今回は戦闘演出が長めです。
それでは、ゆっくりお楽しみください!
ジャン・エクシーグとの戦いに勝利した俺は、無力化されたソウルをその場に残し、ラクス達と合流する。
『ダン!』
「ラクス、大丈夫か?クサナギも無事か?」
『はい』
『何とか全員生きている』
「そうか……」
ラクスとキサカ一佐の返答で仲間の無事を聞いた俺は安心して少し息を付く。
しかし、その直後にコックピットのレーダーに見た事のない番号の反応がかなりのスピードでこっちに向かって来ている。
という事はモビルスーツであるのは間違いないだろう……。
確認のため、アスランが乗るジャスティスがその場に放置したミーティアをフューチャーに装着させ、その反応がある方へ向かう。
『ダン!?』
俺がエターナルとクサナギから離れるのに気付いたのか、ラクスが咄嗟に俺の名を叫ぶ。
「見た事ない反応がこっちに向かっている。様子を見てくる。ここは頼むぞ!」
『了解した!ジェネシスは任せろ!』
『ダン!』
バルトフェルド隊長の返答を聞き、その場を後にしようとする俺を尚もラクスは呼び止める。
「無茶はしないさ。すぐ戻る」
安心させるためにコックピットのモニターから心配そうな表情を見せるラクスに優しく笑みを見せた後、通信を切って今度こそ反応の場所に急行する。
反応がある場所に近付き、コックピットのモニターで確認すると見た事のない新型らしきモビルスーツの姿が表示される。
謎のモビルスーツはこっちの存在に気付いたのか、背中から遠隔操作兵器らしき武装を射出させ、そこから緑色のビームを放ち、フューチャーに攻撃を仕掛けてくる。
かなりの数のビームの雨をミーティアの機動力を活かし、何とか回避に成功した後、ウェポンアームから高エネルギー砲を放って応戦するが、相手は余裕を見せるように回避してしまう。
それに今の遠隔操作兵器………
まさか……例のドラグーン・システムというやつか。
ドラグーン・システム
噂ではコックピットからの無線によって誘導する兵器で、それに複数のビーム砲を取り付ければ無数のビームを遠距離から撃つ事ができる兵器だ。
噂でしか聞いていなかったからまだ未完成だと思っていたが、もう完成していたというのか……。
しばらく射撃戦を繰り広げ、隙を突いてビームソードで斬りかかるが、左腕のビームサーベルで返り討ちにされ、片方のアームを失う。
『筋は良い。だが私を仕留めるには程遠いな』
聞き覚えのある声を通信で聞いた俺は驚き隠せずにいる。
何故なら、その声はザフトを離れた俺、アスラン、ディアッカの三人にとって、よく世話になった人物だからだ。
「まさか……クルーゼ隊長……?」
『ほう……。やはりフューチャーのパイロットは君だったのか、ダン。随分久しぶりだな』
謎のモビルスーツに乗っていたのは、思った通りクルーゼ隊長であった。
だが、何故クルーゼ隊長がこの宙域に単独で行動を取っているんだ?
「クルーゼ隊長。貴方はここで一体何をしていたんですか?」
『無論見届ける為さ。この世界の終演を。そして新たに生まれ変わる世界の誕生をね』
「……何?」
クルーゼ隊長の意味のわからない発言を聞いた俺はそう聞き返す事しかできずにいた。
そんな俺を気にする事なく、クルーゼ隊長は戦闘の最中でありながら余裕を見せるような感じで更に話を進める。
『強い力を持ち過ぎて傲慢になった全ての人類を、その力を持って互いを撃たせ、全てをリセットする。ザフトのジェネシスと地球軍の核という二つの力をぶつけさせる事によってね……』
クルーゼ隊長……いや、クルーゼの言葉を聞き、気になっていた疑問について彼に問いかける。
「まさか、地球軍が核を……ニュートロンジャマーキャンセラーのデータを手にしたのは……」
『君の予想通りだ。地球軍にニュートロンジャマーキャンセラーのデータを渡したのは……この私だよ』
ザフトの軍人でありながら、敵対関係である地球軍に核のデータを送った事に驚きを隠せずにいた。
「敵である地球軍に……何故そんな事をしてまで人類を滅ぼそうとする?」
『何故?憎いからだよ。私のような存在を生んだ、この世界そのものがね!』
いつもの冷静なクルーゼとは違い、感情を剥き出しにして発言するクルーゼに驚きながらも、俺は更に問いかける。
「そこまでして今の世界を終わらせたいのか?今の世界には、もう可能性も未来もないと言いたいのか?」
『それが私が生き、そして見てきた世界だ』
俺の問いに即答したクルーゼは世界への憤りを抑える事なく、感情のままに主張する。
『全ての人類は平等、互いに手を取り合えば、そう言いながらも、強い力を求め、それを手にすれば、その力に頼り過ぎ……そして次第に優しさを捨てていった……』
強い力によって変わっていく人の心。
確かに手に入れた力を簡単に捨てるのは難しい。
だが………
「例えその力を手にしても優しさを捨てなかった者達もいる。手に入れた力を、自分達にしかできない事……守るべきものの為に振るおうとする連中も大勢いる」
そう、俺とラクス、そしてキラやアスラン達のように……。
『……それは君やラクス・クラインなどの一部の人間だけではないのかね?それに、そんな甘い考えを持つ者から先に死んでいくのだよ。どれだけ優しさや平和を主張しても、綺麗事と吐き捨てる者達に裏切られ、傷つけられ、そして絶望しながら命を落とす……。君もその一人だよ、ダン。今の内にその甘い考えを捨てなければ、いずれ君もその運命を辿る事になってしまうぞ?』
確かに、クルーゼの発言にも一理あるかもしれない。
意見の食い違いで事態が悪化し、更に対立を深める事もある。
しかし、まだ希望が潰えた訳ではない。
「……かもしれない。だが、まだそうなると決まった訳じゃない。まずは貴方を……アンタを止めてからジェネシスを止める。そしてその先の未来がアンタの言うような結末を辿る事のないように、俺達は俺達にできる事を力の限り尽くす。今の俺にできるのはそれだけだ!」
『……残念だよダン。だが敵となった以上、君はここで討たねばならん。私の大願を果たす為にな!』
互いの主張を終え、繰り広げていた戦闘は更に激しさを増す。
しかし、相手は自分の隊長であったクルーゼである為、フューチャーでもその実力差を埋めるのは難しい。
無数の向かってくるビームの雨を回避し、フューチャーとミーティアによる一斉射撃で応戦するが、次第にミーティアも傷付き、そしてクルーゼ機のビームライフルとドラグーン・システムの攻撃を受けて爆破されてしまう。
爆発寸前に分離した為、フューチャー自体には損傷はないが、戦況は圧倒的にクルーゼの方が優勢だ。
「(まだだ……まだ、終われない!)」
ラクスの元に戻るまでは、俺はまだここでは死ねない。
クルーゼとの戦闘の最中、この状況をどう打開するかを考えていると、緑色のビームがクルーゼが操るモビルスーツに向かって飛んでくる。
クルーゼ機がそのビームを回避したのを確認し、ビームが飛んできた方に視線を向けると………
そこには別行動を取っていたフリーダムがこっちに向かいながらビームライフルで更にクルーゼ機を攻撃する。
『あなたは!あなただけは!!』
クルーゼと何かあったのか、キラは怒りの声を上げながらドラグーンをビームライフルで破壊していく。
正確にドラグーンを撃ち落としていくフリーダムに驚くが、この状況を見逃さないように、キラに便乗するようにフューチャーのビームライフルでドラグーンを破壊する。
『ふん!いくら足掻こうが今更!』
しかし、この状況でもクルーゼは余裕の声を発しながらビームライフルとドラグーンで攻撃を仕掛けてくる。
フリーダムと一緒に全てのビームを回避した後、クルーゼ機の方を見ると、ジェネシスの方へ逃げていくのを発見する。
まずい、ジェネシスの近くにはラクス達がいる!
『ええい!!』
「逃がすか!」
妨害してくるドラグーンを数機ビームライフルで破壊した後、俺とキラはすぐクルーゼの後を追う。
俺とキラはクルーゼに追い付き、ビームサーベルで斬りかかるが、クルーゼもビームサーベルで俺達二人に応戦してくる。
『これが定めさ!知りながらも突き進んだ道だろう!』
『なにを!』
『正義と信じ、解らぬと逃げ、知らず!聞かず!その果ての終局だ!もはや止める術などない!』
「まだだ!まだ終わってない!」
『いいや終わる!私が終わらせる!そして滅ぶ、人は!滅ぶべくしてな!』
俺達と距離を離したクルーゼは、まだ残っているドラグーンで一斉に攻撃してくるが、それを回避したり、ビームサーベルで弾きながらクルーゼに近付く。
「俺達が生きているこの世界の未来を、アンタが勝手に決めるな!」
『そんな、あなたの理屈!』
『それが人だよ!キラ君!ダン!』
『違う!!人は…人はそんなものじゃない!』
フューチャーとフリーダムのハイマット・フルバーストでドラグーン数機を撃墜するが、クルーゼ機にはまたしても回避される。
『ふん!何が違う!何故違う!』
クルーゼは反撃にビームライフルを連射してくるが、俺とキラはフューチャーとフリーダムの機動力を活かして回避する。
『この憎しみの目と心と、引き金を引く指しか持たぬ者達の世界で、何を信じる!?何故信じる!?』
クルーゼ機のビームライフルの攻撃を回避している最中、フリーダムは右足を、フューチャーは左腕を被弾してしまうが、戦闘に支障はない。
『それしか知らないあなたが!』
フリーダムはクルーゼ機に近付き、ビームサーベルで斬りかかるが、シールドで防がれる。
『知らぬさ!所詮人は己の知ることしか知らぬ!』
「アンタには大切に思う人もいないのか!?」
キラとクルーゼが距離を取ったのを確認した俺はビームライフルで攻撃するが、クルーゼはそれを回避してドラグーンで攻撃してくる。
『そんな事をして何になる!いずれ裏切られ、絶望するのは目に見えている!まだ苦しみたいか!いつか!やがていつかはと!そんな甘い毒に踊らされ、一体どれほどの時を戦い続けてきた!?』
クルーゼの激昂の声を聞きながらも、俺達はドラグーンの攻撃を回避しながら迎撃していく。
その時、ヤキン・ドゥーエからザフトの戦艦とモビルスーツが次々と出てくるが、少し様子がおかしい。
『ふふふ……ははははは!』
俺達と交戦しているクルーゼが突然勝ち誇ったような高笑いを上げる。
『どのみち私の勝ちだ!ヤキンが自爆すればジェネシスは発射される!』
『えっ?』
「何だと?」
『もはや止める術はない!地は焼かれ、涙と悲鳴は新たなる争いの狼煙となる!』
まさか、ヤキンの自爆とジェネシスの発射が連動しているというのか?
「まずい!ヤキンにはアスランとカガリが突入している!」
『そんな!アスラン!カガリ!』
クルーゼと交戦している最中、キラはアスランとカガリに通信を繋げて呼びかけるが、応答する様子はない。
『人が数多持つ予言の日だ!』
クルーゼ機のビームライフルとドラグーンのビーム攻撃によってフリーダムは右腕を、フューチャーは両足を被弾してしまう。
両足を失った事でフューチャーのバランスが少し崩れてしまう。
『そんなこと!』
キラも負けじとフリーダムのビームライフルでクルーゼ機の左腕とドラグーン一機を撃ち落とす。
『それだけの業!重ねてきたのは誰だ!!君達とてその一部だろうが!』
クルーゼ機のビームライフルの攻撃でフリーダムはビームライフルと右腕を同時に被弾してしまう。
『それでも!守りたい世界があるんだ!』
そう叫ぶキラは、フリーダムのビームサーベルを連結させ、アンビデクストラス・ハルバードを手に持ってクルーゼ機に突っ込んでいく。
フリーダムはクルーゼ機のビームライフルの攻撃を回避しながらクルーゼ機のビームライフルを持つ右腕を切断する。
『くっ!』
後退したクルーゼ機が残ったドラグーンで尚も突撃するフリーダムを攻撃しようとしている。
キラがあれだけ奮戦しているんだ。
俺も遅れを取る訳にはいかない。
まだ動けるマルチロックオンシステムを作動させ、フリーダムに集中しているクルーゼ機の頭部と残っているドラグーンに狙いを定めてハイマット・フルバーストで狙った箇所を破壊する。
『何ぃ!?』
不意を突かれたのか、クルーゼは突然の事でかなり動揺している。
『でやぁぁぁ!!』
その隙を突くように、フリーダムは手に持つビームサーベルでクルーゼ機のコックピットを貫き、長時間の激戦に遂に終止符を打つ。
その直後、ヤキンが突然爆発を起こす。
おそらくヤキンの自爆システムが作動したんだろう。
ヤキンがあちこちで爆発している最中、ジェネシスが突然動き始める。
となると………まずい!
まだクルーゼ機をビームサーベルで貫いているフリーダムの腕を掴み、フューチャーのスラスターを最大まで全開にしてその場を離れる。
その直後にジェネシスが発射され、まだその場に残っているクルーゼはジェネシスのエネルギー波の光の中へ消えていった。
しかしそれだけでは終わらず、ジェネシスのエネルギー波の余波がフューチャーとフリーダムに襲いかかる。
「(くそっ!ここまでなのか……)」
そう思った瞬間、ジェネシスが突然内部から爆発するのを見たのと同時にフューチャーとフリーダムも光に包まれ、そして次第に意識が遠退いていく………。
ジェネシスの突然の爆発からどれくらい経ったのか、意識を取り戻して目を覚ますと、流されたのか、周辺が虹色に包まれた宙域を彷徨っており、大破したフューチャー以外に少し離れたところに同じように大破したフリーダムが放置され、その近くにキラがいるのを目撃する。
『宙域のザフト全軍、ならびに地球軍に告げます』
コックピットの通信から放送が流れ、よく聞いてみると、クライン派に所属しているアイリーンさんの声だ。
『現在プラントは地球軍、およびプラント理事国家との停戦協議に向け、準備を始めています。それに伴い、プラント臨時最高評議会は現宙域に於ける全ての戦闘行為の停止を地球軍に申し入れます』
停戦協議か……。
ジェネシスや核などの切り札を互いに失ったんだ。
もうこれ以上の無駄な命の取り合いはしないだろう。
放送を聞き終えた俺は、まだフューチャーのシステムが動いている内に、外部にバレないように暗証コードを利用してエターナルに向けて救難信号を送る。
これでしばらくすれば救援が来るだろう。
それまではここで待つしかないな。
救難信号を送ってからしばらく経ち、迎えを待ってはいるが、なかなか来る様子がない。
そう思っていると、向こうの方から点滅する光が徐々にこっちに向かって来ている。
よく見てみると、近付いてきたのはトリィとフェイズシフトダウンしたストライクルージュであり、開かれたままのコックピットからカガリとアスランの姿を見つける。
アスランの方はジャスティスを失っているが、アスラン自体には怪我とかはなさそうだ。
俺とキラを見付けたカガリとアスランは涙を流しながらも笑みを見せて俺達の無事を喜んでくれている。
二人とも無事で良かった……。
きっと今の俺の顔は、アスラン達と同じ笑みを浮かべて涙を流しているだろう。
キラの方を見てみると、俺達と同じように嬉しかったのか、笑みを見せた後、目を閉じて涙を流している。
そんなキラと、キラに近付くアスランを見た俺は安心して息を吐きながら心の中で思った。
また新しい明日を皆で生きる事ができるんだと………。
ようやく原作まで終わりましたが、まだ少し続きます。
それまで、次回をお楽しみ!