―・IS学園・―
その一年一組では新入生が静かに着席していた。
「全員揃ってますねー。それじゃあSHRはじめますよ!」
そんな空気の中、口を開いたのは黒板の前でにっこりと微笑む副担任の山田真耶先生。
しかし、そんなほわっとした言葉もこの不思議な緊張感の漂う空気を変えることはできず、
誰も口を開かない。
「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」
「…………」
そしてこの沈黙である。
さすがの山田先生もこの緊張感漂う空気にあせりつつ、負けじと口を開いた。
「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
ちょっとうろたえたのは気のせいではないだろう。
そんな事を心で思いつつ、とある男子生徒をレイは見つめた。
『織斑一夏』
織斑千冬の弟にして束より護衛対象といわれたISを操縦できたという男子生徒である。
レイという二人目についても既に公とされているが、
いかんせん、知名度が違い過ぎるため、あまり知られていないという方が正しいか。
ふと耳を傾ければ、二人目についての話題はあるが別のクラスだろうという声がひそひそとあった。
…どうやら男と認識してもらえていないようだ。
この容姿だからとあきらめはついているが、だとしても慣れるものではない。
などと、レイが一人悲しんでいると…
「げぇっ、関羽!?」
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
パアンッ!と乾いた、それでいて、綺麗に決まったかのような音と共にそんな言葉が聞こえてきた。
その音によってレイは現実に引き戻されると同時にその音のした方向をみると…
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「あぁ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けて、すまなかったな。」
「い、いえ、副担任ですから、これくらいはしないと……」
織斑千冬、
初日に私が手合わせをした教師だ。
あの担任と副担任を見ていると、やはり千冬のほうが先輩といったところなのだろう。
織斑先生は山田先生との会話を終えると周囲を見渡して、口を開いた。
「諸君、私が織斑千冬だ。
君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。
私の言う事は良く聞き、よく理解しろ。
出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛えぬくことだ。
逆らってもいいが、私のいう事は聞け。いい……ごほっ!?」
かっこよく決まると思われたが、なぜか私と視線が合った瞬間に咳き込むように噴出した。
「待て、おい、お前。何故そのような格好をしている。」
そう、千冬は私の方を見て問いかける。
はて?後ろの人だろうか?
そう思い、私は後ろへ振り返るが……当然ながら私の席は列の一番後ろだ。
後ろに人などいない。
「クロフォード、私は冗談が嫌いだぞ?」
とても素敵な笑顔(ただし目は笑っていない)の千冬がそう、問いかけていた。
冗談のつもりはなかったのだが…
当然ながら千冬の視線が此方に向いている以上、そんな有名人の視線を追うのは人の性だろうか。
一瞬でクラスの視線を独り占めしてしまったレイは仕方なく…それでいてちょうどいいと思い、席から立ち上がった。
「申し訳ございません。いただいた制服は似合わなかったものですから、
上着に少々細工をさせていただきました。」
そう、配布されたあの制服。
とても似合わなかった。違和感だらけなのである。悲しいことに…。
なので、下はズボンなのは仕方ないので、上着を少々細工して、ローブのようにしているのだ。
これでなんとか服装から違和感を排除できたのである。
「そういうことなら、許可しよう。にしてもだな、あのような口調はするなといったが。
なんだ、その変な口調は。」
「変ですか?」
「変だ…まぁお前も何か意味があってそうしているんだろう。
…ちょうどいい。周りもお前に興味があるみたいだからな。
自己紹介してやれ。」
ぶっきらぼうにそう言い放つ千冬。
そんなに変だろうか?
「さて、只今織斑先生よりご紹介に預かりました。
レイ・N・クロフォードと申します。
趣味は料理と裁縫。好きな色は黒。
料理関係で趣味があう方がいたら、仲良くしていただけると助かります。
それでは皆さん、これからよろしくお願いいたします。」
そういい一礼する。
ぱちぱち、と自然と湧き上がった。
「これでいかがでしょうか?織斑先生」
私は視線を千冬に向ける。
しかし、何故だろう、千冬が頭を抱えているのだろう…。
「あー…自己紹介そのものは悪くない。
悪くはないが、大事な事を忘れているぞ。クロフォード。」
そういわれ、あぁ、確かに忘れていたなと思い出した。
「えー…念の為、自己紹介に付属させていただきます。
この容姿では恐らく気づいていただけていないかもしれませんが、
二人目の男性操縦者は私のことです。
というわけで織斑君。同じ男性操縦者同士。
仲良くしていきましょう」
「お、おう。」
そう私の言葉に返答する織斑一夏。
少々顔が赤いのは気のせいだ。そうにきまっている。
そんな事をしているとチャイムがなった。
「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。
その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。
よくなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ。」
そう織斑千冬は言い放った。
はは、ここは学園…だったよな?
実は学園を模した軍の秘密養成所とかじゃあないよな?
ちらりと織斑一夏を見る。
実の弟だけあって姉の仕事風景がこれでは
同じ気持ちだろう。
まぁ、口に出したら危険だから私とて出しはしないが…。
ひどくつまらない平穏はこの時をもって始まった。
口調が丁寧?意味はあるよ!
一応あるよ!とりあえず主人公設定をそろそろ載せるかなぁ…