だってみんながチョココロネとか言うから
そのイメージが定着したんだかんね(!?)
「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」
「……」
二時間目の休み時間、我々はいきなり声を掛けられた結果、
一夏は素っ頓狂な声を上げた。え?私、ここでこそ発揮されるスルースキルってヤツだ。
これは太古の昔より人間が生きていく上で、使用を禁じられてきたスキルの一つ。
しかし、その苦難を乗り越えつつそのスキルを使いこなす事こそ、
人として生きるための…
「…いや、素っ頓狂な言葉を発した俺が言える話じゃないが、スルーは普通に駄目だと思うぜ?」
…残念、ツッコミをもらってしまった。
どうやら顔に出ていたようだ。
改めて話しかけてきた相手を見上げる。
金髪ロールの女子生徒である。
「ハッ…金チョココ…げふっ…」
危ない。咄嗟に言いかけてしまった。
しかしその態度や振る舞い、いかにもお嬢様といったところだ。
現在社会においてISによるパワーバランスが女性側に偏っているのは周知の事実。
結果、『女=偉い』になっているという始末である。
きっと一部例外を除いて馬鹿が多いんだろう、はっはっは。
「訊いてます?お返事は?」
「つーん…」
「…あー、うん。訊いてるよ、それで用件はなんだ?…それと、レイ。
ごまかしきれてないぞ。」
知ってる。
そんなふざけた対応にちょっとイラついたのか、
目の前の金のチョココロネはかなりわざとらしく声を上げた。
「まぁ!なんですの、その反応ッ!わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、
それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」
「(金のチョココロネ…きなこをベースにすればいけるかもしれない)」
…一人空気を一切読んでいない人がいるが、ここでこそスルースキルを使うべきだと
一夏は全力で空気を読み切った。
レイがこんなことをしているのはわけがある。
どうでもいい話をすると、この手合いが苦手なのだ。
ISが使える→結果国家の軍事力が高まる→IS操縦者は偉い
この一方的な方程式から現状IS操縦が可能なのが例外を除き女性のみなのだ。
結論をいうなら、先程も言ったとおり女性が偉いという間違った概念を体現している存在を苦手としているのだ。
大体、力でもって権力や地位を手に入れようとしても結局、その手に残るのは他でもない力である。
その勘違いこそ強すぎる力を持った代償なのだと思う。
「あー、すまん。俺は君が誰だか知らないからな。
…レイは分かるか?」
「…はぁ、一応は。ですけど、一夏。知らないっていうのは言いすぎですよ?
他の人の自己紹介を聞いていなかったという証明にしかなってませんよ!」
そういうが、一夏は頭をかくだけで反応が薄い。
どうやら本気で覚えていないらしい。
実の姉が担任だったことがショックなのか
それとも出席簿アタックのショックなのかはさておいて
「彼女はセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生だよ。金色のチョココ…ごふっ…」
「あ、おい!大丈夫か、レイ?」
「あ、あぁ、大丈夫です。ちょっと噛んでしまって…鮮やかな金髪に緩やかなロールが特徴の女性です。」
明らかに特徴説明のスタートが当初『き』からだったのが言い直した際に『あ』に変わったのだが
そこにツッコむ余裕は勿論、今の一夏には無かった。
「そちらの女装男はどうやら分かってたみたいですわね。
えぇ、私はセシリア・オルコット。イギリス代表候補生にして入試首席の優等生ですわッ!!」
キリッとでも効果音が付きそうな感じで言い切った。
というか自分で『優等生』とか言ってもいいんだろうか。
ついでに折角名前を覚えていたのに自分は覚えてもらえず『女装男』という不名誉なあだ名で呼ばれたレイは
結構落ち込んだという。ついでに…『金髪チョココロネめっ!きな粉まぶしてやるっ!』とか意味不明な暴言をしていたが、
多分錯乱していたんだろうと一夏は慰めるだけにとどめ、それを全力でスルーした。
きっとかかわるといいことが無いと本能で悟ったんだろう。
と、そこで一夏が一つ疑問があったのか、挙手を行い問いをなげた。
「あぁ、質問いいか?」
「ふん、下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。」
胸を張るセシリア。その態度は気に食わないが、応えてもらえるのはありがたいと、
一夏は自分が思った疑問を彼女にぶつけた。
「代表候補生って何だ?」
がたたっ、
聞き耳を立てていたであろうクラスの女子の大半がずっこけた。
ほかならぬレイも器用に椅子から滑り落ちた。
どうでもいいけどずっこけた女子のノリも半端無いと思う。
流石日本人だ、笑いに命をかけているなっ!などとレイは椅子に座りなおしながら、どうでもいいことを考えていた。
「あ、あ、あ、……」
対してその言葉を笑いに還元できなかった存在がいた。
問いを受けた存在である「セシリア・オルコット」その人である。
「あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」
凄い剣幕だ。
確かに代表候補生となれば自身の地位のような称号のようなつまり
自慢できる部分だ。簡単に言うとそうなる。(実際は違うのだが…)
それを「知らない」と言い切られては確かにその剣幕は納得できる。
「…(一夏って学習能力ないんだろうな…)」
きっと『見栄は身を滅ぼす』とか考えてるんだろうが、ついさっきの授業でそれに従って
出席簿アタックの餌食となった事を忘れているんだろうか。
…いや、威力が高くて覚えていない可能性もあるな…
「一夏、代表候補s「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。
常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら。」…」
…人が話しているところを遮ってまで演技をする人に常識は諭されたくない。
そう思ったレイは悪くないと思う。
「結局代表候補生ってのは何なんだ?」
「国家代表IS操縦者の、その候補生として選出されるエリートのことですわ。
…あなた、単語から想像したらわかるでしょう。」
「そういわれればそうだ」
どうやら納得言ったかのような表情だが、それは読んで字のごとくだ。
普通は言われずとも分かるべきことだと思うと…レイは生暖かい視線を一夏に向けるのであった。
対して、自分の説明が理解されたことが誇らしいのか分からないが、セシリアは再び胸をはり
口を開いた。
「そう!エリートなのですわ!」
びしっと人差し指を一夏に向けるセシリア。
どうでも良いが、人を指差してはいけないと教わらなかったのだろうか。
それこそ常識だろう。
多分彼女(セシリア)の中では『常識=自分の価値観』なのだろう。
世間一般という言葉は彼女にはないんだろうか…
「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡…幸運なのよ。
その現実をもう少し理解していただける?」
「「そうか、それはラッキーだ。」」
「…馬鹿にしていますの?」
少々の沈黙の後そうイラつき気味にそう返していた。
多分一夏は本気でそう思ってるんだろうな。
え?私?馬鹿にしてますとも…だって馬鹿じゃないか。
「大体、そこの女装男はともかく、あなたはISについて何も知らないくせに、
よくこの学園に入れましたわね。例外的に男でISを操縦できると聞いていましたから
少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわね。」
女装男認定している人に多少の期待をうけているらしいが
それなら一夏同様に期待はずれでいいよ。
ため息を軽くついたレイだった。
「まぁでも?わたくしは優秀ですから、あなた達のような人間にも優しくしてあげますわよ。」
知らぬうちにレイも一夏側に入れられたらしい。
レイとしてはどっちでもいい話であった。
それは兎も角この態度からやさしさの欠片も感じられないんだ。
きっとこの態度がやさしさならば、きっと世界は優しさで満ちてるんだろうな…はっはっは。
…適当な事を思いつつ、遠い目をするレイがいたが、一夏によってすぐ現実に引き戻された。
「何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」
『唯一』をものすごく強調している。
成る程、どうやら凄いことなんだろうか…
「入試ってアレか?IS動かして戦うってやつ?」
「それ以外に入試などありませんわ」
「あれ?俺も倒したぞ、教官」
その一夏の空気を読まない一言は一瞬にしてこのクラスの空気を震撼させた。
特にその衝撃をうけていたのは他でもない、
『唯一』を強調した『金のチョココロネ』、セシリア・オルコットである。
「…は?」
駄目だ、相当ショックだったのか目を見開いて驚きをあらわにしていた。
ここでこそ、秘儀スルースキルだ。
ちょっと明後日の方向を向いている事にしよう。
まぁ現在セシリアは動揺してるし、一夏へ注目してるから大丈夫だろう。
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
「女子ではってオチじゃないのか?」
ピシッという、氷に皹が走ったような…そんな音が鳴った。
多分皹が入ったのは空気だろう。
一夏の言葉に動揺がさらに酷くなったのかセシリアは大分錯乱を開始した。
もっとも受け答えの一夏の言葉が曖昧だったのもそれに拍車をかけている。
だんだんと収集がつかなくなってきたのだが…そこに天からの救いが鳴り響く。
キーンコーンカーンコーン。
それは三時間目開始のチャイムである。
その音を聞いて正気にもどったのか、セシリアは古き常識の捨て台詞を一夏にたたきつけて
自分の席に戻っていった。
※注意、別に作者はセッシーが嫌いなわけじゃないです。
でも一つ思うことがある。
セッシーの声に違和感を感じるんだ。