チート転生して現地勇者のお供してたけど敵女幹部の超美人がドストライクすぎて思わず攫った話   作:まもなう(旧ノリあき)

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(遅刻)


異世界でもあけおめって言うのかしら

 

「いえ~いハッピーニューイヤー!」

「はっぴ……なに?」

 

 やあみんな!あけましておめでとう!

 こちらの世界でも偶然にも一年が365日で年越しを迎えました私、アリカと申します。

 

「年越したらそう言うの!新たな一年に乾杯!ってことでね」

「へー」

「あけましておめでとうとも言うわね!」

「随分雰囲気が違うわね?」

「Ein gutes neues Jahr!とかสวัสดีปีใหม่ค่ะ!とも言う」

「いや全然違うわね!?なに、人間はそんなに沢山言語があるの?」

「私のとこではねー」

「いや貴女王都から出たこと無……」

「まーまー細かいとこは良いのよ」

「細かくなくない……?」

「あれよ。本で読んだ」

「今思いついたでしょ貴女。まぁいいわアリカだし」

 

 というわけで、今日も一日リリスといちゃつきながら旅をしていたわけだけども。

 

「そういえばさぁ、魔族にも新年の挨拶ーとか言って親しい人やらにうんたらって文化あるの?」

「んー、魔界(こっち)にはそういうのはないかなぁ。元々長命種が多いし無頓着って感じね」

 

 リリスと出逢って初めての正月!なんだけど、どうも魔族にはあんまり馴染みがないみたいで。

 

「えー勿体ない!問答無用でお休みとか炬燵でみかん!とかも無い?」

「休み……っていうかみんな気ままだしね。普段から休みたいときに休んで働きたいときに働いてるわ。……みかんは兎も角こたつってなによ?」

「それで回ってるの凄いわね魔界。炬燵はまぁ……一度入ったら抜け出せなくなる?」

「怖いわね」

「でもみんな自分から喜んで入って行くよ」

「何なのか想像つかないわ……」

 

 それではそう勿体ない!そう思った私は兵は神速を尊ぶってことで、去年お世話になった人たちのところへ挨拶回りをすることにしたのだ。

 

「じゃあ取り敢えず行こっか!」

「待って?どこに行くの?というか今から行くの?もう夜なんだけど」

「こういうのは早い方がいいのよ!取り敢えずまおーちゃんさまのとこからね!」

「言いながら次元裂かないでわかったわよもう……」

 

 

 

   ◇  ◇  ◇

 

 

 

「魔王様、新しい一年でございます」

「む?もうそんな時期か?あっという間じゃのう」

 

 この城の何者にも内緒だが、魔王様とマキナは昔から一緒のベッドで眠っている。

 始まりは古く、まだ今より幼かった魔王様が、寂しがって出て行こうとするマキナの服を引っ張って泣き喚いてからだ。因みに今ではそんなことはなく、マキナが出て行こうとすると裾を掴んで捨てられた子犬のような目で見るだけだ。

 

「また今年もよろしくお願いしますね」

「うむ、うむ。わしもよろしく頼むぞ。マキナの居ない生活は想像できん」

 

 魔王様はそう言いながら、むにゃむにゃとマキナの豊満な胸へと飛び込んだ。

 ここはやはり天国かと微睡む彼女を愛おしそうに撫でるマキナは、普段は人前に見せない優し気な表情をしていて――――

 

ピシッ

 

「こんばんはー!……あれ?」

「ちょっと声……あら」

 

 突如として二人の時間を裂いたのは、最近よく見る問題児だった。

 

「こんばんは。ですが今日はもう遅いので相手をしてあげられません」

「んんぅ……なんじゃ?」

 

 せっかく気持ちよくなっていたのに、何か騒々しい声が聞こえると魔王様が目をこすって開けると、

 

「へー、へー!なるほどねぇ、可愛いねぇ!」

 

 滅茶苦茶良いところ見ちゃった、と目を爛々とさせる異常者の姿があった。

 

「うわぁ!?なんじゃ、何故お主が今ここに!」

「ごめんねぇまおちゃん。凄いアレな瞬間にお邪魔しちゃって」

「リリスまで!?」

「本当にそうですよ。折角魔王様を寝かし付けられるところだったのに」

「ま、マキナ?」

「冗談です。邪魔されたのは本当ですが」

 

 いいものが見れたとしめしめ顔になっていた異常者も、ずっとジト目で見てくるマキナに旗色を悪くしたのか勢いを無くしていく。

 

「いやぁごめんごめん。年明けたからいの一番に挨拶しに行こうと思ってさ。まおーちゃんさまにはお世話になったから!」

「……それはいいが、また日が昇ってからにしてくれ……わしは眠い。あと魔王様じゃ」

「はーい!おやすみちゃんさま!」

「まおうさま!……まったく」

 

 話は終わったと言わんばかりに一息つくと、魔王様は再び天国に顔を埋めて目を閉じてしまった。

 

「あら」 

 

 そうするや否や、くうくぅと可愛く寝息を立てて初夢へと飛び立っていった。

 

「まおちゃんほんとに眠かったのね……可愛いものだわ」

「あげませんよ」

「別に取らないわよ。私にはアリカが居るし」

「……意外です。貴女からも矢印が出ていたんですね」

「この子だって可愛いところあるのよ?二人の時じゃないと全然見れないけどね」

「リリスにしか見られたくないしそういうとこ出したくないしー?」

「そういうこと」

「……なるほど」

 

 少し解るとマキナは思った。好きな人にしか見せたくない自分の顔がある。好きな人が見せるこの顔は他の誰にも見せたくない。そういった感情は自分にも存在するからだ。まぁ見られてしまったが。

 

「というわけでちょっとアクシデントしちゃったけど、今年もよろしくね!また明日にでもお詫び持ってくるわ!」

「ごめんねーマキナ。じゃまた明日~」

 

 そう言い残すと、あっという間に乱入者たちは次元を裂いてこの場から去っていった。やはり彼女たち、というかアリカは文字通り嵐のようだとマキナは再確認した。

 

「はぁ……」

「くぅ……すぅ……」

「……暫く癒されましょうか」

 

 マキナは胸で眠るふわふわの魔王様(天使)を撫でると、優しく抱きしめて旋毛にキスをした。

 

 

   ◇  ◇  ◇

 

 

「いやーいいもの見れたわ!悪い気もするけど!」

「いいものっていうのは否定しないけど、罪悪感の方が勝っちゃうわね」

「今回は私のミスってことで、明日なんか振舞うわ!ついでに炬燵も作ろ」

「そんな簡単に作れるものなの?」

「え、わかんない」

「え?」

「じゃあ次いこ!」

「この流れで行くの!?もう寝ましょ?」

「大丈夫大丈夫!れっつごー!」

 

 

   ◇  ◇  ◇

 

 

「パパ!ママ!」

「アリカ!?お前、旅に出た筈じゃ……というか今何処から出てきた!?」

「あらアリカちゃん。おかえりなさい~」

「ただいま!あけましておめでと!そんでこちらが私の女!」

「言い方!……えーっと、初めまして?リリスよ」

「あら、別嬪さんねぇ」

「いやその人魔族じゃないか!?」

「パパは細かいこと気にしないの!今日は年越しの挨拶だけだからまた今度ゆっくり話そうね!バイバーイ!」

「あもう行くの!?またゆっくり話しましょうねー」

 

「行ってらっしゃい~」

「……一体アリカはどうなってしまったんだ……?」

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「いえ~いあけおめ!」

「な、なんだ!ってアリカ!?」

「なんだようるさい……っておわ!」

「あら、ちょっと懐かしい顔ね」

「リアクション似てるわね君たち」

「そりゃそうなるだろ!目の前に急に出てきたら!しかもあの時のヤバい魔族も一緒で!」

「こんな夜遅くに何しに来たんだ……」

「どしたの剣士君滅茶苦茶ダウナーだけど」

「お前のせいだよ!こいつに聞いてもアリカは消えた、しか言わないし!お前がいなくなってから飯はまずいし、身体はやたら汚れるし!」

「飯がまずくて悪かったな!」

「あー……そこはめんご。じゃあ早速だけどお年玉としてこれを授けよう」

「な、なんだ……?そのやたら光ってる右手で何をするつもりだ!?」

「いやこれでもちょっと悪く思ってるのよ?胡麻一粒ぐらい。だから勇者君には飯が美味しくなるおまじないをあげよう」

「うおおおお!なんか頭に無数のレシピが流れ込んでくるうぅぅうう!」

「戦士君には私が使っていた衛生魔法をほれ」

「ぐあああぁ!なんか身体に関する無数の術式が流れ込んでくるうぅぅうう!」

「もうあんまり貴女に対して驚くことは無いと思ってたのだけど……そんなことも出来たのね」

「リリスはこういうのより自分で努力して身に着けたいでしょ?」

「まぁね……こうなりたくないのもあるし」

「そうかわかったぞ……飯とは……栄養とは……」

「俺たちはなんて不潔だったんだ……」

「伝授完了!じゃあ改めてあけましておめでとう二人とも!旅はまだまだこれからだよ!」

「あんまり無理しないようにね?じゃあね~」

 

「……アリカこそが魔王なんじゃないか……?」

「言うな……俺もちょっとそう思ったけど……」

 

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 それからも、深海のでかい魚さんとか火口に住んでるトカゲさんとかに新年のあいさつをして一段落。

 魔王城に戻ってきて、リリスと寝る前のお茶会としゃれこんだ。

 

「いやー、まおーちゃんさまには悪いことしたなぁ」

「可愛かったけれどね?」

「それはそうだけど、私もあの二人のあの時間を邪魔するのは無粋ーって思いぐらいはあるし。んーまた明日ちゃんとごめんなさいしよ」

「アリカは意外と偉いわねぇ」

「意外は余計!」

 

 ぷんすこと怒っても、頭を撫でられる感触には敵わない。リリスの手さばきは私には劇薬なのだ。

 

「ねーリリス」

「なぁに?」

「今年もよろしくね?」

「私こそよろしく。いっぱい私に世界を楽しませてね?」

 

 私にとって去年は激動の一年すぎた。勇者一行として旅を始めた時はこんなことになるとは思わなかったけど。

 私に悪戯っぽい笑みを飛ばしてくるこの美女に会えたのが一番大きいだろう。

 好きだよ、リリス。あんまりちゃんと口には出さないけどね。

 

「……じゃあ取り敢えず今から姫始めでも」

「バカ。……お風呂入ってからね」

 

 今年も、来年も、その先も――――よろしくね?

 

 

 

 




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