機動戦士ガンダムSEED 未来を担う剣   作:Please

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宇宙の傷跡

クルーゼ隊長から帰投命令を受けた俺とアスランは、クルーゼ隊長と一緒に修理と補給を終えたヴェサリウスで本国であるプラントに来ている。

 

プラント付近の宇宙港に到着した俺はアスラン達と一緒に、ヴェサリウスから降りて移動用シャトルに乗り換える。シャトルに乗ると男性が1人先に乗っているが、俺達の知っている人物の為、その人に敬礼をして挨拶する。

 

 

「御同道させていただきます、ザラ国防委員長閣下」

 

「礼は不要だ。私はこのシャトルには乗っていない。いいかね、アスラン」 

 

「…分かりました。父上。お久しぶりです」

 

 

俺達が敬礼した相手は、パトリック・ザラ。

プラント評議会国防委員長でアスランの父親だ。実の息子であるアスランに対して冷たい態度が引っ掛かるが、俺は心の中でそう思いながらもクルーゼ隊長達と一緒に席に座るとシャトルが動き出す。

 

 

「リポートに添付してあった君の意見には、無論私も賛成だ。問題は、奴等がそれほどに高性能のモビルスーツを開発したということにある。パイロットのことなどどうでもいい」

 

「!!」

 

「…」

 

 

ザラ委員長のその言葉にアスランは驚き、俺は顔を曇らせる。そんな俺達に気付かず、クルーゼ隊長とザラ委員長は話を続ける。

 

 

「その箇所は私の方で削除しておいた」

 

「ありがとうございます。閣下ならそう仰って下さると思っておりました」

 

「向こうに残してしまった機体のパイロットもコーディネイターだったと、そんな報告は穏健派に無駄な反論をさせる時間を作るだけだ」

 

 

穏健派とはシーゲルさんを中心としたクライン派の事だ。

あの人達は平和的に戦争を終結させる為に尽力しているからな。

そう考えていると、クルーゼ隊長がいつの間にか俺達の方を向いている。

 

 

「君達も自分の友人を、地球軍に寝返った者として報告するのは辛かろう」

 

「あ…いえあの…」

 

「…はい」

 

 

俺とアスランを気遣うように話し掛けるクルーゼ隊長に対して、俺とアスランに構わずザラ委員長は話を続ける。

 

 

「奴等は、自分達ナチュラルが操縦しても、あれほどの性能を発揮するモビルスーツを開発した…そういうことだぞ。分かるな…アスラン、ホシノ」

 

「…はい」

 

「…」

 

 

ザラ委員長の言葉に頷くアスラン。

俺は話を聞きながら、ヘリオポリスで起きた事を思い出す。ソウルのコックピット内でキラがアスランと対峙していた事を…。

 

 

「我々ももっと本気にならねばならんのだ。早く戦いを終わらせる為にはな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくクルーゼ隊長とザラ委員長の話を聞いている内にシャトルがプラントに到着する。

シャトルから降りた俺とアスランは、クルーゼ隊長と一緒にザラ委員長と別れ、エレベーターでアプリリウス市に向かっている。

 

 

『…では次に、ユニウスセブン追悼、一年式典を控え、クライン最高評議会議長が、声明を発表しました』

 

 

エレベーターで降下中、ニュースでシーゲルさんとラクスが出ており、シーゲルさんが演説を行っている。

 

 

『あの不幸な出来事は、我々には決して忘れる事が出来ない、深い悲しみです』

 

 

シーゲルさんの演説を見ていると、クルーゼ隊長が俺とアスランに話し掛けてくる。

 

 

「そういえば、彼女はアスランの婚約者で、ダンの幼馴染みだったな」

 

「は…はぁ…」

 

「…そうです」

 

「ラクス嬢は今回の追悼慰霊団の代表を務めるそうじゃないか。素晴らしい事だな」

 

「「はい」」

 

「ザラ委員長とクライン議長の血を継ぐ、アスランとラクス嬢の結びつき、次の世代にはまたとない光になるだろう。期待しているよ、アスラン」

 

「ありがとうございます」

 

「…」

 

 

親友であり、しっかり者のアスランなら、ラクスを任せても大丈夫だ。幼馴染みであるラクスの幸せの為なら、俺はどこまでも戦える。

 

 

「その時代を、今我々は守らねばならん。君のこれからの活躍にも期待しているよ、ダン」

 

「っ!ありがとうございます」

 

 

突然クルーゼ隊長から話を振られた為、一瞬驚くがすぐに返事をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アプリリウス市に到着した俺達は、最高評議会の本部に来ている。これから臨時査問委員会が行われるからだ。評議会には12人の議員が集まっており、その中にはシャトルで居合わせたザラ委員長の姿もある。俺とアスラン、クルーゼ隊長の3人はシーゲルさん達から離れた席に着いている。

 

 

「ではこれより、オーブ連合首長国領、ヘリオポリス崩壊についての、臨時査問委員会を始める。まずは、ラウ・ル・クルーゼ、君の報告から聞こう」

 

「はい」

 

 

臨時査問委員会が始まり、クルーゼ隊長が席から立ち上がり、ヘリオポリスでの地球軍による6機のモビルスーツの開発、機体の奪取、そしてヘリオポリス崩壊に関しての報告を行う。

 

 

 

 

「…以上の経過で御理解頂けると思いますが。我々の行動は、決してヘリオポリス自体を攻撃したものではなく、あの崩壊の最大原因はむしろ、地球軍にあるものと、御報告致します」

 

 

報告を終えたクルーゼ隊長はシーゲルさん達に敬礼をして席に戻ってくる。

 

 

「やはり、オーブは地球軍に与していたんだ…」

 

「条約を無視したのは、あちらの方ですぞ!」

 

「だが、アスハ代表は…」

 

「地球に住む者の言葉など、当てになるものか」

 

 

シーゲルさんとザラ委員長以外の議員達がそれぞれの意見を言っている途中、ザラ委員長が席から立ち上がる。

 

 

「しかし、クルーゼ隊長、その地球軍のモビルスーツ、果たしてそこまでの犠牲を払ってでも手に入れる価値のあったものなのかね?」

 

 

ザラ委員長の問いにクルーゼ隊長は席から立ち上がり答える。

 

 

「その驚異的な性能については、実際にその機体に乗り、また取り逃がした最後の機体と交戦経験のある、アスラン・ザラとダン・ホシノより報告させて頂きたく思いますが」

 

 

クルーゼ隊長の発言を聞いてザラ委員長はシーゲルさんの方を見ると、俺とアスランを見て少し考えてから口を開く。

 

 

「…アスラン・ザラとダン・ホシノの報告を許可する」

 

 

シーゲルさんから俺達の報告の許可が下りた為、先にアスランが席から立ち上がり前に出る。

アスランがシーゲルさん達に敬礼をすると、格納されているイージスの映像が映し出され、シーゲルさん達はそれを見て驚いている。

 

 

「まず、イージスという名称の付いたこの機体ですが…大きな特徴は……

その可変システムにあります」

 

 

更にイージスは、俺達が奪取した機体と異なるフレームで造られており、モビルアーマー時は“スキュラ”というエネルギー砲が搭載されているが、まだ実戦で使っていない。

OSはまだ直してる途中だが、機体のスペックは、機動性もパワーもザフトの主力機であるジンを上回るらしい。

 

GAT-X102 デュエル。

イザークが搭乗する近接戦をメインにした機体で、 他の5機の開発ベースになっているらしい。装備は他の機体と共通の武装のみとなっている。

 

GAT-X103 バスター。

ディアッカが乗る遠距離射撃を得意とした機体である為、シールドは装備されていないが、超高インパルス長射程狙撃ライフル、高エネルギー収束火線ライフル等の遠距離用の武装を多数搭載されている。

 

 

「…私からは以上です」

 

 

イージス、デュエル、バスターの説明を終えたアスランが敬礼をして席に戻って来る。

次は俺がシーゲルさん達の前に立って敬礼すると、格納されているソウルの映像が出てくる。

 

 

「次はソウルについて説明致します。この機体には……

ラジエータープレート兼用の大型可変翼と複数の高出力スラスターが搭載されており、機動性を増強させる事を主眼としている為、その機動力は他の機体よりも上回るものと思われます」

 

 

ソウルの説明をした後、ブリッツ、ストライク等の特徴の説明を始める。

 

GAT-X207 ブリッツ。

ニコルが操る機体で、微粒子ガスを展開させる事で、ほぼ100%に近いステルス性を持つ“ミラージュコロイド”を搭載した電撃作戦を得意とする。しかし、その代償としてフェイズシフトは展開できず、その間は物理による攻撃を受けてしまう為、細心の注意が必要な機体だ。

 

そして、キラが操縦するストライク。

この機体には、エール、ソード、ランチャーの3つの武装を持っている。ランチャー装備の時は、“超高インパルス砲”という高エネルギー砲、ガンランチャー等の遠距離武装、ソード装備の時は、対艦刀、ビームブーメラン等の近距離武装、換装無しの状態でも腰部には2刀の“アーマーシュナイダー”という実剣ナイフを持ち、あらゆる状況に対処できる汎用機となっている。

 

 

「…以上です」

 

 

残りのモビルスーツの報告を終えた俺はシーゲルさん達に敬礼して席に戻ると、シーゲルさんとザラ委員長以外の議員達が再び意見を述べ始める。

 

 

「こんなものを造り上げるとは…!ナチュラル共め!」

 

「でも、まだ、試作機段階でしょ?たった6機のモビルスーツなど脅威には…」

 

「だが、ここまで来れば量産は目前だ。その時になって慌てればいいとでも仰るか!?」

 

「これは、はっきりとしたナチュラル共の意志の表れですよ!奴等はまだ戦火を拡大させるつもり…」

 

 

徐々に意見が激しくなり、議員達が抗論を始めてしまう。

 

 

「…静粛に!議員方、静粛に…」

 

 

シーゲルさんの諌める事で静まる議員達。俺とアスラン、クルーゼ隊長はただそれを静かに見ている。

 

 

 

 

「戦いたがる者など居らん。我等の誰が、好んで戦場に出たがる?」

 

 

黙っていたザラ委員長が口を開く。

 

 

「平和に、穏やかに、幸せに暮らしたい。我等の願いはそれだけだったのです。だがその願いを無残にも打ち砕いたのは誰です。自分達の欲望の為だけに、我々コーディネイターを縛り、利用し続けてきたのは!」

 

 

更にザラ委員長は言葉を続ける。

 

 

「我等は忘れない。あの血のバレンタイン、ユニウスセブンの悲劇を!」

 

 

血のバレンタイン。

それを聞いた瞬間、俺は再び両親が死んだ過去を思い出す。

 

 

「24万3723名…それだけの同胞を喪ったあの忌まわしい事件から1年。それでも我々は、最低限の要求で戦争を早期に終結すべく、心を砕いてきました。だがナチュラルは、その努力をことごとく無にしてきたのです」

 

 

ザラ委員長の言葉も一理ある。

俺とアスランが軍人の道を歩むようになったのも血のバレンタインで家族を失った事がきっかけだ。

 

 

「我々は我々を守る為に戦う。戦わねば守れないならば、戦うしかないのです!」

 

 

ザラ委員長の決意を示すような発言に沈黙する議員達。シーゲルさんも観念するようにため息をついて黙ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臨時査問委員会が終わり、議員達が次々と外へ出ていく中、俺とアスランはクルーゼ隊長を待ちながら、評議会本部に展示されている“ある化石”を見ている。

 

 

 

 

その化石は、2枚の翼を持つ巨大なクジラの化石だ。

 

名称はエヴィデンス01。

詳しく知らない人達は“宇宙クジラ”と呼んでいる。

 

この化石は、あの“ファーストコーディネイター”であるジョージ・グレンが木星探査の時に発見した“地球外生命体”の化石とされているが、それ以外の詳細は不明だ。

 

 

 

 

「ダン。アスラン」

 

 

俺とアスランが宇宙クジラを見ていると、シーゲルさんに声をかけられる。

 

 

「クライン議長閣下」

 

「お久しぶりです、議長閣下」

 

 

俺達はシーゲルさんに気付いて敬礼をして挨拶する。

 

 

「そう他人行儀な礼をしてくれるな。特にダン」

 

「はい…。ですが…」

 

「公式の場ならともかく、こういう個人的な時だけは、普通に呼んで欲しいのだがね」

 

 

シーゲルさんが俺の肩に手を置き、優しく微笑んでくれる。俺はそれに笑みを浮かべ、少し頷いて答える。

 

 

「ようやく君らが戻ったと思えば、今度はラクスが仕事で居らん。全く、君らはいつ会う時間が取れるのかな」

 

「…はい」

 

「申し訳ありません」

 

「私に謝られてもな」

 

 

シーゲルさんも俺達と同じように宇宙クジラを見ながら、少し困ったような顔で口を開く。

 

 

「しかし、また大変な事になりそうだ。アスラン、君の父上の言う事もわかるのだがな…」

 

「アスラン・ザラ!ダン・ホシノ!」

 

 

シーゲルさんと話をしている途中、後ろから声が聞こえて振り向くと、クルーゼ隊長とザラ委員長がこっちに歩いて来る。

 

 

「あの新造艦とモビルスーツを追う。ラコーニとポルトの隊が、私の指揮下に入る。出航は72時間後だ」

 

「「はっ!」」

 

 

俺とアスランは、クルーゼ隊長の指示に敬礼をして返事をする。

 

 

「失礼します!クライン議長閣下!」

 

 

それを確認したクルーゼ隊長はシーゲルさんに敬礼して立ち去り、俺とアスランもシーゲルさんに敬礼してクルーゼ隊長に続いて評議会本部を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クルーゼ隊長を軍本部へお連れしている途中、街のモニターに歌っているラクスの姿が映し出されている。

 

 

「(ラクスは今どうしているんだろう…元気にしてるといいが…)」

 

 

その思いでラクスの歌を聞いている内に軍本部に到着し、クルーゼ隊長と別れた俺とアスランは“ある場所”へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

到着した“ある場所”。

そこは俺とアスランの家族、その他血のバレンタインで犠牲になった人達や、ナチュラルとの戦いで戦死した同胞達が眠っている墓地である。

俺は両親の、アスランは母親であるレノアさんの墓に、ここへ来る前に用意した花束を置く。

 

 

アスラン「母上…」

 

ダン「父さん…母さん…。遅くなってごめん。ここに来るまでに色々あったからさ」

 

 

この先待ち受けているキラとの戦いを考えるが、俺はそれを心の中にしまい込む。

 

 

「じゃあ、また会いに来るから。それじゃあ、行くか」

 

「ああ。では母上、また…」

 

 

家族に挨拶を済ませた俺達は墓地を後にし、任務の時間が来るまでしばらく休息を取る事にした。

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