ニコルとの再会を果たし、色々と語り合った後、アスラン達と別れた俺はラクスの様子を見る為、彼女が休んでいる部屋の前に来ている。
「ラクス。俺だ、ダンだ」
確認の為に声をかけると、ドアが開かれ、ラクスが現れる。
「ダン…」
まだ万全という様子ではないが、泣いていた時よりはマシになっているようだ。
『ウォン、ウォン』
『テヤンデー。テヤンデー』
覚えのある機械音が聞こえ、ラクスの後ろを見ると、ドルフとピンクハロが俺達のところに近付いてくるのが見えた。
俺とラクスの近くまで来たドルフは足元で嬉しそうに尻尾を振りながら見上げ、ハロもドルフと同じように喜んでいるのか、俺達の近くでピョンピョンと跳び跳ねている。
こいつらも無事で良かった…。
ドルフ達の無事も確認し、ラクス達と一緒に部屋に入った俺は、彼女に声をかける。
「ラクス、もう大丈夫なのかい?」
「はい。ご心配をおかけしましたわね」
ラクスは大丈夫と言っているが、やっぱり少し無理をして笑顔を作っているように見える。
『ダン、聞こえる?』
そんな彼女を気にかけていると、部屋に設置されている通信端末からキラの声が聞こえてくる。
通信端末を操作すると、モニターにキラの姿が映し出される。
「どうした?」
『これからマリューさん達と今後について話し合うんだけど、ダンもどうかな?』
「大丈夫だ。場所はどこだ?」
『アークエンジェルのメインブリッジだよ。それじゃあ、また後で』
「ああ。後でな」
キラの会話を終え、通信端末の電源を切る。
「ダン…」
話を聞いていたラクスが俺の服の裾を掴みながら呼びかけてくる。
「その、私も…」
様子から見て、ラクスも一緒にアークエンジェルへ行きたいようだ。
彼女の調子がまだ万全じゃないのが気になるが……
「…わかった。一緒に行こうか」
「っ!はい!」
ラクスの返事を聞いた俺は、彼女と一緒にアークエンジェルに向かった。
その間、隣にいたラクスは俺の手を握ってくる。
それは離れていた寂しさを埋める為なのかはわからないが、俺はそれを優しく握り返す事で答える。
アークエンジェルの出入口に着くまで間、俺達は互いの手を決して離さなかった。
俺とラクスがアークエンジェルのメインブリッジに到着した時には、キラとラミアス艦長、カガリ、リューグ大尉、ミリアリア、キサカ一佐が既にメインブリッジに着いていた。
「…これで全員か?」
「ううん。後はムウさんとバルトフェルドさんだけなんだけど…」
メインブリッジの出入口の方を見るが、フラガ少佐達が来る様子がない。
「全く、少佐達は何をしているんだか…」
「仕方ないわね。私達だけで始めましょうか」
呆れるようなリューグ大尉の言葉にラミアス艦長が先に始めるようすすめてきた為、俺達だけで話し合いを行う事にした。
話し合いを始めてから10分後……
フラガ少佐とバルトフェルド隊長がメインブリッジに入ってくる。
それを確認した後、ラクスが話を再開させる。
「当面の問題はやはり月でしょうか?現在地球軍は奪還したビクトリアから次々と部隊を送ってきていると聞いています」
「プラント総攻撃というつもりなのかしらね?」
ラクスの話を聞いて自分の予想を口にするラミアス艦長。
「だが、その総攻撃も一度は失敗している。さすがに同じ手を使うとは…」
実際に地球軍の迎撃に参加した俺が発言すると、バルトフェルド隊長がそれに答えるに口を開く。
「どうだろうねぇ。元々それがやりたくて仕方ない連中がいっぱい居るようだからな。“青き清浄なる世界”の為に?」
“青き清浄なる世界”という言葉を聞いたラミアス艦長は辛そうな表情で顔を伏せる。
それに気付いたフラガ少佐はラミアス艦長を気遣うよにバルトフェルド隊長に話しかける。
「よせよ!」
「僕が言ってるわけじゃないよ」
「ま、事実だけどな」
フラガ少佐の納得したような発言を聞き、バルトフェルド隊長は話を再開させる。
「なんでコーディネイターを討つのが、青き清浄なる世界の為なんだか。そもそも、その青き清浄なる世界ってのが何なんだか知らんが、プラントとしては、そんな訳の分からん理由で討たれるのは堪らんさ」
話を聞いていると、いつの間にかラクスが俺の肩に手を置いている事に気付く。
そしてカガリが話の途中でメインブリッジを後にするが、気にはしなかった。
おそらくアスランのところに向かったんだろう。
「しかし、プラントもナチュラルなんか既に邪魔者だっていう風潮だしな、トップは。当然防戦し反撃に出る。二度とそんな事のないようにってね。それがどこまで続くんだか」
「酷い時代よね」
討たれたから討ち返すという現状にラミアス艦長は失望するように発言する。
しばらく沈黙が流れるが、それを打ち破るようにラクスが口を開く。
「でもそうしてしまうのも、また止めるのも私達、人なのです。いつの時代も、私達と同じ想いの人も沢山居るのです。創りたいと思いますわね、そうでない時代を…」
たとえ過ちを犯しても、それに気付き、やり直そうとする者達は、少なくとも必ずいると信じているように、俺に向けて優しい笑顔を見せて自分の思いを伝えるラクス。
「…ああ。俺も、生きている間には必ず見てみたい」
そんなラクスに答えるように、俺も自分の思っている事を彼女に伝える。
それを聞いたラクスの笑顔はとても嬉しそうに見えた。
メインブリッジでしばらく話し合った後、アークエンジェル、クサナギ、エターナルの最終調整を行っている最中、俺はキラとアスランと一緒にアークエンジェルの待合室でメインブリッジにいるラミアス艦長と通信端末で話をしている。
「エターナルが専用運用艦だというのなら、フリーダムとフューチャー、ジャスティスはそちらへ配備した方がいいでしょうね。こちらはストライク、イージス、バスターの三機で」
「分かりました。では僕達はエターナルへ移乗します」
ラミアス艦長の言う通り、エターナルに移った方が整備も補給もかなり万全になるからな。
キラとラミアス艦長のやり取りが終わり、俺達は愛機と一緒にエターナルに移動を始めようとした時………
『総員、第一戦闘配備!繰り返す、総員、第一戦闘配備!』
突然アークエンジェルの艦内に警報が鳴り響く。
「ダン!アスラン!」
「行くぞ!」
「ああ!」
警報を聞いたキラ、俺、アスランの三人は急いで愛機に乗り込んでシステムを起動させる。
出撃準備を終え、フューチャーのコックピット内で待機していると、突然激しい揺れが発生する。
おそらく敵からの攻撃だろう。
迎撃の為、アークエンジェルとクサナギが港の外に出るが、エターナルはまだ最終調整を終わっていない為、まだ出撃する事はできない。
『こちらは地球連合軍、宇宙戦闘艦ドミニオン。アークエンジェル聞こえるか?』
通信回線から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
キラとアークエンジェルのメンバーも知り合いの声なのか、かなり驚愕したような声をあげる。
『本艦は反乱艦である貴艦に対し、即時の無条件降伏を要求する』
間違いない。
この声は、ラクスが行方不明になっていた時に出くわしたアークエンジェルの乗組員の女だ。
いつの間にアークエンジェルのメンバーと別行動を取っていたんだ?
『ナタル…』
『バジルール中尉…』
ナタル・バジルール。向こうにいる女の名前か。
『この命令に従わない場合は貴艦を撃破する』
『艦長、敵艦の光学映像です』
メインブリッジだけなく、俺達パイロットが搭乗している機体のモニターにも映像が映し出され、それを見た俺達は驚きを隠せずにいた。
『アークエンジェル!?』
これがドミニオン……
まるでアークエンジェルだな。
『お久しぶりです、ラミアス艦長。このような形でお会いすることになって、残念です』
『…そうね』
『アラスカでのことは自分も聞いています。ですが、どうかこのまま降伏し、軍上層部ともう一度話を。私も及ばずながら弁護致します』
ナタル・バジルールは、さっきの堂々とした口調とは異なり、知り合いであるラミアス艦長に対し、優しさを含めた口調で降伏を呼びかけてくる。
『…ありがとう。でもそれは出来ないわ!アラスカの事だけではないの。私達は、地球軍そのものに対して疑念があるのよ。よって降伏、復隊はありません!』
ラミアス艦長が決意を固めた返答で降伏宣言を断ると、突然男の笑い声が聞こえてくる。
『言って解ればこの世に争いなんて無くなります。解らないから敵になるんでしょう?そして敵は、討たねば』
『アズラエル理事…!』
アズラエル?
まさか、ムルタ・アズラエルがこの戦線に来ているというのか…!?
『カラミティ、フォビドゥン、レイダー、発進です。不沈艦アークエンジェル、今日こそ沈めて差し上げる』
カラミティ、フォビドゥン、レイダー。
それがあの3機のモビルスーツの名称らしいな。
『キラ君!ダン君!ムウ!』
『了解!出撃します!』
ラミアス艦長のかけ声を合図にキラは返答し、フリーダムでアークエンジェルから飛び立つ。
『フューチャー、発進どうぞ!』
「ダン・ホシノ、フューチャー、行きます!」
フリーダムの発進から少しして、メインブリッジからの合図が出た為、フューチャーを出撃させる。
戦闘中域に突入すると、向こうからドミニオンがこっちに近付いて来る。
『ダン、アスラン、あの3機だ!』
「ああ。油断はするな」
『わかってる。行くぞ!』
ドミニオンから出てきた例の3機が現れ、向こうから砲撃を仕掛けてきた為、それを回避して応戦を開始する。
そんな俺達に続くようにストライク、イージス、バスターもアークエンジェルに迫る敵の量産型モビルスーツ・ストライクダガーを次々と撃破していく。
その最中、アークエンジェルの次に港から出たクサナギが進行を停止させる。
いや、よく見ると何かケーブルのようなものが絡んでいるようだ。
それに気付いたのか、鎌持ちモビルスーツがクサナギの方に向けて飛んでいく。
『クサナギ!』
「ちっ!アスラン、ここは任せろ。お前はクサナギの方に向かえ!」
『ああ、わかった!』
俺の呼び声に答えたアスランはクサナギへと急行する。
それを確認し、敵モビルスーツ2機と交戦していると、ドミニオンから発射された多数のミサイルがアークエンジェルに迫っているのを目撃する。
敵の隙を突いてフューチャーとフリーダムのプラズマビーム砲で全て撃ち落とすと、フリーダムがドミニオンに向かって突撃する。
「キラ!」
フリーダムを追いかけようとするが、敵モビルスーツに行く手を阻まれた為、応戦に集中する。
そうしている間にも、フリーダムはドミニオンの集中砲火の回避に専念していたが、そこに黒いモビルスーツが介入した為、徐々に追い込まれていく。
『キラ!』
『キラ君!』
「くそぉっ!」
それぞれの戦闘で手が離せず、フリーダムの援護に向かう事ができない。
そんな俺達が目にしたのは、ドミニオンから放たれた無数のミサイルがフリーダムに迫っている光景だった。
相変わらずの遅い更新ですが、少しずつ仕上げていこうと思います。
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それでは、次回もお楽しみに。