…もうかけると思ったのだけども…くっ。
「…昨日は中々酷い目にあった…」
眼鏡を装備しているのにもかかわらず
性格が安定していないという事は
本当に酷い目にあったんだろう、と周囲の人は思っていた。
実際その通りである。
あの死闘?は千冬が疲れるまで続いたのだ。
そして二人とも疲れ果ててそのまま眠ってしまい…
朝、目が醒めた際に千冬と目が合った結果、
『目覚めのストレートパンチ』が発生。
よける事かなわずに、再び夢の世界へ旅立った経緯があったのだ。
「これは、織斑先生について弟の一夏に事前に教えてもらわねば…」
寝起きに回避不能の一撃必殺を毎日受けていたら
流石のレイも耐えられるか不安なのだろう。
ちらりと一夏の方を向くと、クラスメイトから未だに質問を受けていた。
「千冬お姉様って自宅ではどんな感じなの?」
ピクッ
その言葉に伏せたままレイは聞き耳を立てる。
この質問の答えは既に出ているが、この生徒の質問がこれで終わるとは思えない。
聞き耳を立てていれば、その内自身が欲する質問が現れるだろう。
対する一夏は当然とばかりにその質問に答えるべく口を開いた。
「え?あぁ、案外だらしな――」
ドゴンッ!!
「休み時間は終わりだ。散れ。」
しかし、一夏の言葉は最後までつむがれる事はなく、
いつの間にか一夏の背後に現れた織斑先生の持つ出席簿によって沈黙を余儀なくされた。
くっ、余計な真似を。
「――っと何をするんですかっ!!織斑先生ッ!!」
不意に頭上に不穏な気配を感じ、転げるように回避したレイは顔をあげて気配の正体にそう
声をかける。
さっきまでレイが頭をおいていた机には現在出席簿が叩き込まれており、
ぶつかったところは謎の煙を上げていた。
というか先ほどの一夏への一撃もそうだけども、出席簿の出せる威力じゃないような…
「いや、余計な事を考えていたような気がしてな。」
気がして攻撃ですか。
にしてもやはり鋭い。
これはあまり余計な事は考えないほうがいいかぁ…
「あぁ、そうだった。
織斑、お前のISだが準備まで少々時間がかかる。」
「…は?」
織斑先生の言葉に、
頭の痛みが引いて復帰した一夏が素っ頓狂な声を発した。
「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ。」
「???」
詳しい説明を受けたがまったく理解していない一夏はおいといて、
その周囲の理解者たちは驚きの声を上げた。
「せ、専用機!?一年の、しかもこの時期に!?」
「つまりそれって政府からの支援が出るって事で…」
「いいなぁ、私も早く専用機が欲しいなぁ。」
などなど人それぞれではあるが、
…というか最後の人、欲しいなぁで貰えたら束はいらないよ。
欲しいならばそれに見合う力をつけないとさ。
例外がいるから説得力は皆無だけど…
再び視線を織斑姉弟側へ戻すと
織斑先生はため息混じりに呟いた。
多分見るに見かねたといった感じだろう。
「教科書六ページを音読しろ。」
言われるがままに一夏は教科書を広げ
指定されたページの内容を読み上げた。
内容を要約するのならば
ISのコアの作成技術は公開されておらず、
それを知るのは天災兎の束だけで、現在世界中にあるIS467機もまた
束の生み出したコアであり、中身はすべてブラックボックス。
結果、現時点では束以外にコアを作成する事が可能な人間は存在せず
束もこれ以上のコアを作成する事を拒否している。
という事である。
「つまりは、そういう事だ。
本来、ISの専用機というものは国家或いは企業に所属する人間しか与えられない。
だが、お前の場合は状況が状況だ。
よってデータ収集を目的として専用機が用意される事になったというわけだ。
理解出来たか?出来たならば返事をしろ。」
「な、なんとなく…」
つまり殆ど分かっていないという事だろう。
「…あれ?それならレイはどうなんだ?
レイも俺と同じ男性操縦者だろ?」
「安心しろ。クロフォードも勿論専用機が与えられている。」
「そうなのか…」
必要最低限の言葉にとどめて説明をした織斑先生。
まぁ流石にこの機体を何処が作成したかは知らないはずなので
大丈夫でしたけども…
「あの、先生。篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか……?」
女子の一人がおずおずと織斑先生へ質問する。
まぁそりゃ疑問には思うだろうけども…
流石に個人情報になるだろうし、織斑先生も答えな――
「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ。」
答えおった――!?
ちらりと一夏を見ると同じようなリアクションをしている。
「えええーっ!す、すごいっ!このクラス有名人の身内がふたりもいる!」
何が凄いんだろう…。
「ねえねえ、篠ノ之博士ってどんな人!?やっぱり天才なの?」
いいえ、天災です。
「篠ノ之さんも天才だったりする!?今度ISの操縦教えてよっ!」
天災は一人でいい、…え?イントネーションが違う?
などと、発言される女子の言葉に心で返答するレイ。
どうでもよくはないが、現在授業中である。
「あの人は関係ないっ!!」
力強く、それでいてはっきりとそう言いきった。
その声の主は勿論「篠ノ之 箒」その人であり、
予想以上に大きな声だったため、それまでざわついていた喧騒もぴたりとやんだ。
「…大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。
教えられるような事は何もない」
そういうと窓の外を眺め始めた。
対する喧騒の主たちは盛り上がったところを
とめられた気分なのか、それぞれ困惑や不快を顔にして席に戻っていく。
「(なるほどね…似た物同士って所か。)」
『織斑一夏』と『篠ノ之 箒』
この二人は共に優秀すぎる姉を持った。
結果比較される状況になってしまった。
方や、その事さえ力にかえ、前を向き、自分の姉を誇りに思い進むもの
方や、自身と姉の力の差、そして比較される事から姉を嫌うもの
私的な見解だが…全く、どうしてこうも人というのは他者を比較したがるのだろうかな…
「さて、授業をはじめるぞ。山田先生、号令」
「は、はいっ!」
山田先生もたぶん篠ノ之さんが気がかりのようだけども、
やはりプロの教師。授業を開始した。
「(まぁ彼女に関しては一夏に任せればいいか)」
赤の他人の私が出て行っても事態が好転するようには思えないしね。
そんなことを思いながら私は教科書を開くのであった。
私のメンタルは紙同様。
でも遠慮なく感想書いてくれるとうれしいなっ!
(遠慮ない必殺の一撃だけは避けてください)