連合三機との激闘を繰り広げている最中、クルーゼ隊に所属していた頃に乗艦していたヴェサリウスを先頭にザフトの戦艦数隻がこっちに向かって進軍してくる。
迎撃の為、クサナギとエターナルが動き、ザフトと交戦を開始する。
ジャスティスは黒いモビルスーツ、フリーダムは緑のモビルスーツ、フューチャーは鎌持ちのモビルスーツを相手に戦っている中、ザフトのジン部隊とクサナギのM1アストレイ部隊が戦闘を行っている光景が見えた。
以前俺が教えた通り、3機1組でジン一機に対処している為、被害は最小限に抑えているが、いつまでも持ち堪えられるか分からない。
『まずいぞ!M1だけじゃジンに対抗しきれない!追い込まれるぞ!』
少し焦りを見せるように通信で話しかけてくるアスラン。
「分かってる!だが……」
アスランの言う事も分かるが、連合三機を放っておく訳にはいかない。
しかし、アスランからの通信を聞いている筈なのに、キラから返事が聞こえないのが気になる。
フリーダムの動きはいつも通りだから、問題ないと思うが……
キラの事も気になるが、今の状況を打開する為に戦闘に集中する。
しばらく戦闘を続けていると……
『お願い、アークエンジェル!!』
突然通信から少女の声が聞こえてくる。
どうやら国際救難チャンネルのようだ。
少女からの通信で状況は若干混乱しているが、俺は連合三機との戦闘に集中しながら様子を伺う事にした。
『フレイです!フレイ・アルスター!』
『っ!!フレイ!?』
その戦闘の最中、一緒に連合三機と交戦していたフリーダムが少女の名前を聞いた瞬間、動きを止めてしまう。
「っ!!」
『キラ!?』
突然動きを止めたフリーダムに俺とアスランが驚愕する。
そこへフリーダムの隙を突くように黒いモビルスーツが背後からエネルギー砲を放ち、フリーダムはその攻撃をまともに受けてしまう。
『ぐぅっ!』
『キラ!』
被弾したフリーダムを見て救援に向かおうとするジャスティスだが、それを妨害するように緑のモビルスーツが高ビーム砲を放とうとしている。
鎌持ちのモビルスーツと交戦中だった俺は、隙を見てルプスビームライフルによるビーム攻撃を放って阻止する。
俺は通信回線を開き、キラに呼びかける。
「どうしたキラ!しっかりしろ!」
『キラ!!』
俺とアスランが通信で呼びかけてもキラからの返事はなく、フリーダムがそこから動く様子がない。
その時、コックピットのモニターに救命ポットの姿が表示される。
こっちと同じように気付いたのか、緑のモビルスーツが救命ポットの方に向かうように行動を始める。
それに気付いたフリーダムは焦るように緑のモビルスーツの後を追う。
今のキラは混乱している可能性が高い。
そう思った俺は再び通信でキラを呼び止めようとした時……
『か、鍵を持ってるわ!私……戦争を終わらせるための鍵!だから…だからお願い!』
鍵…一体何の事だ?
フレイ・アルスターという少女の言葉について心の中で少し考えていると、黒いモビルスーツと鎌持ちがフリーダムに攻撃しようとしている。
しかし、救命ポットしか見ていないのか、フリーダムはそれに気付いていない。
「キラ!おいキラ返事をしろ!聞いてるのか!」
通信で再びキラに呼びかけるもやはり返事がなく、その最中にフリーダムは黒いモビルスーツと鎌持ちからの攻撃を受けて頭部を破壊されてしまう。
連合二機の攻撃を受けてフリーダムが行動を止めたのと同時に、緑のモビルスーツがフレイ・アルスターが乗っている救命ポットを掴んで回収してしまう。
そこへ俺達から少し離れた位置から信号弾の光を見つける。
どうやらアークエンジェルから発射された信号弾のようだ。
とにかく、信号弾が放たれたとなると、一旦ここは撤退するしかないようだな……。
『フレイ!フレーイ!!』
しかし、アークエンジェルから信号弾が発射されたにも関わらず、フリーダムは緑のモビルスーツ…というよりはそいつが回収している救命ポットに再び向かおうとしている。
黒いモビルスーツが射撃攻撃で妨害してくるが、フリーダムはそれを回避しながらドミニオンに向かう緑のモビルスーツに突っ込んでいく。
『ダン!』
「ああ。分かってる」
アスランの呼びかけに答えた俺は、フューチャーの機動力を活かし、敵からの集中放火を回避しているフリーダムの腕を掴み、すぐに敵の射程範囲から離れる。
「この馬鹿が!周りをよく見ろ!」
キラの行動を指摘するように通信で怒鳴った後、フリーダムを抱えてフューチャーの機動力によるスピードで戦場から離れる。
黒いモビルスーツが追撃してくるのをコックピットのモニターで確認するが、ジャスティスがバッセルビームブーメランを抜いて黒いモビルスーツに向けて投げて攻撃する事で援護をしてくれる。
しかし、黒いモビルスーツにジャスティスの攻撃を回避されてしまうが、ビームブーメランであるため、円を描くように曲がり、黒いモビルスーツの右脚を斬り裂く。
黒いモビルスーツの動きが一瞬止まった隙を見て、ジャスティスもフューチャーとフリーダムに追い付いてくる。
『しっかりしろキラ!その状態で一人で敵艦へ突っ込む気か!』
俺と同じように、アスランが通信でキラの行動を問い詰めいると、今度は鎌持ちが鎌を構えながらこっちに向かって突っ込んでくる。
フリーダムをジャスティスに任せ、ラケルタビームサーベルで鎌持ちの攻撃を受け止め、以前のようにシールドを手放して逆手でもう1本のビームサーベルを抜いて攻撃するが、相手もこっちの戦法を知っているのか後退して回避される。
しかし、あくまでも撤退が目的であるため、後退した鎌持ちに向けてクスィフィアスレール砲を撃ち込んで距離を離す事に成功する。
鎌持ちを退けた後、超高インパルス長射程狙撃ライフルによる射撃攻撃で殿を勤めるバスターの援護を借り、再び撤退を開始する。
『僕が傷つけた…僕が守ってあげなくちゃならない人なんだ!』
独り言を呟くように語るキラ。
フレイ・アルスターという少女とは深い関わりがあるようだな…。
すでに緑のモビルスーツによってドミニオンに連れて行かれている以上、もう手の出しようがない。
懲りずにプラズマ砲を放ちながら追撃してくる鎌持ちをビームライフルで応戦しながらアークエンジェルを目指す。
バスターとアークエンジェルの援護射撃もあり、連合二機の追撃を振り切り、アークエンジェルへの着艦に成功する。
エターナルとクサナギは既に撤退しており、アークエンジェルが通行する辺りはエターナルとクサナギの砲撃で被弾したヴェサリウスが見える。
他のナスカ級二隻は旗艦であるヴェサリウスが被弾して混乱しているのか妨害してくる様子はないようだ。
ヴェサリウスの横を通行する途中、俺はヴェサリウスに向けて敬礼をする。
今は敵対しているとはいえ、クルーゼ隊に所属していた時は共に任務を遂行してきた戦艦だ。それなりに思い出もある。
アデス艦長…ありがとうございました。
その心の声に応えるように、ヴェサリウスのメインブリッジからアデス艦長がこっちに向けて敬礼をしている姿が見えた気がした。
俺達が通行したのを見届けたように、ヴェサリウスのあちこちが爆発し、そして大爆発を起こして撃沈する。
ヴェサリウスの最期を見届けた後、アークエンジェルと一緒に先に撤退したエターナルとクサナギに追い付くためにスペースコロニー・メンデルを後にした。
ザフトと地球軍の挟撃を逃れ、エターナルのモビルスーツデッキにそれぞれの愛機を収納したキラ、アスラン、そして俺の三人は現在、エターナルの待合室で一時的に休息を取っている。
「キラ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。でも…ごめん」
アスランの気遣いに答えるキラだが、どう見ても調子は良くなさそうだ。
「ダンもごめん。足引っ張ったりして…」
「…もういい。気にするな」
俺の返事を聞いたキラは一瞬だけ辛そうな表情をした後、気を失い倒れてしまう。
「キラ!」
俺とアスランが駆け寄り、アスランがキラに声をかけるが、起きる様子はない。
それもそうだ。
キラの関係のある人物が突然現れ、目の前で連合のモビルスーツにドミニオンへ連れて行かれたのだからな。
「とにかく部屋に運ぶぞ」
俺の言葉に頷いて答えたアスランと一緒にキラをエターナルに用意されているキラの部屋に運ぶ事にした。
部屋に到着し、キラをベッドに寝かせた後、しばらく看病をしながら様子を見ていると……
「ダン」
ラクスがカガリを連れてキラの部屋に入ってくる。
クサナギにいるはずのカガリの方は、おそらくキラの事を聞いて見舞いに来たんだろう。
「お二人とも、大丈夫ですか?」
「大丈夫」
「俺も大丈夫だ」
俺とアスランの返事を聞き、安心したように笑顔を見せてくれるラクスに同じように笑み見せた後、再びキラの方に顔を向ける。
まだ眠っているキラを気にかけていると、カガリはキラの近くに置いてある写真立てに気付く。
その写真立ての写真を見て驚愕したカガリは、慌ててポケットから写真を取り出して見比べる。
カガリが持っている写真は確か、ウズミ代表から貰った女性と二児の赤ん坊の写真だな。
写真立ての方を見てみると、どうやら同じ写真のようだ。
何故同じ写真が二枚も……?
その事について考えていると、眠っていたキラが目を覚ます。
「目が覚めたか、キラ」
「…ごめん。心配かけたね」
「キラ…」
体を起こしたキラは、カガリが持つ写真を見ると目を背けるように辛そうな表情で顔を伏せる。
キラの様子を見た俺とアスランは互いを見て頷いた後、アスランがカガリを連れて部屋の出口に向かう。
「あ!おい…」
突然の事で不満なカガリを連れて先に部屋から出ていくアスラン。
しばらく部屋に沈黙が流れ、それを破るようにラクスがキラに声をかける。
「キラ…」
「大丈夫…僕、もう泣かないって…決めたから…」
口では大丈夫と言うキラだが、どう見ても顔の方はそんな感じではない。
「今はゆっくり休め。おまえには、十分な休息が必要だ」
そうキラに語った俺はラクスの肩に優しく手を置く。
ラクスは少し驚くが、俺の顔を見た後すぐに優しく微笑んで頷いてくれる。
それを確認した俺はアスランと同じように、ラクスを連れて部屋の出口に向かう。
「キラ」
出口手前に着き、ドアを開ける前に俺はキラの方に顔を向ける事なく語りかける。
「無理はするな」
「っ!」
自分の思考を読まれたのか、驚くような声をあげるキラだが、俺はキラを見ずに話を続ける。
「泣きたい時は、思い切り泣け。吐き出したい思いは、我慢せずに吐き出せ。そうする事で…再び決意を持って前に進む事だってできるはずだ」
そうキラに言い残し、俺はラクスと一緒にキラの部屋から出ていく。
しばらくしてキラのすすり泣く声が聞こえてくる。
やはり、相当我慢していたんだろう。
それともメンデルで何かあったのか……。
……いや、その事については後にしよう。
今はキラが落ち着くのを待つしかないな。
今も泣き続けるキラがいる部屋を後にして艦内通路を通っている最中、隣にいるラクスが俺の服の袖を掴んでいた。