爆発する工場施設から脱出する俺に続くように、アスランが乗る機体と地球軍が乗る機体も出てくる。
その直後、近くにいるミゲルが乗るジンから通信が来る。
『来たかお前ら』
「気を付けろ、あれに乗っているのはラスティじゃない」
『何っ?』
『向こうの機体には地球軍の士官が乗っている』
地球軍が乗っているモビルスーツは地面に着地し、倒れはしなかったがバランスを保ちながらゆっくりと移動している。起動直後に脱出したため、まだ本格的に機体の調整ができていないのかもしれない。
『…ならあの機体は俺が捕獲する。お前らはそいつを持って先に離脱しろ』
そう言ってミゲル機は、持っているアサルトライフル・重突撃機銃を腰にしまい、サーベル・重斬刀を抜いて地球軍の機体に攻撃をしかける。
「…アスラン、急げ」
『…ああ』
アスランはさっきの事を気にしていたのか、俺の声に少し慌てながらも返事をしてOSの書き換えに取りかかる。
気にしているのはアスランだけじゃない。何故キラがあそこにいるのか、俺も気にしているからだ。
キラ・ヤマト。
俺とアスランの幼年学校時代の親友で、あの頃はよく一緒に学校に行ったり、たまにアスランと一緒にあいつの家で三人で遊んだ事もある。
あれは、本当にキラだったのか…?
その事を考えながらも周囲を警戒し、アスランの機体調整を待っていると、ミゲル機が地球軍のモビルスーツに重斬刀を振り下ろそうとしている。
しかし、地球軍のモビルスーツは斬られそうになる寸前に機体の色を変え、両腕をクロスさせてジンの重斬刀の攻撃を受け止める。
『何ぃ!?』
あまり負傷していない地球軍のモビルスーツを見て驚愕するミゲルは、地球軍の機体から距離を離すようにジンを下げる。
『こいつ!どうなってる!?こいつの装甲は!』
「そいつはフェイズシフトという装甲で出来ている機体だ。展開すればジンのサーベル、ライフルによる物理の攻撃は通用しない」
アスランのモビルスーツの色が灰色から赤へと変わる。どうやらOSの書き換えが終わったみたいだ。
その直後、数発のミサイルが俺とアスランに向かって飛んでくる。俺はソウルの頭部のバルカン砲でそのミサイル撃ち落とし、攻撃を仕掛けたミサイル搭載トラックを撃墜する。
『お前らは早く離脱しろ!いつまでもウロウロするな!』
そうミゲルは言うと、再び地球軍のモビルスーツに攻撃を仕掛ける。
…キラ…
「…行くぞアスラン」
「…ああ。わかった」
俺とアスランはミゲルを残して、奪取したモビルスーツをヴェサリウスに持ち帰るためにヘリオポリスを後にする。
俺とアスランは、ヘリオポリスを脱出し、無事にヴェサリウスに帰還する。
しばらくして、ミゲルの操縦するジンが大破したというアナウンスを聞くが、ミゲルは無事に脱出して離脱しているようだ。
それを聞いたクルーゼ隊長は隊長機であるシグーでヘリオポリスに向けて出撃する。
その間、俺とアスランは奪取した2機のモビルスーツの最終チェックを行っている。
アスランが奪取したモビルスーツはGAT-X303イージス。
ソウルと同じG計画の1機で、高速強襲用としてモビルアーマーに変形できる機体だ。
「外装チェックと充電は終わりました。そちらはどうです?」
「ああ。こっちも今終わったところだ」
俺はソウルの最終チェックを終え一息つく。
アスランの方はまだイージスのチェックが終わってないようだ。いつもなら俺よりも早く終わっている筈だが、きっとキラの事を考えているんだろう。
「……」
チェックを終えた俺は目を閉じ、キラ、アスラン、そして俺の三人で過ごした幼年学校時代の頃を思い出す。
桜が舞う道を三人で歩いた日。
「本当に戦争になんて事はないよ。プラントと地球で…」
友情の証として、俺とアスランが共同で作ったトリィをキラにプレゼントした事。
「避難なんて意味ないと思うけど、キラもその内プラントに来るんだろ?」
「来た時は連絡くれよ。その時は、また三人で一緒に遊ぼうな」
「うん」
そして、あの時交わした再会の約束。
『クルーゼ隊長機帰還。被弾による損傷あり。消火班、救護班はBデッキへ』
昔の頃を思い出していると、ヴェサリウス内にアナウンスが流れ、出撃したクルーゼ隊長のシグーが右腕を損傷した状態で帰還して来る。
「隊長機が腕を…」
隊長機が損傷している事に驚く整備班達。それもそうだ。機体を被弾させる事がないクルーゼ隊長がシグーを負傷させて帰還して来たんだ。
「(いや、キラなら…)」
キラは機体の設計やシステムに関する知識に優れた奴だ。
ミゲルが乗るジンを撃墜したのも、おそらく…。
ミゲルがヴェサリウスに帰還し、俺とアスラン、ミゲル、その他の緑服を含めた5人は、クルーゼ隊長と一緒にミゲルが持ち帰ってきた地球軍のモビルスーツの戦闘データを見て、次の作戦の会議をしている。
「オリジナルのOSについては、君達も既に知っての通りだろう。なのに何故、この機体だけがこんなに動けるか分からん。だが我々がこんなものをこのまま残し、放っておく訳にはいかんという事ははっきりしている」
さらに話を進めるクルーゼ隊長。
「捕獲不可能ならば、今ここで破壊するしかない。戦艦もな。侮らずにかかれよ」
「「はっ!」」
説明を終えたクルーゼ隊長の敬礼に、俺達も返事と共に敬礼で答える。
「ミゲル、オロールは直ちに出撃準備!D装備の許可が出ている」
ヴェサリウスの艦長であるフレドリック・アデス艦長が言うD装備。大量のミサイルが搭載された要塞攻略用の重爆撃装備。
そんな装備をヘリオポリスで使って大丈夫なのか?
「今度こそ完全に息の根を止めてやれ!」
「「はいっ!」」
アデス艦長の指示を受けたミゲルとオロールは出撃準備に取りかかる為、ブリッジを後にする。
「アデス艦長!私も出撃させて下さい!」
アスランが突然、アデス艦長に出撃許可を求める。
きっと地球軍のモビルスーツを操縦しているのがキラかどうかを確かめる為だろう。
「機体が無いだろう。それに君は、あの機体の奪取という重要任務を既に果たした」
クルーゼ隊長の言葉も一理ある。
「ですが…」
しかし、それでも食い下がろうとするアスラン。
「今回は譲れ、アスラン。ミゲル達の悔しさも君達に引けは取らん」
アデス艦長にも言われ、黙ってしまうアスラン。
俺が無言でアスランの肩に手を置くと、観念したのか、ようやく引き下がる。
そんなアスランを連れてブリッジを後にする。
次の指令が来るまで待機する事になり、一旦はアスランと別れ、ヴェサリウスの艦内通路から宇宙を眺めていると、赤い何かがヘリオポリスに向かうのを見かける。
(今のは、まさか…)
俺はすぐにクルーゼ隊長達がいるブリッジへ向かう。
「なにっ!?アスラン・ザラが奪取した機体でだと!?」
アデス艦長の怒号がブリッジに響く。俺の悪い予感が的中してしまったようだ。格納庫にいた連中の話によると、アスランが独断でイージスでヘリオポリスへ向かったらしい。
「呼び戻せ!すぐに帰還命令を!」
「行かせてやれ。データの吸出しは終わっている。かえって面白いかもしれん、地球軍のモビルスーツ同士の戦いというのも…」
慌てているアデス艦長とは違い、面白そうに笑みを見せるクルーゼ隊長。
「君もそう思わないかね、ダン」
「は、はい」
俺を見ているクルーゼ隊長の言葉に少し戸惑いながらも返事をして、アスラン達の帰還を待っていると、悪い知らせがやって来る。
ミゲル達が搭乗するジンのシグナルが全てロストしたらしい。
「(ミゲル達が討たれた…!?まさかキラが…?)」
俺はキラの事を気にしながらも、シグナルがロストしていないアスランを待っていると、ヘリオポリスから多数の救助ポッドが放出される。
その直後、ヘリオポリスが崩壊を始め、無惨な姿に変わっていく…。
「コロニーが…」
その光景を見て驚愕する俺は、アスランと向こうにいるかもしれないキラの無事を心の中で願いながらアスランの帰還を待つ事にした。