカガリを落ち着かせるように静かに口を開くキラ。
「オーブの執った道。一番大変だとも思うけど」
「キラ…」
不安そうな表情で見ているカガリを励ますようにキラは話を続ける。
「だから、カガリも落ち着いて。出来るかどうか分かんないけど、僕達も守るから…お父さん達が守ろうとしているオーブって国をさ」
「俺達もいる。お前達オーブだけで背負う必要はない」
「…お前ら!!」
俺達の言葉が嬉しかったのか、カガリは涙を流して抱きついてきた為、少し動揺している。
「いや…だからさ…ね」
キラは動揺しながらもカガリを落ち着かせようとするが、彼女が泣き止むには少し時間がかかり、それまで艦内通路を通る乗組員達の視線が少し恥ずかしかった。
数分後。落ち着いたカガリを連れて艦内通路を歩いていると、曲がり角の向こうから話し声が聞こえてくる。
「どうせそうだろうけどさ…でも…だって俺、出来ることなんかないよ…戦うなんて!そんなことは出来る奴がやってくれよ…」
声がする方へ向かってみると、トール・ケーニヒとサイ・アーガイル、そして私服姿で荷物を持っている同年齢の少年が話をしている光景を見かける。
「キラ。あいつは確か、メインブリッジでの話し合いの時にいた…」
「うん。カズイ・バスカーク。彼もへリオポリスで一緒にいた友達なんだ」
「…そうか」
二人と話をしているカズイ・バスカークの服装から見て、どうやら軍を除隊する気らしいな。
「解ってる。向いてないだけだよ。お前には戦争なんてさ。お前、優しいから」
「お前自身が選んで決めたんだ。俺達はお前を責めたりなんかしないよ」
「…サイ…。…トール…」
サイ・アーガイルはカズイ・バスカークの肩に手を置いて話を続ける。
「平和になったら、また会おうな。それまで、生きてろよ」
「落ち着いた時は、連絡くらいよこせよ」
サイ・アーガイルとトール・ケーニヒの言葉が嬉しかったのか、カズイ・バスカークは顔を俯かせている。
「…俺、やっぱり…「だから止めとけって。そういうの。また後悔するぞ」」
「そうそう。俺達のさっきの言葉、台無しにするなよ」
三人のやり取りを隠れて見た後、後ろにいるキラの方を見ると、悲しそうな表情で俯いている。
カガリはそんなキラを心配そうに見ている。
俺はキラを気にかけながらも、トール・ケーニヒ達に見送られながら出口に向かうカズイ・バスカークの後ろ姿を見届ける。
カズイ・バスカークの姿が見えなくなり、トール・ケーニヒとサイ・アーガイルが去った後も、キラ、カガリ、俺の三人はしばらくはその場を動く事はなかった。
2日後。
ラミアス艦長の説明通り、地球軍の艦隊がオーブ付近の海域まで押し寄せて来る。
迎撃の為、キラと俺はそれぞれの愛機のシステムを起動させ、いつでも出撃できるようにコックピットで待機している。
しばらくして爆音が聞こえてくる。
どうやら戦闘が開始されたようだ。
それを合図にアークエンジェルは出航し、MSデッキのハッチが開く。
先にキラが乗るフリーダムが出撃し、俺が乗るフューチャーの番が回り、発進位置へと移動していく。
『フューチャー、発進、どうぞ!』
「ダン・ホシノ、フューチャー、行きます!」
メインブリッジからの発進許可を確認し、フューチャーと共に戦場へと飛び出す。
周囲を見渡すと、すでに戦闘は始まっており、オーブと地球軍が激しい攻防戦を繰り広げている。
地球軍のモビルスーツをよく見ると、ストライクの量産機なのか、頭部以外はストライクとほぼ似ている。
『ダン!』
「ああ。二手に分かれよう!」
『うん!気を付けてね』
「キラもな」
フリーダムと別れ、フューチャーのルプスビームライフルで地球軍の量産機を無力化していく。
地球軍の量産機と交戦するM1アストレイを援護する為、フューチャーの機動力で一気に近付く。
フューチャーの素早さを活かし、腰からラケルタビームサーベルを抜いてM1アストレイと交戦していた敵数機の武装を斬り裂き無力化させる。
更に立体型表示パネルを起動させ、多数の敵機をロックオンし、ハイマット・フルバーストで次々と無力化していく。
キラの奮闘もあり、戦況はほぼこちらが優勢になっている。
フラガ少佐のストライク、リューグ大尉のイージス、そしてアサギ・コードウェル達三人のM1アストレイも奮戦し、地球軍の進攻を食い止めている。
「(やるな…。俺も、負けていられないな)」
俺は心の中で自分を奮い立たせ、更に進攻してくる地球軍の迎撃に集中する。
敵機を大体撃退すると、コックピットに敵機接近の警報が鳴り響く。
メインモニターを見てみると、フリーダムと交戦している3機のモビルスーツの姿が映っている。
その3機は、2門のビーム砲を両肩に背負った緑、鳥のような形をした黒、そして大鎌を持った薄緑と見た事のないモビルスーツだ。
「…敵の新型か」
それを確認し、キラの援護に向かおうとするが、フリーダムと連合の3機が戦闘をしている場所の近くを見て驚愕する。
そこには、避難をしている最中か、家族らしき民間人が軍港に向かって走っているところを見かけたからだ。
フリーダムが連合3機と交戦している為、流れ弾に巻き込まれる可能性がある。
俺はフューチャーのスラスターによる最大速度で彼らの元に急行する。
その最中予想していた通り、戦闘中の流れ弾が彼ら目掛けて飛んでいく…。
しかし、その流れ弾は避難民に直撃する事なく、間一髪のところで間に合い、彼らを守るようにシールドを構え、周囲を警戒する。
そうしている間にオーブの兵士達がこっちに駆け寄って来る。
それを確認した俺は、スピーカーでオーブ兵達に呼びかける。
「早く彼らを連れて行け。急げ!」
俺の声を聞いたオーブ兵は民間人を連れ、その場を離れ、軍港に向けて走っていく。
メインモニターでそれを見届けた後、フリーダムの状況を見てみると、連合3機に苦戦しているようだ。
今度こそ援護に向かう為、キラの元に急行する。
一方向こうは、隙を突くように黒いモビルスーツがフリーダムの前に現れ、ビームを放とうとしている。
そうはさせまいとフューチャーの機動力を活かし、黒いモビルスーツをフリーダムから距離を離すように蹴り飛ばす。
『っ!ダン!』
「大丈夫か?」
『うん。何とかね』
俺の介入に驚いているのか、連合3機は少しの間動きを止めていたが、すぐに立て直して攻撃を仕掛けてこうとした時、上空から連合3機に向かってビームが飛んでくるが、間一髪のところで回避されてしまう。
ビームが飛んできた上空を見上げると……
1機の赤いモビルスーツが連合3機に向けてビームライフルを構えていた。
今回はあの一家を登場させました。
原作を見た方はご存知だと思います。
フューチャーの無双シーンを書くのも難しいですね。
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それでは、次回もお楽しみに。