機動戦士ガンダムSEED 未来を担う剣 リメイク版   作:Please

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三隻同盟編
ゆれる世界


無事にオーブから脱出して宇宙へ上がった俺達は、クサナギ周辺の巡回にあたっている。

 

 

《ハルD、距離200、ハルC、距離230、軸線よろし》

 

 

フリーダム、フューチャー、ジャスティスの他、M1アストレイの部隊に守られながら、クサナギはドッキング作業を進めていく。

 

 

《全ステーション、結合ランチ、スタンバイ》

 

 

オペレータの放送が流れる中、アークエンジェルが使っていたプラズマブースターをクサナギに取り付け、無事にクサナギのドッキングは完了する。

 

それを確認した俺は、キラとアスランと一緒にクサナギに向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クサナギに到着した俺達は、それぞれの愛機をMSデッキに収納し、ノーマルスーツから着替えた後、クサナギにあるカガリの部屋に向かっている。

 

艦内にいるカガリの様子を見る為だ。

 

前までは、アークエンジェルの作業着を着ていたが、クサナギからオーブのジャケットを用意された為、それを着用している。

 

 

 

 

オーブからの脱出時に見た小さな光。

 

あれは俺達が無事に宇宙へ上がった事を確認したウズミ代表がカグヤ島を自爆させたものらしい。

 

これはクサナギのメンバーから聞いた話の一つであり、もう一つ報せがあるようだ。

 

 

 

 

 

そのもう一つは、カグヤの自爆……

 

ウズミ代表の死を見て、カガリがウズミ代表の名を呼びながら泣き崩れた事だ。

 

今は大分落ち着いてきたという事だが、立ち直るには少し時間がかかるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カガリの部屋の前まで到着し、キラが確認の為に中にいるカガリに呼びかける。

 

 

「カガリ…」

 

 

一声かけたキラは部屋に入り、俺とアスランもキラに続いて部屋に入る。

 

部屋にいるカガリは、まだ制服の姿のまま机に顔を伏せて座っており、そんな彼女にキラは肩に手を置いてもう一度声をかける。

 

 

「カガリ」

 

 

キラの顔を見た瞬間、泣き止んだばかりのカガリは再び、涙を流してキラの胸に飛び込む。

 

突然の事で少し驚くキラだが、泣いているカガリの頭を優しく撫でて慰める。

 

俺とアスランは、そんな二人を見守る事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カガリがしばらく泣いてから数十分後。

 

俺はキラとアスランと一緒に、カガリが着替えを終えるまで、彼女の部屋の前で待機している。

 

 

「カガリ、大丈夫?」

 

 

そろそろと思ったのか、キラは部屋にいるカガリに声をかける。

 

 

「ああ、今行く」

 

 

さっきよりは落ち着いた声で返事をするカガリ。

 

部屋から出て来た彼女を含め、俺達はクサナギのメインブリッジにいるラミアス艦長達と合流する為に移動を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「L4のコロニー群へ?」

 

 

クサナギのメインブリッジに到着すると、ラミアス艦長、フラガ少佐、リューグ大尉、キサカ一佐の四人が今後の事なのか、何かの話し合いをしている最中だった。

 

キラ、俺、アスラン、カガリの四人はメインブリッジに入り、話し合いに参加する。

 

 

「クサナギもアークエンジェルも、当面物資に不安はないが、無限ではない。特に水は、すぐに問題なる。L4のコロニー群は、開戦の頃から破損し、次々と放棄されて今では無人だが、水庭としては使えよう」

 

 

キサカ一佐の説明にも一理ある。

 

水はよく使われる事が多いからな。

 

 

「なんだか思い出しちゃうわね」

 

 

水の補給の話で何かを思い出すように呟くラミアス艦長。

 

 

「大丈夫さ。ユニウスセブンとは違うよ」

 

 

どうやらラミアス艦長は、ユニウスセブンでの事を思い出していたらしい。

 

そんなラミアス艦長を、フラガ少佐が安心させるように話しかける。

 

L4の話に心当たりがあり、それを話すべきか考えていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「L4にはまだ、稼働しているコロニーもいくつかある」

 

 

アスランの声が聞こえた為、俺達はアスランの方に視線を向ける。

 

 

「だいぶ前だが、不審な一団がここを根城にしているという情報があって、ザフトは調査したことがあるんだ」

 

 

アスランが説明を始めた為、俺もそれに便乗して話を切り出す。

 

 

「住人は全員避難して誰も居ないが、設備を稼動させたまま放棄されたコロニーが数基あると聞いた事がある」

 

 

説明を終えた後、それを聞いて少しの間考えるキラ達。

 

 

「じゃあ、決まりですね」

 

「うん」

 

 

俺とアスランに賛同するキラとカガリ。

 

それに相槌を打つメンバー達。

 

これで、今後の方針は決まったようだな。

 

 

 

 

 

「…しかし、本当にいいのか?ダンはともかく、君の方は」

 

 

しかし、そこへフラガ少佐がアスランに問いかけるように話しかける。

 

 

「無論君だけじゃない。もう一人の彼もだが」

 

 

もう一人というのは、おそらくディアッカの事だろう。

 

フラガ少佐の言葉の意味に気付いた俺は、あえて口を挟まず、そのまま様子を見る事にした。

 

 

「少佐…」

 

「オーブでの戦闘は俺だって見てるし、状況が状況だしな。着ている軍服に拘る気はないが…」

 

 

心配そうにフラガ少佐に声をかけるラミアス艦長だが、それでも少佐は確認するように話を続ける。

 

 

「…」

 

 

アスランもフラガ少佐の言葉の意味に気付いているようだ。

 

 

「だが俺達はこの先、状況次第では、ザフトと戦闘になることだってあるんだぜ。オーブの時とは違う。そこまでの、覚悟はあるのか?君はパトリック・ザラの息子なんだろ?」

 

「誰の子だって関係ないじゃないか!アスランは…」

 

 

アスランを気にかけてなのか、さっきまで話を聞いていたカガリが、フラガ少佐を止めるように口を挟む。

 

そんなカガリをフラガ少佐は真剣な表情で見る。

 

 

「軍人が自軍を抜けるってのは、君が思ってるより、ずっと大変なことなんだよ。ましてやそのトップに居るのが、自分の父親じゃぁ」

 

 

フラガ少佐の言葉にアスランは顔を伏せ、キラも心配そうにアスランを見ている。

 

俺もアスランを気にかけながらも、真剣な表情でフラガ少佐の話を聞く。

 

 

「自軍の大儀を信じてなきゃ、戦争なんて出来ないんだ。それがひっくり返るんだぞ?そう簡単に行くか?彼はキラと違って、ザフトの正規の軍人だろ?」

 

 

真剣に話をするフラガ少佐に押され、ついに押し黙るカガリ。

 

 

「…」

 

 

アスランの方を見ると、まだ顔を伏せたままだった。

 

 

「悪いんだけどな、一緒に戦うんなら、当てにしたい。いいのか?どうなんだ?」

 

 

ブリッジ内に沈黙が流れる。

 

 

 

 

しばらくして、その沈黙を破るようにアスランが静かに口を開く。

 

 

「オーブで、いや、プラントでも地球でも、見て聞いて、思ったことは沢山あります。それが間違ってるのか正しいのか、何が解ったのか解っていないのか、それすら、今の俺にはよく分かりません」

 

 

フラガ少佐の問いに答えるように語るアスランの話を、俺達は静かに聞いている。

 

 

「ただ、自分が願っている世界は、あなた方と同じだと、今はそう感じています」

 

 

アスランの返答を聞いたフラガ少佐は、納得したように笑みを見せる。

 

 

「…しっかりしてるねぇ君も、ダンも。キラとは大違いだ」

 

「…昔からね」

 

 

キラは少し驚愕した後、幼年学校の頃を思い出したのか、俺とアスランに対して優しく笑みを見せる。

 

 

「ウズミ代表とオーブが命を懸けて俺達に託したものだ。途中で投げ出す訳にはいかない」

 

「うん」

 

「そうだな」

 

 

俺の言葉に、キラとアスランが賛同するように返事をする。

 

 

「こんなたった2隻で、はっきり言って、ほとんど不可能に近い」

 

「そうね」

 

 

フラガ少佐の話に相槌を打つラミアス艦長。

 

フラガ少佐の言う通り、2隻だけで、ザフトと地球軍を相手にするのは難しい。

 

おそらく途中で命を落とす可能性も高いだろう。

 

しかし、キラも俺も、そしてここにいる全員も、やらないで後悔する事だけはしないだろう。

 

 

 

 

「でも、いいんだな?」

 

「信じましょう。小さくても強い灯は消えないんでしょ?」

 

「その思いは、ここにいる全員が持っている。そうでしょう?」

 

 

フラガ少佐の言葉に、キラと俺が返答をすると、フラガ少佐とラミアス艦長は納得したように笑みを見せる。

 

 

「プラントにも同じように考えている人は居る」

 

 

プラントにいる俺達と同じ考えの人物…。

 

おそらく、“彼女”だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラクス?」

 

 

俺の意思を察したのか、キラがラクスの名を口にする。

 

 

「ああ」

 

「あのピンクのお姫様?」

 

 

キラの質問に答えるアスラン。

 

フラガ少佐も、ラクスの事を思い出したように話に加わる。

 

 

「プラントの歌姫で、アスランの婚約者だ」

 

 

キラとアークエンジェルのメンバーは、あの時にラクスと会っているので知っているだろう。

 

しかし、カガリとキサカ一佐達はラクスを知らない為、俺は改めて彼女の事を簡単に説明する。

 

それを聞いたカガリは、かなり驚愕した表情でアスランを見ている。

 

 

「彼女は今追われている。反逆者として。俺の父に…」

 

 

顔を伏せてラクスの現状を説明するアスラン。

 

キラと俺が、ラクスからフリーダムとフューチャーを託された時から思っていたが、彼女の事をアスランから聞かされた俺の心は複雑だった。

 

 

 

 

ラクス……

 

無事でいてくれればいいが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クサナギのメインブリッジでの話し合いからしばらく経ち、俺はキラと一緒に、MSデッキでM1アストレイの調整を手伝っている。

 

この先の戦闘に備え、キラと俺はそれぞれの場所でクサナギ所属のパイロット達にM1アストレイに関する色々な説明を行っている。

 

 

「…つまり、相手が量産機一機の場合でも、三機一組で応戦するようにしろ。そうすれば生存できる可能性が高いだろう」

 

「「「はい」」」

 

「他に質問は?」

 

 

大体は説明した為、パイロット達からの質問はないようだ。

 

 

「それじゃあ、さっき説明した事を忘れないように」

 

 

説明を終え、パイロット達と別れた俺は、同じように説明を終えたキラのところへ向かう途中……

 

 

 

 

「あ。お~い、君~!」

 

 

聞き覚えのある声がする方を見ると、M1のコックピット内で、こっちに向かって手を振っているマユラ・ラバッツの姿を見つける。

 

俺は小さくため息を吐いた後、マユラ・ラバッツが乗っているM1へと向かう。

 

 

「…何だ?俺は忙しいんだが」

 

「皆への説明も終わったのに?」

 

「生憎、この後アークエンジェルに戻って、色々とやる事があるんだ」

 

「色々って?」

 

「あまり人のプライベートに関わるのは感心せんぞ」

 

「あう」

 

 

追求してくるマユラ・ラバッツのヘルメットの額部分を軽く突く。

 

 

「…じゃあな」

 

 

マユラ・ラバッツと別れ、キラと合流した後、アスランのいる待機室に向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が待機室に着くと、アスランは一人で考え事をしているところを目撃する。

 

そんなアスランにキラが声をかける。

 

 

「アスラン!」

 

 

キラの声に気付いたアスランが俺達の方に顔を向ける。

 

 

「そろそろアークエンジェルに戻るぞ。M1のチェックも大体済んだからな」

 

「どっちに居ても同じだけど、こっちM1でいっぱいだし」

 

 

俺とキラの話を聞いたアスランは、再び考え事をするように少し顔を伏せる。

 

俺達がアスランの様子を気にしていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラ!」

 

 

声のする方を見ると、待機室の出入口前にカガリの姿があった。

 

 

「ちょっと…いいか?」

 

 

大分落ち着きを取り戻している様子のカガリ。

 

しかし、今の彼女は何かを話したいが、躊躇っているようにも見える。

 

 

「…ダン…」

 

 

そんなカガリを見たアスランは、俺の側に来て話しかけてくる。

 

まあ、大体は分かっている。

 

 

「先に行っているぞ、キラ」

 

「ちょっ、ちょっと…」

 

 

俺はキラに一声かけ、アスランと一緒に待機室を後にしようとしたが、カガリに呼び止められる。

 

 

「いいから…二人も居ろって…。いや…居てくれ…」

 

 

カガリの様子を気にしているアスランに代わり、俺が無言で首を縦に振って答える。

 

それを確認したカガリは、俺達の横を通ってキラに近寄る。

 

 

「どうしたの?カガリ」

 

 

いつもの様子でカガリに問いかけるキラ。

 

 

「…これ…」

 

 

カガリはポケットから写真を取り出し、それをキラに手渡す。

 

 

「写真?誰の?」

 

 

キラがその写真に目を通し、俺とアスランもその写真を見る為、キラの側に寄る。

 

その写真には、二児の赤ん坊を幸せそうに微笑んで抱き抱えいる、一人の若い女性が写っている。

 

 

「…裏…」

 

 

カガリが写真の裏を見るように勧めてきた為、言われた通りに写真の裏を見てみると……

 

 

「え!?」

 

「「っ!?」」

 

 

キラだけでなく、俺とアスランも驚愕する。

 

何故なら、写真の裏には、二児の赤ん坊のものなのか、二つの名前がローマ字で書かれていたからだ。

 

 

「KAGARI…え!?」

 

 

その一つの名前をキラが読み、俺達は再び驚愕した表情でカガリを見る。

 

俯きながらもカガリは静かに口を開く。

 

 

「…クサナギが発進する時…お父様から、渡されたんだ…」

 

 

どうやら写真はウズミ代表から渡されたものらしい。

 

カガリの名前だけでも驚いているが、もう一つの名前を見て更に驚愕する。

 

何故なら、そのもう一つには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KIRA……

 

つまり、ローマ字でキラの名前が書かれていたからだ。

 

 

 

 

「お前は…一人じゃない…兄妹も居るって!」

 

 

俯いていたカガリが顔を上げ、今にも泣きそうな表情でキラに兄妹の事を伝えると、再び俯いて隣にいるアスランの服の袖を掴む。

 

俺達はそんなカガリを見た後、キラの方を見てみると、突然の事で動揺している。

 

 

「…どういうことだ…?」

 

「そんな…僕にだって…そんな…」

 

 

カガリに問われたキラはまだ動揺しており、カガリは複雑そうな表情で俯く。

 

 

「…二人の名前が書いてあるという事は…」

 

「…まさか、双子…?」

 

 

俺がキラの持つ写真に関して考え、アスランがそれに答えるように発言する。

 

待機室内に沈黙が流れる。

 

しばらくして、それを破るようにキラが口を開く。

 

 

「とにかく…でも…これだけじゃあ、全然わからないよ」

 

「この写真の他に手掛かりがあればいいが…」

 

「この赤ちゃんを抱いてる人は?」

 

 

アスランの質問に対し、カガリは俯いたまま首を横に振る。

 

どうやらカガリにも分からないようだ。

 

 

「…お前と兄妹って…じゃあ私は…」

 

 

カガリは俯きながら涙を流している。

 

無理もない。

ウズミ代表に実の娘のように大切に育てられたんだ。

 

そんなカガリにキラは優しく声をかける。

 

 

「今は考えてもしょうがないよ、カガリ。それにそうだとしても、カガリのお父さんは、ウズミさんだよ」

 

「キラ…」

 

 

キラの優しさが嬉しかったのか、カガリの目は潤んでいた。

 

とにかく、キラのおかげで一先ずは安心だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、カガリが落ち着きを取り戻した為、俺はキラとアスランの二人と一緒に、クサナギのMSデッキでそれぞれの愛機の発進準備を行っている。

 

その最中、コックピット内から待機室の方を見てみると、落ち着いたとはいえ、少し気分が優れないカガリが俺達の方を見ている。

 

 

『キラ』

 

 

カガリの様子を見たアスランが通信でキラに話しかける。

 

 

『付いててやった方がよくないか?』

 

『…いや、一緒に居ると返って考え込んじゃいそうだし』

 

 

アスランの問いに、そう答えるキラ。

 

キラの意見も一理ある。

キラとカガリが兄妹である事が事実とはいえ、それを突然告げられたキラも悩んでいるだろう。

 

今キラをクサナギに残し、カガリと一緒にいさせても、何の解決にもならんだろう。

 

そう思った俺はキラに相槌を打つようにアスランに声をかける。

 

 

「…キラの言う通りだ。今はそっとしておいた方がいい」

 

『…そうか…』

 

 

一応納得するアスランだが、まだカガリの様子が気になる感じだ。

 

発進準備を終えた後、フリーダム、フューチャー、ジャスティスの順番でクサナギから発進し、アークエンジェルへと向かう。

 

 

 

 

『キラ』

 

 

その最中、アスランがキラに通信で話しかける。

 

 

『アークエンジェルへ戻ったら、シャトルを一機、借りられるか?』

 

『アスラン?』

 

 

シャトルを…アスラン、まさか……

 

 

 

 

『俺は一度…プラントに戻る』

 

『え!?』

 

「何?」

 

 

プラントに戻ると言い出すアスランに対し、キラと俺は驚愕している。

 

 

『父と一度、ちゃんと話がしたい。やっぱり…』

 

 

やはり、パトリック・ザラと直接話をする為か…。

 

シャトルは万一の場合、ジャスティスを奪われない為の対策だろう。

 

ジャスティスはフリーダムとフューチャーと同様に核で動いているからな。

 

 

『アスラン…でも…』

 

「今プラントに戻るのは危険だ。お前はフリーダムとフューチャーの奪還命令を受けているだろう。そんな中手ぶらで、しかもジャスティス無しで戻ってみろ。どんな罰を与えられるか…」

 

 

そう。アスランはフリーダムとフューチャーの奪還の他、パイロット、それに関係する全ての人物、施設の排除をパトリック・ザラから言い渡されている。

 

だが、アスランはそれをまだ成し遂げていない。

 

あのパトリック・ザラの事だ。

息子のアスランでも容赦なく罰するかもしれない。

 

 

『それは分かってる!でも…俺の父なんだ』

 

 

俺の説明を聞いても、アスランは家族として、パトリック・ザラを信じたいようだ。

 

そのアスランの言葉に、俺達はこれ以上何も言えなかった。

 

少し間を空けてからキラがアスランに声をかける。

 

 

『…解った。マリューさん達に話すよ』

 

「キラ!」

 

『仕方ないよダン。アスランの性格は君も知っているだろ?』

 

 

それを聞き、よく考えてみればキラの言う通りだ。

 

アスランの性格は昔から知っている。

一度決めた事は曲げず、最後まで貫こうとする。

それがアスランだ。

 

 

「…アスラン、お前の事だ。どうせダメだと言っても聞かないだろう。なら好きにしろ」

 

『すまない…』

 

 

キラに説得を受けた俺は、やむを得ずアスランの要望をキラと同様に認める。

 

それに対してアスランは、キラと俺に詫びの言葉をかけてくる。

 

通信での会話を終え、アークエンジェルに戻った俺達は、ラミアス艦長達に事情を説明し、アスランがプラントへ向かう為の準備に取りかかる事にした。


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