一時間目のIS基礎論理授業が終わって今は休み時間。
早速一夏と交流を図るべく
席を移動した。
「へぇ、織斑君も料理するんですね。」
「お、おう。あのさ、レイは男でいいんだよな?」
「あはは、姉弟そろって同じ質問をするんですね。」
うん、さすが血筋だ。
あぁ、それはともかく質問に返答しなくてはな。
「えぇ、自己紹介したとおり私はれっきとした男性ですよ。
見た目はこんな…なんですけどね。」
「大変だったんだな…」
「ありがとう、織斑君。」
同性からの励ましだから、なんとなくお気遣いが痛み入る…
「そういえばレイはこの状況はどうかおもわないか?」
「この視線ですか?
それは私達が珍しいからでしょう?
動物園の動物さんたちの気分と思えば幾分かは安らぐかもしれませんよ?」
「いや、ぜってー無理だ。」
「無理と言っては何も始まりませんよ織斑君。」
「あ、それだ。レイって呼んでるんだ。
俺の事は一夏でいいぜ。」
「では一夏、これから男同士、よろしくお願いいたします。」
「お、おう。」
そしてどもる一夏。
やはり数分で慣れるわけもないか。
束でさえ一年くらい慣れなかったんだからな。
「……ちょっといいか?」
「え?」
「ん?」
そんな他愛もない会話をしていると、突然声を掛けられた。
「……箒?」
箒…というと篠ノ之 箒。
織斑一夏の幼馴染で、束の妹だったな。
「クロフォード、一夏を借りていくぞ。」
「ん、いいですよ。」
私にわざわざ断りを入れるあたり、律儀だなぁと思いながら、
箒に拉致される哀れ一夏を眺める私。
こちらは姉妹とは思えんな。
あの姉にして妹がこれか。
そんな事を思うことで、一夏が抜けた事により集中した視線をスルーすることにした。
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「―――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、
枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ―――」
すらすらと教科書を読んでいく山田先生。
普段とのギャップがすごいな、この先生は。
さすが先生としてやっていることはある。
そんな事を聞き流しながら私は一夏を見ている。
別に好意があるという意味ではない。
護衛対象が現時点でどれだけの学力を持っているのか
それを把握する意味がある。
ふと、山田先生が口を開いた。
「織斑くん、何かわからないところがありますか?」
「あ、えっと…」
その反応で全てを悟りました。
あぁ、こいつ駄目だ。束と初めて出会った頃の私だ。
「分からない所があったら聞いてくださいね。なにせ私は先生ですから!」
えっへんとでも言いたそうに、胸を張る先生。
その言葉に一夏の顔が明るくなる。
つまり―――
「先生!」
「はい、織斑くん!」
やる気に満ちた返事。あぁこの先の展開が手をとるように分かるんだ…
さすが昔の私と重なる存在だ。
そう、つまり―――
「ほとんど全部わかりません」
やはりな…そう思いながら山田先生を見てみると…
「え………。ぜ、全部、ですか……?」
一瞬にして山田先生の顔は引きつった。
さっきまでの先生が一瞬ではがれるとは、さすが織斑先生の弟だ。
対する山田先生は『自分の授業に問題があったのかもしれない』と、
周囲を見ながら、恐る恐る口を開いた。
「え、えっと…織斑くん以外で、今の段階でわからないって人はどれくらいいますか?」
勿論だれも手を上げることはなかった。
「ん?」
ふと一夏と目があった。
きっと同類がほしいのだろう。
そんな強い視線を感じたので私はにっこりと笑みを返してスルーした。
すまん、一夏。
流石に助けるわけにはいかない。
そう、その理由は―――
「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」
「古い電話帳と間違えて捨てました。」
パァンッ!
再び乾いた音と共に一夏が頭を抱えた。
織斑千冬がまだこの場にいるからである。
なるほど出席簿アタックか。
今日だけで一夏の脳細胞の死亡数がすさまじいな。
「必読と書いてあっただろうが馬鹿者。」
確かに、確かに書いてはあったが、千冬。
あれは厚さは電話帳並みなのだから、少しくらい手心をあたえても
いいと思うんだ。
そう、考えたのがいけなかった。
「ん?何かいいたそうだな、クロフォード。
そうだな、織斑、後で再発行してやるから一週間以内に覚えろ。
そしてクロフォードは再学習として織斑と勉強しろ。これは命令だ。いいな?」
「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと…」
確かにあの分厚さは一週間では難しいと思うのだが…
「やれと言っている。」
「……はい、やります。」
千冬には通用しなかった。
「クロフォードもそれでいいな?」
「ひとつだけよろしいでしょうか?」
恐れながらも口を開く。
このまま頷いてもかまわないが、ひとつだけ言いたい事があったのだ。
「なんだ?言っておくが拒否権はないぞ?」
「いえ、織斑先生がやれというのであれば、やりましょう。
それではなくて、再発行の件です。
手違いか、織斑先生の計らいか、私の手元には参考書が2つありますので。
再発行をせずとも私のものを一つ貸し与えましょう。」
そういい、鞄から念の為持ってきていた参考書を取り出すと。
「それでは放課後一緒に勉強、よろしくお願いしますね、一夏」
「あ、ありがとう。レイ」
そんな会話と共に参考書を一夏に手渡すことに成功した。
「え、えっと、織斑くん。分からないと所は授業が終わってから放課後教えてあげますから!」
そういう山田先生の目は凄い活気にあふれていた。
先生として頑張ろうっていうすさまじい気合が…
「はい、それじゃあ、また放課後によろしくお願いします。
それと、レイもよろしくな。」
「えぇ、よろしく、一夏」
そういうと私と一夏はそれぞれ自分の席に着き、
千冬も教室の端に戻っていった。
「ほ、放課後…放課後にふたりきりの教師と生徒…いや、クロフォード君もいるけど…
でもでもでも…あっ!だ、駄目ですよ、織斑くん。先生、強引にされると弱いんですから…
それに私、男の人は始めてで…」
いきなり頬を赤く染めてそんな事を言い出した。
山田先生大丈夫なんだろうか。
というか途中から私が存在しなくなってませんか?ねぇ、先生?
「で、でも、織斑先生の弟さんだったら…」
「あー、んんっ!山田先生、授業の続きを。」
「は、はいっ!」
一向に妄想から帰ってこない山田先生だったが、
千冬…織斑先生の咳払いでもどってきた。
流石に実の弟が妄想材料というのは気が引けたのだろうか…
いや、口に出したら色々厄介だ。
そんな感じで二時間目を終わった。
正直な話、果てしなく前途多難な気がするのであった。
主に個性的な先生陣に対してである。